スターウォーズ 伝説の賞金稼ぎ   作:Slave0629 らい

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伝説の賞金稼ぎ 第6章

 ジェットパックは一瞬のうちに起動した。しかし最初の噴射で何かがおかしいとキーラは気づいた。いつもやっているはずなのにバランスがうまくとれない。早くどこかに着地しなければ。しかしそのどこかを見つける前に、突然ジェットの勢いが衰え、消えた。こんなこと初めてだ。まだ燃料は切れていないはずなのに。一瞬体が空中で浮き、目の前で白い壁が静止した。

 

「げっ、」

 

次の瞬間、キーラは背中から真っ逆さまにドッキングベイに向かって落下していた。

 

「うわあああああ!!!」

 

キーラは肩にかけた弓を何とか掴もうと体をひねったが、弓は手の届かないところに流されてフックの付いたトリックアローを放つどころか余計に速いスピードで落下している気がする。このまま落ちたら間違いなく気絶、いや、死だ。何とか弓を手に・・・その時、キーラの横を何か黒っぽいものが猛スピードで通りすぎた。今のは何?

 

バシッ

「え?」

 

突然キーラの腕が捕まれた。全てが一瞬の出来事のはずなのにまるで時間の流れが止まったかのように今まで流れていた景色が逆向きに変わり、何者かに上に引っ張られている一連の動作がゆっくりに感じた。キーラはそっと上を見た。そして驚きに目を丸くして息をのんだ。まさか。なぜ彼がここに?腕が邪魔して少ししか姿が見えないが、それが誰だかすぐに分かる。キーラの憧れの的であり、かつて少しの間だけ共に戦った、銀河最強の賞金稼ぎ。キーラと同じような形の緑色のアーマーで身を包んだその姿は銀河中の賞金稼ぎで知らないものはいない。ボバフェットがそこにいた。

 ボバはキーラをつれていくつ目かの横に通じる通路に着地した。アーマーを身につけていてかなり重かったはずのキーラを軽々放り投げてキーラは壁に思いっきり頭を打った。(今日で何度目だろう)

 

「痛たたた」

 

ヘルメットの上から頭をさすりながらキーラは通路の端に立っているボバ・フェットの方へ向き直り、ゆっくり立ち上がった。背中、いや、ジェットパックを向けて立つその姿は数年前に見た彼と変わっていない。しかし緑色のマンダロリアンアーマーはいくつもの戦いを経てさらに傷を増したように思えた。

 

「なにやってるんだ。」

 

ボバはキーラの方を向かずにあきれた口調で言った。変成器で声が変えられているが、ボバの声に変わりはない。懐かしさに今ある状況も忘れ心が躍った。

 

「いや、なんかジェットパックが壊れちゃったみたいで・・・」

「ああ、見れば分かる。」

 

キーラはかっこ悪い姿を見せてしまったことに少し落ち込んだが、それよりも彼に助けられたことが嬉しかった。あまり他人のことを気にかけたりしないと分かっているから余計に。しばらく通路の縁から下の様子を見ていたボバが突然振り返って通路の奥に向かって早足で歩き出したので、キーラはちょこちょこボバを追いかけながら何か話しかけようと慌てて口を開いた。

 

「でもどうしてここに?そんなことより、会えて嬉しいわ。4年ぶりよね、積もる話が───」

「黙ってろ、反乱軍に見つかるぞ。それよりこっちが聞きたいな。船もろくに操縦できないお前がどうやってここに来た?何のために。」

「もう操縦できるってば!」

 

ボバは通路の奥まで来ると足を止めて壁に身を寄せ、誰もいないことを確認してキーラの方を振り返った。

 

 キーラはかつて2年間、ボバにマンダロリアンとしての訓練を受けていたことがある。武器の扱い方や船の操縦の仕方は(当時は全くうまくいかなかったが)全てボバに教わったのだ。このマンダロリアンアーマーもその時に作ったもので、それ以来ずっと身につけている。ボバと出会った経緯は話せば長いがよく覚えている。それ以来ボバはキーラがこの世で最も尊敬する人物であり、目指すべき頂点だった。だから会うとつい興奮してしまうのだ。

 

「仲間の賞金稼ぎと来たの。帝国からの依頼よ。」

 

