魔術チートを貰ったらほとんどの魔術を使えなかった件   作:☆彡.。

14 / 17
感想もらえてやる気が多少出たので投稿


何が正義か

 インデックスちゃんに起こされて件の渦があるポイントまで移動する。

 地図を見ていたが、予想以上に大きい施設だな。

 ちなみに渦があるポイントは遊園地である。

 夜の遊園地というのは意外と怖いもので、プラスチックで作られたマスコットキャラクターの人形などが月光を反射して不気味に輝いたり、そもそも人がいて賑やかなのが当たり前な遊園地が静かで無人というものから与えられるものもある。

 まあ俺としては月の光が降り注いでいるのも無人であるのもいい条件であるためそこまで怖くはないのだが。

 天使の力(テレズマ)を使えるとはいえ流石に空を書き換えることは未だできないからな。

 神裂火織がやってきても時間稼ぎ程度は出来るだろう。

 

 遊園地のすぐ近くの百貨店のそばで待機していると、アニェーゼがやってきて中で天草式の本隊を見つけたと伝えられる。

 本隊は見つけたが、オルソラ=アクィナス及び法の書の存在は確認出来ず、これそのものが陽動の可能性もあるので包囲は解かず、作戦はこの人数で行うそうだ。

 オルソラを人質されることはほとんどないだろうが、万が一のことを考えローマ正教側の八割を囮として正面から特攻させ、残りの二割と俺たちイギリス清教側でオルソラの確保を行うこととなった。

 

 作戦を実行する直前にアニェーゼは天草式を許せないと言った感じの言葉を漏らしたが、どうにも首をかしげざるを得なかった。

 彼女がいうには近代西洋魔術師や、天使の名前を借りた魔法陣なんかは聖書の抜け道を探して甘い蜜を啜っている奴らで、『外敵』ならぬ『内敵』らしい。

 彼女たちのような人間がルールを守ってパンをもらっているのに奴らは横から列に割り込んでくると例える。

 俺的に言葉の意味を咀嚼してみると、簡単なことだ。出る杭は打つ。

 ローマ正教は出すぎた杭――つまり力を持った、持つ可能性を持つ人物を好んでいないということだろう。

 確かに言葉のままに教義の穴をつく者達が許せないという気持ちはあるだろうが、自分たちの制御できない力をきらっているとみえる。

 

 さて、そんな考えを持つ彼女たちが、天使の力を扱えるという『法の書』の解読方法を理解してしまったオルソラを喜んで救出するだろうか?

 俺はそこが気になっている。

 

 そして、今まで意識的に目をそらしていたが、かつて()()()()が属していた組織が武力のために力を持たない人を脅迫し、窃盗を行うか。

 この作戦ですべての答えは出るだろう。

 

 

 ローマ正教側と別れ、囮とは逆側から遊園地に侵入する。

 その際、ステイルから連絡は取れないもののたしかにイギリス国内にいたはずの神裂火織が消えていたことを伝えられる。

 最悪を考えてはいたが、本当に日本に来ているとは思わなかった。

 過剰な危害を天草式に加えれば確実に神裂火織は俺たちに牙を向くだろう。

 ステイルは同じ組織のメンバーで同士討ちはゴメンだと言って、最優先目標をオルソラに決定した。

 

 瞬間、金属がぶつける音が聞こえてきてそちらに目を向けると遊園地内の店舗の屋根の上から四人の少年少女たちが飛びかかってきていた。

 上条はインデックスを突き飛ばし、ステイルがその首根っこを掴んで引き寄せる。

 俺も上条の右手を触らないように上条を引き寄せると、その直後に刃物がまっすぐ振り下ろされた。

 先程までインデックスちゃんがいた場所、上条の左手があった場所だ。

 

 四人の少年少女たちは俺と上条とステイルとインデックスちゃんのあいだに割って入るように着地している。

 この通りは特別狭いという訳では無いが、そこまで開けている通りでもなく、あちら側に移動するのは難しそうだ。

 

 ステイルはルーンのカードをばら撒き、炎剣を引き抜きながら十字架のネックレスを投げつけると蜃気楼の魔術を使って離れていった。

 炎剣を抜いたから囮を買って出てくれると思ったら俺達が囮ですかそうですか。

 

 上条と路地裏に逃げ込みながらオルソラを探していると、上条が工具箱に躓き、ついでとばかりに中を漁ってひとつものを掴むと追手に向かって投げつけた。

 

 追手はそれを切り裂くと、切り裂かれたものからオイルのような粘性を持ったものが巻き散らかされる。

 俺は咄嗟に能力を使ってそのオイルを追手の獲物に付着させると、それに気が付かない追手はそのまま上条に切りかかる。

 それを上条は両腕をクロスして受け止めるとその現象に戸惑った追手の腹を殴りつけて気絶させた。

 

 上条が投げつけたグリスによって切れ味を損なった細身の剣は上条に傷をつけることは出来なきなかったということだ。

 それにしても腹を殴るだけで気絶させるとかこいつも存外人外だな。

 

