世界を紡ぐために   作:しまらくだ

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とある三期のディザームービー公開しましたね。

あくまでも個人的な予想だったんですが、三期は原作十九巻までで第三次世界大戦編は二部作くらいで劇場版とかかな~って考えたんですが、ディザームービーで二十巻以降の描写をいくつか確認・・・尺足りると思えないんですが・・・




偽善者

先に動いたのは結弦だった。

アウレオルス=ダミーが使う瞬間錬金(リメン=マグナ)という魔術の条件等は定かではないが、アウレオルス=ダミーはいかなる物を純金に変えると言い、事実塾生達を一瞬で液体金属に変えていた。

この事から最悪の場合、相手が扱っている鏃に触れた瞬間負けが決まってしまうのだ。

とならばまずは鏃に当たらないように動き続けて糸口を見つける。

と言ってもここは進学塾の建物の中である。

当然広範囲の行動は難しいが、結弦はレーザー推進を利用し、出来る限り行動範囲を広げて動いていた。

 

「必然。我が瞬間錬金は僅かでも傷つけた物体を純金へ変換させる必殺の魔術。恐れるのが当たり前である。そうだもっと恐れて醜くもがいてみせろ!!」

「・・・」

 

結弦はアウレオルス=ダミーを観察しながら考えをまとめていた。

 

(わざわざ説明してくれるとは、随分苛立ってるのかな。しかし、僅かでも傷つけたら・・・か。って事は傷つかなければってのは無理かな。となると()()()()()を調べる方が妥当かな。後はもう一つ・・・)

 

結弦がある程度の考えをまとめた所でアウレオルス=ダミーが次の行動に出た。

 

「しかし、考えが甘いぞ、超能力者」

 

瞬間錬金を乱射し出したのだ。

その乱射速度は速かった。

パッと見ても一秒間に五回以上の射出と巻き戻しを繰り返している。

 

「連射可能な上、速いと来た。数打ち当たる?それとも消耗戦狙い・・・どちらにしても長引けばヤバいかな」

 

いくら鏃が小さいとは言え、避けれる行動範囲が狭い以上高速で連射可能なのであれば、避け続けるには限界がある。

寧ろ相手の連射速度をみれば避け続けられてる方が凄いくらいだ。

結弦は相手が冷静な判断能力を失っている事実に感謝の気持ちを抱くほどであった。

 

(悠長にしてる余裕がないなら早々に実験その一といきますか)

 

結弦がそう結論付けた瞬間飛んできている鏃を正面に向き直し横に避けた後にすぐにレーザー推進を利用し、アウレオルス=ダミーとの距離をいっき詰めにかかる。

アウレオルス=ダミーは驚いた素振りをみせていた。

 

「愕然、何故距離を詰める?我が瞬間錬金をその距離で避けられるとでも思っているのか?自然。もしそうであれば愚かと言う他ないぞ」

 

アウレオルス=ダミーは改めて瞬間錬金を結弦に向け発射する。

放たれた鏃が結弦の身体に傷を付け一瞬で純金に変換される。

そのはずだった。

しかし、鏃は結弦を貫通し、結弦の姿は跡形もなく消えてしまった。

 

「な!?」

 

アウレオルス=ダミーが状況に戸惑っていると、すぐ目の前から聞こえた。

 

「こっちですよ」

「!?」

 

(実験その一は確認完了っと。じゃあ実験その二!)

 

咄嗟に声に反応し、後ろへ交代するアウレオルス=ダミーの目の前に結弦は手を横なぎへ振るう。

レーザー光線を発生させているその手を・・・

 

「ぐ!!」

 

回避が完全には間に合わず、腹部に傷を負ったが、幸い大きな負傷はせずに済んだアウレオルス=ダミーは改めて結弦を見据えた。

 

「貴様・・・」

「俗にいうレーザーブレードって所ですかね」

 

そう言いながら出現させていたレーザーブレードを霧散させた。

 

「蜃気楼とはあの魔術師と言い、随分小癪な真似が好きらしい」

「蜃気楼ではないですけどね。理論は同じですが原因が違うので。それより・・・」

 

結弦はアウレオルス=ダミーの腹部を刺しながら・・・

 

()()()()()()()()()

「・・・」

 

アウレオルス=ダミーは答えられなかった。

先程の結弦の攻撃を受け、怪我をしている。

普通人間であれば怪我をすれば出血する。

しかし、アウレオルス=ダミーにはそれがなかったのだ。

 

