スターウォーズ 伝説の賞金稼ぎ 作:Slave0629 らい
マンダロア
キリモルトシティ
マンダロアのドーム型シティの中でも一番小さく住むものも少ないキリモルトの町外れにある狭い倉庫には、夕方から夜にかけて人の出入りが多くなる。帝国占領下にあるマンダロアでこのように管理の行き届いていない倉庫はほとんど無いのだが、帝国の警備をくぐり抜け訪れる人のほとんどはならず者で、それぞれが自慢の使い古した武器を持ってくる。だが普段は開け放たれた倉庫のシャッターも今は閉じられ、丁度今、倉庫の目の前の広場に真っ黒のガントレットスターファイターが大きな空気の渦を巻きながら着陸した。
「おい、あの船無許可着陸じゃないのか?」
「ああ、確認してみよう。」
たまたま近くで見ていた警備中のストームトルーパーが2人、ファイターに気づき倉庫の方に向かった。
「さっきのドームとは比べものにならないほど寂れてるわね。ジャンがたまたまサンダーリにいて良かったわ。こんな所探そうとも思わない。」
マンダロアの首都サンダーリでジャンと合流した一行はサンダーリの巨大ドームを離れて首都からは最も遠い小さなドームにレイヴンクローで移動した。ジャンの運転で彼の仕事場である倉庫の前に着陸したレイヴンクローは数少ない周りの住民の目を大いに引いたが、家から出て来て何事かと確認するだけでそれ以上は誰も気にする者はいなかった。
「降りるときは一応周りを確認しろよ。」
ハッチが開きステラト、サム、タロン、レッド、そしてジャンの順に船を降りようとしたその時だった。
「止まれ!動いたら攻撃するぞ!」
「ジャン、中に戻れ!」
ストームトルーパーとタロンの声はほとんど同時だった。先頭のトルーパーに続いて7、8人のトルーパーが船を止めている広場に躍り出た。出かけてトルーパーに気づいたジャンは慌てて船に戻っていく。ジャンは帝国の犯罪者リストに登録されているので見つかったら最後、帝国の狭い牢屋にぶち込まれるのは目に見えている。
「その船は着陸許可を得ていない!直ちに押収する!」
先頭のトルーパーがこちらに向かって叫ぶと、他の者が一斉にブラスターを向けた。
「タロン、何とかして!」
サムが後にいるタロンに小声で囁いたが、すでに完全に船の外に出ているステラト、サム、タロンの3人は幾本ものブラスターを前にして固まるしかなかった。
その時、突然タロンの目の前を何か細い物が猛スピードで掠めた。
「何!?」
バアァァァン!!!
巨大な音を立ててトルーパー達のいる地面がはじけ、4、5人が吹っ飛んだ。お互い何が起きたのか分からず一瞬の沈黙の後、
「「撃て!」」
トルーパーとタロンが同時に叫んだ。手前にいたサムとステラトがブラスターを撃ちながら慌てて船の陰に退避し、タロンも船のハッチの横でトルーパーに銃を乱射した。
バアァァァン!!!
二度目の爆発があってまたトルーパーが3人倒れた。すかさずサムが残りの2人を打ち倒し辺りはトルーパーの死体を残して何事もなかったように静まりかえった。
「所詮はバケツ頭ね。」
サムが息をつきながらブラスターピストルを腰のホルスターにしまった。ステラトもほっと肩を下ろし扱いにくそうな長いブラスターライフルを船のハッチの近くに置いた。トルーパーは帝国の精鋭部隊というわりに銃は当たらないと言うのは賞金稼ぎの中では広くバケツ頭と呼ばれている。
「でもさっきの爆発は?」
そういえば、とタロン、サム、ステラトの3人が船の方を振り返ると、いつの間にか船の上に上っていたレッドがずるずると滑り降りるのが見えた。
「まさか、その弓で?」
レッドがいつも肩に紐で下げていた折りたたみ式の弓は今は開かれ持ち手の部分の赤いランプが点滅していた。
「弓なんて使うのダソミアの魔女ぐらいだと思ってたけど、なかなかいいわね。」
「あんな神話と私の弓を一緒にしないで。」
騒ぎが収まりレイヴンクローから出て来たジャンを含めた5人はトルーパーの死体を広場の端に寄せると仕事の準備のためジャンの倉庫に入っていった。
「警備は手薄なんじゃなかったのか!」
「お前達の船が目立ちすぎるんだ!あんな真っ黒なガントレット見たらトルーパーじゃなくても怪しむだろ!」
