第二十八話 殲滅
Side: エレナ・スカーレット
レミリアの合図から数秒、私達は...幻想郷にいた。窓を見つめればそこは私が指定した場所そのものだった。しかも外は夜。完全に吸血鬼の時間だ。良かった...成功したんだね。
「レミリアは総員の点呼を。そして...紅魔館を頼むね」
「えぇ、お姉様...無事に帰ってきてね?」
「当然!まだ死ねないよ...レミリアとフランの晴れ姿を見るまでね!」
そんな事を言いながら私は紅魔館を出る。レミリアの顔が何故か赤くなってたけど...なんでだろうね?まぁ後で聞こうかな。
って、美鈴さんもう門の前に立ってる...うん、今日は美鈴さんには頑張ってもらわないとね。
「あ、エレナお嬢...いえ師匠。行くのですね」
「うん...じゃあ、紅魔館の門を宜しくね『美鈴』!」
「!...はい!お任せ下さい!」
おぉう...めっちゃ張り切ってる。そんなに呼び捨てが嬉しかったのかな?
美鈴と別れて私は幻術魔法を使って姿を消す。
さて確認。私の敵は同族、現在進行形で幻想郷に攻め入ってる吸血鬼を葬ること。幻想郷の妖怪は...襲ってきたら撃退ってことで。姿消してるしバレないと思うけどねぇ...お、早速みっけ。
「皆の者!!行けぃ!!我ら吸血鬼の恐ろしさをこの幻想郷に知らしめるのだぁぁ!!」
「「「「「「おぉぉぉ!!!!」」」」」」
あらぁ...大量に居るねぇ。さて、イチイバル出してっと...
狙いはあそこのやつと周りのやつら。
距離...大体100m~500m。
矢は...グングニルを採用。本数は10本。よって総数100本だね。
よし...
「やっ!!」
私はイチイバルでグングニルを放つ。
グングニルはそのまま音もなく向こうの吸血鬼達のほうへ飛んでいって......その心臓を貫いた。
「ガッ!!...これは、スカーレット嬢の!?」
「んーレミリアのせいにされるのは嫌だなぁ」
私は幻術魔法を解いてその吸血鬼達の前に出る。罪を背負うのは私だけでいいからね。全ては紅魔館の皆のため。その為なら...私は死んでも構わない。まだ死ねないけどさ。
「貴様ッ!!裏切ったなぁぁ!!」
「裏切る?心外だなぁ...私は貴方達を味方なんて思ったことはないよ?私の味方は家族だけ」
放っておいても死ぬかもだけど...この中に再生力に特化したやつがいれば厄介だしここで始末するか。
ってわけでレーヴァテイン召喚。魔力込めて込めて込めまくって...大体剣先の長さが100mぐらいになった。つまり一振りでこいつらを凪ぎ払える訳ね。
これから自分達がやられることを察したのかあの吸血鬼達が青ざめていく。
「ま、待てっ!何故だ!何故裏切った!!」
「だから裏切ってないってば...それに教える義理はないよ」
「や、やめろぉぉぉぉ!!!!」
私はレーヴァテインを思いっきり振って吸血鬼達を凪ぎ払った。『ずちゃ』って音と共に吸血鬼達の血が辺りにばらまかれる。そういえば...私最近血飲んでないな、吸血鬼なのに。もしかしたら食事の中に入ってるかもしれないけど...って、そんなことは後で考えるとして...さっさと別の吸血鬼をやっつけないと。
「お、おいどうした!!」
あら、さっきの叫び声に別の吸血鬼が駆けつけたみたい。これは都合がいいね。
やって来た吸血鬼は私を見るなり攻撃を仕掛けてきた。
「同胞の敵...とらせてもらうぞ!」
「そっちから来てもらえるなんてね...ありがたいなぁ」
「ほざけ!!」
相手の武器は槍。グングニルとはまた違って禍々しい武器だね。怖い怖い。
とりあえず私はレーヴァテインを使って応戦中。
...この人なかなかやるなぁ。レミリアレベル...まではないけど割と強い。
「フッ...貰った!!」
「っ!しまっ...」
何が起きたのか。私は一瞬理解出来なかった。急に私の目線があの吸血鬼じゃなくて空を向いてたんだから。
...あ、なるほどね。多分能力かな...