「あ、ああ・・・」

 

アウレオルス=ダミーはその事実を受け入れられないのか、呆然としていた。

 

「偽物だった事がそんなにショックでした?でも、自分としては最後までお相手頂きたいのですが・・・」

「ふふ、あはははははは。自然。貴様が幻想を見せているのだな!必然、万死に値するぞ。楽に死ねると思うなよ能力者!」

 

今までも結弦の発言等で既に冷静さを失っていたアウレオルス=ダミーだったが、いよいよをもって何かが壊れてしまったかのように狂気に満ちていた。

 

(本格的に冷静な判断力を失ってくれたのは、有り難いけど・・・正直あまり近づきたくないな)

 

戦闘において冷静さを失うのは双方にとってメリットであり、デメリットでもある。

相手にする場合は確かに色々と策を張り巡らせやすい部分もあるだろう。

しかし、相手が陥っている感情が怒りといった物であった場合は逆に何をしてくるかが読めなくなる。

分かることがあるとすれば、捕まったらろくな目に遭わないだろう事だけだろう。

 

(とは言え、実験は二つとも自分に有利な結果だし・・・)

 

結弦はふと自分の携帯電話画面を確認し・・・

 

(準備も完了。やるしかないか)

 

そう改めて決意を決め、深呼吸をして・・・

 

「そろそろ決着をつけましょうか。悪いですがここからは()()()()()ですよ」

「それはこちらのセリフだ。後悔してももう遅いぞ!!」

 

そのアウレオルス=ダミーの言葉を合図にお互いが動いた。

アウレオルス=ダミーは瞬間錬金を構え、結弦はレーザー推進で距離を詰める。

放たれた瞬間錬金の初撃を体勢で躱していく。

しかし、瞬間錬金は次々と放たれる以上狭い廊下では限界がある。

結弦は手にレーザーブレードを出現させて瞬間錬金に向けて横薙ぎにぶつけるとバチッと音がなる。

 

「流石にこの程度の火力じゃ攻撃を消すことは出来ませんが、多少ずらす事くらいは出来ますよ」

「小癪な!!しかし、そんなものがいつまで続くかは見物だな」

 

そう言いながら次々と瞬間錬金を放ち、結弦はそれにギリギリな所で対応していっており、度々大きな音も響いていた。

 

(さて、ここから先をより完璧にこなす場合は自分の演算能力が足りるかだけど・・・)

 

次の瞬間結弦は脚に力を込め直し、大きく前進する。

 

「自然。ここまで近づいて我が瞬間錬金を躱せると思っているのか!」

 

二人の距離はもう二~三メートル程まで近づいている。

瞬間錬金の速度と結弦が距離を詰め続ける事を考えるとほとんど距離は〇と言えるだろう。

 

「これで終わりだ!能力者!!」

 

アウレオルス=ダミーから放たれた瞬間錬金は結弦の額を()()()()

その後すぐに後方から声がした。

 

()()()()()()

「何度も蜃気楼とは芸がないぞ」

 

アウレオルス=ダミーは声の方を振り向き、後方へ瞬間錬金を乱射した。

しかし、その全てが空を切っていた。

一瞬また蜃気楼で自身の姿を消しているのだと考えていたが、そこで気付いた。

地面に落ちている携帯電話の光に・・・

 

「ボイスレコーダーってやつですよ」

「!?」

 

元の方角から声が聞こえ、向き直そうとした時、アウレオルス=ダミーの見ている景色がかくんと動いた。

何が起こったのか分からずに状況を確認しようと見渡すと自身の純金で代用していた左脚も含め、両脚の先が切断されている事に気付く。

そして・・・

 

「があああああああ!!」

 

それを自覚瞬間に激痛に襲われる。

 

「言ったはずですよ。遠慮しないですよって」

「っつ!!調子の乗るなよ!」

 

結弦の発言に少し思考力が戻ったのか、改めて瞬間錬金を向けようとしたが、結弦は発射される前にレーザーブレードを横薙ぎに振るう。

 

「があああ!!腕が~~~」

「さて、ここまで・・・ですかね」

「何がどうなったと言うのか・・・」

「戦闘中は冷静であるべきですよ。一度虚像を見せた際に虚像は純金に変換されなかったので、光には瞬間錬金とやらは効かないと思いました。なので軌道をずらすくらい出来ると判断しました」

