スターウォーズ 伝説の賞金稼ぎ 作:Slave0629 らい
キーラに言わせてみれば普通の基地だろうがステルス船だろうが別に何の価値もなかった。潰して金が手に入るのならそれで十分だ。しかしサムやステラトはそうは思っていないようだ。
「ステルス船はクローン戦争時代に共和国が開発したんだ。試作品の段階で1機だけテストしたって記録は見たことあるけど、これは多分そのステルス技術を応用してるんだろうな。ステルス装置を稼働したまま船からの攻撃は出来ないはずだけど、その時代からどれだけ技術が発達しているかどうか・・・少なくとも何かあれば基地ごと他の惑星に移動できる訳だから、ここの機密情報がずっと守られてきたのも納得がいく。」
ステラトは初めて見たステルス船にすっかり興奮してまくし立てた。“太っちょ”が基地全体の様子をスキャンし終えその映像を元に作戦を練り直しているところだった。ステラトとサムは興味津々にホログラムを眺め回して、巨大なコルベットのステルス船の技術をどうにかしてこのレイヴンクローに用いたいとでも考えているのだろうか。
「でもこのステルス装置をずっと稼働しているとなると相当なエネルギーが必要ね。たぶんマルーンの地表に線を引いて岩が吸収する熱をエネルギーに変換して───」
サムの分析を呆れたキーラが途中で遮った。
「どうでもいいけど、作戦はあれでいいの?」
「ああ、完璧さ。」
「それじゃあ、早いとこ片づけるとするか。」
タロンの合図で5人はそれぞれの武器や持ち物の装備を始めた。キーラは矢を揃えブラスターピストルと一緒にクイーバーに収めるとベルトを腰に巻き付けた。万が一の時にジャンが皆に配ったサーマルデトネーターをズボンのポケットに入れようとしたとき、ポケットにすでに入っていた何かにカツンと当たった。何かと思いポケットの中身を引っ張り出してみるとそれはマンダロアの我が家で拾った謎の金属の箱だった。
「レッド、それは?」
運悪くサムが気づいて尋ねたが、キーラはなんでもないと言ってごまかしデトネーターと一緒に再びポケットにしまった。最後に弓を背負ってヘルメットを被ったら準備完了だ。サムはブラスターピストル2丁と軽装備で、ステラトは長いライフル銃にジャンの巨大なブラスターを担いでいる。タロンは重たそうなジャケットを着て愛用のブラスターを手にしていた。“太っちょ”から映像が送られてくる小さなコンピューターもジャケットに収めた。
「いいか、何があっても作戦続行だ。たとえ誰かが殺されてもだ。」
「縁起でもないこと言わないで。」
「コムリンクは絶対に切らないこと。状況は常に船に待機しているジャンに知らせろ。爆破のタイミングが俺が指示する。」
「了解。」
タロンが皆に最終の指示を出し、ジャンが船のハッチを開けた。
「それじゃ、あとはよろしく頼む。」
タロン、キーラ、サム、ステラトの順にマルーンの地表に降り立つと、後ろでハッチがガチャンと閉まる音が聞こえた。
「寒いわね。」
一番薄着のサムが腕組みをしながら呟いた。タロンの持っている温度センサーは氷点下5度を指していた。生物が生息できる環境ではあるが、クリーチャーは見当たらなかった。
4人は狭い谷底を縦に並んで進んだ。足元は非常に悪いが崖っぷちでないだけマシだ。基地のある平地に出たら“太っちょ”が確認した警備システムを潜り抜けて船に潜入しなければならない。機密情報の集まる基地と言うだけあって警備は厳重だった。幸いなのは船の外に設置されている警備システムにはステルス装置が適応されていないことだった。
「よし、ここで待とう。」
基地のすぐ近くまで来た左右の切り立った崖が少し出っ張っている所で一行はいったん進むのをやめ、しゃがんで陰に身を潜めた。ステラトがコンピューターから“太っちょ”をコントロールして基地の入り口付近の岩に止めた。
「よし、準備が出来たよ。」
