魔術チートを貰ったらほとんどの魔術を使えなかった件 作:☆彡.。
オルソラ教会への移動中、ステイルにグチグチと嫌味を垂れられたが、きっと上条当麻ならばどんな台詞や理屈を並べてもオルソラ=アクィナスを一人でも救いに行っただろうと確信できる。
右手に特別な力があるだけの一般人の癖に人一倍の正義感を持った人間だ。
途中に通りがかったコンビニにより、水を補給してからオルソラ教会へ行こうとすると、店の外で待っていてもらったステイルたちがいなくなっていた。
……あの野郎。
使う水を選ぶのに少々時間がかかったため今から走っても多分追いつけなさそうだし、もう夜遅い。
空を飛んでも撃墜術式を使われることはないだろう。
そもそも天使の術式を撃墜術式で落とせるかは不明なのだが。
空からオルソラ教会の上にたどり着くと、丁度結界が破壊されたところだった。
これ、ステイルのルーンの準備とか終わってる?
先走った上条を咎めるようにステイルやインデックスちゃん、建宮が現れて文句を言っているが、みんな一般人の上条を参加させたくなかったそうだ。
俺がめんどくさいことしちゃってごめんね?
とりあえず守ることにおいては上条の右手は一級品だ。
上条はオルソラを抱いて建物から脱出する。
上条の脱出を妨害しようとするシスターたちは天草式の人員に妨害され、上条は別の建物へ逃げていく。
路地裏の喧嘩で慣れているのか、上条は高所の幅が狭い足場に逃げ込むが、したから魔術的な攻撃が上条ではなく、足場を狙う。
ローマ正教側はもうオルソラ=アクィナスを保護する必要はないのだ。
下手をすればこの戦闘中に殺して保護しようとしたがイギリス清教側に殺されてしまったと言うつもりなのかもしれない。
俺は上条とシスターたちのあいだに入り、ペットボトルを破壊して水を使いすべての魔術を破壊する。
やっぱり、屋内より屋外の方が術式の調子がいい。
さっきまでは屋内でちぎってはなげとしていたが、調子が悪くて外に来た瞬間にこれだ。
「さっさと逃げろ!」
上条は頷くと足場を伝って別の建物の屋根へと逃げていく。
とりあえず、ここにいる二十人弱の無力化をしておきますか。
いつかの天使のように天へ掌を掲げ、月を中心にひかりの輪を放つ。
本物には劣るし、意図的に劣化させてはいるが、それでも『一掃』だ。
範囲を狭くしたことにより発動が早くなった一掃を即座に発射し、シスターたちの足元を爆破する。
爆発の余波で上条がいた足場まで破壊してしまったが、しっかり移動は出来ているようなので問題ないだろう。
それから十分ほど経過し、膠着状態が続いた時、シスターの一人、恐らく分隊長のような役割の人物が玉砕命令を出した。
インデックスちゃんの歌で足止めをされていた奴らは耳を潰し、建宮のところで膠着状態を作っていた奴らは特攻し、ステイルのところで一方的にやられていた奴らは最低限の防火術式のみで特攻する。
狂信者ってのは怖いな。
俺たちの目的はオルソラ=アクィナス、囚われた天草式の救助であり、ローマ正教の殲滅ではない。
自然と逃走を図り、俺、上条、ステイル、建宮とインデックスちゃんにオルソラがひとつの建物に集まった。
その建物に篭城している中、オルソラが法の書があればこの場で解読して活路が見いだせるのにと呟く。
その後、脳内の法の書をオルソラから解読法を教えて貰らいインデックスちゃんが解読してみるが、この解読方法はダミーのものであったらしい。
オルソラ=アクィナスがローマ正教から命を狙われている理由は法の書の解読方法を知っているから。
今から不正解でしたと言ってシスターたちは手を引くだろうか、答えは否だ。
ここまでのことをして簡単に引くとは思えない。
