再び時空をさまようワイちゃん。
この形見は必須アイテムやね。
「それにしてもここは……」
あたりをキョロキョロと見渡す可愛いワイちゃんが、周囲の様子を伺うのですが。
9回表で10点差で負けているチームの選手の如く、活気の無い人々が怯え震えておりましたの。
町の人々は皆自分の事で手一杯の様子で、わたくしが近づくと逃げるように去っていきますの。
お嬢様パワーで敬遠されてるんやね。
雨の町中で、わたくしから遠ざからずに居る人物がおりましたわ。
焚火に当たっているレインコートを被った、おじいさんが話してほしそうにピョンピョン飛んでいたので声を掛けましたの。
「そこのおじいさん、この町はどういう町なのかしら?」
ワナワナと震えるおじいさんの口からは、この町はロマリアという国の中心街から、離れて住まう人々の町だという事でしたわ。
「あのドームの高い壁のようなのは何ですの?」
「ドーム? ワシにはわからんが、ありゃロマリアの中心街じゃ」
意外なことにこの町の酷い状況というのは長く続く大雨の影響のようで、わたくしの心配に、ご老人は笑顔で返してくれたのです。
ニッコリ笑った歯は真っ白なボールみたいやね。
「あの壁超えてみたいですわねぇ」
「お嬢ちゃん! 馬鹿な事を言っちゃいかん!」
先程とは打って変わって、恐ろしい表情でわたくしの肩を掴み必死で止めようとするおじいさん。
「今のロマリアは、新王ガイデル・キリア・ク・ロマーリア8世に代わってから、自身に歯向かう者は事実上の国外追放を行い、兵士による監視と、罪のでっち上げによる処刑という、きな臭い話ばかりじゃ」
おじいさんセリフ量多すぎですわよ。
それにしてもガイデルという名前どこかで聞いた気がしますわね。
ロマリア城に居たおじさんだった気がしますわ。
「ところでお嬢ちゃんはこの国の人間じゃないじゃろ?」
「ええそうですわね」
「ロマリア軍に見つかるとまずいのう。今この国は鎖国中でな、見つかれば、ただでは済まない」
脅しのような言葉ですけどその表情は慈しみを帯びていて――
「ワシはこれ以上同胞が傷つくのは見たくないんじゃ……」
ですがおじいさんの心配は杞憂に終わらず。
「貴様ら、ここで何をしている」
どうやらロマリアの兵士に見つかってしまったみたいですわ。
あたりに居た人々も皆家に閉じこもり、町には体を震わしている老人が数名取り残されているだけでしたの。
「お嬢ちゃん逃げるんじゃ」
「老齢の方を置いて逃げるなんて球界の王にはできませんわ」
わたくしは毅然とした態度でロマリア兵という方たちと向き合いますの。
一触即プレイボールの状況ですけど、ご老人たちを避難させた方がよさそうですわね。
「そこのガキ。その身なり、中心街から放逐された貴族か?」
まるで舐めまわすようにわたくしをジロジロと見る兵士。
「あなたたち子供や老人に銃を突き付けて話しかけるなんて、品がなくってよ」
「お嬢ちゃん。下町巡回の兵士は城下町に配属されないような、ロクデナシの集まりじゃ」
「ケッ。言わせておけば、くたばり損ないのジジイと小娘が!」
その瞬間兵士は構えていた銃をわたくしに向け引き金に指をかけ――
機銃から放たれる金属音がこだましましたの。
「へへへ。身なりの良いガキの死体から、金目のもんを手に入れりゃ中央に出仕できる。こんな壁の町からおさらばだ」
土煙と一緒に兵士達の下品な笑い声が耳に入ってきますわね。
「これは教育が必要ですわね」
わたくしはバットをホームラン予告のように兵士の方々へ突き付けますの。
「なに!? あの銃弾をなぜ……」
「素振りで飽きてきたところですの、そんなに壁の向こうが好きなのならフェンスの向こうへ飛ばして差し上げますわ」
イキっていた兵士たちをわたくしは放物線を描くようにフェンスへ飛ばしたのですけど、やはり壁は高く、フェンスダイレクト。つまりホームランには届かなかったのですわ。