キーラはできるだけ大人っぽく聞こえるように落ち着いて答えた。

 

「仲間など信用するなと言ったはずだぞ。」

 

ボバは吐き捨てるように答えた。ボバに訓練されていた頃いつも、誰も信用するな、と言われていた。まだ未熟なキーラはあまりよく理解していなかったが、きっとかつて仲間に裏切られてひどい経験をしたに違いない。ボバは自分の生い立ちを全く話してくれなかったため想像の範囲でしか分からなかったが。

 

「しかし、帝国からとはな。おそらく俺の受けた依頼と同じなのだろう。」

「同じって?」

 

その時、突然キーラのヘルメットの内側に付いているコムリンクが反応した。

 

「待って、仲間から。」

 

キーラはボバにそう言って、コムリンクからメッセージを受け取った。

 

『レッド!無事か!無事なら返事をしろ!』

 

息切れしたタロンの声が聞こえてきた。かなり焦っている様子だ。

 

「無事よ。何かあったの?それより今どこに───」

『お前が反対側の通路から落ちるところを見たんだ、しかし無事ならいい。』

なるほど、タロンが焦っているのはそのせいだったのか。

『今どういう状況だ?』

「ああ、えーっと、」

 

キーラはチラッとボバの方を見た。言った方がいいのだろうか。もしかしたらボバが味方に付いてくれるかもしれない。しかしそれを察したらしいボバは指を立てて自分のことは言うなという風に無言で示した。

 

「どこかの通路にいるわ。さっきいた位置より下だと思う。」

『分かった。ジャンから反応炉の位置が特定できたと連絡が入った。船底の中央だそうだ。』

「分かった。」

『ああそれと、デンガーという頭にターバンを巻いた賞金稼ぎを見なかったか?』

 

キーラは一瞬なぜタロンがそんなことを聞くのか不思議に思った。

 

「デンガー?いいえ、見てないわ。」

 

キーラがそう答えるとタロンは通信を切った。

 

「デンガーだと?」

 

キーラが話し終わったとたん、ボバが急に尋ねてきた。ボバは何か考え込んでいる。キーラより何倍も頭がいいからきっと自分には分からないことだ。だがキーラはこうやって無言で考え込んでいるボバが好きだった。立っているだけなのに、威厳と聡明さを感じさせる。

 

「なるほど、つまりこれは帝国から俺たちに向けたテストってことか。」

「テスト?」

「ああ、俺たちは別々に同じ仕事を依頼された。始めからおかしいと思っていた。こんな仕事一人の賞金稼ぎに任せるようなものじゃない。帝国が自ら潰しにかかった方が早いからな。つまり、不可能な仕事で賞金稼ぎたちを戦わせて生き残った奴らは報酬と共に次の仕事を与えられる。ここまで来るのにすでに何人かは失敗してるはずだしな。」

「なるほど・・・」

 

そう考えればボバとこんなところで鉢合わせたのにも納得がいく。きっとタロンもそのデンガーという賞金稼ぎにこの基地の中で出会ったのだろう。帝国からのテストか。ということは、今はボバともライバルというわけだ。かつての師匠がライバルだなんて、なんだか一人前になったようでキーラは胸が躍った。ボバは成長したと思ってくれているだろうか。

 

「お前はもう行け、キーラ。俺はやるべきことがある。」

「あ、でもまだ話が・・・」

 

次にいつボバに会えるか分からないと思うと出来るだけ長く話したかった。しかし自分とてそんな余裕がないことは分かっていた。タロンと反応炉で合流しなければならない。

 

「これが終わったら話ぐらいいくらでも聞いてやる。」

「本当に!?」

「生きて帰ってこれたらな。」

 

その余裕たっぷりの言い方は、相手がキーラであっても容赦しないということを暗示させていた。キーラは一瞬ボバの本気を想像してギクッとしたが、意を決して前を向いた。ボバはもう中央の通路に向けて歩き出していた。

 

「あ、ボバ。助けてくれてありがとう。」

 

ボバは一瞬振り返ったが、そのまま無言で通路の上へと姿を消した。

 

 

 「レッド!こっちだ!」

 

タロンに呼ばれ、キーラは無事反応炉の前で合流した。

 

