本当に申し訳ありません。
(一件落着というよりは、一段落って言う方が正しいかな)
結弦は
一〇〇%信用された訳ではないだろうが、件の魔術師二人から少しは信用されたのだろうかインデックスの顛末について説明してもらえた。
とは言っても、上が現状維持という様子見を行う事を決めたため、ステイルと神裂もすぐに再度回収等を行わないということだけ説明の上で
「何かおかしな動きが見られれば容赦はしませんから」
と念を押されたのだが、とりあえずは一段落だろう。
(問題があるとすれば・・・)
そう考え所でインデックスが病室の前まで歩いてきた。
「あなたは?」
「ここの見舞客ですよ。すみません、ここは邪魔ですね」
そう言ってインデックスに会釈をしながらその場を後にした。
とは言っても角を曲がったところで、能力で姿を消しすぐに引き返して来たのだが・・・
みれば、インデックスが深呼吸をしていた。
心を落ち着かせているのだろう。
その後、意を決したのか病室をノックした。
「はい」
そのノックに呼応した声が聞こえたためインデックスは病室に入っていく。
インデックス自身もある程度の顛末は聞いているようであった。
故に彼女にとっては生きていたことが嬉しいすでに涙目になりながら彼に寄り添うために近づいていったその時・・・
「あの・・・あなた、病室を間違えていませんか?」
少年は少女にそう尋ねたのである。
記憶喪失ではなく、記憶破壊。
少年の症状を診たカエル顔の医者はそう判断した。
忘れているのではなく、脳細胞事記憶が破壊されなくなっていると・・・
「あの、大丈夫ですか?なんか君ものすごく辛そうだ」
インデックスも少年の症状については説明を受けていた。
しかし、実際に現実を突き付けられ、ショックを受けていた。
「・・・ううん、大丈夫だよ、大丈夫に決まってるよ」
「・・・あの、ひょっとして。俺達って、知り合い?」
何よりも辛い一言だった。
その台詞は本当に何も覚えていない事を意味するのだから・・・
「・・・とうま、覚えてない?私達学生寮のベランダで出会ったんだよ?」
「俺、学生寮なんかに住んでたの?」
インデックスは確かめるように静かに言葉を紡いでいく。
「・・・とうま、覚えてない?とうまの右手で私の『歩く教会』がこわれちゃったんだよ?」
「あるくきょうかいってなに?・・・散歩クラブ?」
「・・・とうま、覚えてない?とうまは私のために魔術師と戦ってくれたんだよ?」
「とうまって、誰の名前?」
「・・・とうま、覚えてない?」
これだけは聞いておきたかった。
「インデックスは、とうまの事が大好きだったんだよ?」
「ごめん」
少年は本当に何も知らないといった風な悪意のない声で言った。
「インデックスって、何?人の名前じゃないだろうから俺、犬か猫でも飼ってるの?」
非情な一言だった。
その言葉だけは聞きたくなかった。
インデックスはついに耐え切れなくなりかけたが、必死に全てを噛み殺し笑う。
ボロボロの笑顔にしかなっていないが、それでも必死に笑顔を作って、目の前の少年に笑顔を向けていた。
「なんつってな、引ーっかかったぁ!」
そんな今までの雰囲気は何だったのかという感じで
「犬猫言われてナニ感極まってんだ。お前はあれですか、首輪趣味ですか。もしかして俺にそういうプレイを要求してるわけ?」
インデックスが状況を掴めずにいると・・・
「お前は何今にも泣きそうなってんだ。それで笑ってるつもりですか?」
「え?とうま記憶が・・・」
「破壊されているはずだってか?あのカエル顔の医者が言うにはそれで記憶喪失になる
「はずだった?」
「だってさ、その破壊の原因も
上条当麻の右手にはありとあらゆる異能の力を打ち消す【
それを聞き力が抜けたのかインデックスはその場にぺたりとへたり込んだ。
「それにしても普段散々人の事を振り回してきたお前の事だ。今回の件で少しは自分を見直すことができたんじゃねぇの?」
インデックスからの返事がないため、改めて彼女の方を見ると、肩を震わせていた。
「あっあれ?」
この反応は笑いなどではなく本当に怒っているそう判断した時には彼女から頭にかぶりつかれていた。
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「あーこれはひどいね」
「死ぬ、ホントに死ぬ」
