第1話『独立リーグ』
アークが握り締めた形見のおかげで、あの白い空間から抜け出せたワイちゃんとアーク。
「聖櫃くん、その手に持っている物をちょっと貸してくれませんこと?」
「ワイ? これは父さんの大事な物なんだが……」
聖櫃君はそう言いつつも、ちょっとだけと貸してくれましたの。
「ありがとうございますわ。聖櫃君」
お嬢様としてお礼の言葉を忘れずに伝えさっそく――
ポチー
「……」
景色が目まぐるしく変わっていきますわ。
座り込んだまま、辺りを見渡しますと、見慣れぬ地面は、懐かしきグラウンドのように茶色くて。
郷愁の思いに耽りかけて、被りを振りますと、頭上から殿方の声が聞こえましたの。
「フン!」
「あら……目の前が真っ白に輝いて……」
「何だこの少女は?」
目の前の光が収まり、黒く逞しい巨体が現れましたの。
お嬢様である、わたくしは恥も掻き捨てて――
「あなた野球やらなくて?」
球世主としての言葉があふれてしまいましたの。
これが言葉のキャッチボールやね。
「ヤキュウ? それは何だ? それよりもここは危険だ。ジンバ! この子供を安全な場所へ連れていけ。」
「グルガ……あまり大声で叫ぶな。ささ、お嬢さん。向こうに安全な陣幕がある。そちらに案内しよう」
恵体の方はそう言いながら、ジンバとかいう連れのおじさまを呼びつけて、わたくしを遠ざけようとしたのですけど。
「お待ちになって! 名スカウトである、わたくしを誤魔化そうったって無駄ですわ!」
契約していてもFAがあると、金の問題ならとサインを出しながら相手の出方をうかがっていましたの。
「今は独立運動の真っ最中だ。子供の相手をする暇は無い」
独立……!?
「まさかあなたたち、セ。パ。に属さない方たちですの?」
このときワイちゃんは悟る。
セやパだけが正義ではない。独立リーグという道があるのだと。
「何を言っているんだこのお嬢さんは?」
メガネかけた方の恵体がこちらを訝しんでますわね。
「わたくしは、あなたたちの独立を助ける者ですわ!」
「グルガ。どうする? この少女どうやらニーデルの者ではないようだが」
「放っておいて巻き添えで、犠牲になるのも見てられん。安全な場所まで同行しよう」
ふんどし一丁という個性的な方でしたが、意外と紳士的な方ですわね。
「ここは一体何処ですの?」
わたくしの疑問にメガネの方が答えますの、やはりメガネの方は頼りになりそうですわ。
将来の名キャッチャーかもしれませんわ。
「ニーデル領ブラキア地区だ」
ナ○ツネ領ジャイア○ツということでしょうか?
そしてふんどしの方が付け加えるかのように――
「我々は今自由を求め戦っている!」
彼らは選手会なのですわね、自治を取り戻す為に命がけで……
「わたくし感銘を受けましたわ。選手達の自由を取り戻しますわよ!」
「お嬢さん……気持ちはありがたいが」
「あしでまといになるだけだ、戦士以外は戦わなくていい!」
選手以外は戦わなくていい。
なんという自主性。ファンに心配をかけさせまいとする、とても立派な思いの持ち主なのですわね。
心震わせた、わたくしは、ふんどしとめがねを引きつれて、バンザ山という山で、高地トレーニングに来てましたの。
お二人が疑惑の眼差しで見ていますけど気にせずバットでプレイボールですわ。
「お嬢さん、その身のこなしは一体……」
「ジンバ! 気をつけろ。ここは敵中だぞ」
それにしてもなにやら騒がしいですわね?
「お前達が反乱の首謀者だな」
わたくしのお楽しみ中、突然見るからに高圧的な人物が目の前に乱入してきましたわ。
「気をつけろグルガ! お嬢さん! あいつはニーデル軍の司令官レイガルだ!」
何やらあの方地元では有名な選手のようですわね。
「子供連れで反乱とは、のん気なものだな。包囲し、八つ裂きにしろ!」
それにしてもこの方、品がありませんわね。
野球のルール。教えて差し上げますわ。
まずは自分のステータスを確認ですわね。
ん? どういうことですの?
バグらせた覚えの無い、見た事も無い数字が羅列されてましてよ。
防御率ってわたくし投手ではありませんのに。
気にせずグルガさん達のステータスを
わたくしのお眼鏡に適うぐらい、中々の選手のようですわね。
つづけてメガネの方は……
どうことですの???
見れませんわ!
