Side: エレナ・スカーレット
紅魔館の大広間。そこは基本的に戦闘訓練所として使われる。そして現在、私はそこでレミリアと対峙している。そう、これから疑似戦闘を行うのだ。
「珍しいわね...お姉様から勝負を挑まれるなんて」
「珍しいどころか初めてじゃないかな?今まではレミリアが私に挑んできてたもんね」
レミリアは武器のグングニルを、私はイチイバルを構える。
「じゃあいくよ...スタート!」
私が掛けた声と同時にレミリアが接近してくる。私武器のイチイバルは弓だ。接近戦には向かない。対してレミリアの武器のグングニルは槍。あれはバリバリ接近戦向きだ。
「貰ったわ!」
「...油断は禁物だよ、レミリア」
その瞬間、レミリアの頬に矢がかする。一瞬驚いた顔をしたけどすぐに持ち直し、私から距離をとる。
「射た様子は見えなかったけど...幻術ね」
「正解。早いねバレるの...」
「えぇ、ずっとお姉様の幻術を見てきたのよ?大体分かるわ」
「そう...流石だね。でもまだまだ油断は禁物だよ?」
私はイチイバルを消し、変わりにグングニルを出す。
しかしレミリアと全く同じ訳じゃない。私は...両手にグングニルを装備した。
「今度はこっちから行くよ!」
Side: レミリア・スカーレット
何かがおかしい。これが私が最近のお姉様に抱いてる印象だ。表面上はいつもと変わらないはずなのに何かがおかしい。違和感があるのだ。まるで...何かに乗っ取られかけてるかのような...変な感覚。そう思ってお姉様の運命を覗こうとしたけど駄目だった。
特に今日なんかそうだ。お姉様が私に勝負を挑んで来たのだ。大好きなお姉様からのお誘いだからいつもなら即答して受けるけど、今回は躊躇した。その時私は違和感の原因らしきものを見つけた。お姉様の目が...黒く濁ってる赤色になっていたのだ。いつものお姉様の目は透き通った綺麗な青。でもやっぱり話してみるといつものお姉様だった...けど、違和感がある。
そして現在、私はお姉様と戦闘をしてるのだが、ここでもいつものお姉様ではないことに気づいた。
理由は二つ、一つ目は明らかな殺意だ。いつものお姉様は基本的に殺しをあまり好まない。戦闘訓練で殺意は出さず、寧ろ戦闘相手の心配をしてる面がある。お姉様は手加減=失礼だと思ってるからお姉様は本気でやってるつもりなんだろうけど、無意識に訓練では加減をしてるのだ。だが今回はどうだ。一切の加減は無い。本気で殺しに来てる。お父様に殺意を感じても怯まないよう訓練された私でさえ冷や汗が出るレベルだ。
二つ目は...表情だ。いつものお姉様はとても表情豊かで凄く可愛い。凛々しい表情もあればニコニコしてる表情、悲しそうな表情等様々。それは戦闘においても同じだ。楽しそうな表情、傷ついた相手を心配する表情、技が決まって得意気な表情とかだ。しかし今のお姉様は...ずっと笑顔だ。ただこの笑顔は嬉しそうな笑顔じゃない。獲物を狩る時にするような笑顔だ。正直怖い。だけどこのままだったら大変なことになる予感はする。
それなら、私に出来ることは...
「お姉様に勝つことだ」
ガキン、とお互いのグングニル同士がぶつかり合う。しかしお姉様はすぐ体勢を作り直し、二撃目に入ろうとしてくる。油断したら死ぬ、と私は思った。
「遅いよ」
後ろから声がする。振り替えるとさっきまで目の前にいたお姉様がレーヴァテインを私に向けて振り下ろそうとしていた。
私はとっさに自身を蝙蝠の群れにさせてお姉様から離れて姿を戻す。
「お父様直伝のやつだね...アハハ、楽しくなってきたよ!!」
お姉様の殺意がさらに増幅する。本能的にも分かってしまう...これは勝てない。私もお父様とお母様をあの運命から救いたいけど...お姉様がここまで強いのに見た運命ではあの結果だ。これじゃ私が干渉しようとしても無駄だ。
弱い自分が...情けない。
「...やっぱいいや」
考え事をしてたら突然お姉様がそういって、武器と殺意を納めた。
「...え?どうしたのお姉様?」
「だって今のレミリアには戦意がないもん。そんなレミリア相手しても意味ない」
当たり前のように言うお姉様。その表情は真顔で何の感情もない。ただ、私には私を睨んでいるように見えた。
「ごめんねレミリア、突然お願いしたのに受けてくれて」
「い、いえ、大丈夫よ。それで、これからお姉様はどうするの?」
「...暫く自主練でもしようかな...まだ、足りない」
私には今のお姉様は分からない...だけどこれだけは分かった。
今のお姉様を野放しにしちゃいけない。
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