Side: エレナ・スカーレット
私がいつもいるこの図書館には沢山の本がある。小説だったり、妖魔本だったり、魔導本だったりと様々だ。そしてその本の中で私がよく読んでいる多数の本の作者は偶然にも名前が一緒なのだ。その名は...『バートリー・ノーレッジ』という。いやマジで面白いのよこの作者の本。引き込まれるっていうか、見入ってしまうっていうか...とにかくこの作者の文章力がヤバイんだよ。すげぇよなぁ...。
そしてこれは最近知ったのだが、この『バートリー・ノーレッジ』とお父様は知り合いだというのだ。うん、最初知ったときはお父様に対して「マジで?」って言っちゃうほど驚いちゃった...。まぁ言ったんだけど。それを言われた時のお父様もなんか拍子抜けしてたし。
そして今日、その『バートリー・ノーレッジ』に会いに行けるのだ!何故かって?...多分お父様の気紛れだね。突然「バートリーの所に行くが来るか?」なんて言われるんだもん。驚いてしばらく反応出来なかったよ。因みにレミリアも一緒だ。実はレミリアはバートリーさんの娘の『パチュリー』って子と友人になっていたらしい。いつの間に...てかいつノーレッジ家に行ったんだろう?と思ったが、かなり前にお父様が「皆に次期当主の紹介をして回ってくる」ってことでレミリアと色んな所に挨拶に行っていたのを思い出した。レミリアうらやま。
「ほらお父様!レミリア!早く行こうよ!!」
「...エレナがここまで急かすなんて始めてみたかもしれないな」
「えぇ...でもそんなお姉様も素敵だわ」
苦笑いをしてるお父様と若干うっとりしてるレミリア。二人はそこまででもないかもしれないが、私としては心ウキウキ状態なのだ。会ったらなんて言おうかな...「いつも楽しく読ませてもらってます!」とか?いや直球で「貴方のファンです!」かな?あぁ、憧れの先生に会えるなんて...!!
こんな具合で、私達はノーレッジ家に向かって飛び立ったのだった。
Side: レミリア・スカーレット
さっきからお姉様のテンションが高い。聞いた話によれば、お姉様が愛読してる本の作者がバートリー・ノーレッジだからだそうだ。正直な話、ここまでハイテンションのお姉様を私は見たことがない。そんな姿が見れて嬉しいと思う反面、何故か胸の辺りが痛むのを感じていた。...なんだろうこれ、別に傷を負った訳じゃないのに...どうして痛むんだろう...。
「ねぇレミリアどうしたの?顔色悪いけど...具合でも悪いの?」
「え?いや!大丈夫よお姉様!だからそんな顔しないで!」
「わ、分かった」
お姉様がすっごく心配そうな顔で私の顔を覗きこんでいたが、私はそんな顔をしてほしくないので戻すようにお願いした。お姉様にはそんな顔してるよりも笑っていてほしい。
「ふむ、二人とも、そろそろ着くぞ」
「え!こんなに近くに住んでたの!?だったら会いに行けばよかったなぁ...」
「エレナ、お前はバートリーの家を今の今までどこにあるのか知らなかっただろう...」
「探知魔法を使えば...いやダメ。誰の家ってまではまだ解析出来ないんだった」
そんな会話を二人がしてる内に、ノーレッジ家の入り口に着いた。
Side: エレナ・スカーレット
「さて、入るか」
「え、ちょっと待ってお父様、まだ心の準備が...」
いきなり過ぎてまだ準備出来てないんだけど!...なんか急に帰りたくなってきた。おかしいな...さっきまであんなに会いたいって思ってたのに。
私の声を無視してお父様はノーレッジ家の戸をノックする。
「...誰かしら?」
可愛いらしい声が中から聞こえてきた。この声の主がバートリーさんかな?