「普通に行けよ。」
タロンがサムに向けて言った。
「やっぱりこういう役はレッドが向いてると思わない?」
「マンダロリアンアーマーなんか着てたらいかにも賞金稼ぎって感じで怪しまれる。上手く侵入できるかにかかってるんだ。頼む。」
「分かったわよ。」
サムはしぶしぶ認めると立ち上がってブラスターピストルを1丁ステラトに預け、変わりに短い金属の棒のような物をホルスターに入れた。
「上手くいったらすぐに侵入するから連絡を待て。」
「了解。」
そう言うとサムは岩の陰から出て谷を堂々と歩いて行った。残った3人は岩陰から少しだけ身を乗り出して基地の方の様子を観察した。
「上手くいくかな。」
「サムならやってくれるさ。」
明らかに楽しんでいるキーラとステラトをよそにタロンは難しい顔でサムの後ろ姿を見送った。
基地のある平地に入ったサムはそのままゆっくり歩き続けた。そろそろ船があるはずだ。恐らく基地の中では監視カメラに移ったサムを見て一部の反乱軍が騒ぎ出している頃だろうか。基地があるとは分かっていたがここで歩く速度を緩めては怪しまれる。サムは何も知らない振りをして歩いた。ステルス船でもこれほどまでに完璧に透明化させているのは見事だった。中では人が右往左往してるはずなのに音も全く聞こえない。
しかしまた数メートル進んだところでサムは変化を感じ取った。氷点下しかないはずの周囲の温度が少し暖かくなった。もうすぐそこだ。そう思い次の一歩を出した途端、
ガツンッ
サムは突然ステルス船のカーブを描いた側面に派手に頭を打ち付けてその場にバタリと倒れてしまった。
ステルス船の基地の中の一室ではちょっとした騒ぎが起こっていた。本部のすぐ横にあり、船の内部と外部の警備システムを一斉に管理してる警備室だ。普段そこには4、5人の反乱軍の職員が交代で入り24時間基地の安全を見守っていた。今日もこの時間帯のいつものメンバーが平和で退屈なモニターの観察をしながら談笑していたところだった。
「おい!ぶつかったぞ!」
「救急隊員を送るべきじゃないのか?脳振盪をおこしていたら危険だ。」
「とりあえず本部に連絡しよう。」
10分ほど前に基地のある平地に突然女がひとりで紛れ込んできたのだ。彼女はステルス船に気付かないまま歩き続け船にぶつかって倒れたままの状態になっていた。
「こちら警備室。基地の外で人が1人基地にぶつかって倒れています。救急隊員の派遣を要請します。」
「了解。すぐに送ろう。」
本部から最高司令官の声が帰ってきた。
「ありがとうございます。アボット司令官。」
「痛そう!」
「サムなら平気だよ、石頭だから。」
「じゃあ船の方が心配ね。」
まだ笑いが治まらないキーラとステラトがヒイヒイ言いながらも反乱軍の救急隊員を外に呼び寄せたことに喜びの声を上げていた。
「お前ら、サムにバレたら殺されるぞ!」
そう言いながら2人のことを睨むタロンも顔が少し引きつっている。ステルス船にぶつかって倒れ怪我人を装うのはもちろん作戦のうちだった。サムが本当にぶつかったのでなければ、気絶した振りをしながらこのまま基地内に潜りこめる訳だ。
「やっぱり適任だったな。」
タロンは“太っちょ”の映像を入り口に拡大し、担架に乗せられたサムが運ばれてくるのを確認した。
「静かにしろ。もうすぐだ。」
タロンは顔を画面にくっつけるようにして様子を観察している。キーラとステラトも話すのをやめサムのコムリンクから入ってくるかすかな音に集中した。
『マルーンに人が来たのなんていつぶりだろうな。』
『半年ぶりぐらいだろ。確か前の時も燃料不足の不時着だった。この人もきっとそうだろう。』
『可哀想に、たった一人でこんな所に迷い込んで。後で船を捜索するべきだろうな。』
『さっき司令官から指示があった。医務室に運んだら行くぞ。』
