イチイバル:北欧神話に登場するオーディンが持ってたとされる弓で、エレナのメインウエポン。一本の矢を引く力で十本を放つことができると言われてる。
それではよろしくお願いします。
Side:エレナ・スカーレット
月日って流れるのって早いねぇ...もうフランが生まれる当日だよ。予定が狂うことがあると思って予め一週間前には保護魔法を紅魔館の全員掛けといたけど、予定は狂わなかったよ。すごいね。
保護魔法掛けた後に倒れちゃって心配性なレミリアに看病されたのは記憶に新しい。うーん、多分倒れることは伝えたはずなんだけどね。別に気にしなくてもいいよって言ったと思うんだけどな。まぁいいや。
って訳でこれからフランが生まれます。私とレミリアとお父様は廊下で待機中です。
「ねぇお父様、まだかしら」
「まだだよレミリア。ゆっくり待つとしよう」
レミリアは早くフランに会いたいようだ。急かすレミリアをお父様が制する。そんな中でも私は呪文の練習をしてた。勿論二人に聞こえないように。
レミリアには事情を話してるけど、お父様には詳しい事は内緒にしてるからね。しょうがないね。
するとお母様が入ってる部屋から従者さんが1人は出てきた。レミリアはすぐ駆け寄って聞く。
「フランはもう生まれたの?」
「いいえ、まだ時間が掛かりそうです...具体的には、後3時間ほど」
がっかりするレミリアと宥めるお父様。うん、尊い。いいねこれ。
そんな事を考えつつ、私は図書館へ向かった。術式の最終確認をするのだ。
誰も触れてはいけないとして、私はこの日だけ図書館を貸し切った。お父様は
「いつもお前が貸しきっているようなものじゃないか」
と苦笑しながら了承してくれた。ありがてぇ...。
さて、術式の方はバッチリだった。魔方陣も歪みなく描けれてる。...後は呪文だけか。頑張ろっと。
よし、戻ろう。後は生まれるのを待つだけだ。
Side: レミリア・スカーレット
三時間。それは私達吸血鬼にとっては儚い時間である...はずだった。たった三時間、されど三時間だ。侮れない。
「ねぇお父様、もう三時間くらい経ったんじゃないかしら」
「まだ三時間と伝えられてから2時間も経ってないぞ?もう少し落ち着いたらどうだ」
「そういうお父様だって、動揺を隠せてないわ。さっきから顔がニヤニヤしてるわよ」
指摘されて焦るお父様。それを見て私は笑ってしまった。ふと、お姉様が居ないことに気づく。おそらく、術式でも確認しに行ったんだろう。と考えてたらお姉様が戻ってきた。
「おぉエレナ。おかえり、どこへ行ってたんだ?」
「ちょっとトイレが長引きまして...緊張で腹痛が止まらなかったんですよ」
照れながら言うお姉様可愛い。するとお姉様が私に向かってウインクをした。私の予想が当たったんだなぁと思うと同時に、私の心はお姉様で満たされた。幸せ...お姉様と私とフラン。三人で笑い合う夢の日も遠くないわね...
その後、お姉様が私やお父様に話を展開してくれて、いい具合に時間を潰すことが出来た。お姉様ってば、どこでそんなスキルを身に付けたのかしら?
「皆様!フラン様が誕生致しました!!」
従者の一人が嬉しそうに私達に伝えてくる。私達は一目散にその部屋へ駆け込んだ。
Side: エレナ・スカーレット
うぉ、レミリアはやっ!一番に部屋に飛び込んでったよ!
...いや、確か私もレミリアが生まれる時はこんな感じだったかなぁ。懐かしい。
苦笑いをするお父様と一緒に私は部屋に入った。
「お父様お姉様!フランがいるわ!可愛い!!」
目がしいたけになってるレミリアが私達に言う。あそこまではしゃいだレミリアっていつぶりだろうか...私と戦いたいって言ってOKしたとき?うーん、それ以上に嬉しそうだぞ。お姉様複雑。
「本当だ、可愛い。これはエリザ似かな?」
「あらあら貴方ったら!貴方にも似ていますよ」
隙あらばイチャコラするなぁお父様とお母様は。
さて、私も見たいな。どれどれ...
