スターウォーズ 伝説の賞金稼ぎ 作:Slave0629 らい
廊下を進んだ先は、開けた場所に今来た所を含めて4つの通路につながっていた。縦に長いコルベットの構造を考えると反応炉は船尾の方にあるのが普通だが、サムによると船尾にはドッキングベイもあるはずだった。しかしこれだけ大きな船を動かすのにエンジンの近くに反応炉があったほうが効率的だ。
「じゃあ私が左。タロンは右ね。」
後から着いてきたキーラが4つの通路を見て言った。
「俺は目の前の道が正解だと思うけどな。」
その時だった。微かな音と振動が静かになっていた船内に響いた。正面の道の方から複数の人の足音が聞こえ、走ってこっちへ向かっている。時間がない!
「後で合流だ!」
タロンがそう言い終わるのを待たずに二人は左右の通路に飛び込んだ。
船尾のドッキングベイにたどり着いたステラトはずらりと並ぶXウィングや貨物船の影に隠れながらすでにどこかで作戦の準備をしているはずのサムを探した。ドッキングベイには船の整備をしている人や警備の人以外は誰もいない。警備も手薄で船の間を縫って歩くのはたやすかった。
今まで出会った人の数から考えるとこの基地はかなり小規模だ。機密情報を扱うから出入りする人の数は最小限に抑えているのだろうが、これなら基地を潰すのは思ったより大変ではなさそうだ。とは言えこの基地に50人いたとしてもこっちは5人だ。多勢に無勢なことは変わりないが。タロンたちが船を無効化してくれるまではこちらはかなり不利な状況にある。我々が中にいる状態で船が離陸してしまえばジャンにドッキングベイからレイブンクローで救出してもらうしかなくなるが、それは難しいだろう。船さえ飛ばなくさせれば、こっちにも秘密兵器がある。
「サム、ドッキングベイに着いたよ。どこにいる?」
ステラトは小声でコムリンクに話し掛けた。
『ああステラト。ちょうど良かったわ、今──』
すぐにサムの声がコムリンクから聞こえてきたと思ったその時、何かの雑音と共に声が途切れた。
「サム?」
音の正体は分からないが何かあったに違いない。ステラトはライフル銃を握りしめ、貨物船の影に身を潜めた。そっと顔だけ覗かせて周りの様子を確に認した。サムはこの近くにいるはずだ。しかし数人ではあるが警備の目を避けて探し回るのは危険が大きい。基地が小規模である反面、足音さえ響いてしまうほど船内が異常に静かなのはステラト達にとってあまりにも不利だった。
その時だった。耳を澄ましていたステラトのすぐそばで突然足音が聞こえた。後ろだ!サムか、それとも反乱軍か。ライフル銃の引き金に指をかけ素早く振り返った。
「何っ!?」
ステラトは思わず声を上げた。振り返った目と鼻の先に現れたのはステラトが予想もしない人物だった。バリカンヘアでフライトスーツを身につけている。反射的に引き金を引いたが、相手は素早く動きステラトの弾をよけた。
「誰だ!」
輸送船の裏側に回ったその人物を追いかけながらステラトは鋭くささやいた。小柄だがすばしっこいやつだ。しかし突然相手が隠れるのをやめてブラスターを構えて現れたので、ステラトは何歩か後ずさった。
「二対一は不公平じゃない。」
女性か。格好からてっきり男性かと思っていた。すると彼女のさらに向こう側から足音が聞こえた。
「何者よ。」
声と同時に現れたのはサムだった。
「ステラト!」
合流できた安心感で一瞬顔がほころんだが、サムはすぐに目の前のブラスターを向けている女性に集中した。どうやら彼女に撃たれてけがしたらしい。侵入するときにステラトにブラスターを預けたので、サムは武器を持ってなかったのだ。殺されていないのが奇跡のようだ。
「あなたも賞金稼ぎね。なぜここに?」
「そんなこと教えると思う?」
そのとたん、彼女の手からするりと小型の爆弾が滑り落ちた。それと同時に女性は二人の間から抜け出して走りだした。
「逃げろ!」
ステラトはサムの手を引っ掴むと慌てて貨物船の裏側に周り大きく前に飛び出した。
ドカーーーン!!!
