「エ、エレナお嬢様ァァ!!」
幻想郷に来てから特にやることないし、図書館で本を読んでいたら...何故か慌てた美鈴が私のところに来た。出来れば声は落としてほしいかなー...
てかなんで私のところに来たし。普通そんな慌てる事態が起きるんなら主であるレミリア案件でしょうに...
「...どしたの美鈴。そんなに慌ててさ」
「じ、つは...で、すね...」
「何で全力疾走してきたの...一応ここは図書館だからね。ほら、水飲んで」
「あ、りがとう...ございます」
...よかった。落ち着いたみたい...でも、美鈴をここまで慌てさせる事態ってなんだろ?
「実はですね...人間の子供が門の前に...」
「子供が?」
なんでこんなところに...うーん、パチェが向こうにいるしあんまりうるさく出来ないしここに連れてこさせるのはねぇ...
「じゃあ、私の部屋に連れてきてくれない?」
「分かりました!」
子供...ねぇ...しかも人間か。放っておくわけにもいかないし、ご飯でも食べさせて人里に帰そうかな。
◯ ◯ ◯ ◯
「エレナお嬢様!連れてきました!!」
「.........」
「お疲れ様美鈴。さ、入ってよ」
入ってきた子供はレミリアくらいの背丈の女の子だった。子供ながらに髪の色素が消えて白銀になってる。服はそこらの布を被せただけみたいだった。
...自我がない?それとも警戒してるのかな?...目に光が灯ってない気がする...
「ねぇ、君の名前は何?何でここにきたの?」
「............」
反応無しか...
? 何か術をかけられてるような...
「ちょっとごめんね」
子供の頭に触れてみる...うん、やっぱりだ。何かの術がかけられてる。
何の術だろう...分かんないや。
「そういえば...エレナお嬢様、今日は人間味が増しているような...」
「ん?あぁ、まぁね。この幻想郷の人里を見て回りたいから、人間に化ける術を試してみてたんだ。というより、殆ど幻術魔法の応用だけどね。今日1日やってどれだけやれるのか実験中なんだよ」
だから今の私は羽もなければ吸血鬼のオーラもない...だけど力は普通に使えるよ?当然さ。
にしても...変な術式だなぁ。複数人でやったのか知らないけど割と複雑だぞこれ。人間やるなぁ。
「...とりあえず、レミリアのとこに行こう。ここの主はレミリアだ。判断はレミリアに聞こうよ」
「そうですね...君もそれでいいですか?」
「.........」
反応無し...というより興味すら持ってない?
なんだこれ...ま、とりあえずレミリアのところに連れていこうか。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「レミリアー?今大丈夫ー?」
「返事、ありませんね...まだ寝ているんでしょうか?」
「え、今何時?」
「午前9時です」
そんなに早い時間だったのか...あれ、何で私眠くないんだろ...人間化してるからかな?感性まで人間になるのか...これはいいデータ。
「じゃあ私、ちょっと起こしてくるね。その子見ててよ?」
「分かりました!...といっても、動きそうにないですけどね...」
それは同感だな...ここに連れてくるときも自分からは動こうとはしないで美鈴に手を引っ張られて来てたもんね。
洗脳...とはまた違う感じっぽいしなぁ。
さて入るか。
「お邪魔するよ...」
中は清潔な感じな部屋...私とは大違いだ。
お、レミリア発見...あぁ、可愛い。天使。悪魔だけど天使。
そういやレミリアの寝顔を見たのも久しぶりかぁ...起こしたくないなぁ。もうちょっと眺めてたいけど...ここは心を鬼にしてと。
「レミリア、起きて」
「...ウゥン」
──浄化される。この寝顔に私消されちゃう!!
「ね、起きてレミリア!」
色んな意味で私ヤバいから!!
「...お姉様?」
「あ、起きた?」
「えへへ...お姉様だぁ...」
「え...あの...レミリア?」
「お姉様暖かい...」
「...もう死んでもいい」
──今どうなってるか?レミリアに無理矢理ベッドに引きずり込まれて抱き枕にされてるのさ!!この破壊力よ。これに対抗出来るのはもうフランしかいないね。
...もうちょっと堪能してたいけどここは起こさないと。
「レミリアー?起きてー?」
レミリアのほっぺをぐにょーんって伸ばしたり縮めたりしてると...
「...え、お姉様?」
「あ、起きたね」
「...何でここに?」
「用事があってね。起こしに来た」
「...分かったわ。着替えるから外で待ってて頂戴。速く!出てって!」
「わ、わかったから。怒らないで...」
レミリア怖い...まだ朝の時間帯に起こしに来たことを怒ってるのは分かるけどさ...私が悪いか。ごめんね。
「それで、お姉様...用事って?」
「あぁうん。あの子なんだけど────!?」
その時、美鈴が見ていたはずのあの子は──
「吸血鬼...殺ス!!」
──どこからか銀のナイフを取り出し、レミリアに向かっていった。
「なっ、ちょ、何これお姉様!?」
「...わかんない...美鈴は?!」
「ここです...お嬢様方...」
美鈴の腹部から血が出てるのが見えた。十中八九、あの子に刺されたんだろう。
「レミリア、ごめんけど交戦お願い。殺さないでね!」
「え!?わ、分かったわ!」
その間に私は美鈴に駆け寄る。傷はそこまで深くないものだった。これなら私の魔法でどうにでもなるね...良かった。
「美鈴、大丈夫?」
「えぇ...一応妖怪ですから。しかし...レミリアお嬢様をいきなり見つめたかと思えばナイフで私を刺して向かって行きました...なんなんでしょうあの子供」
「うん...身体能力も人間にしては高い。ナイフの扱い方も上手だ...」
レミリアと互角...というわけでは全然無いけど、あの子強い。レミリアはもっと強いけどね。
寝起きでしかも不意討ちだからアドバンテージ取られてたけど取り返したみたいだ。
レミリアの完全に手を抜いた攻撃が何度もあの子に炸裂する。なんだろう...違和感があるな。全然防御しようとしない...回避もだ。とにかく相手を殺そうとしてるみたい...まるでレミリアに恨みでもあるかのような感じ。
でもそんな感情は伝わってこないな...おかしい。術式に仕掛けが...?
「これで...止めよ」
「ゴフッ!!...ウゥ」
レミリアの拳がお腹にクリーンヒット。そのままあの子は倒れてしまった。
「はぁ...起きたらいきなり殺しに来られるなんてね...」
「お疲れ様レミリア。怪我はない?」
「ないわ。その子供の動きが単調過ぎて余裕だったわよ」
「それなら良かった」
...この子の術式気になるな...調べてみようかな。パチェと協力してね。
「ところで...用事ってその子供についてでしょう?...それは何なの一体」
「それはね──」
私はレミリアに説明し始めた。美鈴から聞いた話も交えて。
話の終了後...レミリアはニヤッと笑った。何か新しい玩具を見つけたかのように。
「この子供...面白いわね。お姉様、この子供を従者にしてみない?」