「ヴラド・スカーレットだ。...いや、レミリアの父親って言ったらいいかな?」
...この応答から察するに声の主はパチュリーって子なんだろうな。何気に私だけだよね、初対面なの。
すると戸が開き、そこには全体的に紫を基調とした格好をした女の子がいた。うーむ可愛いなぁ。まぁ家の妹達には負けるがね。
「...レミィ、あの人は誰?」
「私のお姉様よ、パチェ」
おぉ、渾名を呼び合う関係だなんて...いい友人が出来たねぇ。お姉様嬉しいよ。
ってここは私が自己紹介するところかな?うん、するところだね。
「初めまして、私はエレナ・スカーレット。エレナって呼んでね。えと...パチュリー、で合ってる?」
「合ってるわ。でも少し長いでしょ?だからレミィみたいにパチェって呼んでもいいわ」
「そう?じゃあ...改めてよろしくね、パチェ」
「えぇ、よろしくお願いするわ」
やったね!仲良くなれたよ!初めての友人だ!...ん?パチェの魔力の感覚...もしかして...
「ところでパチェ、貴女って...魔女だったりする?」
「あら、すぐに見破れるなんて凄いわね...」
なんか割と驚いた顔してるけど...まぁいいや。それよりもバートリーさんだ!もうここまで着たらどうにでもなれってね!まだ心の準備出来てないけどGO!
「おぉ、ヴラドか...って、レミリアちゃん以外に新しい娘を連れてきたのかい?初めまして、私はバートリー・ノーレッジ。そこのパチュリーの父親さ」
行こうって思ってたら直接ここに本人キター!え、マジで?挨拶しなきゃだよね?ヤベぇ挨拶の言葉行きながら考えるつもりだったのに!えぇいままよ!
「あ、あの!エレナ・スカーレットです!いつも貴方の作品を楽しく見せてもらってます!お会いできて光栄です!!」
ふ、ふぅ...噛まずには言えたぜ...。ってあれ?バートリーさん?なんかポカーンって表情浮かべてない?
「ど、どうしたんですか?」
「いやね、こんな風に言って貰ったことはなかったからね。つい怯んでしまったよ」
頭を掻きながら照れ臭そうに言うバートリーさん。...やっぱり魔力的に魔法使いなのかな?
「さぁ入ってくれ。ここまで来て疲れただろう?」
「あぁ、そうさせてもらう。君がここに私を呼んだ理由も聞きたいしね」
あれ、お父様の気紛れじゃないんだ。呼ばれてたのか...なんだろうか。雰囲気的にお父様とバートリーさんの二人だけで話すみたいだし...まぁ私が首を突っ込むことではないか。
「エレナ、レミリア、ちょっと私はバートリーと話をしてくるからパチュリーちゃんと一緒に待ってなさい」
そういって二人はどこかへ行き、残った私達は広い居間に居ることになった。
Side: パチュリー・ノーレッジ
不思議な者に会った。会ってすぐ私を魔女だと見破って、しかも父のファンだという。...少し警戒しておくべきか?なんて考えてるとレミィが切り出した。
「ねぇパチェ、パチェも魔法使えるのよね?」
「え、えぇ、まぁね」
「へぇ!どんな魔法使えるの?教えてくれない?」
エレナが私に言う。何かワクワクしてるような顔つきだ。
「火、水、木、金、土、日、月を扱ういわば属性魔法ね。別名で精霊魔法とも言われるわ」
「なるほど、精霊魔法か...」
エレナが何故か考えるような動作をしている。どうしたのか、と思ってるところでレミィが言う。
「あ、お姉様も魔法使いなのよ!だから自分の知らない魔法とかには興味あるらしいの」
なるほど、納得だ...え?魔法使い?
「ねぇエレナ、貴女はどんな魔法を使うの?」
私とて魔法使いだ。目の前の少女がどんな魔法を扱うかを知りたいのは性だろう。
「私?うーん...結構あるからなぁ...あ、得意なのは幻術魔法とか身体強化魔法だよ」
「...え?」
私は思わず拍子抜けするような声を出してしまった。今日が人生の中で一番驚いたかもしれない。
レミィが聞いてくる。
「どうしたのパチェ、そんな変な声出したりして」
「...幻術魔法といえばランクS以上の魔法よ!?人間が扱う幻覚とは一味も二味も違う!習得するのも取り扱うのもかなり難しいとされてる魔法よ!?ねぇエレナ、貴女どうやって習得したの!?」
私は思わず熱弁してしまった。しかしそれほど驚いたことだったから仕方がないと思う。
「え、と...家の、紅魔館の図書館で本を読んでたらいつの間にか」
ポカンとした顔でエレナが言う。しかも図書館ですって!?
