Bug The Lad   作:闇と帽子と何かの旅人

13 / 15
第3話『占いの結果が知りたくて』

 再び周囲の景色が目まぐるしく変わっていきますの。

 やけに蒸し暑いこの空気に辺りの大人たちの緊張した表情。

 ドラフト会議かしら。

 

 「何奴!? 大僧正をお守りしろ!」

 「将軍をお守りしろ!」

 

 兵士たちが集まっている中心に居たこの二名がお偉いさんかしらね。わたくしは目立っているようですし皆様の前でヒーローインタビューごっこでも始めますわよ。

 

 「わたくしとやきうしたい人このゆびとまれ。ですわ」

 「子供だと? 警備の者は何をしている! こんな体たらくではミルマーナの警備体制を笑われてしまうぞ!」

 「ヤグン将軍、落ち着きなさい。ロマリアによって実現した我々の会談は、極秘裏に行われているという事を」

 「ではこの子供は?」

 「部外者でなければ、おそらくロマリアの者かと」

 「今ヤグンっておっしゃりましたわね」

 「ああいかにも」

 「猿はどこですの?」

 

 わたくしはいつも通り猿の毛をむしろうと探すのです。

 

 「いましたわ! マスコットキャラクターですから、わたくしのそばで記念撮影ですわよ」

 「お、おい何をする!!」

 「ヤグン将軍何を慌てになっているのです」

 「ヤグンはこっちの猿ですわよ? そっちのお坊さんこそ何をおっしゃって?」

 

 猿を持ちながら決めポーズをするワイちゃんにみんな大喜びですわね。

 

 「不審者だ捕らえろ!」

 「そいつは秘密を知っている! 生きて返すな!」

 

 ワイちゃんと南の島での追っかけっこが始まったのです。

 

 走るのに夢中になってどうやらおじょうさま度が高い部屋に入ってしまいましたわ。

 

 「あなた誰!?」

 「わたくしはワイちゃんですわよ」

 「私はサニエレ・アルノ・ヘ・ドバッチ・ミルマ」

 「サニエレ・アルノ・ヘ・ドバッチ・ミルマさんですわね」

 「長くて言いづらいだろうから、サニアって呼んで」

 

 ガイデルのおっさんレベルで長い名前。おそらく高貴なの人でしょう。

 久々のおじょうさまトークを始めることにしたのです。

 

 「あなた何を持ってるの?」

 「これはやきうタロットですわよ」

 「タロット! 占いよね! やってみて」

 「しょうがありませんわね」

 

 サニアさんに急かされながらわたくしはタロットカードで占いを始めるのです。

 一番上にあるカードをサニアさんに引いてもらいましたの。

 

 「これは?」

 「背番号3番のカードですわ」

 「せ、背番号?」

 「このカードはタツ〇ミさんという守護のカードですわ、必ずさん付けしてくださいまし。そうすれば、きっと守ってくださいますわ」

 「う、うん。守護のカードなのね。でも私より、お父様やお母様をお守りしてくれるカードはないのかな……」

 

 うつむくサニアさんに、わたくしはカードをプレゼントすることにしたのです。

 

 「せっかくですしサニアさん。このカードを進呈しますわ」

 「いいの? でもなんだか、そっちのお猿さんが怒ってるけど」

 「これはわたくしの球団のマスコットですわよ。名前はヤグンっていいますの」

 「ヤグン!? それって将軍のペットの猿じゃ……」

 「こっちが本体ですわよ?」

 

 ぽかんとした表情で分かってない様子でしたのでヤグンに命令して変身してもらうことになりましたの。

 

 「お手じゃなくて変身してくださいまし」

 「おのれ小娘! この姿になったからには好き勝手させぬぞ!」

 「喋ってる……」

 「この猿は芸もできますのよ」

 「何をゴチャゴチャと! 手で握り潰してやる」

 「ひっ……」

 

 わたくし目掛けて振り下ろされた猿の拳を握って差し上げましたの。

 

 「お手は手のひらでするものですわよ? 力みすぎはよくありませんわ」

 「受け止められただと!?」

 「この程度受け止められないのなら、やきうは出来ませんわよ?」

 

 猿との騒ぎに、先程のお坊さんが駆けつけてきましたわ。

 

 「将軍! なぜ変身を!?」

 「大僧正! この者ワシの一撃を軽々と受け止めおった」

 「お戯れを……ロマリア四将軍ともあろうヤグン将軍がそのような小娘に後れを取るなど……」

 「お前は気付かぬのか!? この者魔族だ! それもワシをも上回る……」

 

 猿と坊さんのやり取りを見ながらサニアさんの方へ目をやると、居なくなってるではありませんか。

 

 「お猿さん、サニアさんを知らなくて?」

 「もう一人の小娘ならワシが拳を振り下ろした後逃げて行ったぞ」

 「あらまぁ。どうしましょう」

 「それより大僧正! 手を貸せ」

 

 大僧正とかいう坊さんはなぜかヤグンの助太刀要請を無視し、部屋の外へとそそくさと走り去ったのです。

 

 「ま、魔族の小娘よ少し待っては……」

 「ここには審判が居ないので、タイムは出来ませんわよ」

 

 猿の毛が一本二本と毟ろうとするとヤグンが小さくなり白旗をあげていましたの。

 また街で首輪探しやね。

 

 いなくなったサニアさんを探しにわたくしは豪華な屋敷を彷徨うのですが――

 

 「あなたはグレイシーヌからの使者では!?」

 「サニア下がっていなさい」

 「お母様!」

 「国王の前でその暴挙。これはグレイシーヌの総意と捉えて構いませんね?」

 「国王? お前たちはただの傀儡。ミルマーナ軍の実権はヤグンの物。まあ、あの無能な男に軍を牛耳られてしまう程度の国王。今ここで殺しても戦争など起こりませんね」

 

 どうやらサニアさんとそのご両親が、ピンチのようですわね。

 ワイちゃんは颯爽と登場します。

 

 「ピンチヒッターのワイちゃんですわよ」

 「やはりヤグンの奴は負けてしまいましたか。さすれば空いた席に……」

 

 何だかお猿さんが怒っていますわね。ひょっとして猿は坊さんに嫌われていたのかしら?

