鎮守府のみかんの木   作:おかぴ1129

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登場植物紹介

温州みかん
学名:Citrus unshiu ミカン科の常緑低木




1.自己紹介

 私はみかんだ。海が見えるこの地に植えられ、もう10年ほどになる。この土地の地主が気まぐれにホームセンターで苗木の頃の私を見つけ、そして私は購入されてこの土地に植えられた。

 

 地主は私のことを大層かわいがってくれたが、私が充分に成長して実をつけるようになる前に、この世を去ってしまった。それが5年ほど前の話だろうか。

 

 その後、私が腰を下ろすこの地は軍に買い上げられ、『鎮守府』とかいう施設になった。なんでも海から化物が攻めてくるとかで、その前線基地が必要になったんだとか。そのためには、私が鎮座するこの地は、まさにおあつらえ向きだったそうだ。

 

「よっ。お前さんはここの先輩だな。一つよろしく頼むよ」

「みかんさん。よろしくおねがいするのです」

「どうかよろしくお願い致します」

 

 私の周囲での工事が終盤に差し掛かった頃、こんな風に三人組の男女が私に挨拶に来ていた。男はあの地主とくらべて若干若いが、それでも二人の女の子に比べて、随分と歳が離れているようだ。小さい子の父親なのかもしれない。

 

「ちょっと提督、やめてください……」

「いいじゃないの先輩なんだから〜」

 

 男はそう言って、私の幹をひたすらバシバシ叩いていた。正直、痛いからやめてほしかったのだが……

 

 一方2人の女の子たちは、セーラー服といったか……似たような服を着ていた。背が高くて髪が黒い方はメガネを掛けていたな。小さい方は茶色い長髪を後ろで上げていた。二人共とても優しそうな子で安心したもんだ。

 

 やがてこの『鎮守府』とやらにも、一人、また一人と新顔が増えていった。私の前でやたらとポーズを決めて『ふふ……怖いか?』と凄んできたり、頭のてっぺんから生えた妙な触手で私の枝をパシンと叩いて、『んー……まだうまくアホ毛を使えないクマ……』とよく分からないことを言われたり……

 

「みかんさん。はじめまして。赤城と申します。……あなたの果実、楽しみにしております。キリッ」

 

 赤い弓道着が眩しい、黒髪の背が高い女性にこんな風に妙に熱い視線で見られたり……まぁ色々あった。

 

「みかんとやら。私はネルソン級戦艦2番艦のロドニーだ。暫くの間、この鎮守府の世話になる。……貴公の果実は美味だと聞いた。それまで私がここに所属していられたときは、その果実、存分に堪能させていただこう」

 

 こんな感じで、鎮守府は少しずつ発展し、それに合わせて、ここに所属する人間も増えていった。女の子ばかりだというのが少々解せなかったが……まぁいい。何か事情があったのだろう。

 

 やがて人間と深海棲艦? だかが争っていた戦争は終焉。そしてこの鎮守府は鎮守府ではなくなり、人間と深海棲艦の交流の場へと、その姿を変えた。

 

 だが、ここにいるみんなの生活は変わらない。のどかな……少なくとも私の前では、とてものどかな生活を、変わらない顔ぶれのみんなが営んでいた。

 

 無論、私も変わらずここにいる。ここにいて、今も変わらず、みんなを見守り続けている。

 

「みかんさん。おはようございます。今年ももうすぐお花を咲かせてくれますね。……今年もたくさん、みかんを付けてください」

 

 ただ一つ。変わったのはみんなの仕事だ。戦争が終わったから、仕事場を海から陸へと変えていたのだが……ある者はピザ屋を立ち上げ、ある者はパソコンスクールの室長となり、ある者は清掃会社でコンビで頑張り……食堂で皆に美味しいごはんを振る舞い……

 

「鳳翔さ~ん。そろそろ行きませんか?」

「はーい。間宮さん先に行ってて下さーい」

「はーい。鳳翔さんも急いで下さいねー」

「よし。……ではみかんさん。今日も元気に行ってきますっ」

 

 そして、こんな風に彼女たちは、今も変わらず私に声をかけてくれる。みかんの木である私に対し、まるで同族の人間であるかのように声をかけ、スキンシップしてくれる。

 

 これは、そんな私と彼女たちの、なんでもない日々の記録。

 

 とある一年間の、私達の日々の記録の物語だ。

 

 

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