魔術チートを貰ったらほとんどの魔術を使えなかった件   作:☆彡.。

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夏だ!海だ!クラゲだ!

 三年の夏休み、ようやく学舎の園、学園都市からの外出許可が降りた。

 学園都市には海がないので海に行ってみようと思う。

 日光はイコの魔術でとっくの昔に克服済みだしな。

 学舎の園では入場管理がされているためろくにイコと街を歩けなかったが学園都市の外なら話は別である。

 人工の能力者とは違い、原石とやらはDNA解析しても無意味なことから能力強度の割には簡単に外へ出る許可が降りたのだ。

 本来なら保証人なんかも必要なのだがそういう面倒一切無し、ナノマシンの注入も俺が聖人ということからなしである。

 常盤台は散髪すら毛髪からDNA抽出の可能性があるとか言って自由にさせてもらえないからな……。

 原石で良かったって思う。

 

 ゲートからタクシーで出て神奈川まで移動してタクシーが学園都市に帰ったのを確認して瓶に詰めていた血液を地面に垂らすとそこからいつも通りのイコが現れる。

 少し違うところを述べるとすれば、フリフリのドレスが少し薄いところだろうか。

 涼しさとオシャレの両立をしているあたり流石だと言いたい。

 

「んーっ! 久しぶりの外ね。太陽の光が気持ちいいわ」

 

 イコは伸びをしてそういう。

 実際イギリスでの軟禁生活二年と中学の三年間イコは外に出ていなかったので五年ぶりである。

 

「ジブリールはお洒落のおの字もない格好ね? わたしと外に出るんだから多少のお洒落はしてきたらどうなの?」

 

 ジブリールこと俺の服装は無地の半袖とジーパンである。快適さはそこそこであるがお洒落かどうかと聞かれればNOと答えが返ってくるだろう。

 

 タクシーを降りた場所からキャリーバッグを引っ張って三十分ほど歩くと海が見えてきて、しかし海水浴に来ている人影はひとつも見つからなかった。

 ひとまず海は無視して旅館にチェックインをすると、どうやらクラゲが大量発生したせいで地元の客すら寄り付かなくなったそう。

 

 実際にどんなものかイコと海に足を運んでみると海一面に広がる白、白、白。

 全てがクラゲである。

 

「「うわぁ……」」

 

 流石に絶句である。

 

「結界的なので隔離できたりするか?」

 

「軽く遊ぶ範囲なら出来ると思う……。けど中にいるやつを追い出す機能はないわよ?」

 

「俺の能力を忘れたか? 壁の外にクラゲを出すくらい朝飯前よ」

 

 イコにクラゲを通さない結界という魔術の無駄遣いのような結界を貼ってもらい、俺の能力で水を操り結界の中のクラゲを外に投げ捨てる。

 結界の範囲は25×25メートルほど、軽く泳いだりするのには十分である。

 

 常盤台がいくらお嬢様学校とはいえ、寮の一部屋一部屋にバスタブがあるわけもなく、備え付けのシャワーか大浴場を利用しなくてはならなかったため、この量の水を独り占めならぬ二人占め出来るのは久しぶりである。

 授業でプールもあるがあれはそこまで楽しめないからな……。

 海パンの上にパーカーを羽織り、the水着と言った感じの服装になる。

 イコの服も俺の血で出来ているためイコのイメージ通りに変化し、真っ赤なビキニへと変化した。

 普段のフリフリのドレスの上からだとぺったんこだが、やはりそこそこあるな。

 

 ちなみに、元が血であるイコだが、人の姿をとっている時は人間と変わりないため海に入ってもなんの問題もない。

 

 25メートル四方の結界に入り、泳いだり浮き輪で浮かんだり能力で強引に流れを作ったりと一通り楽しんだ後結界を解いて砂場で休憩する。

 

 能力で水気を払って座っているとイコが胡座の上に座ってくる。

 寮の自室での定位置である。

 

「楽しいか?」

 

「まあまあね。本来ならもっと人がいて賑やかなんだろうけど二人だけで少し寂しいかも」

 

 まあ、とイコは続け

 

「二人きりっていうのもプライベートビーチや無人島に来たみたいで面白いけどね。それよりさ、ほら、いつものしてよ?」

 

「いつものって……外まで来てすることか? そもそも道具持ってきてねぇよ」

 

「道具はあるわ」

 

「どこに?」

 

「キャリーバッグの中!」

 

「……キャリーバッグは旅館に置いてきたんだが?」

 

「じゃあ丁度いいしお昼食べに行くついでに戻りましょ」

 

 俺の体を押す反動で立ち上がったイコはそう言ってこちらに振り返る。

 シートの上に寝転がるように頼れた俺はイコに手を伸ばす。

 

