スターウォーズ 伝説の賞金稼ぎ   作:Slave0629 らい

1 / 6
伝説の賞金稼ぎ 第1章

遠い昔、遥か彼方の銀河系で・・・

 

 

 

 

 

コンコード・ドーン

ならず者の集い場

 

 時は1ABY、帝国の占領下にあったコンコード・ドーンの居住地区は基本的にはどこも静かな場所だ。戦い好きのマンダロリアンが多く出入りする基地の隣に位置するこの地区も一カ所を除いては今日も住民が穏やかに暮らしている。

 

「おいクラーク、酒はまだか!」

「うるせえぞ、この頭でっかち!」

「早く持って来ねえとぶっ殺すぞ!」

 

居住地区のど真ん中にあるこのパブは朝から夜まで多くの客が押し寄せる。戦いの疲れを癒やしにやって来るマンダロリアンの戦士や燃料を足しに星に降りたついでに立ち寄った旅人、情報交換にやって来たならず者たち・・・様々な種族や職業の輩を眺めるのはここで働くミッチ・クラークにとって楽しみの一つだった。店は昼頃になるといつの間にか人間やクリーチャーで溢れかえり大忙しだ。店内に並ぶいくつもの丸テーブルとカウンターの席はいっぱいになり、客が取り合いを始める。暇になったら店内を見回して初めて見るクリーチャーなどについてアーボルトに教わるのだ。ただやっかいなのは、先程みたいに酔っぱらった客が喧嘩をふっかけてくることだろう。ベーシックを話す奴らならまだしも、訳の分からない言葉で唸られても、ミッチにはどうしようもない。アーボルトなら話は別だが。

 

 また店の扉が開いて、新たな客が入ってきた。赤いマンダロリアンのヘルメットを被ったその客は凜とした歩みでアーボルトとミッチのいるカウンターの目の前の席にまっすぐに向かってくる。空席にどっかり座ると肩にかけていた重そうな鞄をカウンターにドサッとおろした。

 

「ブルーミルク。」

 

ヘルメット越しのくぐもった声で客が注文した。この店で酒以外の物を注文する客はほとんどいないがアーボルトは驚いた様子もなく素早くカップにブルーミルクを注ぎミッチに投げた。ミッチはカップを受け取り客に出しながらにっこり笑って言った。

 

「お帰り、キーラ。」

 

 

 「見つけた?」

「ああ、奴だ。」

 

端の方の暗いテーブルを囲んだタロン、サム、ステラトの3人は周囲に目をこらして目当ての人物を探していた。周りは皆楽しそうに話している中で物騒な雰囲気を醸し出し口数の少ない彼らは明らかに浮いていたが本人たちは気にしていないようだ。とうとうタロンが何かに気付いたように2人に目配せをした。

 

「あの弓を背負ってる奴か?」

「ああ、恐らくな。我々が狙っている人物に合致する。」

 

3人はタロンが捉えた人物を目で追った。何やら熱心にカウンターの青年と話しており、時々青年のほうの声が聞こえてくる。

 

「こんなに都合の良い事ってあるかしら。」

「ああ。これでまた僕たちの株が上がるわけだ。」

「よし、それじゃあ俺がやろう。」

 

そういうとタロンはのっそりと椅子から立ち上がり腰にブラスターがついていることを確認すると、静かにその人物の方に近づいた。

 

 突然ガシッと肩を掴んだので、相手は驚いてブルーミルクのカップを落としてしまった。ズボンに青い染みが広がる。怒って肩を掴んできたタロンの方を振り向いた。

 

「ちょっと、どうしてくれるのよ!」

「あ、すまない・・・」

 

カウンターの青年が床にこぼれたミルクと砕けたカップを片づけにきた。まだ一口も飲んでいなかったらしい。せっかくのブルーミルクが台無しじゃない、と息巻く彼女に謝りながらも、タロンは相手が女性で、しかもパブでブルーミルクを飲んでいるという事実に驚きを隠せなかった。

 

「未成年か?」

「さあね、大人だってブルーミルクを飲むでしょ。ところで、私に何か?」

 

さらっと年齢をごまかす彼女にタロンはゴクリと息を飲んだ。慎重にいかなくては。彼女を逃せば二度とないチャンスを失うことになる。

 