震えていたおじいさんに手を差し伸べようと背後に振り返ろうと思ったのですが、その瞬間ジュインという音が背後からしましたの。
わたくしはその気配にフルスイングのように体を180度回すと――
「何者ですの!?」
わたくしは先程までおじいさんの居た場所に佇むゴーストタイプのモンスターに問いかけましたのですが
「オジョウチャン。ワシジャヨ」
声は変わっていましたが、その優し気な語り口調はおじいさんでしたの。
「どういうことですの!? おじいさん」
「ドウセツメイスレバヨイモノカ」
ゴーストおじいさんは何やら訳ありな語り口調で自分語りを始めたのです。
曰く。人間側に溶け込んでいた魔族の一派で、ロマリアの中心街で平和に暮らしていたそうですが、政争に巻き込まれ、この下町へと逃げおおせてきたそうですわ。
「先程同胞という言葉が聞こえたのですけど、他にも魔族の方々が居まして?」
おじいさんが周囲の老人へ合図すると皆々変身を始め、わたくしの周りには数名のゴースト達が集まっておりましたの。
集まった後は変身を解くおじいさん達。
「ワシらは力が弱く、人間と共存することでしか生きてこられなかったんじゃ」
「魔族もピンキリですものね」
「どうかワシらを助けてくれんか」
ここで救わねば球界の王に非ず。
「わたくしが直接ロマリア王とやらに直談判しに行きますわ」
かくして、わたくしはロマリア城下町と壁の外を繋ぐ唯一の道。ロマリアトンネルへとやってきたのです。
「案内ご苦労様ですわおじいさん」
「市街地はより警備の者が多いから気を付けなされ」
おじいさんが突然自身のローブを引っ張り脱ぎだしましたのですけど、ローブの下はローブですのね。
「突然脱ぎだすなんてハレンチなおじいさんですわね」
「何かの役に立つかもしれん。持っていきなされ」
アイテムバッグに無理やり詰め込められましたわね、残りスロットが一つあって助かりましたわ。満杯だったら大変なことになるんですのよこの手のイベント。
手に入ったアイテムはローブタイプの防具ですわね。
おじいさんはトンネルの手前までわたくしを案内し、ゴーストタイプ特有の気配を消しながら立ち去ったのです。
「さて。ここから、どうしましょうかしら」
わたくしの背後から列車が走ってきましたわね、とりあえずこれに乗りますわ。
高速で走っている列車に乗り移り、わたくしは列車の上で風ではためくスカートを抑え、いざロマリアへと向かいますの。
「リリーフカーみたいやね」
無事城下の市街地へとたどり着いたワイちゃん。
城下の様子はというと。オレンジ色の屋根の建物が並び、流れる風は落ち葉を纏っていて、おじょうさま映えしそうな、とても良いロケーションですわ。
区画整理された市街地には、至る所にスイッチで上げ下げできる城壁がありますわね。
平時の場合は壁は下がっていて、周囲に監視の兵士が駐屯している様子ですけど。
上げ下げできる壁とかドームにピッタリやろなぁ。ジャ〇パイアも安心。
ワイちゃんは早速市街地散策に出かけます。ワイ散歩。
おじいさんの言っていた通り、市街地では多くの警備の兵士が巡回していますわね。
小さいおじょうさまな見た目のワイちゃんは、特に怪しまれずに市街を闊歩しておりますの。
「おい! 止まれ! 城周辺の隔壁を通過するには通行手形を見せてもらう」
「通行手形? 球場のチケットのような物かしら?」
「先程からの行動といい、あやしい奴だな」
前言撤回ですわね。滅茶苦茶怪しまれておりましたの。
やっぱりスター選手のオーラは隠せられへんのやね。
「まったく、小さなレディになんて無粋な大人ですの?」
「子供だろうが大人だろうが、無関係な者は通すなとの命令だ」
「まぁ。子供を招待する度量も無くては、球団にファンがつきませんわよ?」
守衛二人がワイちゃんの目の前に立ちはだかり、通せんぼですの。