「貴様・・・」

「後は簡単です。携帯のボイスレコーダーで声を録音した上で、タイマーでセット。その後軌道をずらす際に生じる音に紛れ込ませる形で、あなたの後ろに携帯を投げるだけです。何度も虚像に騙されているみたいだったので、流石に警戒はされると思いましたが、声が含まれていれば、今のあなたなら騙せると考えた結果がこれです」

「・・・何故だ。何故瞬間錬金を有するこの私が超能力者如きに・・・」

「・・・ごめんなさい。恨んで貰って構いませんから・・・」

 

そう言った次の瞬間、もう一度結弦はレーザーブレードを振るい、アレイスター=ダミーの首が切断される音だけが静かな廊下にやたらと響いていた。

 

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「知恵熱出そう・・・」

 

結弦がアウレオルス=ダミーを倒しての最初の感想としての発言がそれだった。

最後にアウレオルス=ダミーの相手をしていた時は能力の大盤振る舞いであった。

アウレオルス=ダミーへの説明は省いたが、アウレオルス=ダミーの後方へ携帯を投げる際、音は誤魔化せても携帯自体を見られたら意味がない。

なので、その可能性を失くすため能力で見えなくしていた。

その上で、屈折率を変更し、自身の位置を錯覚させながらレーザー推進とレーザーブレードの同時使用しながらその二つにも必要最低限の出力を持たせる。

これだけの能力使用による演算を同時にやってのけたのだ。

さらにもう一つ、結弦の能力はあくまで操作であるため、光そのものは外部から必要とする。

しかし、ここは放課後の人気のない建物の中である。

故に存在する光力も限られている。

昼間の晴れた屋外であれば、使える光力は常に近くに存在するが、ここではまず光力を集めるための時間も要する。

その点に関しては実は予め確保しておく事で補っていたが、より多くの事をするにはより多くの光力がいる。

そのような状況で戦っていたのだから負担も相当なものである。

 

「確かにこんな事続けてたら、能力成長の促進にはなりそうだな。まぁ、何はともあれ何とかなって良かった・・・」

 

そう言いながら深く息を吐きながら、自身が投げた携帯を取りに向かう。

改めて一呼吸を置き、結弦自身()()()()()()()一時的な現状逃避をしているだけである事を嫌でも実感させられていた。

 

「・・・」

 

結弦は自身の携帯を拾い、倒れているアウレオルス=ダミーを改めて眺める。

 

(相手は人間でもなければ生物でもない。故に()()()()()()()()()()()()()やった。なのにやっぱり割り切れてはないか。それにどんな言い訳しようと命あるものを殺めたんだ・・・本当にどうしようもない偽善者だな)

 

結弦は自分の中に何か苦い物を残した事を自覚しながらその場を後にした。

 

 

 




さて、今回オリジナルのバトル回だったわけですが・・・今の自分にはこれが限界でした、大目に見て下さると幸いです。
描いていく中で上手くなっていくと良いなと思う今日この頃です。

今回のバトルにて結弦実質無傷で勝ってますが、許して下さい。
だって、ステイル曰く学問上の価値はないらしいので否定しているのですが、戦闘用と考えた場合かなりの強魔術だと思うんですよ。
実質一撃でも食らった負けですし、このSSでは描いてませんが、変換した純金も操作する事まで出来る代物です。
正直瞬間錬金も十分強すぎると思ってます。

結弦が負けちゃうとSSが終わってしまう(アウレオルス=ダミーの場合は負け=死と言えるので)ので勝ってますが、実際問題まず負けると思います。
一応言っておくと、結弦はそこまで強キャラ設定のつもりはありません。
せいぜい現状は大能力者の中では強い方だけど、超能力者には敵わないくらいの実力設定のつもりです。

今回の話に際し念のため残酷な描写及び、ご都合主義と独自解釈(光に瞬間錬金は効かない事、実は原作でもそういった物に瞬間錬金が効くのか描写がなかったはず(少し言及はありましたが))があったので、その三つのタグを増やしました。

しかし、首切断とは・・・ある意味原作より酷い最期な気もするのは自分だけですかね。

最後になりましたが、ヴァレンPさん、霖霧露さん評価ありがとうございます。

今回でお気に入り減りそうで怖いです・・・

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