吸血鬼のほうに目線を動かすと槍で私を貫こうとしてる。
「これで終わりだ!!」
槍はそのまま私の心臓に刺さる─────わけないよね。
私は自分を霧に変化させる。そして吸血鬼と距離を取ってから再び体を構成した。
「なっ!...どういうことだ!!何故そこにいる!!」
「さぁ...何で教える必要があるの?」
「チッ...なら死ぬまでやるだけだ」
「おぉ、怖い怖い」
こっちも急いでるんでね...早く葬るか。
私はレーヴァテインを消して両手をパッと広げる。そしてパンッと手を合わせる。
「『再現』」
これから出すのは私の新技。あの戦の後に身につけたもとはお父様の技。執務室に置いてあったノートを元に編み出したあの技。
私の合わせた手が黒く発光する。
「吸命『ウロボロス』!!!」
合わせた手を思い切り広げる。そこからは大量のおぞましい蝙蝠が出現した。
ただ、この技は完全じゃない。完全にするためには後10分程度妖力を貯めなきゃいけない。
ならどうして奥義として成立させてるのか?
...答えは簡単。幻術魔法で補っているのさ。
「こ、この技はヴラドさんの!!貴様何者だぁぁ!!!」
勿論普通に幻術じゃないものもあるよ?だけど4割は幻術で出来た蝙蝠。よってお父様が使ってたときよりも絶対強くない。
だけど向こうはそんな事情は知らない。これを完全な奥義だと思ってる。
だから相手は死ぬ。自分の思い込みによってね。
「私はエレナ・スカーレット...って聞こえてないか」
「がぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そのまま相手の吸血鬼は消滅した。
ふう...この辺りは大体片付けたかな...さて、別の場所に赴くかねぇ。
──殺気!!
私はとっさに殺気のした方向にグングニルを投げつける。
そのグングニルはある木に刺さる。その木の後ろから出てきたのは──
「よう嬢ちゃん...久々だな」
「リ、リーダー...?」
──私の最初の戦の時に私に優しくしてくれた吸血鬼の『カレス』こと、リーダーだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「驚いたぜ...あの嬢ちゃんがこんなことやってるとかさ」
「そうかな?どうしようが私の勝手でしょ?」
「カッカッカ!!お前さんの選んだ道に口を出すつもりはねぇよ...ただ、聞きてぇのさ」
リーダーの雰囲気がガラッと代わり、本気の目付きで私を睨み付ける。
「何でこんなことしてんだ?」
「答える義理はない。だって貴方には関係ないから」
「連れねぇなぁ...これはただの興味さ。別に聞いてからどうしようってわけじゃあねぇ」
...らちが明かないね。これなら話してもいいかな...どうせ殺すし。
「家族のため。この幻想郷で暮らすための」
「ほう...なら尚更幻想郷を侵略したほうが楽じゃないか?」
「幻想郷を侵略ってことは幻想郷を創った相手と戦うんだよ?勝てるわけないじゃん」
「カッカ!確かになぁ」
リーダーのあの雰囲気は消え、親しみやすいものへとなった。
「家族のため...か。おもしれぇ。それに協力するのもまた一興だ...」
「え?」
「だが、俺はそれよりも...強くなった嬢ちゃんが見てぇ。あのへなちょこだった嬢ちゃんと戦りあいてぇ!!」
さらに雰囲気が変わる。これは...レミリアとフランに似てるな。戦闘狂ってやつだ。怖いなぁ。
「さぁ嬢ちゃん!!俺を殺さねぇと先へは進めねぇぞ!!殺す気でかかってきやがれぇ!!」
「......やるしかない、か」
私は右手にグングニル、左手にレーヴァテインを構える。近接ガチモードだ。
「いくぜぇぇ!!!」
戦いの火蓋が切って落とされた。