「子供だろうが大人だろうが、無関係な者は通すなとの命令だ」 「子供だろうが大人だろうが、無関係な者は通すなとの命令だ」 「子供だろうが大人だろうが、無関係な者は通すなとの命令だ」
おまけに話しかけても同じ問答の繰り返しですのよ。
しょうがないのでワイちゃんは別の道を探すのでした。
ここのチームのオーナーか選手でも捕まえて通行手形にするのが一番手っ取り早いですわ。
ワイちゃんは金持ちそうな家を探すことにし、散策にでかけることにしたら、突然雨が降ってきましたわ。
とりあえず大きな屋敷を見つけたので、下見と雨宿りをしていると何やらただならぬ視線を感じたのです。
「あなたそこで何をしていらっしゃるの?」
わたくしの問いかけに見るからに堅気じゃないマフラーの青年がこちらに近づいてきますの。
なんやろ握手かサインかな。
「なぜ俺の気配に気づいた?」
あら。質問攻めの方でしたわね。
「あなたが熱心に、この家を見つめてましたから。ひょっとして球団オーナーのご自宅かしら?」
「くだらん。ガキは帰っていろ」
あしらう青年でしたが、わたくしは見逃しません。
一流のスカウトマンであるワイちゃんの目はごまかせませんわよ。この青年は俊足タイプの選手であると。
「あなたとても良い体つきですわね、盗塁王に育てて差し上げますわよ」
しかしワイちゃんの言葉になぜか過剰反応する青年。
「好きで盗っているわけじゃない。上の命令だ……」
どうやらチームの上層部ともめているのかしら。
でもこの青年は優秀な選手のようでわたくし以外のスカウトマンも目をつけていたみたいですわね。
「そこの者ども、ココで何をしている」
「チィッ。ロマリアの兵士か」
どうやら庭の木々に挟まれわたくしと青年はロマリア兵二人に挟み撃ちになってしまいましたわね。
ロマリア兵は雨除けのローブを纏っていましたが、先程あった二人だという事はわたくしすぐ気づきましたの。
「あら先程の。おじょうさまだろうがボールだろうが、無関係な者は通すなとの命令だ。しか言わない兵士の二人ですわね」
「子供だろうが大人だろうが、無関係な者は通すなとの命令だ」
「そうそれですの」
背中合わせの状態のわたくし達にジリジリと近寄る兵士達。
「おいお前……」
「何かしら」
「合図をしたら、煙を撒く。お前なら木々の隙間から逃げられるだろ」
「わたくしは良くても、あなたはどう逃げるのかしら?」
「お前には関係ない」
「もう関係大ありですわよ?サインミスでゲッツーなんて嫌ですわ」
「勝手にしろ。だが、いざとなったらコイツを使え」
ちょっとまってくださいまし。アイテムボックス満杯ですのよ。
「どうした? 荷物が満杯なら不要な物を出せばいい。 どれ……」
「レディの荷物をのぞこうとしないでくださる?」
とりあえずさっきおじいさんにもらったローブでも捨てようかしら。
「そ、それは!?」
兵士が驚き声を荒げますの。
確かによく見ると兵士たちの来ているローブに酷似してますわね。
驚いた兵士がローブを見せてくれと言うので渡した差し上げますと。
「我々の任されてる区の……前守衛隊長が、着ていたローブだ。これをどこで?」
「あら。あのおじいさんロマリア兵でしたの。下町で焚火してましたわよ?」
「現王にかわってからの圧政で、王に意見を言う者達は……」
「前隊長は正義感の強い人で、ロマリア兵の鑑のような方だったのに……」
なにやらもう一人の兵士も会話に乱入してきて、昔ばなしをしそうな感じでしたので、わたくしが止めようとしたら青年が――
「煙玉だ」
「隠し玉みたいなタイミングですわね」
「ところで。この兵士達とは知り合いなのか?」
「いえ。わたくしの持ち物と知り合いだったみたいですわ」
きっとあこがれの選手のグッズやったんやろなぁ。ワイちゃんの交友関係の広さにびっくりやろなぁ。
すると兵士二人が揃い頭を下げてるではありませんか。
「前隊長のお知り合いとは知らずご無礼を!」
