魔術チートを貰ったらほとんどの魔術を使えなかった件 作:☆彡.。
上条たちの話を聞いていると、上条も魔術を知っていることがわかった。
魔術は極力秘匿するものでは無いが、それでも大っぴらにしていいものでは無いので魔術でこうなってるんですよーとは言えなかったが、神裂がすべて言ってくれた。
この魔術は
「ところでそっちのお嬢ちゃん二人は誰なんだぜい?」
「常盤台中学三年のジブリールくんとそのお友達のイコルだ。久しぶり、神裂さん」
アロハに聞かれたので唯一の知り合いである神裂さんに挨拶をする。
「まさか、いえ、しかし……」
「悩んでるところ悪いですけど記憶処理なんて一瞬で破りましたし御使堕しとやらも影響は受けてませんよ」
何故って?
「あなた達が“イコル”と呼んだこいつのおかげですよ」
「記憶処理のことはひとまず置いておくとして、あなたがこの魔術を使用している訳では無いのですね?」
「むしろ被害者だね。ムズムズして気分が悪い。文字通り天使が降りてきてたりしない?」
「驚きましたね。御使堕しと名付けられたのは文字通り天使が降りてきているからですが、何故それを?」
「なんとなくかな? 感覚的にそんな感じがしていたところにエンゼルフォールなんて言うわかりやすい名前が出てきたから聞いてみただけだ」
その後は上条に天使のことなどを話して上条を中心に御使堕しが起こっていることを聞く。
時刻はもう夕方で、今から動いても夜になってしまうので翌日から動くことになって旅館に戻ることになった。
旅館で上条夫妻と神裂(
――突然の停電。そして少ししてから響く何かが砕ける音、俺とイコもそちらに急いで向かった。
そこには明らかに戦闘が行われた跡と倒れた上条、土御門と神裂さん、そしてこの旅館の従業員と赤い拘束具を纏った少女がいた。
場違いだが、あの少女の外見はグッドだ。
しかし、何かが違う気がする。
まるで、こちら側の存在のような――
神裂さんが従業員に口止めをして解放すると、目覚めた上条が少女がなんなのかを尋ねる。
少女の素性を神裂さんが説明する。
イギリスとは別の魔術組織の構成員らしい。
名前はミーシャ=クロイツェフ。
ミーシャねぇ……。
ミーシャってのは英語圏でのマイケルに相当する名前で女の子につける名前ではないはず、ついでに言うならば組織での役割的な意味でつけられた名前だとしても彼女の属性は水だ。
それくらいは見ればわかる。
ミーシャ、つまりミカエルが司る属性は火なので全てがごちゃごちゃである。
考えているとミーシャが上条に向かって水の槍を発射したのが見えた。
やはり属性は水か。
ミーシャによろしくと手を伸ばし握手をすると、俺は俺の力をミーシャに流してみる。
反響してくるのは予想通りのものでありこれで確信した。
その後、事後処理を手伝い、上条が叫んで走っていったあとに解散となった。
◇
「イコ、俺の考えは正しいか?」
「わたしの魔術でもそうなってるしほぼ百パーセントあってるね」
◇
翌日、犯人を探す俺たちだが、その候補に脱獄犯の火野神作が上がった。
昨晩上条が襲われ、ミーシャが撃退した人物が火野神作であり、御使堕しが発動する前のニュースで見た顔と一致しているらしい。
俺からしたら全員元のままなのでよく分からないのだが……。
そして火野神作をクロとする際の問題点は火野神作から魔力を感じ取れなかったということ、何らかの工作か、シロなのかは分からない。
火野神作は勝手に文字を刻む
その殺人方式は儀式殺人と言われるものに近く、その
その儀式が御使堕しだったとして、それを起こすように命令したのはエンゼル様、それが天使だったとしたら鶏と卵の問題になってしまう。
その道のプロである三人が考えてもわからないため、とりあえず捕まえて拷問なりをすればいいかということになった。
そして、火野神作についての情報を流していたテレビから新しい情報が流れてくる。
火野神作が神奈川――つまりこの周辺の民家に隠れたとのことだ。
警察はその民家周辺を封鎖し、捕まえようとしているらしい。
だが警察に捕まえさせるわけには行かない。
捕まってしまえば御使堕しを停止させることが出来ないからだ。
ちなみに、火野神作が隠れた民家は上条一家の家もしくはその周辺であることが上条の証言でわかった。
上条曰く車で二十分ほどの位置に家があるのでタクシーを呼んだ方がいいとの事で、大男に見える神裂とスキャンダル発覚中のアイドルに見えるという土御門は近くに隠れることになった。
残ったのは上条とその後ろにいるミーシャ、俺たちだが上条は沈黙に耐えきれずにミーシャにガムを差し出す。
「た、食べてみるか?」
「問一。食べてみるか、という質問から察するに、これは食物なのか?」
ロシアでもガムくらいあるよな?
組織的な理由でガムを知らないということがあるかもしれないが、これで俺の考えは更に補強された。
「食べ物だけど飲み込んではいけないモンだ」
上条が答えるとミーシャは小首を傾げガムを受け取り、フィルムを剥がして匂いを嗅ぎ、舌先で舐めとるという毒味の果てにガムを口内に運んだ。
「私見一。うん、甘味はいいな糖の類は長寿の元だと言うし、神の恵みを思い出す」
思い出すねえ……。まるで知っていたかのような言い方だ。
普段ならば気に求めなかっただろうが、疑い出すと何もかもが怪しく見える。
そのまま少しするとミーシャの喉が動きガムを飲み込んだ。
「うわぁ!? ナニ飲み込んでんだお前!」
「解答。なんだその反応は、飲み込んではならぬものなのか。これは噛みタバコの類か?」
ガムは飲み込むと体に悪いと思うんだよなぁ。
もう一枚と手を伸ばしているミーシャの手に飴の包み紙を置く。
こっちなら飲み込んでも問題は無いだろう。
「問二、これは甘味か? 甘味ならばどのようなものだ?」
「舐めて味わうものだよ。噛んでも問題は無いが舐める方がメインだな」
俺は炭酸が好きなのだが、この体は炭酸に非常に弱いため仕方なく飴で炭酸成分を補給している。
舐めすぎると口の中が甘くなりすぎるのが欠点だが、わりと気に入っているものだ。
ミーシャはガムの時と同じ容量で毒味をするがそれより簡単なものがあるだろう。
親指と人差し指で摘まれている飴をとって口に含む。
「問三。その飴はこちらに寄越したものではなかったのか?」
「毒味とか面倒でしょ? だから舐めて証明しようと思ってね」
そう言ってミーシャの真正面まで接近し、顎クイをかましてキスからの口移し。
赤面したミーシャにハンマーで叩き潰されるがキスできたので良しとする。
言い方は悪いが、この事件が終わったら会わないだろう相手だから積極的になれる。
常盤台でやったら派閥メンバーに何をされるかわかったものじゃないからな。
「私見二。レモンの甘味もいいものだな」
その飴はソーダです。ファーストキスやったぜ。
「イコ……回復魔術プリーズ」
「しらない。自業自得だ」