 上条は気絶した少女が復活した時に獲物を使えないようにするために細身の剣を引きずって移動したため、俺もそれについて行く。

 

 ちなみに俺は例の水の膜で隠れている。

 本来こんなことが出来るなら一人で動くべきなのだが、流石に無能力者の上条を一人にはしておけないので姿を隠したまま地味にサポートしているというわけだ。

 

 上条は逃げるために潜り込んでいた店と店の隙間から客が使うための道に戻り、その瞬間に曲がり角、完全な死角からなにかに追突され、押し倒された。

 よく見てみればそれはオルソラ=アクィナス少なくとも敵対する人物ではないのだが、突然の事で理解が追いついていない上条は拳を握って、ようやく誰にぶつかったのかを理解して拳を開いた。

 

 よく見ればオルソラは後ろで両腕を固められており、口にも何かがはられている。 

 魔術的なものだろう。

 

 上条はそれを右手で破壊し、周囲を歩いている天草式から隠れるために路地裏に潜ると、ソリがあっているのかいないのかよくわからない会話をオルソラとした後にステイルから渡された十字架をオルソラの首にかけた。

 

 何を血迷ったのか正面から十字架をかけようとし、そうするにはほぼ抱きつくような体勢になって赤面していたが、普通なら上条ではなくオルソラが赤面するか怒るところである。

 

 そして上条はオルソラになぜ法の書の解読をしようと思ったのかを問う。

 

 オルソラがいうには魔導書の原典は魔術を伝えるという性質からして魔術の発生源になってしまうということだ。

 

 紙に魔法陣を書いていたところで魔力が供給されなければ陣は効果を発揮しないが、原典は地脈などから魔力を吸収するため陣が効果を発揮してしまう。

 記された陣も強力なもので故に原典は破壊不可能なのだ。

 しかし、その内容を理解して、その強力な陣を逆手にとることが出来れば破壊できるのではないかと考えたオルソラは解読をしようと思ったとのことである。

 

 話を聞き終わると同時に大きな音を立ててステイルが吹き飛んでくる。

 ステイルが負けるということは神裂火織か?

 まさかここまで早く来るとは思わなかった。

 気配を探り、気配を遮断し、神裂火織の襲撃に備える。

 

 上条がステイルに話しかけると同時に、上条が隠れていた店の二つ隣の店が吹き飛び、その奥から一人の男が歩いてきた。

 

 なーんだ。神裂火織ではないのか。

 少し安心したが、それでもステイルを吹き飛ばす強さである。

 警戒をしながら、念の為に再び神裂火織の存在を探るために息を潜める。

 

 その男は黒い髪をさらに黒く染め直したかのような真っ黒の髪をしており、服装も大きすぎるシャツに長すぎる靴紐など、ほかの天草式と比べても以上であった。

 彼らは基本的に人混みに紛れても違和感のない服装をしていたはずなのだが。

 

 黒い男が現れた店の奥を覗くとそこにはインデックスがいた。

 なるほど。守りながら戦ってきたということか。

 ルーンの刻印を力にするステイルでは遊園地を移動しながら守る戦いはかなり辛かっただろう。

 

 男は上条たちに降伏を呼びかけるが、それに応じるステイルではなく、となると上条も降伏しないだろう。

 

 二人が戦うとなると問題となるのはインデックスちゃんとオルソラだ。

 横からかっさわれるかもしれないし、余波で怪我をするかもしれない。

 

 俺は、あえて姿を現し、二人は守ってやるから安心しろと上条に言う。 

 姿を現した理由は簡単で、その方が上条の不安を取り除けるからだ。

 

 インデックスちゃんを確保し、再び神裂火織やほかの天草式のメンバーを探る。

 

 途中で上条が劣勢になり、インデックスちゃんが駆け出そうとしたので抱きつくように動きを止め、近くに行けば上条やステイルに余計な心配をさせると宥める。

 すると彼女はここから出来る手助けの方法を考えるべく思考を開始した。

 

 それを確認した俺は再び意識を周囲に向けたその時、再びインデックスちゃんが上条たちの方へ走り出す。

 

 完全な不意を疲れた形になり、上条たちはインデックスちゃんを守るために行動を始める。

 

 天草式の男をすぐに倒せなければ、インデックスちゃんはきっとすぐに切られることだろう。

 だから上条は自分ごと攻撃するようにステイルに指示した。

 

 ステイルはそれを聞いて炎剣を持ち、天草式の男に向かって突撃する。

 

 上条が自分の拳とステイルの炎剣の二択を天草式の男に迫り、天草式の男が一瞬迷ったあとにステイルへ目を向けると同時、上条の()()が後に回され、その意図を察した。

 

 俺が予想した通り炎剣は砕かれ、そちらを見ていた天草式の男は意表を突かれ、思考に空白が生まれる。

 

 そのわずかな時間に後から思いっきり振りかぶった上条の右手が天草式の男の頬を貫いた。

 




主人公いる?
今んところ必要なくない?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。