「これでステルス装置も壊れるし船も飛べなくなる。そうなればこっちのもんだ。」

 

タロンとキーラは巨大な反応炉を前にして立ち尽くした。いくつもの電源ケーブルや機械が混み合っており、その間を縫うように張り巡らされた足場を歩くことができるようだった。

 

「問題は、ここを壊したらすぐに反応炉から離れなきゃいけないってことね。きっと連鎖反応で爆発する。」

「デトネーターを仕掛けよう。」

 

反応炉へと足を踏み入れながら話すと周りを取り囲む金属板に声と足音が反響し反応炉中に響き渡った。二人分以上の足音が聞こえている気がする。

 

「おい、誰かいるのか?」

 

至る所にある壁や機械に跳ね返ってこだました足音を聞き、タロンがそう尋ねた。

 

「違うわ、響いてるだけよ。」

「いや、もう一人いる。」

「え?」

 

タロンが急に足を止め、キーラもつられて止まった。余韻が残る中、微かな足音が、確かに聞こえてくる。姿は見えないがそう遠くない。

 

「見えても撃つなよ。どこかに当たったら大変だ。」

 

タロンが横で囁いた。この小さな足音をよく聞き分けられたものだ。緊張感あふれる面持ちで壁に身を寄せ、相手が居る方向を特定している。キーラもヘルメットの耳の横から伸びたセンサーをおろし、前後に広がる視界と音に集中した。ピッピッと反応炉の装置が機械的なリズムを刻み、足音の相手はキーラ達が止まったことに気づいたのか先ほどよりいっそう忍び歩きをしているようだ。

 

 「おい。」

 

タロンが突然キーラに話しかけたのでキーラは小さく飛び上がった。

 

「それ、置いてけ。壊れてるんだろ、邪魔になるだけだ。」

 

そう言ってタロンはキーラのジェットパックを指した。

 

「ああ、そうね。」

 

キーラはジェットパックを背中から下ろすと壁に立てかけた。ボバと訓練を始めてからずっと使い続けていた赤とシルバーのジェットパックは寿命を終えた。キーラは少しだけ懐かしいような悲しそうな顔をしたが、ヘルメットに隠れて誰にも見えることはなかった。

 

「こんな時に壊れるなんて運が悪いな。」

「昔から不幸体質だから。」

「なんだそれ。」

「反応炉に2人発見。直ちに拘束する。繰り返す、反応炉に2人発見・・・」

「あっ」

 

相手があまりにも姿を現さないので気を抜いていた。気づけば反乱軍のトルーパーがタロンのすぐ横まで来ていてブラスターを向けていた。

 

「ちっ」

 

タロンは素早く動いた。ポケットに隠していたサーマルデトネーターを取り出しスイッチを入れると反応炉の中央に向かって思いっきり放り投げた。その隙にキーラは弓でトルーパーを殴り倒した。しかし、

 

「いたぞ!」

 

さらに2人のトルーパーが姿を現した。

 

「出口に向かって走れ!」

 

反応炉の中でブラスターを撃ってこないことは明らかなので追いかけっこをしたい気持ちも山々だったが、サーマルデトネーターが爆発すればおしまいだ。タロンとキーラは一斉に来た道を全速力で走った。それも前から迫り来る反乱軍を足場の下に突き飛ばす勢いで。突き落とされた反乱軍の悲鳴が反応炉に響き渡る。

 

「出たら右へ曲がるぞ!」

「そっちは反応炉の真上でしょ!真ん中の通路に飛び降りる!」

「忘れたのか、ジェットパックは壊れたんだろ!」

 

2人はぎゃあぎゃあ言いながら走り、なんとか反応炉から出て中央の通路に向けて進んだ。

 

「まだ秘密兵器があるもんね!」

 

キーラは様々な種類の矢の中でも一番太いものを取り出した。

 

「なんだそれは。」

「まあ見ててよ。」

 

矢を弓につがえ何やらスイッチのようなものを発動させながら、キーラはそれを壁についているフックへ向けて放った。

 

ガチャン

 

壁に刺さる直前、矢の先が開いて鉤のような形になり、その先っぽが見事にフックに命中してひっかかった。よく見ると矢の後ろから黒いロープが伸びている。

 

「ほら、早く捕まって!」

 