怒鳴り声が聞こえ振り向いてみるとタロンとジャンが倉庫の入口で言い争っていた。この倉庫で一晩待ってから出発する予定だったがすぐに連絡を断ったトルーパーの様子を見に首都から増援部隊が送られることを考えると長居はできなくなったので、その事でタロンはかなりいらついていた。しばらくするとタロンは怒って外に出て行き、ジャンはやれやれとキーラの元に向かってきた。
ジャンはキーラが手入れしていた弓を手に取った。武器に詳しいジャンに少し改良してもらおうと先ほど約束しておいたのだ。
「おい、この弓だいぶさび付いてるぞ、いつから使ってるんだ?」
「コンコード・ドーンに来たときからよ。小型の起爆装置を飛ばせるようにしたんだけど重くて使いづらいのよね。」
「じゃあちょっと軽くして威力上げとくか。」
武器商人のジャンはあらゆる武器に精通していて、先程レイヴンクローのレーザー砲の出力を上げ、今はキーラの弓を自在にいじり回し何やら中のコードをいじくっていた。弓を組み立てたキーラ自身にも何をやっているのか分からない。
奥のテーブルではサムとステラトが作戦を練っていた。
「基地の設計が分からないと細かいところまでは決められないわね。爆薬を仕掛けるか、上からレイヴンクローで爆撃するのは?」
「無理だよ、基地全体を破壊するのにそれだと時間がかかりすぎるし全部破壊する前に反乱軍に撃退されて終わりだ。内側からいかないと。」
「確かに。最も基地が地下だったら一番面倒ね。」
「マルーンの表面は硬い岩に覆われてるからそれは無いと思うよ。それよりどこに着陸するかだ。基地のあるオアシスに到着しないと外に出られないからかなり基地の近くに着陸することになるけど、全く最悪だな。進入する前にバレちゃ元も子もないよ。」
「今までで一番難しい仕事かも。」
普段どんな困難な任務でも突飛な作戦を強みに成功させてきたステラトとサムも、今回の仕事には頭を抱えていた。マルーンについて詳しいことがほとんど分かっていないのが一番の問題だ。帝国からもほとんど情報が提供されなかったし、そもそもこんな仕事を賞金稼ぎにやらせること自体おかしい。
「今回の仕事、何か裏があるな。」
ステラトがボーッとそんなことを考えていると突然手に持っていたブルーミルクの入っていたコップが吹っ飛んで、奥の壁にぶつかって割れた。
「うわっ!」
危うく心臓が止まるところだ。
「どこ狙ってんだ、このバカ者!!」
直後にジャンの怒鳴り声と謝るレッドの声が聞こえてきた。
「ああ、ごめんステラト。まさかこんなに威力があるなんて思わなかったから。コップを撃ち落とすだけのつもりだったのよ。」
「撃ち落とすだけでもダメに決まってるだろ!彼に当たったらどうするつもりだ!」
「バカね、当てるわけないじゃない!」
改良した弓を試しに撃っていたらしい。この距離からコップを撃ち落とした腕は認めるがステラトに当たっていたらと思うとゾッとする。
レッドはよくいる賞金稼ぎとは少し違った。金にはやはり目がないようだが注意深く近づきがたいという感じではなく、まだ若いからかあどけなさが残っていた。いきなり知らない賞金稼ぎをチームに迎え入れて大丈夫かと不安だったが、なんとか上手くやっていけるかもしれないと少なくともステラトとサムはそう考えていた。
「何かあったのか!?」
外でレイヴンクローの調子を見ていたタロンも音に驚いて顔をのぞかせた。
「何でもない、コップを落としちゃっただけよ。」
「あんまりうるさくしないでくれ、船の修理に集中できない。」
そう言うとタロンはまた倉庫の外に戻っていった。
「船の修理なら終わったぞ!」
ジャンが外に向かってそう叫んだがタロンはには聞こえなかったようだ。
タロンがチームのメンバーに出会ったのは一年前だった。依頼者が何人かの賞金稼ぎに同じ仕事を与え、たまたま現場で遭遇したのだ。当時そこにはタロン、サム、ステラトの他にもう一人、コンコード・ドーン出身のゲージという賞金稼ぎがいた。それぞれが自分で仕事をこなすはずだったのに、タロンがヘマやらかしたせいで危うく全員が獲物を取り逃がすところだった。危機的状況に陥ったタロンは死を覚悟したのだが、ゲージに助けられた。目標に一番近づいていたのは彼だったのに、タロンを助けるために獲物を諦めたのだ。次に目標に近かったのはサムだが、状況が一転し目標に近づくのが難しくなった。奇跡的にサムが獲物を捕らえたとき、サムの後ろではステラトが援護していた。仕事を終わらせた後ゲージに聞いた話だが、あの時手を組んでタロンを助けるのが目標を捉えるために一番有効な策だったらしい。4人は報酬を山分けし、その時はそれで終わりのはずだった。