2人がかりで担架を運んでいる上でサムが微かに動いた。ちょうど担架が入り口を通り過ぎようとしたその時、サムの腰のホルスターから先程の金属の棒のような物が落ちて入り口の扉のそばに転がった。反乱軍の2人は話すのに夢中で気付いていない。
「出る準備をしとけ。」
タロンはキーラとステラトに指示すると、“太っちょ”の映像で彼らが基地内に完全に入ったのを確認しコンピューターの画面を切り替えて何かのスイッチを起動させた。
救急隊員の後ろで先程の金属の棒が自動的に動き出した。それは入り口のドアが閉まるのを感知して動き出し、ドアに張り付くとパタパタと広がり始め扉と壁の間に挟まると扉が完全に閉まるのを止めた。反乱軍が気付く様子はなく、扉は数センチの隙間を残して開いたままになっている。
「今だ、走れ!!」
タロンの合図と同時に、3人はキーラを先頭に把握している監視システムの位置を避けながら入り口に向かって全速力で走った。ドアストッパーの効果は一時的で、ドアが開きっぱなしになって警報が鳴るのを防ぐが、一度閉じてしまったら二度とチャンスを失う。ゴツゴツした岩の上を半ば飛び跳ねるようにして走ると、一番先にたどり着いたキーラが自動ドアを押し開けて3人は折り重なるようにして中に入った。金属の棒は元の形に戻ると基地の外に転がっていった。
「第一関門突破ね。」
息をつきながら回りを見渡すと、入り口は狭い通路に繋がっていて幸いなことに人はいない。基地とは言っても所詮はコルベットそのものだ。他の基地ほど広くはないはずだ。
「ジャン、基地に侵入した。そろそろ反乱軍の捜索が来るはずだから船を移動させといてくれ。」
『了解。』
タロンがコムリンクからジャンに知らせると、ジャンはずっと連絡を待っていたらしく瞬時に返事が返ってきた。
「誰かが来ないうちに移動しないと。」
3人はブラスターを構えると薄暗い通路を静かに歩き始めた。
タロンたちが侵入して10分も経たないうちに突然船内の警報が鳴った。入り口から通路を真っ直ぐ進み脱出ポットの扉の前に身を潜めていたタロン、キーラ、ステラトの三人のコムリンクにサムの声が入ってきたのとほぼ同時だった。
『気付かれた。発着所は基地の入り口の通路を真っ直ぐ進んだ突き当たりよ。今格納庫の裏に隠れてるから早くして。』
何とかして船のシールド発生装置とステルス装置を破壊しなければならないが、船内を堂々と動き回るわけにも行かず、反応炉にたどり着く前にサムが逃げ出したことが反乱軍にバレてしまったようだ。きっと監視役を殴り倒して脱走しでもしたのだろう。船内が騒がしくなり始め、3人が隠れている通路にも反乱軍の武装したフリートトルーパーが捜索に出て来ている。
「それじゃあ僕はサムと合流するよ。」
そう言ってステラトは素早く立ち上がると陰から少し顔をのぞかせ様子を確認した。作戦通りステラトがサムと合流できれば次の段階に進める。
「敵はまだ俺たち3人の事には気付いていない。驚かしてやれ。」
タロンがそう言うと、ステラトは2人にニヤッと笑うとブラスターを担ぎ直して通路を走って行った。通路で警戒していたトルーパーがステラトに打たれてバタリと倒れる音がする。そろそろここにいれば見つかる頃だ。
「さて、俺たちも行くか。」
タロンがゆっくり腰を上げたのでキーラもつられて立ち上がった。ヘルメット越しに眉間にしわを寄せたタロンが見える。最も、普段から難しい顔をしているので特別と言うことはないが。
このステルス船はコルベット型だがスターデストロイヤーに近い大きさがありおまけに道も分からない。恐らく二人が目標とする反応炉にたどり着くには時間がかかるだろう。今までに無い大きな敵を相手に、すべては作戦通りに動けるかにかかっていた。キーラは肩に折りたたまれて下げていた弓を手に取った。ジャンに改良してもらったよく手に馴染んでいる弓はワンタッチで勢いよくバコンと音を立てて開くと真っ直ぐに弦が張った。今までこの弓を手放したことはない。毎晩一緒に寝ているぐらい、キーラにとっては大切であり、最も信頼できる。命そのものだ。弦がきちんとはまっていることを確認してキーラはタロンの方を向き直った。
