東方異血姉   作:エンゼ

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この話で出てくるあの方が戦闘狂と化しています...なんかすみません。


第二十一話 訪問者

 Side: エレナ・スカーレット

 戦が終わって大体...10年?程度が経過した。この間...色々あったよ。

 まず、私が立ち直るのに時間が掛かったね。でも...お父様とお母様が、私の為に最後の力を振り絞って血をくれたんだ。だからその分まで生きよう。そして、あの『お願い』を叶えるために強くなろう。そう決心したから大丈夫だよ...多分。

 何故かレミリアとパチェはお父様達のことを伝えても思ってた以上に動揺しなかったんだよね...なんか、まるでその現場を見てたみたいな反応だった。

 フランは...うん、あんまりお父様とお母様に構って貰えなかった影響だったのかそこまで動揺しなかったな。見ててこっちが、何で動揺しないの!?ってレベルだったんだよね...

 んでね、突然当主が変わったのよ。それがまた色々大変だったねぇ...主に当主になったレミリアが。

 スカーレット家に配属してる家々を当主交代で挨拶に行くでしょ?当主としての執務でしょ?お父様達の遺品整理でしょ?...あれ、目から汗が...

 まぁまぁとにかく色々あったのですよ。勿論手伝ったけどね。

 変わったこと?そうだなぁ...レミリアがカリスマ性を持ったことぐらいかな?初めて垣間見た時は、おぉ...流石お父様の娘って思っちゃったからね。イケメンだった。いつもはベリーキュートだけど。

 後は...うん、特に無いね。皆元気にやってるよ。

 そんで今なんだけど...

 

「...妖怪を襲う妖怪?」

「えぇ、最近軽く話題になってるのよ。なんでも強い妖怪に片っ端から勝負を申し込んでるとか。しかも負け無しですって」

 

 食事中にレミリアから話を聞いたところです。にしても...妖怪を襲う妖怪ねぇ...どんなやつなんだろ。

 

「ふーん...でも余裕でしょ!だって最近能力コントロール出来るようになったしね!」

 

 スマイルで言うフラン。可愛い。

 実は、フランは私とレミリア、そして新たに加えてパチェにも協力してもらって、フランの能力をコントロールさせようという作戦を実施してるのだ。結果は、徐々に操れるようになってるなーっていうレベル。だけど、初日に比べれば相当コントロール出来てるはずだ。

 

「なんでも、こことは別の所から来た妖怪らしいのよ...少し気になるところね」

 

 一応警戒はしてるようだ。レミリア...立派になったなぁ...でも、そんな困った顔はお姉様あんまり見たくないぞ。話題を変えてみるか。

 

「そういやさ、紅魔館に門番って居ないよね?」

 

 ...言ってはいなかったが、これが戦の後一番酷かったかもしれない。

 スカーレット家の当主(お父様)が亡くなった。それをスカーレット家が衰退した、と思い込んで勝負を仕掛けてくる妖怪がわんさか出てきてね。しかも、どこからその情報を嗅ぎ付けたのか、人間の集団もやって来てね...レミリアの負担にならないように、幻術魔法でそれを見せないで私がこっそり駆除してたんだけどさ。

 50日くらい24時間ずっと対応してたら、やりすぎで疲れが貯まって、敵がちょうど全員逃げ帰った瞬間に倒れてしまって、紅魔館メンバー全員からめっさ怒られました...

 そんでまぁ、門番がほしい訳ですよ。でも

 

 私:出来はする。てか現在進行形でやってる。でもいつか過労死しそう。

 レミリア:当主としてのお勤めがあるから無理。

 フラン:長期戦と対集団戦の訓練してないし、日中は厳しい。

 パチェ:まず図書館から出ない。

 

 一応メイドさんはいるんだけど...そこまで強くないの。

 つまり私がやるしかないっていうね。うわぁきっつい。

 

「そういえばそうよね...お姉様の負担をなんとかしないと」

 

 私とレミリアとフランが軽く考えていると...今まで黙っていたパチェが言った。

 

「...その話題の妖怪に門番やらせたらいいんじゃない?」

「「「それだ!!!」」」

 

 満場一致だった。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 相手は強い妖怪に片っ端から喧嘩を売っているから、こちらはただ待っていればいい。

 ってことで私は紅魔館の門の前で仁王立ちで立ってる。何故か、今は敵が押し寄せてこなくてめっちゃ静かだ。まぁ、夜だからだね。襲撃は基本吸血鬼の活動しない昼間を狙ってくるからなぁ...私はそんなのお構い無しだけどね。日中でも何故か余裕で日の下出れるし。

 にしても夜空キレイだなぁ...と思っていた時、気配を感じた。

 数は一人...だけど、あの妖怪や人間の集団より実力は遥かに上。

 目的は恐らく紅魔館。なら...私は負けられない!紅魔館の門番を手に入れるために!!!