「協力して欲しい。君、賞金稼ぎだろ。名前は?」

「そういう時は普通自分から先に名乗るものよ。」

「俺はタロン・バートン、君と同じ、賞金稼ぎだ。」

 

彼女は興味がなさそうにふーん、とタロンを眺めると、

 

「ボバ・フェット。」

 

と名乗った。実際に会ったことはないが銀河系の賞金稼ぎの中でボバ・フェットを知らないものはいない。銀河一腕利きの男の賞金稼ぎだ。騙せているとでも思っているのだろうか。それとも冗談か。マスクを被っているので表情も読めずタロンは後者の可能性が高いと判断し冗談に乗ることにした。

 

「それはそれは。お会いできて光栄だ、ボバ・フェット。」

「冗談だって事が分からないの?」

「・・・お前もな。」

「アウトロー・レッドよ。」

 

そう言って彼女は被っていたマンダロリアンのヘルメットを脱いだ。未成年かどうかは分からないがかなり若い。店内の照明のせいか、青白い顔をしている。アウトロー・レッドというのもまた本名でないことはもちろん分かったが、今は尋ねないことにした。

 

「実は、一緒に働く賞金稼ぎを探している。マンダロリアンならなおさら良い。」

「どうして私がマンダロリアンだって分かったのよ。」

 

は?思わず声に出しそうなのを寸前でこらえ、タロンは不思議そうに首をひねっている彼女を見返した。

 

「それは、アーマーを着ているだろう。マンダロリアンの。」

「あ、そっか。・・・でも、関係なくてもマンダロリアンアーマーを来ている人はいるわ。」

 

こいつ、意外とドジか?タロンは期待した通りの人物でなかったことに少しだけ落胆した。いや、しかしそういう振りをして相手を油断させているだけかもしれない。タロンは慎重な態度を崩さないまま本題に入った。

 

「帝国からの任務だ。複雑な任務ではないのだが、人数が必要だ。仲間に加わって欲しい。」

 

 

 彼女がタロンを信用していないことは態度で明らかだ。賞金稼ぎの性ではあるが、任務は詳しく話したし、賞金も山分けで良いと言ったのだ。

 

「2000万クレジット?帝国が本当にそんなに賞金を払うとでも?信用できない。」

 

タロンは他の客に話を聞かれないように声を潜めながら周りを気にして言った。

 

「直々に頼まれたんだ。悪い話じゃないだろう。成功すれば、一人500万クレジットだぞ。」

 

確かにタロンも初めは信じられなかった。だが本当の話だとしたら挑戦する価値はあると思う。

 

「そんな怪しい契約に命を捧げる気はないわ。他をあたって。」

「色々な星を回ってやっと賞金稼ぎを見つけたんだ。頼むよ。任務が終われば君は金だけ持ってチームを抜ければ良い。」

 

そう言われてレッドは少し首をかしげた。少々無礼な言い方だったか。今まで誰かと組んで仕事をしたことはないらしい。しかしなかなか承知しなかったレッドだが、次のタロンの発言が彼女を動かした。

 

「いいか、あの基地の最高司令官はあのミフ・アボットだ。殺るのは不可能と言われているが、もし彼を倒すことが出来れば・・・」

 

レッドの目の色が変わった。しばらくタロンをジッと見つめていたが、やがて口を開いた。

 

「分かった、乗るわ。」

 

 

 タロン、サム、ステラトにレッドを加えた4人はアーボルトのパブの裏方で彼が部屋の中央のテーブルで映し出したホログラムの地図を眺めていた。実はタロンらがこのパブに来たのは賞金稼ぎを探すためだけでなく、アーボルトに協力を得るためでもあった。情報屋のアーボルトに知らない星はなく、ほとんどの種族や言語にも精通しているという噂を聞いたのだ。店の奥にあるアーボルトの部屋は店とは違い薄暗く静まりかえっていて、数え切れないほどの本や見慣れない何かの道具、使われていない武器などでごった返していた。アーボルトはこのパブを開く前は海賊のギャングにいたと聞いている。色々な星を回って集めた物なのだろう。

 

「マルーン星系か。」

「ああ。どういう星か教えてくれ。」

 

タロンは一分一秒が惜しいとでも言うようにアーボルトに続きを促した。

 