「同じユニフォーム持ってるもんどうしやから気にせんでええですわよ」
「こちらの屋敷は。前王と懇意であった政治家の家なのですが。近頃、前王にゆかりのある人物が相次いで暗殺されていて、警備の交代時間の合間に巡回をしていたのです」
前の監督のお気に入り選手はベンチウォーマーにする。これは現監督の陰湿な采配やね。
「それでしたらわたくしが警備を手伝いますわ」
「危険です。前隊長のお知り合いの方に、万が一お怪我があれば顔向けできません!」
「わたくしは球界の王になる者ですわよ?」
「わかりました。何かがあれば駐屯地の方にご連絡を」
そう言い残し兵士たちは近くの駐屯地へと帰っていきましたの。
「お前に助けられるとはな、礼を言うぞ」
「あら。困ったときはお互い様でしてよ?」
だけども一難去ってまた一難。ピンチというのは連続して訪れるのでして。
「仕事の報告が遅いと思って来てみれば、なんだその有様は」
「……」
あら新しい人ですわね、マフラーの方のお知り合いかしら。
「その小娘に見られたのか。始末しておけ」
「それは命令か?」
「私に逆らうつもりか? 処刑寸前のチンピラだったお前を救って一流の暗殺者に仕立て――」
「長そうですすわねそのセリフ。雨の中の試合は泥臭くって男らしいですけど、お嬢様らしくはありませんわよ?」
「くだらん。お前が始末しないのなら――」
「いや、俺がやる」
どうやらマフラー青年の上司みたいですわね。ですけどどうやらあまり仲がよろしいわけではない様子でしたの。
「悪く思うな」
銃を構えるマフラーの青年。
突然のプレイボールに、わたくしもバットを構えバッティングフォームに入ろうとした瞬間。青年のマフラーが少しずれ、ささやき始めましたの。
『煙玉を投げろ』
なるほど、どさくさに紛れさせて、わたくしを逃がす算段なのですのね。
先程といい、この方は普段チームで犠打を強いられているのかもしれませんわね。
けれどもそのサインには縦に首を振れませんわ。
わたくしは咄嗟に、マフラーの方の上司に煙玉を投げて、城の方へとマフラーの方を引っ張りながら駆け出したのですわ。
「追って来ては、いないようですわね」
「どういうつもりだ?」
「現場で不満があるのなら。オーナーへ直談判ですわ」
「理由はわかったが。俺たちが会える相手ではないだろう」
マフラーの青年にローブを着てもらい、市街地を通り城の前の隔壁へとたどり着いたのですが――
「守衛が多い。さて……どうする? 突破するのは至難の業だぞ」
「そうですわねぇ……」
様子を見ていると、どうやら守衛の交代時間が近い様子でしたの。
守衛が引き上げるときに紛れる作戦ならいけそうですわ。
奥から守衛がやってきましたので、手はず通り兵士に扮したマフラーの方に保護されたという名目で突破しますわよ。
「交代の時間だ」「雨が強くなってきたから早く駐屯地に戻りたいぜ」「何か向こうからも兵士が来ているぞ」
「貴族の子供を保護した。城に用があるらしい、通してもらうぞ」
ワイちゃんおじょうさまやし、通ってもバレへんやろ。
「怪しいぞ」「貴族の娘が護衛も付けずに?」「そこの兵士所属は?」
「どうする? このままではまずいぞ」
「わたくしに良い考えがありますのよ」
ワイちゃんは兵士の方々に毅然とした態度で説明し始めましたの。
「ガイデル・キリア・ク・ロマーリア8世のおじさまに会いに、お忍びで尋ねようとして、道に迷ったところ、親切なこの兵士の方に道を聞いていたのですわ」
「あの王のフルネームを言いよどまずに!?」「品があるお嬢様ですね通っていいぞ」「そこの兵士! あとでその少女の下着の色を聞いておいてくれ」
何だか最後らへんに不穏なセリフが聞こえた気がするけど気にしてたらアカン。
「何とか突破できたが、これからどうする?」
「まあ言った流れやしガイデルのおっさんに会いに行きますわよ」
