Side: 八雲 紫
藍が例の者を連れてきたらしい。相変わらず仕事が早いわね...例の者を報告してきたのって5分前よ?拉致してきたの?ってくらいね。
まぁ、それはいいわ。
「じゃあ、ここに連れてきて貰える?」
「分かりました」
...どんなやつなのかしら。藍の態度から察するに、そこまで強くない妖怪のはずね。なのにここまで期待してる私って...
なんて考えを駆け巡らせてるところに、藍達であろう足跡が聞こえてきた。
「入れ。紫様をあまり待たせるな」
「...お邪魔します」
入ってきたのは...一人の少女だった。
その子供の特徴を挙げるなら、やはりその瞳。
透き通った、まるで雲一つかかっていない青空のような色。
見る人を夢中してしまうかのような、吸い込んでしまうかのような鮮やかさ。そして、そこに極わずか孕んでいるであろう狂気。
私はそれに対して思わず呟いてしまった。
「綺麗...」
「...あの、紫さん?そんなに見つめられると...」
...いけないわね。ついついじっくり見てしまっていたわ。
それにしても...なかなか可愛いわねこの子。さっきのことで顔が赤くなってるし...これが俗に言う『萌え』というやつだったりするのかしら?
「すみません...お話、いいでしょうか」
「え?えぇ、いいですわ。私に話があるそうね?」
「はい。貴女が幻想郷の管理者だとお見受けして」
少女は何故か呼吸を一旦おいて続ける。
「私の名前はエレナ・スカーレット。外の世界から来ました」
...『エレナ・スカーレット』?確かどこかで...
「種族は吸血鬼なのですが...そろそろ外の世界で生き続けるのが厳しくなりまして、ここに引っ越させて欲しいとお願いをしに来ました」
「そう...それは別に構わないわ。幻想郷は全てを受け入れるもの」
「ありがとうございます。そして、ここからが本題なのですが...」
...本題?
「はい、それは──」
「──大体一ヶ月後に、同族がここを侵略しようとやってきます」
...そこまで驚くことじゃなかったわね。というか...なんでこの子は同じ吸血鬼なのに同族を売るような真似をしたのかしら?
「実はそれに私も...というより、私の家族も参戦するのです。ですが、私を含め家族はこれにはあまり乗り気ではありません。ですから...私達の家族、スカーレット家には手を加えないでほしいのです」
なるほどねぇ...仲間よりも家族を守るか。面白いじゃない。
「それ、私にメリットはあるの?」
「...何がお望みでしょうか?」
あら、何か提案してくるかと思ったけれど...何もないのかしら。
そうねぇ...
「...私の友人になってくれる?」
「...へ?」
少女は心底驚いたような顔をする。そりゃ当然よねぇ...
というより、藍もかなり驚いてるし。
でも...もっとこの瞳が見ていたい。
もっとこの少女の表情が見ていたい。
もっとこの狂気を見ていたい。
この少女は例えるなら小動物。
この感情は...やはり『萌え』なのかしらね。
「私に対しては敬語は使わなくてもいいわ。そのほうが貴女らしい気がする」
「...分かったよ。紫さん」
「...やっぱり、貴女らしい」
どうやら話が終わったようで、少女は帰っていった。
一ヶ月後。それがあの子と再会出来る日なのね...襲撃があるはずなのにこんなに心が踊るなんて...どうしたのかしらね、私は。
「...紫様、どういうことですか?名の知れない妖怪なんかと友好を結ぶなんて...」
藍の疑問は最もだ。だけど、それに対して答えるならば、
「そうねぇ...魔が差した、のかもね」
これしかない。
一ヶ月後...待ち遠しいわぁ...