 俺が何を求めているのか察したイコは俺の手を引っ張り起こそうとするが、同時に聖人パワーでイコを引っ張り引き倒す。

 

「うわっ!?」

 

 なにすんのよと目で抗議してくるがそれに取り合わず

 

「寝る」

 

 疲れていたのもあるし、パラソルでいい感じに直射日光が遮られているところに寝転がったため眠くなったのでイコを抱き枕替わりにして寝ることにした。

 

 

 夕方頃に少々肌寒くなり目を覚ます。

 夏とはいえ海辺で水着だけで寝ていれば寒くもなるか。

 すっかり熟睡しているイコを起こしてパラソルなどを片付け宿へ帰る。

 

 宿に戻ると俺たち以外にも客が入っていて挨拶をすることに。

 

 上条一家とインデックスちゃんと竜神乙姫ちゃんと挨拶を交わしてひとまず部屋に帰る。

 

 挨拶を際、上条当麻と握手をしたのだが日除けの魔術が無効化された。

 握手をした本人も不思議そうに右手を眺めていたことから偶然ではないだろう。

 

「とりあえず魔術かけ直してくれ」

 

「後でね。とりあえずこれ」

 

 キャリーバッグを漁っていたイコが取り出したのは注射器だった。

 ほんとに持ってきていたのか……。

 

「防音魔術は?」

 

「やるから早くしなさい」

 

 イコが魔術の準備をしている間にたっぷり500ml血液を抜き取る。

 俺の血は割と特別みたいで体内にあろうが体外にあろうが、酸素を運ぶ仕事に問題は無い。

 体外の血液が消失すれば問題になるがとりあえず普段なら問題ないのだ。

 

 魔術を使用したイコが再び胡座の上に座ってくる。

 

「いくぞ?」

 

「う、うん。きて?」

 

 強要してきたがわの癖にちょっと怖がっているのが可愛い。

 2センチもある針をイコの首筋に立て、沈めていく。

 体内に針が針が入ってくるのがいいのか息を荒らげ喘ぐイコだが、いつもの事なので無視して針を沈めていく。

 2センチの針が沈みきったのを確認し、注射器の押し子を少しずつ押して中に入った血液をイコに注入していく。

 

「ふっ、あ……あああ!!」

 

 ある程度のところで一気に押し子を押し込み残った血液を勢いよく注入する。

 

 常盤台の寮に入って初めてこれをやった時はイコの声が大きすぎて寮監に自慰はほどほどになと窘められた程である。

 

 全てを入れ終わると今度は向き合うように座り直し増えた500ml分の血液をイコから回収する。

 綺麗な首筋に歯を立て食い破り500ml丁度を飲み込む。

 イコはどちらかと言うとこちらの方が好きらしく全身で俺に抱きつきながら獣のように声を上げる。

 

 感覚で回収が終わったとわかると同時に首筋から口を離しひとりでに傷が治るのを確認する。

 一見なんの意味もないただの変態的な行為に見えるがそれは違う。 

 本質は別のところにあるのだ。

 といってもイコはこれを行う際に性的快感を覚えるそうでそちらに若干中毒気味なのだが。

 

 説明をすると、イコは血液である。

 そしてイコが魔術を使う際には血液内に溶け込んだ魔力を使用する。

 イコは自力で魔力を生成できないため、俺の体内――血中に溜まっている魔力を取り込んで補充するのだ。

 その補充方法は大きくわけて三つあり、実行できるのはふたつだけである。

 まず一つめが今回行った方法。 

 二つ目は適当に俺の体に傷をつけてそこからイコを体内に戻して再び出す方法である。

 後者なら500mlと言わずすべての血液を魔力に満ちたものと交換できるのだが、こちらは好まないようだ。

 

 そして実行不可能な三つ目は俺がイコに性を注ぐこと。

 ()()()()()ため不可能である。

 なお、イコの血液中に含まれる魔力は交換をしなくてもひと月ほどならば人払いの魔術を東京都内全域に貼れるほどの魔力があるため、今回の交換はただの快楽目的である。

 これをやると口の中が血の味で一杯になるからあんまり好きじゃないんだけどね。

 その代わり涙目で腰砕けになったイコが見れるが流石に見慣れてしまった。

 

「はよ起きろ~」

 

 虚ろな目で虚空を眺めるイコを揺すって目を覚まさせる。

 

「ぅ、ぁあ。……ぅん、もう大丈夫」

 

「大丈夫には見えないんだが? とりあえず日除け頼むよ」

 

「……分かった」

 

 日除けをかけ直してもらい、いい時間になっていたため食堂に降りる。

 イコは腰が砕けたままなので背負って移動だ。


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