「ロマリア国王と会うだと? 正気か」
驚くマフラーの方を連れていざロマリア城へ行くワイちゃんたちであった。
ロマリア城内。
「何だか広くて迷ってしまいますわね」
「……」
マフラーの方は呆れ顔をしつつもわたくしに付いてくるのでした。
それにしても城内の広さと言ったらものすごく広くて、東〇ドームがいくつ入ってしまうのか想像もつかないですわ。
城内の大きさに気圧されながらも彷徨っていると見知ったハゲ頭の方が居たので声をかけてみることにしたのですわ。
「そこのおじさま」
「何だお前たちは? この城の者では無いな」
「わたくしガイデル・キリア・ク・ロマーリア8世のおじさまに会いに来たのですけど、どこにいらっしゃるかご存じなくて?」
「陛下のフルネームを諳んじるとは……わかりましたこのザルバドが責任をもって案内いたしましょう」
フルネームで連呼してたらウグイス嬢の気分になれますわね。
「ところでそちらの兵士は?」
「こっちはワイちゃん専属の護衛みたいなもんやから気にしなくていいですわよ」
「なるほど、これから謁見の間へとお連れする。くれぐれも失礼のないようにな」
謁見の間にたどり着いたワイちゃんたち。
「ガイデル様にお目通りしたいという者達が居ましたのでお連れしました」
「……お前たちはいったい何者だ?」
「ガイデル・キリア・ク・ロマーリア8世おじさまに会いに来た通りすがりのワイちゃんですわよ」
「フルネームで私の名前を呼ぶだと!!! 戴冠して以来、ロイヤルガードや四将軍との会話でも、全く呼ばれたことのなかったのに……」
「ガイデル様!? 人前でお泣きになられるとは……」
「私がガイデル・キリア・ク・ロマーリア8世だ。ワイとやらは何の用で、この私に謁見をしに来た?」
「選手の待遇改善直訴に来たのですわ」
「選手待遇だと?」
「このままでは選手のストライキが起きて、ロマリアという球団が二分してしまいますわよ」
わたくしの説得は果たして。
「ザルバド。その者たちの言う事は本当か?」
「軍部の一部の者に、ガイデル様の方針に不満を漏らすものが居るのは事実です。前王派であった政治家達の差し金かと」
「ザルバド!!! なぜそのような事態になるまで放っておいた! 今すぐ粛清しろ!」
「ガイデル様……大規模な粛清は、同じロマリアの民同士禍根を残してしまいます。ここは内密に処理を」
「使えないヤツめ!」
「なるほど合点がいった」
粛清という言葉には否定的なザルバドと、何やら勝手に合点がいったマフラーの方。ガイデルのおっさんは癇癪で冷静さを失っていますわね。
わたくしはどう動くべきでしょうか。
いえ。決まってますわね。球界の為に動く。それがわたくしに課せられた使命なのですから。
「ところでその鏡きれいですわね。ガイデル・キリア・ク・ロマーリア8世の趣味かしら?」
「おお! よく気付いたな。これは特注の品でな。お前は違いが判るようだな」
「そうですわね。そこから、こそこそ隠れて聞いてるのですわね」
わたくしの行動に驚くザルバドとガイデルのおっさん。
ワイちゃんが鏡に近づくと鏡から声が――
「あなたは古き魔族の生き残りですね」
「おじょうさまに古いなんて、あなた品がありませんわね。それにわたくしは魔族以前に球界の王ですわよ」
「ガイデル。この者は危険です。今すぐ始末してさしあげなさい」
「しかしワイとやらは私のフルネームを呼んでくれた!」
「……」
鏡が黙ってしまいましたわね。フルネーム忘れたのでしょうねきっと。
「ガイデル・キリア・ク・ロマーリア8世さん。ロマリアを導くのは貴方でしょう? 鏡ではなく鑑になってくださいまし」
「ワイとやら。そなたの言うとおりかもしれぬ。臣民がおらずして何が王か。だが私には何の力もない。ゆえに、そこの闇黒の支配者の力を借りておる。そなたのような、力をもって生まれた者には、私の気持ちなど理解できぬだろう」