やはりメガネの方は、ID野球を真髄とする方ですし、容易に情報を教えてくれませんわね。
最後に相手選手の情報ですわね。
グルガさんと実力伯仲といったところですわね。
「さっそくプレイボールといきますわよ!」
わたくしの合図に各々戦いが始まりましたわ!
「お嬢さんは下がって!」
「ここは俺達の戦いだ、無関係のお前を巻き込みたくは無い」
「あら……二人共水臭いですわよ、わたくしは球界を統べるモノですもの、皆さんの事をバックアップするのは当然でございましてよ?」
そう言いながらわたくしは、そこらへんの野球のやの字もわからない方々を退場措置にしておきましたの。
そうすると、空気の読めないレイガルが何やら怒っていましたわ。
「部下共を一瞬で!? 小娘! 貴様何者だ?」
隠し球でアウトになった選手のように驚いてますわね。
別にわたくし力を隠したつもりはないのですけど。
「レイガル! 俺が直々に引導を渡してやろう!」
「グルガ! お前さえ討ち取れば反乱軍など烏合の衆!」
「ジンバさん! 一緒にグルガさんを応援しますわよ!」
「おじょうさん? ええ、グルガにこの戦いの決着を付けさせましょう。
「ところでジンバさん。やきうには興味なくって? わたくしのチームにぜひ来てほしいのですけど」
「おじょうさん。お誘いはうれしいが、今はこの戦いを見守ることに、集中しましょう」
選手を信じるジンバさんこそ将来の名将たる器なのかもしれませんわね。
わたくしは応援と言いつつも暇になってしまったので、野球も半ば、そこら辺の草をむしっていますの。
猿の毛が恋しいんやね。
「フンッ!」
よそ見してはいけませんわね、って様子がおかしいですわ!
「何だグルガその無様な戦いは、それとも俺の攻撃に恐れをなして動けないか?」
フンッ!
なぜ動かないのでしょう、まさか本当に相手の球威に押されてバットが動かないのでしょうか?
フンッ!
耐えるように佇むグルガさん。
フンッ!
その姿はまるで野球の神に愛されたかのように神々しく輝き。
フンッ!
段々とその光が増してゆきますの。
フンッ!
この光景はきっとすべての野球少年たちの心に刻まれるでしょうね。
フンッ!
「グルガ! そのまま朽ちろぉ!!!!!」
レイガルが最後の止めとばかりにグルガさんへ一撃をかまそうとした瞬間。
「――消えろ!」
強烈な一撃が炸裂して、放物線を描くようにレイガルをバンザ山へ場外ホームラン。
「見事なサヨナラホームランやね」
ワイちゃんは今日のヒーローであるグルガ選手を称えましたの。
「フンッ! 戦士の力だ!」
「傷だらけだぞ大丈夫か?」
こんな時でも選手の心配をするジンバさん。わたくし見誤ってましたわ。
すでにジンバさんは
「俺の血が」
――それがどうしたと。
グルガさんは自分の事よりファンの事を気遣う立派な選手ですわ。
これにて球団とオーナー側との紛争は終わりやね。
「司令本部も制圧した。我々の独立は叶ったぞ!」
グルガさんは勝利を宣言し、机の備え付けられた椅子に座りながら、屋敷に貯蔵されていた酒を片手に、盟友であるジンバさんと共に勝鬨を上げようとましたのですけど
「まてグルガ。あそこの瓦礫の近くに人影がある、伏兵かもしれない」
ジンバさんが指さす方向には何やら物音がしますわね。
ワイちゃんは物陰で見ている野球ファンを獲得せんと近づくのでしたけど。
「ここはどこなの? おとうさんどこ?」
少女が泣いていましたの。
「子供じゃないか! 怪我をしている……早く手当てをしなければ! いや医療器具などこの国には……」
わたくしに続いて来たグルガさんは、子供の姿を見て少々うろたえていましたの。
「グルガ! その子供は目をやられているようだ。 早く手当てをしなければ後遺症が残るかもしれないぞ」
「早く!医者を!」
焦っているグルガさんにわたくしは
「球場には救護室があるものですわ! そこで応急処置をしますわよ」
わたくしの言葉に大人二人は訝しんだ顔をしていましたのですけど、ジンバさんは何かに気づいた様子でグルガさんにアドバイスを始めましたわ。
「グルガ。ここは最前線の司令本部。当然救護施設もあるはずだ」
「しかし俺には……」
「確かにここは相手チームのホーム。わたくし達はアウェイですけど、試合が終わったら同じ、野球好き同士でなくって?」
わたくしがそう言うと、グルガさんは先ほどまで戦っていた者たちと協力し合って子供の治療を始めましたの。ワイちゃんの言葉が心に響いたんやろうなぁ。