その後上条当麻がナースコールを押したためカエル顔の医者は来たのだが、途中で修道服の少女とすれ違い、病室に入ってみると酷い有様の上条当麻がいた。
カエル顔の医者はため息混じり一呼吸おいてから・・・
「けど、あれで良かったのかい?君、本当は
少年は黙り込んでしまう。
「確かに事件の事はあの二人に聞いたままを伝えたけど」
魔術の結果倒れた少年とインデックスをこの病院まで運んで来たのは魔術師を名乗る二人の男女だった。
カエル顔の医者はその二人からこれまでの経緯も一通り聞いていた。
彼自身はそれを信じなかったが、少年は知る権利があると考え、そのまま伝えたのである。
そして、その情報を元に上条当麻を演じること、上条当麻でいる事を決めたのだ。
「・・・俺、何だかあの子にだけは泣いてほしくないなって思ったんです、そう思えたんですよ。この感情がどういったものなのかはもう思い出せないだろうけど、確かにそう思えたんですよ」
少年はどこまでも穏やかに
「案外俺はまだ覚えているのかもしれないですね」
「君の記憶・・・思い出は脳細胞事死んでる。なら、どこに思い出が残ってるって言うんだい?」
少年はどこか確信を持って答えた。
「そりゃあ、決まってますよ。心に、じゃないですか」
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カエル顔の医者は少年の部屋を出て、診察室に戻り腰を下ろした。
「・・・入ってきていいよ」
そう言った次の瞬間、診察室のドアを開けて結弦が入ってきた。
「お忙しいのにすみません」
「それよりも先に謝るべき事がある気もするけど」
「返す言葉もないですね、すみません」
そう言いながら結弦はここ最近こればっか言っている事に気づき若干自己嫌悪を感じていた。
「・・・まぁ、今回だけは特別に大目に見てあげよう」
「ありがとうございます」
「それで何の用かな?」
「あの少年の記憶は本当にどうしようもないんですか?」
それだけはきちんと
故に結弦は足を運んだ。
「・・・残念ながらね」
しかし、返ってきた答えは変わらないものだった。
「そうですか。それが聞きたかっただけなので」
結弦の用件は済んだため、この場を後にしようとした所で改めて声がかかった
「・・・今回の件を大目に見る代わりという訳ではないけど、僕からも一ついいかな?」
「どうぞ」
「
「
「・・・そう」
「それでは失礼しますね、お騒がせしました」
そう言い、結弦は今度こそこの場を後にした。
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「以上が今回の依頼報告です」
結弦は窓のないビルにて今回の依頼報告をしていた。
「ご苦労、また何かあったら依頼をする」
報告を聞きアレイスターはただそう返した。
「・・・」
「どうした?」
「今回の件一体どこまで計算ですか?」
結弦はそう聞き返したが、アレイスターからの返答はなかった。
「魔術に【幻想殺し】、それにおそらく禁書目録。確かに今回自分にとっても収穫はたくさんありました。けど、少なくとも自分が関わった事に関してのそちらのメリットがあまりあるようには思えません。【
「私の考えをそちらに教える義理はないはずだが?そもそも
「・・・そうですね、失礼しました」
結弦は一歩下がってから頭を下げた。
「また何かあれば声をかけて下さい」
こうして、後に深く関わっていく事になる世界を認識したきっかけの事件は終着をみた。
前回言った通りそれほど長くないのに遅くなってしまいました。
モチベもあり、今後の構想の大筋もすでにあるのですが、時間が取れない。
終わりまで出来るのだろうかと思う今日この頃です。
さて、ようやく禁書目録編終了です。
次は前から言っていた幻想御手編になるのですが、念のため一つ説明を。
・能力実演旅行編について
正直やりたかった(今でもやりたい)です。
この話と相性が非常に良い(学園都市外での話かつ魔術も関わってくる)ので。
ただ、自分持ってないんです(ネット等の情報で大筋を知っているだけです)
もし、今後手に入れば書くかも知れません。
加筆修正も前に一度魔術に見覚えがある風にするだけ(細かい修正はあるとは思いますが)だと思うので。
ただ、今の所は書かないつもりなのでご了承下さい。
次回も出来れば速めに更新はしたいですが、期待はしないで下さい。