キーラがタロンに向けて手を伸ばしたことで、タロンは彼女が何をしでかすつもりなのか察した。

 

(これは、いわゆるターザン・・・)

 

実は高いところが苦手なタロンは少しだけ恐怖で足がすくんだが、後ろから反乱軍のトルーパーが迫ってきているのでそうは言っていられない。キーラの手をとった瞬間、体ごと強く引っ張られ、ふわりと浮く感覚を覚えた。そして気付いたら重力に任せて縦になった船の中央に通路を真っ逆さまに落下していた。

 

「うわっ!」

 

ロープが伸びきると同時にキーラは強く体を振って下の通路に着地した。タロンは一生懸命になって振り回され、顔を床にしこたま打ち付けた。

 

「痛った!!」

「男なんだからちょっとは我慢してよ。」

「そういう問題じゃないだろ!絶対鼻折れたぞこれ・・・」

 

しかしそんな言い争いも、上から降ってきた凄まじい爆発音にかき消された。一度目の爆発が起こり、続けて連鎖的に何度も巨大な爆発が船全体を大きく揺らした。

 

「どうやら反応路が爆発したようだ。」

「ってことは私たち船を無効化したってわk───」

 

キーラが言い終わらないうちに突然船の床がグラリと揺れた。二人は吹っ飛ばされないように慌て壁にしがみついた。

 

「船がっ!」

 

先ほどの爆発で船がバランスを崩し、立ち上がっていたのが横に倒れていっているようだ。

 

「衝撃に備えろ!」

 

今度は船が立ち上がったときの比ではない。エンジンが機能していないのでこの巨大な物体が硬い岩盤に打ち付けられる衝撃が直に伝わってくるはずだ。そこらかしらから悲鳴が聞こえ、船内は地獄図状態である。

 

 そんな中、キーラとタロンのコムリンクに状況にそぐわない呑気な声が入ってきた。

 

『お見事、船を無効化したようだな。』

「何がお見事だ!今の状況が分かってるのか!」

『ああ。“太っちょ”からの映像が

バッチリ送られてきている。大丈夫だ、その船の外壁は全体がチタニウム加工を施されている。それぐらいの衝撃には耐えるだろう。それにここの重力はそう大きくないしな。』

「なんでもいいが、船は完全に無効化されたんだな?」

『ああ、エンジンが機能を失った。これで暴れ回っても大丈夫そうだぞ。』

「よし、では後は作戦通りだ。」

 

コムリンクが切れ、船は完全に元通り横向きに倒れた。どうやら崩れることはなかったようだ。

 

「よし、ここからは別れるぞ。お前は本部を探せって俺はコックピットの方へ向かう。」

「了解。」

 

キーラとタロンは頷き合うと、互いに背を向けてその場を後にした。

 

 

 

 船が横に倒れた衝撃を床に固定されていたXウィングのコックピットの中で耐えていたステラトは、秘密兵器を抱えてドッキングベイの中央に向けて歩いた。貨物船の一つを陰にして作戦の準備に取り掛かる。本当はサムもこの場にいるはずだったが、一人でやる以上周囲への警戒を怠れない。

 

 ジャンに渡された兵器は、巨大なブラスターのような形をしたもので、床に固定して扱う銃の一種だ。銃口から飛び出すそれは光線や実弾ではなく円盤状に広がるエネルギー波。ようは小型サイズミックチャージだ。本来のサイズミックチャージは小惑星をも破壊する威力を持つが、これはせいぜいこのドッキングベイ内の船を破壊する程度。ブラスターを中心に円形波が広がるので、その中心にいる者には影響を及ぼさない。つまりこれは使う者を巻き込まない非常に優れた爆弾なのだ。特殊な周波数のエネルギー波はまわりの爆発物の威力を増幅させる力を持ち、ステラトがあらかじめ仕掛けたいくつかの爆弾を同時に爆発させればドッキングベイ内にいる人や船は一発で片づく。

 後はここに出来るだけ多くの反乱軍を引き寄せるだけ───

 

 ステラトはドッキングベイ内に何人かの足音を確認し、隠れていた貨物船の後ろからタイミングを見計らって姿を現した。ドッキングベイ中央に、足元に巨大ブラスターを構えて立つステラトの姿は非常に目立ち、反乱軍の兵士はすぐに気づいた。