「おい! この子の目は治るのか?」
グルガさんは医師に詰め寄り問うのでしたが、医師は黙ったまま首を横に振るだけですわ。
サインに納得しない投手見たいですわね。
「バンザ火口付近に育つという草には目にいいものがあると聞く」
メガネのブリッジを指で上げながらジンバさんは何やら治療法を提案してくれましたの。
さすが名将やね。
しかし医者はまたしても首を横に振るだけでしたわ。
「話にならん! もっとましな医者は居ないのか!」
「グルガ! 落ち着け。 今苦しんでいるのはその子供だろう」
「ジンバ……俺はこの独立、俺たちに大義があると思っていた。だがどうだ? か弱い子供が傷つき苦しんでいる。」
グルガさんは涙を流せない子供に代わって、泣いているようでしたわ。
その気持ちにわたくしもつい、もらい泣きをしてしまいましたの。
涙を拭こうと、ポッケに入っていた青いハンカチを顔に近づけるとなんだか臭いと思ったら、
「お、おじょうさん! その薬草はどこで!?」
「このハーブなら先ほど草野球をしていた時にむしりましたのよ」
「グルガ。医者を連れて来てくれ」
ジンバさんは何かを思いついたようで、あれよあれよという間に治療が始まり、そして――
「グルガ。あとは安静にしていれば、あの子の目は自然と良くなると言っている。」
グルガさんはうなだれていましたの、安堵したのでしょうか、それとも。
そんなグルガさんに近づいてジンバさんは労う様に声を掛けます。
「グルガ。未来の国王がなんて表情をしてるんだ」
「その事だが……俺には王になる資格などない。」
「なぜだ? お前はこの国の英雄だ。誰も彼もが、お前が王になるのを待っているんだぞ」
グルガさんは、ジンバさんの言葉を飲み下すように、祝杯の酒を一気に飲み干します。
「ジンバ……お前が王になってくれ」
先程までの、覇気に満ちた表情からは、想像できないほど、憔悴しきった顔でグルガさんは再び酒をあおるように飲み始めましたの。
「王を譲る? それは今までの争い、全てを否定する事になりますわ!」
わたくしはいてもたってもいられず、言葉が牽制球のように飛び出てきましたの。
「お前たちも見ただろう。英雄だと言われた男が、倒れた子供を見て、狼狽えていた姿を」
でもそれはグルガさんのやさしさで――
ワイちゃんがそう諭そうとする寸前で、ジンバさんが三塁走塁コーチのように、わたくしを遮りましたの。
「グルガ……お前が自分の意志で決めたことなら止めない」
グルガさんはジンバさんの言葉を聞き、安堵したようで酒の入ったグラスを机の上に置こうとした瞬間。
「私は、このおじょうさんに、ついていく事にした」
突然のFA宣言にグルガさんの手からグラスが、落球するが如く、零れ落ちていったのです。
「ジンバ! どういう事だ、俺は……お前だから、この国を任せてもいいと思ったんだぞ!」
「お前が今、語った言葉を、そっくり返すぞ」
「うかつ……だったな」
グルガさんは口元を緩め立ち上がると。
「みっともない姿を見せてしまったな。ジンバ、後は俺がやる」
友が再び立ち上がる姿を目の当たりにしてジンバさんにも笑みがこぼれましたの。
「おじょうさん。先程の話は無かった事に……どうやらまだこの男には、私がついていてやらねば、ならないようで」
「あら、友情をとるだけの事でしょう? わたくしはいつでも、貴方がチームに加わって下さるのを、お待ちしてますわ」
そう言い残したワイちゃんを、二人の英雄達は、笑顔で見送ってくださいましたの。
わたくしはスカウトに失敗した気持ちと、山奥で出会った選手の活躍。二つの思いを胸に、聖櫃くんの形見を握りしめ、旅立つのでした。
LV60 HP1S MP2B
攻撃力:H+55
防御率:-
魔力 :89
敏捷度:25
武器熟練レベル:棒LV14・シューズLV3
特殊能力
ドリームノックLV3・乱れ打ちLV3・ストライクパワーLV3・スピードアップLV3・パワーシュートLV2・ナイスキャッチLV2・ミスキャッチLV2
LV60 HP282 MP64
攻撃力:40
防御力:29
魔力 :14
敏捷度:15
武器熟練レベル:棒LV4・斧LV6・キックLV4
特殊能力
グルガチャージLV3
LV70 HP336 MP91
攻撃力:40+8
防御力:38
魔力 :19
敏捷度:15
武器熟練レベル:パンチLV4
特殊能力
デスLV2