「未だに帝国の支配下に置かれていない惑星の一つだ。わしも行ったことがないから実際の所は知らないが、惑星全体が岩に覆われているらしい。日中は外に長い間いると岩が反射した太陽の熱でやけどをする。反対に夜は外は凍え死ぬぐらいの寒さだ。オアシスがいくつかあって、おそらく反乱軍の基地があるならそこだろう。」

「どうりで帝国が手を出さない訳だ。そんな暮らしにくい惑星に帝国の施設なんか造ってもしょうがないからね。」

「ああ、逆に反乱軍にとっては機密事項を隠すのにこれといった場所はない。」

 

アウターリムには実に色々な環境の星が存在するものだ。我々の想像の及ぶ範囲の星ならまだマシだ。時には生き物が住んでいるとは考えられない環境で信じられないようなクリーチャーに出くわすこともある。

 

「マルーン星系はここだ。で、今いるコンコード・ドーンはこっち。まともに飛べば距離にして2万8千パーセクはある。」

「2万8千!?ほぼ銀河の端から端じゃない!」

「まともに飛べばと言っただろう。裏のルートを使えばもっと早く着ける。ただし、違法だ。」

 

アーボルトは言い終わってからハハッと笑った。

 

「ああそうだ、君たちは賞金稼ぎだったな。」

 

愉快そうに笑う余裕綽々な顔は、今までの人生で出会った数え切れない経験を物語っていた。彼自身、法などは虫けらと同等に扱ってきた口だろう。

 

「ところで、マルーンの反乱軍の基地に何しに行く。」

 

アーボルトが当然教えてくれるだろうというふうに聞いた。短い沈黙のあとレッドが口を開こうとしたがタロンに先を越された。

 

「基地をぶっ飛ばしに。」

 

 

「キーラ、また行くのか?帰ってきたばっかりだろう。」

 

キーラが他の3人と船に乗り込んで準備をしようと思ったところで後ろからミッチに呼び止められた。

 

「大切な仕事なの、すぐに戻ってくるわ。」

「マルーンに飛ぶって聞いたよ。気をつけろ、あそこは危険だ。」

 

「アウトロー・レッド、出発するぞ!」

 

船からタロンが呼ぶ声がした。

 

「もう行かないと。」

「ちゃんと生きて帰って来れるんだろうな。」

「当たり前でしょ、私が死ぬわけない。」

 

キーラはミッチを安心させるように言うと振り返ることなく船に飛び乗った。

 

 

 10歳でマンダロアを出てから戻ったことは一度も無かった。キーラにとってマンダロアは決して良い思い出の残る場所とは言えなかったからだ。それなのに16歳になった今、偶然にもマンダロアに戻ることになるとは思ってもいなかった。

 

「マンダロリアンって事は、マンダロア出身なんだろ?」

 

マンダロアまでの船の中、コックピットにいるタロンを除くサム、ステラト、キーラは後部座席でこれからのことを話していた。初めはこの賞金稼ぎのチームに警戒心を示していたキーラも、同じ女性のサミュエル・テットゥーリや穏やかな性格のステラト・スノウマンと話しているうちに少し心を許したようだった。一緒に働くとなればお互い信頼できるぐらいには馴染んでおかなければならない。

 

「ええ。でももう私がいた頃とは色々変わっているかも。たぶん、着いても役には立てないわ。」

「それにしても、ジャンって誰なのよ。どうしてアーボルトは詳しく教えてくれなかったの?」

「今レイヴンクローのコンピュータで調べてる。違法の航路を知ってるって事は多分犯罪者だ。見つかるよ、こいつ優秀だから。いや、優秀なのは僕かも。」

 

先程から船内のコンピューターで調べていたステラトが画面をポンポンと叩いた。

 

「レイヴンクローって?」

「この船の名前だよ。サムがつけたんだ。」

 

ジャンを探せ、マルーンまでの道を知っているのは彼ぐらいだ、とアーボルトに言われコンコード・ドーンを飛び立った4人だが、彼がマンダロアにいるということ以外その男についてはなんの手がかりもないままだった。アーボルトが気安く情報を渡すような男でないのは知っている。貴重な情報が自分から漏れたと分かれば自分に危機が迫る場合も少なくないからだ。マルーンに関して情報がほとんど得られなかったため、ジャンに会えなければ一歩も先に進めない。何とかして彼を探し出さなければならなかったが、マンダロアは広い。どこの都市から探せば良いかすら見当もつかなかった。しばらく船内を眺め回していたキーラが何かに気づいたように突然口を開いた。