巨大な音とともに爆弾が爆発した。ステラトとサムは爆風の力も借りてぎりぎりのところで隣のXウィングの下に滑り込み降り注ぐ瓦礫と火の粉から身を守った。
「なんだよ、あの爆弾!」
小さい割に威力が尋常じゃない。
「爆発だ!SW1138がやられた!繰り返す!SW1138の付近で爆発だ!」
近くにいた警備隊がコムリンクで仲間に知らせる声が聞こえる。早くここから離れなくては。
「サム、行かないと!サム?」
しかし隣にいるはずのサムから返事がない。ステラトは慌てて振り返った。見るとステラトの足元が血で濡れている。
「サム!そんな・・・!」
ステラトはサムを抱え上げた。肩に細い破片が刺さってそこから血が滴っていた。
「大変だ・・・!」
ステラトが刺さっている破片を抜くと、サムはうっすら目を開けた。
「ステラト・・・」
ステラトはサムの傷口を手でふさいだ。強く押さえると何とか血の流れが止まったが、白っぽいステラトのグローブが真っ赤に染まった。
「サム!」
「一人で行って。後で行けたら行く・・・」
そこまで言うとサムはぐったりと力尽きた。冷たい手がステラトの膝から滑り落ちぶらりと垂れ下がった。
「嘘だろ・・・」
ステラトは何も考えられないままふらりと立ち上がるとブラスターを引きずってXウィングの下から出た。横たわるサムを何度も振り返りながら、ドッキングベイの安全な場所を探して足を速めた。
「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
私なら止まらなくても撃つわよ、と心の中で怒鳴りながらキーラは体を半分ねじると追っ手に向かって矢を放った。残り46本。矢は後ろで時間差で爆発し、反乱軍が悲鳴を上げる。キーラは追っ手を足止めしたことを確認し、先を急いだ。しかし、
「一緒に来てもらおうか。」
突然近くから声が聞こえた。ふと右を見ると、部屋のドアが開いていて、そこに反乱軍のフリートトルーパーが一人立っていた。まずい!キーラは慌てて振り返ろうと左を向くと、左側の部屋からもトルーパーが一人現れた。続いて廊下の前方二カ所、後方二カ所の部屋からもトルーパーが現れ、キーラは完全に包囲されてしまった。
「武器を床に置いて手を上げろ。」
前に立ちはだかった背の高いトルーパーが言った。キーラは弓をそっと地面に置くと、両手を顔の横に持っていった。こういう経験は一人で仕事をしていればよくあることだ。キーラはマンダロリアンの訓練を思い出した。マンダロリアンは普通一対一で決闘をするが、一方このアーマーには一人で多くの敵に応戦するための道具も揃っている。それに全ての操作はヘルメットでの音声操作なので相手に気づかれる心配もない。相手はこのアーマーについてどれぐらい知っているだろう。キーラが口を開くと、ヘルメットの横から伸びているセンサーがTバイザーの前にガチャンと下りた。センサーで後ろも見えるようになった。敵は前に2人、左右に一人ずつ、そして後ろに3人。訓練でも行った設定だ。
「拘束しろ。」
目の前のトルーパーがそう指示を出し、左右にいた二人が手錠を持って一歩踏み出したその時、キーラは動いた。
バキューーーン!!
上げていた両手を歩み寄ろうとした二人に向け、リストガントレッドでまず二人倒した。前後のトルーパーがすかさずブラスターを構える。彼らが引き金を引くと同時に、キーラはジェットパックを作動させた。勢いよく上に飛び出したキーラは、あまり高くない天井にゴンッと鈍い音を立てて頭をぶつけたが、ヘルメットのおかげで何とか姿勢を保った。
「うわっ!」
標的がいなくなったブラスターの光線は向かい側にいるトルーパーに一直線に進み、相撃ちで二人倒れた。素早く着地し、リストガントレッドで残りを倒そうとした時、突然艦内に放送が流れた。一瞬周囲の空気が固まった。
「0608を実行する。衝撃に備えよ。0608を実行する。」
「え、何?」
キーラは思わず手を止めてトルーパー達を見た。トルーパーがポケットから両端にフックのついた紐のようなものを取り出し、片方を腰のベルトに繋いでいる。そして素早くもう一方を壁にいくつかついている小さいリングのようなものに取り付けた。その行為でキーラは何が起こるのか理解したが、すでに遅かった。
ガタンッ