 

「侵入者を発見!応援を頼む、ドッキングベイ内に侵入者を発見!」

(そうだ、もっと連れてこい・・・)

 

ステラトは念のため背中に背負っていたブラスターライフルを手に取り引き金に指をかけながら、内心で自ら罠にはまってくる反乱軍にほくそ笑んだ。

 

「そこを動くな!」

 

応援のトルーパーも数を増やし、前と後ろの両側から反乱軍が迫ってくる。おそらく全部で30から40人程度。IG-88にやられたときのことを思ってか、慎重に近づいてくる。

 

「武器を下ろして手を頭の後ろに組め!」

 

先頭にいたトルーパーがステラトに命令してきた。

 

「僕が易々と従うと思う?」

 

ステラトはトルーパーの方を向きながらも、常に足元の小型サイズミックチャージに注意を向けていた。どのタイミングで使おうか。爆弾のスイッチも同時に押さなければいけないから怪しまれないように動こう。

 

「かなり焦ってるな。船が使えないし、もうここしか逃げ場がないのかな。でも残念、Xウィングは使えないよ。」

 

ステラトは反乱軍全員に聞こえるように大声で話しながら、さり気ない素振りで片手を爆弾のスイッチが入っているはずのポケットに突っ込んだ。しかし、

 

(しまった・・・!スイッチはサムが持ってるんだった!)

 

背中に冷や汗が流れた。万事休す。すでにサムの行方はわからないし、一か八かでサムが生きていて戻ってきてくれるのを待つか───

 

「多勢に無勢だ、賞金稼ぎよ。帝国からの依頼か?馬鹿なものだ。たった数人で乗り込んでくるなど。」

「そのたった数人に船を無効化されちゃってるけどね。」

 

ステラトは何とか時間稼ぎしようと話を続けた。先頭のトルーパーは威嚇するように一歩、一歩とステラトに近づいてきた。

 

「今や帝国では闇の帝王がシスの脅威を振るっているが、残念ながらお前は我々を脅かす対象ではない。シスの側にいる普通の人間だ。」

 

ステラトとトルーパーは数メートルの空間を挟んで向かい合っていた。

 

「奴らの側かもしれないが、一秒たりとも思うな。僕が、奴らの一人だなんて。」

 

その瞬間、反乱軍が目に見えて怯んだ。その隙に確認できた上の方でちらりと動いた人影にステラトは全てをかけた。

 

『今行く。』

 

 

 「なーんてね!僕がシスなんて信じてるとでも思った?」

 

ステラトはそう叫ぶと、自分の元に人影が飛び込んで来るのと同時に床に固定してあるブラスター型サイズミックチャージの引き金を引いた。

 

ブオォォォォォォン

 

独特な振動音とともに青白いエネルギー波が一気にステラトたちを中心に広がった。それと同時に、ドッキングベイをぐるりと囲むように仕掛けてあった爆弾が巨大な音を立てて爆発した。反乱軍は叫び声を上げて逃げ惑うがそのエネルギー波の広がるスピードに勝てるはずはなく、一瞬のうちに一掃された。

 その波の中心で、ステラトは自分の傍らに爆発のスイッチを握りしめて佇む友の姿を信じられない思いで見つめていた。

 

「サム!生きてたのか!!」

「勝手に死んだことにしないでよね。後で行くって言ったでしょ。」

 

サムは大量に出血し見るからに貧血で、痛々しいほど青い顔をしていたが、ステラトは彼女が生きていただけで十分だった。きっとどこかでタイミングを見計らっていたのだろうが・・・

 

「サム、今上から降ってこなかった?」

「ああ、あの天井の蓋みたいなところの中にいたのよ。」

 

当たり前のように言うサムにステラトは目を丸くした。

 

「あの高い天井から自由落下してきたって言うのかい!?」

「まさか!レッド会ってにこれを渡されたの。何かに使えるかもってね。まさかこんなにすぐ役に立つなんて。」

 

そう言ってサムがステラトに差し出したのは、両先にフックとロープがついた矢だった。

 

「レッドに感謝しないと。」

 

ステラトはそう言ってサムに笑いかけると、二人そろってドッキングベイを出るため出口に向かって歩き出した。


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