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 シンとした夜の森の中、とある館を目指す一人の妖怪がいた。

 名は『紅美鈴』。そのチャイナ服のような格好からも分かるように、東洋の妖怪である。

 なら何故ここにいるのか?それは──

 

「この先が噂の『紅魔館』...どんな強者がいるのか楽しみです!!」

 

 ──そう、ただ強者と戦うためだ。

 何故彼女がここまで戦闘狂と化してるのか...まぁ、美鈴から言わせれば、生まれた時からこうだった、だろう。

 そして今、美鈴の目の前には、とある吸血鬼がいた。

 羽は普通の吸血鬼よりはほんの若干小さめ、月光に照らされ光を放っている白銀の髪、そして...見ている者を魅力するような、とても透き通った綺麗な青い目を持っている。

 美鈴はゾクッ...とした。強者の圧力だ。

 美鈴はにやけを抑えつつ相手に向かって叫ぶ。

 

「私は東洋の妖怪、『紅美鈴』!!貴女を相当な強者だと認識した!!よって、貴女に決闘を申し込む!!!」

 

 吸血鬼は目を見開いた後、クスッとしてその声に答える。

 

「でも、ただの決闘ならつまらないよね...だから、賭けをしない?」

「...賭け?」

「そう、賭け。勝者が敗者に対して一つ、なんでも言うこと聞く...なんて、どう?」

「...なるほど、乗りました。なんでもいいんですよね?」

「勿論!」

 

 お互いが構え始める。美鈴は程よい緊張感を味わいつつ、吸血鬼に視線を切らさない。反対に、吸血鬼はそことなく楽しそうだ。

 吸血鬼はニコニコしながら言う。

 

「私の名は『エレナ・スカーレット』...覚えてもらうからね!」

 

 その刹那、両者が同時に動き始めた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 紅美鈴とエレナ・スカーレットの両者が決闘をしている際、紅魔館からその様子を覗いている三つの影あった。

 

「ねぇねぇレミリアお姉様、エレナお姉様のあれ、絶対本気じゃないよね?」

「当たり前でしょフラン...あれは楽しんでるわ」

「それはあの妖怪も同じみたいね。大体最初はお互い小手調べ、という所かしら?」

 

 言うまでもなく、あの三人である。

 

「レミィから見て、あの妖怪はどう?」

 

 門番的な意味で、とパチュリーはレミリアに問う。

 

「そうねぇ...とりあえず様子見ね。あの美鈴とやらの実力が見たいわ」

 

 見極めるように見ているレミリアとパチュリー。フランに至っては、もう既に決闘の様子にくぎ付けになっていた。

 

「でも勝つのはエレナお姉様だよね!」

「えぇ、勿論よ!なんたって私達のお姉様なんだから!」

「逆に負ける要素が無いわ。悔しいけど、魔法も紅魔館の中で最強なんだもの」

 

 ...何かが乱立したような気がするが、気にしてはいけない。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 美鈴は歓喜していた。ここまでの強者とは今まで対峙したことが無かったからだ。今までの敵とでは、長期戦といってもほんの数分程度だった。しかし、エレナという吸血鬼との戦闘開始から既に何分経過しただろうか。今までよりは長いことは確実なのだが。

 お互い、小手調べは大体終えたのだろう。少しずつではあるが、攻撃の強さが上がってきた。

 

「(速い!!)」

 

 美鈴はそう感じていた。エレナ自体のスピード、防御から攻撃、またはその逆の切り替え、全てにおいて完全に自分より上だろうとも。

 ──だが、まだ目で追えるレベルだ。

 よって攻撃等は見切れる。

 ...ふと、美鈴は一つ策を思い付く。

 エレナは速く、反射神経もかなり良い。しかし速さの面では見えているので解決。

 問題は反射神経をどうするのか、だ。

 それに対する美鈴の出した答えは...フェイクの攻撃を入れることだ。

 反射神経は基本無意識だ。考える前に先に体が動いてしまう。ならば...フェイク攻撃を入れることで、意図的に隙を作れるのでは?とのこと。

 美鈴は攻撃を避けつつ、フェイクを交えた攻撃を入れながら、完全に隙が出来るのを待つ。

 そして、三度目のフェイク攻撃を入れた瞬間...!