「おぉ、初めましてフラン。お姉様のエレナ・スカーレットだよー」
フランに対して手を振る私。よかった、能力はまだ発現してないみたいだ。てか可愛いなオイ。レミリアも可愛いけど、それとはまた違った可愛さがある。
「あぁ私も!フラン!貴女のお姉様のレミリアよ!」
レミリアは胸を張って自己紹介をした。するとフランは嬉しそうに笑った。
「笑った!お姉様見た!?今笑ったわ!!」
「ホントだ!フフッ、よしよし」
フランの頭を優しく撫でる。フランは気持ち良さそうにしてくれた。するとレミリアは私の方を見て小声で言った。
「...お姉様、後で私にも」
...え、また私もやる!って感じでフランを撫でると思ったのに、まさか撫でてもらうの要求ですか!いやぁ可愛いな家の妹達は!わたしゃ幸せもんよ!!
「はいはい。っとそろそろだね」
私は用事を思いだし、お父様とお母様の方を見る。イチャコラしてるのを止めるのは申し訳ないがしょうがない。
「お父様、お母様。フランに私からの加護の魔法を掛けたいので、フランを図書館へ連れていってもよろしいでしょうか?」
「...なるほど、そのための貸し切りだったんだな。良いぞ。だがエレナ、決してフランを傷つけないように。いいね?」
「はい!!」
そうして私はフランを大事に抱え、レミリアと図書館へ連れていった。
「...ねぇ貴方、フランの羽...」
「あぁ、だがまだ似てるだけって可能性もある。とにかく、今はフランが生まれたことを祝おうじゃないか」
「...えぇ、そうね。そうしましょう」
「さて、儀式開始だね」
フランを揺りかごに入れて寝かせ、用意しておいた魔方陣の真ん中に置いた。
レミリアは儀式を見たいと言うと思っていたが、図書館の入口に待機すると申し出てくれた。多分運命を見てるんだろうなぁ。
「よし」
私は息を吸って呪文を唱え始める。
呪文は訳が分からない文字で、読みに苦戦するレベルだ。私にこの呪文を文章化しろって注文が来たら無理って答える。そんなのは魔女くらいしか出来ないと思うし、私が唱えながら見てる本は魔女製の本だ。
呪文覚えてるなら本を見る必要は無いだろうって?気持ちの問題さ!お手本があった方が安心するに決まってるじゃないか!!
そんなわけで呪文を唱え終わる。するとフランから赤い塊が出てきた。禍々しいオーラを放ってる。すこし油断したら飲み込まれそうになるほどだ。
「これが...狂気!」
後はこれを破壊するだけだ。
私はすぐにメイン武器のイチイバルを出し、思いっきり矢を放った。すると意外とあっさりとパリンっと砕けていった。少し拍子抜けした。
「なんだ、意外とあっさりだったな...」
もう少しかかると思ってたからびっくりだ。私はフランを抱えて図書館から出ようとする。
今思えばここで油断しなければよかったんだ。
Side: Nothing
エレナが図書館を出ようとするその後ろで赤い塊がまた再生していた。そしてそれは再生直後にエレナの背中からエレナの中へ入った。
「痛っ!」
背中をさするエレナ。しかし辺りに当たったものは何もない。
「...おかしいなぁ」
ここでエレナが思い出していれば良かったのだ。夢の父の声を。
『狂気を解除する方法は無い!』
狂気を解除する方法は無い。つまりこうだ。壊しても意味のない、ということだ。狂気というものとはそう簡単に因縁を切れないということだ。
ただフランと狂気を切り離すことには成功した。それいい。だが狂気はまだ生きている。そして次に狂気が器としたのは───?
──そう、エレナだ。彼女は気付かぬ内にフランの狂気を取り入れてしまった。だが彼女は肉体的にも精神的にも強い。現にあのトラウマを軽くだが乗り越えた。狂気が発現するのは、ずぅっと後の話だろう。
はてさて、どうなることやら──
「...まぁいいや。おーいレミリア!魔法掛け終わったよー!」
「お姉様!成功したのね!やったわ!これでフランが幽閉されることは無くなるのね!」
「幽閉じゃなくてもフランの部屋が地下になる可能性はあるけどね...能力次第かなぁ」
「そうね...とにかく、部屋に戻りましょ!お父様もお母様も待ってるわ!」
「そうだね!行こうか!」
来るとは思うけど来ないであろう疑問に先に答えるコーナー(二回目)
Q‚Side: Nothing って誰?
A‚ 天の声です。