突然船が揺れ、体が浮くような感覚が襲った。床が傾いている。キーラは急いでジェットパックを起動させようとしたが間に合わず、そのまま床を転がるとほぼ水平になっていた廊下の壁にドサッと落ちた。紐で船に体を繋いだ反乱軍の兵士達は上からぶら下がっている。縦に長い巨大なコルベット型のステルス船はコックピットを上にして立ち上がっているようだった。なるほど、何も知らないよそ者は、もしあのまま中央の通路にいたら真っ逆さまに一番下のドッキングベイまで落ちていたと言うことか。ガタンと船がもう一度大きく揺れ船が完全に地面に垂直になったようだ。このままでは反乱軍に捕まって下まで連れて行かれるのが落ちだ。通路の奥に行けば上下に通じる秘密通路的なのがあるかも知れないが行く手はトルーパーに塞がれている。逃げ場は一つ。キーラはトルーパーの思惑に反して、吹き抜けになった中央の通路に向かって走った。
「ゲッ、高っ。」
一瞬遙か下に見えるドッキングベイからの高さにひるんだが、迷っている暇はない。反乱軍が追ってくる一歩手前でキーラは何もない空間へ大きく飛び出した。
レイヴンクローを反乱軍の基地から離れたところに向けて操縦していたジャンは、ステルス船の壁に貼り付いていた“太っちょ”が何かを感知し信号を送ってきたのでハンドルから手を離し手元のコンピューターを見た。“太っちょ”が感知したのは強い振動だった。地震だろうか。ジャンは“太っちょ”を遠隔操作して基地から引き離すと、基地全体を熱感知器でスキャンさせた。少しずつ送られてくるホログラム映像は先ほど見たものとは明らかに様子が違った。
「おいおい、形まで変えるのかよ。」
“太っちょ”を基地のある平地を一周させると、その全容が映し出された。さっきまで地面に横たわっていたはずのコルベット型ステルス船はコックピットを上に空高くそびえ立っていた。侵入者を罠にはめたのだ。しかしキーラはジェットパックを背負っているし、あのタロンなら気合いで飛べるだろ。ジャンはタロンが持っているコムリンクに呼びかけた。
ちょうど取り囲んできたトルーパーを倒し通路のさらに奥へ向かおうとしたところで船が揺れた。タロンは中央の通路に身を投げ出されないようにつるつるの壁のちょっとした出っ張りに何とか掴まり持ちこたえた。
『タロン、無事か。』
基地が動いたことを察したジャンから連絡が入り、ひとまず互いの無事を確認しホッと息をつく。
「俺は無事だ。ほかの三人もたぶん大丈夫だろう。ステラトとサムはすでにドッキングベイに着いているはずだ。」
『いいか、よく聞け。状況は厳しいが有利になった面もある。船の裏が見えるようになってエンジンの位置が分かりそうだ。“太っちょ”が送ってきた映像を今解析してる。』
「なるほど。」
やはりジャンは有能だった。船を立ち上げたと言うことはエンジンは船の底に地面に向かってついている可能性があるとのことだ。ということは反応炉もその近くにあるのではないかと推測し太っちょで詮索しているらしい。ジャンを連れてきたのは正解だった。
『よし、出たぞ。エンジンがコックピットの近くと船尾のドッキングベイに二つついている。今動いたのはコックピットの方だ。反応炉はちょうどその間の船底ほぼど真ん中にある。そこに向かって進め。』
船底か。だいたいの場所が分かりなんとかたどり着けそうだ。
「了解。ジャン、また何か分かったら知らせてくれ。」
タロンはコムリンクをしまうと通路を先に進んだ。どうやって反応炉まで行こうかと船内の様子を探りながら、タロンはジャンに聞いたことをレッドに伝えようと再びコムリンクのスイッチを入れた。
「おいレッド、聞こえるか。」
しばらく待ったが返事がない。こんなときにヘルメットを脱ぐはずはないから聞こえているはずだ。
「レッド、何をやってる。返事をしろ。おい、嘘だろ。」
タロンは反対側の廊下にいるはずのレッドの様子を見に慌てて中央の通路に向けて走ったが、途中でふと立ち止まった。ジェットパックで上へ向かったらしいレッドが突然すごい速さで上から落ちてきたのだ。
「何っ!」
下に落ちる前に助けなければ。でもどうやって。先ほど倒した敵反乱軍がロープか何かを持っているかも知れない。タロンは転がっている遺体の一つに慌てて近づいたが、しゃがみ込もうとしたタロンの肩をブラスターの光がかすめた。反乱軍だ!タロンは振り返りブラスターを撃ち返した。しかしとっさのことで光線は外れ壁に当たって消滅した。ふとブラスターを撃ってきた相手を見た。それは反乱軍のフリートトルーパーではなかった。
「タロン。」
その男は聞き覚えのある低い声でタロンの名前を吐き捨てるようにつぶやいた。頭に分厚く巻いたターバンに、茶色く色あせたバトルアーマー。そして今タロンを撃ったものであろう、手にした細長いヘビーブラスター。
「デンガー───」
タロンは唸るように言い返した。彼とはクローン戦争中に知り合ったが、決していい思い出はない。あの頃のデンガーは最強だった。当時はアーマーにしゃれた模様を入れており、よく冗談を言う奴だったのでタロンはなめてかかっていたのだ。彼の賢さと残虐さは銀河中にその名を広め、今では最も危険な賞金稼ぎとして数えられている。