ガイデルのおっさんの言葉は、プロになれなかった球児の言葉のようで。
野球を愛するがあまり、野球を嫌いになってしまった方の言葉に似ていましたの。
「ガイデル。その通りです。その者は国一つなど簡単に滅ぼせるほどの膨大な力を持っています。ここで逃してはロマリアの災いとなるでしょう」
「ワッハッハッハ」
「ガイデル?」
「今日は面白き日だ、しかし私は忙しいのだ。面会はこれにて終了。お前たちはロマリア城から即刻立ち去るがいい」
わたくしたちに、立ち去れと手で促すガイデルのおっさん。サイン下手ですわね。
「ガイデル様。この者達の処遇は?」
「私は忙しい。ザルバドお前も忙しい。ゆえに放っておけ」
「ガイデル様がそうおっしゃるのなら……」
「ガイデル! なぜその者達を放置するのです」
「私は疲れた。休む」
そう言い残し部屋を立ち去るガイデルのおっさん。力なき者のストライキという事でしょうか。
「ザルバド。分かっていますね」
「もちろんです闇黒の支配者よ、この者達を放っておけば我々の目的遂行が危ぶまれる、だがロマリア王の城内での刃傷沙汰は避けよとの命令だ、命拾いしたな」
「あれってそんな命令でしたのね。ザルバドさんあなた過労で禿げますわよ?」
「うるさい!」
憤慨するザルバドさんを放置し、鏡へ話しかけるワイちゃん。メルヘンチックな世界観やね。
「見とるんやろ? わたくしは知ってますのよ」
「何が言いたいのです古き魔族よ」
「人間を引退したあなたに言ったのではありませんわよ? わたくしが話しかけているのは、輝く謎の者達にですわ」
以前に戦った場所でしたので、語り掛けたら出てくると思ったのですけど、見当違いでしたわね。
あの輝く謎の者達はいったい誰だったのでしょうか?
「マフラーの方」
「何だ」
「わたくしの方の用事は終わりましたわ。正門から帰りますわよ」
「俺は構わないが、暗殺部隊が配置されているはず、突破するつもりか」
にっこり笑ったわたくしにつられ、マフラーの方の口元が緩んだ気がしたのです。
「それでは皆々様ごきげんようですわ」
謁見の間から優雅に立ち去るワイちゃん。見送る鏡とハゲ頭はホームランボールを見送る選手みたいやね。
正門にて先程煙玉をぶつけたおじさんに出会いましたの。サインやろか?
「シュウ。これは明確な反逆行為だぞ」
「そのつもりだ。もうお前の世話になるつもりはない」
「生意気な口をききおって! 生きて出られると思うな」
またジュインジュイン変身音出しながら大量のモンスターが出てきましたわね。
1チームに30人越えは登録者数オーバーですわよ。ベンチの座る場所が大変なことになりそうですわね。
「数が多すぎる。どうする? ワイ」
「とりあえずタイムですわ」
タイムの意味が分からず攻撃してきたルール知らずには、バットで殴って大人しくしておきましたわ。
いつもの対戦相手の情報チェックですわね。
まずはわたくしの情報から。
敏捷度Aってまたバグってますわね。
スキルは最近使ってませんでしたのでLvは据え置きかしら。
マフラーの方は。
LV6!? かなり修羅場なれしてらしたので、もう少しレベルが高いものと思っていたのですけど。
続いて敵のチェックやね。まだタイムの時間は続くのです
ロマリアの人たちはあまり戦いは得意でないのでしょうか。
「シュウさん? あなたあの上官ぐらい一人で倒せたのではなくって?」
「命を助けられた借りがあった。だが返す必要もなくなったな」
どうせたくさんいる兵士もそこまで強くないんでしょうねぇ。
レベル高すぎませんかね。
ワイちゃんデス使われたら謎のザビエルに倒されてしまいますわね。
「さてどうする」
「このままタイムって言い続けて帰るのも手ですわ」
「そうも言ってられないみたいだ、後ろを見てみろ」
ザルバドとかいうハゲが城の玄関に立ってますわね、審判気取りでしょうか。