「準備完了。」
そう言った瞬間、突然白い壁の後ろから人影が飛び出した。
「お前達、そこで何をしている!」
反乱軍のフリートトルーパーがブラスターをこちらに向けて立っている。まずい、見つかった!すぐに撃たれなかっただけマシだ。キーラは瞬時に腰の筒から矢を抜き弓を構えたが、
バンッ
キーラの腰の辺りの横をすり抜ける光線と共にトルーパーがバタリと倒れ、見るとタロンはブラスターを格好つけて指でクルッと回しホルスターに戻していた。タロンの方が一歩先だったようだ。キーラは今まで見たことのないタロンの俊敏さと生き生きとした顔に目をまるくした。
「すぐに殺さないから殺されるんだ。」
タロンは倒れた反乱軍兵士を見下ろすと、彼が手に持っていたコムリンクをもぎ取ってポケットにしまった。
「不審者を発見してもブラスターを撃たないなんていったいどんな教育を受けてるんだろうな。これでしばらく反乱軍の動きが分かる。今のうちに反応路にたどり着こう。」
そう言ってタロンは軽い足取りで廊下に飛び出すと、キーラに着いてくるよう手で合図した。キーラは回りを警戒しながらも置いて行かれないように小走りでタロンがについて行った。
マルーン基地の本部には基地内の幹部とそれぞれの中隊のリーダーが中央のホログラムテーブルを囲んで集まっていた。最高司令官のミフ・アボットがホログラムで映し出された基地内全体の地図に所々表れている赤い点を目で追った。警備に出ている隊員が持っている発信機だ。普段は静かなのに、今は慌ただしく動いて集まった者は皆目をちらつかせた。
「何者かが基地に侵入した。と言うより我々から迎え入れてしまった。現在船内を警備隊が捜索中だが未だ詳しいことは分かっていないようだ。」
ミフが話し出した。すでに知っている者もいたが、初めて聞く人がざわざわと隣の人と話し始めた中、質問の手が上がった。
「たった一人で侵入を試みたのでしょうか?」
「今のところ医務室に運ばれた彼女以外の目撃情報は入っていない。入り口の扉はすぐ閉まる仕組みになっているし、我々が登録している手形認証がないと内からも外からも開けられないからな。知っての通り──」
突然流れるように話していたミフが口を閉じ、本部の入り口の方に顔を向けた。そのとたん、一人の警備隊がドタドタと駆け込んできた。
「司令官!」
みんなが一斉に入り口の方を見た。警備隊は走ってきたせいかかなり息が上がっていて、途切れ途切れに話だした。
「警備隊が3人やられました、ブラスターで撃たれています。」
「ブラスターで?」
誰かが皆に聞こえるぐらいの声で呟いた。
「司令官、女はブラスターを持っていませんでした。」
医務室で彼女の持ち物を検査した医療チームのリーダーが発言した。
「つまり、彼女が我々のブラスターを奪って攻撃したか、他に侵入者がいるということになる。」
「ええ。しかし艦内では我々はブラスターをスタンモードにしてあります。後者の可能性が大きいかと。」
「なんだと?不可能だ、一体どうやって・・・」
「ドアは女を運び入れたときの一回しか開いていない。それでも艦内に人が侵入したと?」
「一体何を狙ってここへやってきたんだ?やはり情報か?」
集まったメンバーが一斉に騒ぎ出し、口々に言い合った。ミフは手を振って皆を黙らせると、鋭い口調で警備隊に指示を出した。
「捜索を徹底させろ。ブラスターのスタンモードを解除、目標を見つけ次第、致命的を与えない程度に動きを封じろ。ここへ来た目的を聞き出す。」
「了解しました。」
そういうと警備隊は来た道を走り去っていった。
「手強い相手だな。」
司令官が厳しい表情で、しかしどこか面白がっているような口調で呟いた。