クローン戦争時、まだ一匹狼だったタロンは賞金を巡ってデンガーと対峙した。互角に戦ったが最後には形勢不利になり逃げ去ったのでその後デンガーが賞金を受け取ったのかどうかは分からない。彼の頭に人工回路が埋め込まれていると知ったのはその時だ。
「まさかおまえもこの仕事に呼ばれていたとは。」
「争っている暇はないんだ。ここは道を譲ってくれないか。」
「相変わらずの臆病者だな、タロン。分かってるんだろ。お前は俺に勝つことはできない。それにどうやらお前はチームを組んで仕事をしているようじゃないか。」
タロンはデンガーの相手を小馬鹿にした言い方に腹が立った。前にタロンに勝ったことでいい気になっているのだろう。しかしその一方、戦った際に人工回路の一部を壊されたことは未だに許せないらしい。
「チームを組むことで得られたこともある。」
「一人前の賞金稼ぎは一人で仕事をこなす。」
デンガーはまだブラスターの引き金に指をかけている。いつそれを引くかとタロンはデンガーに受け答えしながらも集中した。二人の間を包む空気は周りの世界から隔離し妙な緊迫感が走った。お互い目を反らさなかったがこれ以上にらみ合えば火花が散りそうだ。
「一人前でなくて何が悪い。」
デンガーとタロンはほぼ同時に引き金を引いた。
ステラトの目の前には奇妙な光景が広がっていた。数々のスターファイターや貨物船が壁に貼り付いている。ラムダ級シャトルやニュー級アタックシャトル、Xウィング、Yウィング、そしてスカリフの戦い以降姿を見なかったUウィング(個人的は一番お気に入りだ)も、全て壁、というか垂直になった床に固定されている。ドッキングベイの何カ所かに脚立が用意してあり、この状態でもビークルに乗り込み離陸できるようにしてあった。敵ながら感心する。この僕を超える天才が現れたようだ。
突然背後でドサッという音の後に耳をつんざくような大きな音が聞こえステラトはくるりと振り返った。上から何かが落ちてきたのだ。そこには先ほどまでなかった青いシャツを着た反乱軍兵士の遺体がいくつか。それに遠目からも見てすぐに分かった独特な形の金族の塊。暗殺ドロイドだ!すると直後にドッキングベイの左右から反乱軍が次々現れ、落ちてきたドロイドに向かった。
「ああまずいな・・・」
もちろん心配したのは自分のことでも暗殺ドロイドのことでもない。反乱軍はIG-88がどんなに残酷で危険な奴かを知らない。奴を知っている者なら、警戒なしに近づいたりしないのだから。人間に似た形のそのドロイドは予想も付かないような動きをする。
「おい、ドロイドだ。」
「壊れてるだろ。きっと賞金稼ぎどもが送り込んできたんだ。」
「帝国のドロイドだったら貴重なデータが得られるかもしれないぞ。本部に届けよう。」
ステラトは壁に貼り付いたXウィングによじ登り、遠目から様子を見守った。2、3人の反乱軍兵士がドロイドを動かそうとさらに近づいたとき、突然倒れていたドロイドがあり得ない速さで立ち上がった。
「うわっ!」
反乱軍が驚いて飛び退いたときにはすでにIG-88は2丁のブラスターを構え反乱軍に向けていた。
「逃げろ!!」
IG-88がブラスターを乱射し始めた。腰から上を360度回転させながら四方八方に光線をまき散らす。ステラトのいる方にも飛んできて、Xウィングの影に慌てて身を隠した。反乱軍兵士は手も足も出ないうちに一瞬で倒された。第二弾の反乱軍が現れる様子はない。ここへ来るよう指示された不幸な兵士たちはこれで全部のようだった。静かになったドッキングベイの中央に立ち尽くすIG-88に見つからないようステラトは呼吸をするのもやめてその場に固まった。IG-88はステラトとは反対側へ歩き去って行ったようだった。とりあえず一安心。大きく息を吸った。
しかしステラトはこの状況が自分に非常に不利なことに気づいていた。すぐにも反乱軍がこのドッキングベイに集まってくるに違いないし、IG-88もまだ近くにいる。長い間ここにとどまるのは危険だ。反乱軍の逃げ道を断つためにまずはこのビークル達に爆弾を仕掛け破壊しなければいけない。しかしビークルが壁に貼り付いている今、これら全てに爆弾を仕掛けるのは難しかった。それに、サムもいない。あの時サムを殺した賞金稼ぎは何者だったのだろう。それにIG-88。なぜ偶然にも同時にこのマルーン基地に賞金稼ぎが集まっているのだろう。
やらなければいけないことは明確だった。全部の船に爆弾を仕掛けるのは無理でも、一つ置きなら間に合うはずだ。タロンとレッドがなんとかステラトはジャンの巨大ブラスターを地面に置くと、小型爆弾の詰まったカバンを肩にかけ直し一番端のXウィングから仕掛けにかかった。