 

「私その名前、どこかで聞き覚えあるのよね。」

 

サムが首をくるっとひねりキーラの方を見た。

 

「なんでそれを早く言わないのよ!」

「でも思い出せないの、記憶力悪いから。」

「良いから、思い出して。」

「無理なものは無理だってば。」

 

キーラとサムが言い争っている間にステラトがついにジャンという名前の人物を見つけたようだ。

 

「見ろよ、たぶんこいつだ。武器商人かつエンジニア。犯罪者リストに入ってる。」

「いかにも悪そう。」

 

ホログラムに映し出された男の顔はぼやけていてよく分からなかったが、顔に傷があるのが見える。

 

「俺たちほどじゃないだろ。」

 

いつの間にか操縦席を離れて後ろにやって来たタロンが他の3人に言った。とりあえず着くまでにジャンの正体が分かって良かった。それにしても帝国の支配下で犯罪者リストに載っている人物となると、かなり危険人物なのだろうか。

 

「もうすぐハイパースペースを出る。降りる準備をしておけ。」

 

タロンが再びコックピットに戻り着陸の準備を始めた。

 

「あのリーダー気取り。」

 

サムが誰にも聞こえないぐらいの声で呟いた。

 

 

 

マンダロア

首都サンダーリ

 

 『こちらステラト。ジャンっぽい人発見。』

 

ステラトからそう連絡が入ったとき、キーラはマンダロアにあるかつての我が家の前に立っていた。前に立つと扉が自動で開き、キーラを迎え入れた。

 中は薄暗く、すべての電源は切られていた。この家にはもう誰も住んでいない。母はキーラがまだここにいた頃に反乱同盟に加わり家を出て行った。父はマンダロアの帝国アカデミーの指導官だったから、たぶん今もそこにいるのだろう。家の中はキーラがここを去ったときとそれほど変わっていなかった。飾り気のない真っ白な壁や天井はまるで以前ホログラムで見た帝国アカデミーの候補生の部屋のようだ。キーラは家の中を直接見ようとヘルメットを脱いだ。

 

「ハッックション!!ひどい埃!」

 

顔を上げると目の前の棚にキーラは何かを見つけた。

 それは四角い小さな箱のような物だった。表面は金属でできているようでフタはなく、箱と同じ素材のボタンが一つついていた。何かは分からないが初めて見るそれはキーラの興味をそそった。どうせ誰も住んでいないのだから少しぐらい物色したって構わないだろう。希少な物なら売って金になるかもしれない。キーラは見つけたその箱をズボンのポケットに忍ばせた。

 家を出たのは10歳の時だが、キーラにそれ以前の記憶はほとんど残っていない。というより覚えておこうと思わなかった。もちろん両親の思い出もほとんど残っていない。キーラが覚えているのは、家を出てから街の外れで密輸業者の船を見つけて・・・

 

「ジャン!!」

 

やっと思い出した!キーラをマンダロアからコンコード・ドーンまで輸送船で乗せて行ってくれた武器商人だ。マンダロアを拠点に武器を売ったり修理したりして回っていると言っていた彼だ。キーラは思い出せたことの自己満足に浸った。その時誰もいるはずのない後から突然声がかかった。

 

「ジャンならここにいるぞ。」

「え?」

 

いるはずのない人の声が突然後ろから聞こえ、驚いて後ろを振り返るとそこにはタロンがいた。

 

「あれ、タロン・・・?」

「ステラトからの連絡が聞こえなかったのか?彼を見つけたから集合しろと言ったはずだが。」

「ああ、ごめん・・・」

 

マンダロアに着き手分けしてジャンを探している最中にたまたまかつての自分の家を見つけ、家の中に夢中になってすっかり忘れていた。

 

「余計な行為は慎め。チームで行動しているんだぞ。」

 

家の玄関には呆れ果てたサムと待ちくたびれたという表情のステラトが立っていた。

 

「探したのよ、コムリンクの電源切ってたでしょ。」

 

キーラのコムリンクはヘルメットに内蔵されているので、ヘルメットを被っているときしか聞こえないのだ。

 

「本当に、彼がいなきゃ絶対迷ってたよ。」

 

そう言った2人の後から小柄なおとこが男が顔をのぞかせた。愉快そうに笑うその笑顔は何年も前に見たそれと変わっていない。

 

「・・・キーラか?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。