 

 「おっと。動かない方がいいですよ」

 「人質を取って優位に立ったつもりですの?」

 「意味など無いと? しかしこの場で人質を無視し、ミルマーナ国王家族と将軍。ラマダ寺の大僧正。それらを殺害したテロリストとして国際指名手配されればどうでしょう」

 

 大僧正と名乗る坊さんがしたり顔で語ってくるではありませんか。

 コイツ自分がやられた時の保険もかけてる、犠打タイプの選手ですわね。

 

 「例え魔族といえど、ミルマーナとグレイシーヌ。そしてロマリアを敵に回せば、ご自分がどうなるかお分かりですね?」

 「そうですわね……世界中からサインの嵐ですわね」 

 

 わたくしはサイン責めを想像しながら、ワイサインを考えていたのですけど――

 

 「人質の効果は絶大ですね。ヤグン、貴方も利口に戦ってはいかがです?」

 

 猿は何やら悔しそうな表情で小さな握りこぶしを固めていたのです。

 

 「あなたたちはチームメイトでなくって?」

 「仲間? いつそんな猿と?」

 「ハゲ同士敵対しあってますのね」

 「好き勝手言えるのも今のうちですよ? ヤグン、挽回のチャンスを差し上げましょう。 その魔族の娘の首を刈りなさい」 

 

 この場で上下をつけようという気ですわね。果たして猿はどううごくのでしょう。

 

 「……」

 「ヤグン?」

 「これは反省のポーズですわね。そもそも手が届かなくってよ?」

 「これはロマリアへの明確な反逆行為。四将軍の座は私がもらっておきましょう。」

 「四将軍だか、四番バッターの座だか知らないですけど、フェアプレー精神がありませんわね」

 「正々堂々戦えと? それは力のある者の驕りでしょう」

 「お坊さんあなたは、人間より人間臭いですわね」

 「所詮坊主など仮の姿」

 

 ジョインと効果音を鳴らしながら、坊さんが変身するではありませんか。

 

 「私の姿を知ったからには、この場にいるすべての者を、殺さなくてはなりませんね」

 

 まずいですわね、サニアさんたちが危ないですわ。

 

 「挑発すればこちらに向かってくると思っていたのですけど、あなた人質をずっと盾にしていますのね」

 「最初から高位の魔族など相手にはしませんよ。しかしまぁ、力も溜まりましたし用済みですかね」

 「えっ、どうしたら……」

 「サニアさん! 危ないですわ!」

 

 ワイちゃんは振り逃げするかの如く急いで走るのですけど、人質を取られていたせいか、リードを取れず、あわやという場面になってしまったのです。

 

 「た、たすけて! タツ〇ミさん!」

 「今更命乞いか? そのタツ〇ミとやらが助けてくれるとでも」

 

 お坊さんがその名を口にした瞬間。

 パンッ――

 と乾いた銃声が聞こえ、次に目にしたお坊さんは変身が解けていて、すでに動かなくなっていたのでした。

 

 「サニアさん! 気をしっかりしてくださいまし」

 

 騒ぎを聞き、駆け付けた僧兵の方達に、事情を説明し、無事コールド勝ちを収めたワイちゃん。

 ミルマーナ王からは命を救ってもらったお礼と、グレイシーヌの僧兵の方達からはロマリアからの刺客を倒したことにより、ミルマーナとグレイシーヌ両国でのやきう発展をお願いし、交流試合をする約束を取り決め、無事会談は終了することになったのでした。

 

 その後、ミルマーナ王家のペットとして飼われる事になったヤグンのリードを探しに、サニアさんとお忍びでお出かけをすることになったのです。

 

 「ワイ。貴女がくれたカードのおかげで助かったわ」

 「あら? この店やきうカードチップス売ってないですわね」

 「確かに無いけど……そうだ、私が女王になったらミルマーナで生産することを約束するわ」

 「あら、良い案ですわね。もちろんシークレットレアは」

 「タツ〇ミさんね!」

 

 猿はポテチを食べながら元気に反省していたのでした。

 

 「サニアさん。わたくしのチームに入らなくって?」

 「さっきも言ったけど私はミルマーナの王女。 誘いは嬉しいけど、国民を放ってしまうのは違うと思うの」

 「そうですわね……ファンあってのチームですもの」

 「けれど、約束するわ! ワイがピンチになったら、私は駆けつけるから! だからこのカードを持ってて」

 「これは?」

 「さっき作ってみた試作品なんだけど、お礼にって思って」

 「まぁ。ありがたく頂戴しますわ」

 

 またしても失敗したワイちゃんのスカウト活動でしたけど。思い出は得られましたの。

 カードにはワイちゃんとサニアさんが仲良く猿の毛を毟っている様子が描かれていましたの。

 カードを握り。形見を握り。新たなる天地へワイちゃんは旅立ちます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告