「その図書館ってどれくらいの本があるの?」
「そうだなぁ...多分この家にある本の10倍...いや1000倍くらい?」
嘘...と思った。私は本を読むのが好きだ。一日中本を読んでるのが当たり前の生活だった。それでもまだこの家の本は読み尽くしてない。その1000倍ですって...?
その瞬間から私は紅魔館に興味を持った。行ってみたい。そこで本を読みたい。エレナの魔法ももっとみたい。レミィともっと一緒にいたい...
すると奥の部屋から父とヴラドさんが出てきた。二人は深刻そうな顔をしている。
「パチュリー...お前に頼みがある」
父が私に告げる。私は覚悟して続きを待った。
「...ここから離れて紅魔館に行ってほしい。そしてそこで暮らしてほしいんだ」
驚いた。まさか父が私の言うことを先回りして言うとは思わなかったからだ。
「...いいの?」
「是非そうしてくれ。お前のためでもあるからな」
今日は本当に驚かされる日だ。私はすぐ了承した。
「では私達はそろそろ帰るとするよ。ほら、行くぞ」
「お父様、先に行ってて貰えますか?少しバートリーさんと話がしたいんです」
エレナがそう言う。ヴラドさんは了承し、私とレミィを連れて紅魔館へと飛び立った。
Side: エレナ・スカーレット
「さてバートリーさん、少しお願いします」
真剣な目付きで私は言う。バートリーさんも唾を飲んだようだ。
「お父様と何を話してたんですか?何故パチェを紅魔館に暮らさせようとしたんです?」
「...はぁ、ヴラドのやつ。察しの良い娘を持ってるな」
頭を抱えているバートリーさん。でもそこまで焦った様子はない。
「近々人間達が色んな所と組んでこの辺りの驚異を倒そうとしているんだ。以前吸血鬼に対して戦を仕掛けただろう?そこが更に討伐対象を魔法使い...特に魔女を追加してね。ここに入ればパチュリーが危険に晒される。だから安全そうな紅魔館に避難させようと考えたのさ」
「...貴方も魔法使いでしょう?貴方はどうするんですか?」
「気付いてたのか...流石だね。私はここに来た人間の足止めさ。この先が紅魔館だからね。出来るだけ先に行かせないようにするさ」
「それじゃバートリーさん!」
「...私はここで死ぬ覚悟さ。パチュリーの為にね。君には本当に申し訳ない。新しい本がこれから出せなくなる」
そんな事ではない。もし貴方が死んだらパチェがどう思うのか!それを知ってての覚悟なのか!
「...勿論知ってて覚悟してるさ。だから同じ魔法使いの君に頼みがある...パチュリーの記憶から私の記憶を消してほしい!」
頭を下げてくるバートリーさん。それがこの人の頼みなら叶えてあげたい。確かに記憶消去の魔法は出来る。でもそれじゃあ...そうだ!
「分かりました。しかし条件があります」
「...何だね?私に出来ることなら」
「生きてください!」
「ッ!」
バートリーさんがハッとした表情を浮かべるが構わず私は続ける。
「危なくなったらすぐ紅魔館に来てください!記憶消去はもしバートリーさんが亡くなってしまった場合のみ使います。ですがわざと死ぬのは許しません!絶対生き延びて下さい!」
「...分かった。善処する」
無理矢理だが納得させた。一応釘は刺しておいたから大丈夫かな?...うん、初めて会った憧れの先生にこうやって意見するのっておかしいような?今更か。
「では私もそろそろ行きます。ちゃんと約束守ってくださいね!」
「あぁ、だがこれらはレミリアちゃんやパチュリーには内緒にして欲しい」
「分かりました。では」
そういって私は紅魔館に向かって飛んだ。もうすぐ日が昇る。一応日差しは大丈夫だが色々言われそうなので全力で三人の方へ向かう。...嫌な予感がする。なんともないといいけどなぁ。
ご閲覧ありがとうございました。次回もまたよろしくお願いします!