俺は、しかたないと言って範囲を拡大した一掃でこの教会ごと焼き払おうと思ったが、散らばった天草式のメンバーを考えるとそれもできないことに気がつく。
ならばと天使と五分五分ちかく戦うことが出来た水の術式で戦えるかを考えて、ステイルに飛んだ場合はどうなるかを聞いてみるが、恐らく、と前置きされたあとにまだ落とされるだろうと言われる。
飛ぶのはなしか……。
殲滅範囲が一気に狭くなるがしかたない。
俺が囮になり、その間に脱出、または逆転の手を打ってもらうことにして俺は二階の窓を突き破って外へ飛び出した。
ドアを食い破ろうとしていたシスターたちも俺の方へ向かってきたのでとりあえずはステイルたちは安全だろう。
開けたところに出て水の翼を使い百人単位のシスターと戦う。
翼の数が足りないためすべてのシスターには対応出来ないため、水の槍や水球なども織り交ぜて窒息か打撃による戦闘不能を狙う。
それからおよそ十分がたった時だった。
教会の敷地内に巨大な炎の魔人が現れた。
……流石にあれの相手はしたくないな。
魔術で生み出せる水にも限界はある。
ダムや海、雨の中なら五分五分の戦いは出来ると思うが。
そう思っていると長らく黙っていたイコに、あればまともに攻撃しても壊せないぞと言われてますます戦う気が失せた。
最も、あれはステイルの術式らしいので今回は戦う必要は無いか。
俺は炎の魔人の近くへ移動し、ステイルたちに連れられて移動を開始した。
◇
「その通りだ。お前の幻想は終わっちまったよ、アニェーゼ=サンクティス」
は? と、目の前の少年の言葉の意味を飲み込めずにいると、聖堂の両開きの扉が勢いよく開け放たれた。
恐る恐る入ってくる人影をを確かめれば、そこにいるのは天草式のトップにイギリス清教の神父とシスター。
それと二体の化け物だった。
一体は炎の化け物。神父に従えられるかのようにその横に佇んでいる。
一体は化け物――いや、本当にそう呼んでもいいのだろうか。
圧倒的な
そしてその背に接続された月光を反射して、炎の魔人の光を反射して輝く漆黒の水の翼。
何より目を引くのはその頭上に輝く光の輪だ。
まさか、まさかまさかまさか。
本当に法の書が解読されてしまったのか?
原典はこの場にないはずなのに。
なぜ?
いや、そんなことはひとまずどうでもいい。
まずは異端者共を片ずけるのが先決だ。
「何やっちまってんですか! 数の上ならまだ私達の方が断然多いんです! まとめて潰しにかかりゃあこんなヤツら、取るに足らねえ相手なんですよ!!」
化け物が二体増えたところで人数差はひっくり返らない。
逆に、強力すぎる力を持った奴らは戦いにくくなっているはずなのだ。
ここで膝をおらなければ確実に私たちの勝利が訪れる。
しかし、シスターたちは動かない。
戦うべきか逃げるべきかを考えているのだ。
化け物が炎の魔人だけならば話は違ったかもしれない。
しかし、天使と呼べる化け物がいる時点で考えざるを得なかったのだ。
誰か一人が動けばそれに続いて攻撃をするだろう。
だが、誰がその一人目になる?
――私以外にいねぇじゃねぇですか。
幸い、やつらも下手には動けない。
つまりは私と少年の1体1。
先程までは私が有利だったのだからこのまま決めきれるだろうか。
いや、仮にも右手一本でこの作戦に駆り出される人物だ。
この短時間で私を読み切り突破してくるかもしれない。
ならば、ならば。
◇
上条の拳がアニェーゼの頬に突き刺さる。
その拳は確実に彼女の意識を刈り取り、同時に百人はいるシスターたちの戦意をも失わせた。
今回も俺がいなくても無事に解決していた気がするな。
上条のあり方ははっきりいって異常だが、そのあり方に引かれて仲間が集い、困難を突破する。
結構すごいやつなのかもしれないな。