その数日後にゲージから連絡があったときは驚いた。彼の所に入った仕事を一緒にやらないかと言われゲージのもとに向かうと、サムとステラトもそこにいた。ゲージは普通の賞金稼ぎと違いクレジットにはあまり興味がないようで、生計を立てるためにやっているらしかった。賞金稼ぎらしくはないが、戦闘技術は誰よりも優れ頭もよく切れる立派な賞金稼ぎだった。4人がチームを組んだのは全くの偶然だったはずなのにまるで古くからの知り合いのように息が合った。サムは元暗殺者であり潜入はお手のもので、ステラトは作戦を練ることに関して驚くべき才能を持っている。タロンは優れた身体能力の持ち主で、色々なところで傭兵として雇われ厳しい戦地をくぐり抜けてきた。4人がそれぞれの能力を用いることでチームでより大きな仕事に挑むことができる。クレジットのことしか頭になかったタロンやサム、ステラトも仲間を持って少し変わった。
しかしそんな日も長くは続かなかった。出会って1年ほどたったある日の仕事でゲージが反乱軍に殺されたのだ。ステラトの立てた作戦は完璧だったし誰かがミスをしたわけではなく、ゲージ自身が無茶をしすぎたのだろう。
リーダーとも言える存在だった彼を失ってからタロンのチームは変わった。タロンは自分の殻に閉じこもるようになったし、サムやステラトは前ほど協力的ではなくなった。ゲージの代わりに今はタロンがチームを率いているが2人はそれほどタロンを信頼していないようだった。もちろん仕事のたびに2人は得意分野を生かしていい働きをしているが、仕事が終わると皆チームに留まることはなく銀河のあちこちに散っていった。
そんな状況の中レッドに出会った。彼女をチームに引き入れれば少しはマシになるだろうと思ったが、正直期待外れだ。マンダロリアンの賞金稼ぎなら皆腕利きだと思っていたが、彼女は出会って以来ドジばかりやってとてもチームでまともに仕事がこなせそうには見えなかった。状況は悪くなる一方だ。タロンは操縦席に座り込み、薄暗い静かな外を眺めながら一人物思いに耽っていた。
「タロンは多分、ゲージが死んだのは自分が彼を助けられなかったからだと思って自分を責めてるのよ。あの時ゲージと一緒にいたのはタロンだから。」
サムとステラトからチームの過去を知らされ、キーラとジャンは壁に寄りかかって沈黙した。出発は明け方にしようと言うことになり、タロン以外の4人は作戦を練りながら出会って間もない自分たちの話に花を咲かせていた。初めて会ったときから微妙に息の合っていないと思っていたが、どうやら訳ありのようだ。
「時々ああやって一人になりたがるのよ、特に大きな仕事の前はね。仕方がないとは思うんだけど、いい加減立ち直ってもらわないと。」
倉庫の中から顔を出してコックピットのタロンの様子を見ていたサムがため息をついた。
窓に目をやるとちょうど真上に来たマンダロアの衛星コンコーディアが青白く光っているのが、ドーム型都市の透明な天井から見えた。砂漠気候のマンダロアとは正反対の青々とした温暖なコンコーディアにタロンは昔一度だけ行ったことがあった。まだチームで活動する前、デスウォッチの残党で今は賞金稼ぎのマンダロリアンに会いに行ったのだ。そのマンダロリアンは冷徹で、今までに殺してきた人の数は数え切れないと言っていた。
レッドもあの時の賞金稼のように強く残忍ならどんなに信頼していたことか。きっとサムとステラトも同じ事を考えているに違いない。ましてやゲージの代わりなんて、彼女につとまるはずがない。
「なあゲージ、どうすればいい?」
タロンはコンコーディアに向かってつぶやいた。周り一体ドームの壁におおわれたここでは、声を上げても届くことはなかった。俺が独り言なんてな。そう自分に苦笑しながらタロンはレイヴンクローを出て皆のいる倉庫に戻っていった。