 

 

 

 

 

 

 

「ここだぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 美鈴は見つけた隙から、自身の全力の一撃を込めて拳を放つ。

 拳はそのままエレナに直撃────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───しなかった。

 

 

 

「...え?」

 

 

 

 こんな力が抜けた声を上げてしまうのも仕方がないだろう。

 いきなり、戦っている相手の自分の一撃が直撃した部分が霧のように分散したのだから。

 

「...まさか、幻術魔法を使わせるとは思わなかったなぁ...」

 

 分散した部分を戻しながらエレナは言う。その表情は呆気にとられたような感じだ。

 その言葉を聞いて、美鈴は冷静さを取り戻す。

 

「なるほど、幻術ですか」

「まあね。予想外だったよ...ここまで強いなんて」

 

 先程の表情とは打って変わり、本当に嬉しそうだ。

 

「これは...よし、試してみっか!」

「...!?」

 

 すると突然、エレナの分身が大量発生した。

 だが、普通の分身なら美鈴はここまで狼狽えない。

 なら何故狼狽えたのか?

 

 ──ここで美鈴の能力について軽く話そう。

 美鈴の能力は『気を使う程度の能力』。この場で言う『気』は、別名で『オーラ』などがある。

 だがこの能力、ただ自分の気を使うだけではない。ある程度ではあるのだが、他人の気を感じとることも出来る。

 よって、戦闘において、仮に相手が分身等をしてきても、感じとる気の量で大体どれが本体なのかは把握が出来るのだ。

 だが現在、美鈴の目の前に存在するエレナの分身達は...全て同じ量の気を持っているのだ。

 

 

 

「「「「「「さぁ、どれが本物か分かるかな!?」」」」」」

 

 

 

「(感じろ...感じとれ!必ず本体が持っている気は違うはずなんだ!そこさえ見分ければ...!!!)」

 

 美鈴は攻撃を最小限のダメージで交わしつつ、必死に本体を探る。

 そして...

 

 

「ぐっ...ここっ!!!」 

 

 

 一瞬、一瞬で判断して思い切り拳を放つ。

 ──手応えありだ。

 気づけば分身は消えていて、拳が直撃した本体だけになっていた。

 

「...合格だね」

 

 ボソッと呟かれた声は美鈴には届かなかった。

 

「ハァ...ハァ...」

 

 既に美鈴は割と体力を消耗しているようで、肩で息をしている。

 

「まぁでも、私の勝ちかな...『レベルスタート』」

 

 エレナは加速して美鈴に一撃を腹にぶつける。

 

「がっ...!」

 

 美鈴はそのまま吹っ飛ばされ、岩に激突した。

 だがこのまま倒れてしまうほど、美鈴は弱くない。ふらついてはいるが、なんとか立ち上がった。

 

「なん...ですか...まだ、そんなに速く...!?」

 

 少しエレナに対して恐れを抱きなから美鈴は問う。

 美鈴は焦っていた。

 ─底が見えない。勝てるビジョンも見えない。

 

「(だからこそ...!!)」

 

 ─見てみたい。このエレナという吸血鬼の限界を。この強さの秘訣を。

 

「どうする?まだやる?」

「...勿論です」

 

 ─ここで引きたくない。

 

「まだ...やれます!!」

 

 ─こんなに楽しい勝負を投げ出したくない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 Side: エレナ・スカーレット

 え、えぇ...ちょっと、美鈴さん?どんだけ戦闘狂なんですか貴女。

 明らかに楽しんでるよ。全力で。

 ってことは今までくっそつまらない決闘ばかりしてきたんだろうなぁ...私との決闘で楽しめてるって言うことはそういうことだよね。

 ...ん、美鈴さん!?なんで急に倒れちゃったんですか!!?

 

「美鈴さん!!」

 

 私はとりあえず美鈴さんに近づいて体調を確認してみる。

 症状は...あら、気絶しちゃってる?なんとか生きてはいるみたいだね...ほっ。

 このまま美鈴さんを放置しておくのもアレだし...とりあえず、治療系の魔法かけつつ紅魔館に寝かせてあげよっと。

 レミリアやフランには姉の特権押し付ければいいしね!

 さて、運ぼうかなと美鈴さんを抱えたとき...

 

「う...」

 

 あ、起きた?速いなおい。

 

「えと...大丈夫?」

「うぅ...ハッ!私は一体!?」

「なんかいきなり倒れちゃってさ。心配だから私の家で休ませようとしてたって感じだね」

 

 それを言った瞬間、なんか美鈴さんの表情ポカンしたような感じになった...なんで?

 

「その...助けてくれるんですか?いきなり決闘を仕掛けた私なんかを?」

「え、普通助けない?」

 

 当たり前じゃないの?こういうのってさ。

 

「まぁ、賭けのこともあるしね。この決闘は私の勝ちってことでいい?」

「...はい、完敗でした。本当はもう少し続けたかったんですけどね...」

 

 戦闘狂怖い。本当に楽しそうだったしねぇ...

 

「んじゃ賭けの内容を伝えるね」

 

 お、顔つきが変わったね。どんなこと予想してるのかなぁ...

 

「私の家の...紅魔館の門番をしてくれない?」

「...え?」




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