「そうですわね。あの手の輩はヘッドを倒せば瓦解しますわ、上官の方を狙っていきますわよ」
「周りの雑魚の足止めは任せておけ」
そう言いながら素早い動きで敵をかく乱しますの。銃弾に麻痺毒を仕込んでいるようで、打たれた相手は遥か格上のレベルにも関わらず行動が出来なようですわ。
あとはあの上官という奴だけですわね。
何やらガサゴソとしていますけれど、無駄なあがきですわよ。
「ワイまずい! あいつの手元をよく見ろ。ルウの薬だ」
「愚か者たちめ、暗殺者が状態異常回復のアイテムを持ち合わせていないと思ったのか? からめ手如きで私たちに勝てると思いあがるとはな。シュウおまえらしくもない」
「シュウさん。わたくしに良い考えがありましてよ」
上官の方までは距離があり1ターンではたどり着けそうもありませんの。
「わたくしがバットであなたを上官の元へ飛ばしますわ。そしてルウの薬を盗むのですわ」
「あまり良さそうな案ではなさそうだが、今はお前の案に乗るしかないようだな」
「いきますわよ!」
バットの上に乗ったシュウさんをフルスイングで上官の方めがけて飛ばします。
「なに……」
「勝ちは勝ちだ」
盗む暇もなく、シュウさんの
「ファインプレーでしたわよ」
「誰かと共に戦うのも悪くないな」
「シュウさんはわたくしの球団に移籍ですわね」
「そういう事だ」
「シュウ! ロマリアに楯突いた事、後悔するぞ……」
「あなたこそ、わたくしの球団に楯突くなんて愚かですわよ?」
試合に勝利したわたくしたちは、普通にロマリアの列車に乗り込み空港へと向かったのです。
「俺はこれからアルディアに向かいアパートを借りようと思う」
「あら、わたくしの球団なら衣食住は完備しますのに」
「誰かの世話になるのは、しばらくやめようと思ってな」
やはりチームでの嫌な思い出があるのでしょうか。
「ワイ。球団とやらに誘ってもらった事はうれしかった。だが今はその時ではないようだ」
「そうですわね……わたくしはいつでもお待ちしておりますわ」
なんだか前にもあった展開ですわね。グッロが居たらスイッチ操作がまだだぞ、とか言いそうですわね。
とぼとぼと下町へと戻ると焚火をしていたおじいさんが駆け寄ってきましたわ。
「おじょうちゃん! 無事でよかった」
「あら? 心配してくださったのですね」
ふとわたくしは見てしまったのですおじいさんのステータスを――
このレベルで下町に居たらアカンですわよ。
「どうしたんじゃ、おじょうちゃん?」
「わたくしの球団でやきうしませんこと?」
「わしは道具はマスクしか使ったことがなくてのぅ。年のせいか体を動かすのも苦手でな、見守ることぐらいしかできんが、それでも大丈夫かのう」
動く必要も少なく、マスクをかぶっていて、皆様を見守るポジション。
「球団お抱えの審判とかジャ〇パイアやんけ!」
ワイちゃん興奮のあまり形見を握りしめてしまったのです。
LV80 HP1S MP2B
攻撃力:H+55
防御率:-
魔力 :129
敏捷度:A
武器熟練レベル:棒LV14・キックLV3
特殊能力
ドリームノックLV3・乱れ打ちLV3・ストライクパワーLV3・スピードアップLV3・パワーシュートLV2・ナイスキャッチLV2・ミスキャッチLV2
LV6 HP32 MP12
攻撃力:11
防御 :10
魔力 :3
敏捷度:A
武器熟練レベル:キックLV4・銃 LV3・銃2 LV3
特殊能力
盗むLV3
LV5 HP20 MP5
攻撃力:10
防御 :8
魔力 :3
敏捷度:3
武器熟練レベル:銃 LV1
特殊能力
LV115 HP200 MP115
攻撃力:120
防御 :87
魔力 :36
敏捷度:33
武器熟練レベル:銃 LV8
特殊能力
デスLV3
LV110 HP368 MP125
攻撃力:80
防御 :58
魔力 :93
敏捷度:5
武器熟練レベル:マスクLV12
特殊能力
自爆LV3