遅れて申し訳ありませんでした。
「校長先生ー、すいませーーん」
校長室前。
ここに来たのは、優香も真紀も初めてではない。
何度、異世界関連でここに来たのか分からない。
共にいるのは、チーム《カラーパルス》の面々だった。
-----------------------------------------------------------------------------
少し、時は遡る。
ほぼ一番乗りで教室へと入った花園優香。
しかし、この日は先客がいた。
高木悠人と、ライちゃん。
「……ライちゃん?」
聞いてきっちり2秒後。
「……あんた誰よ」
逆に質問された。
そして、何故自分のことを知っているのかとも。
それには答えられるが、メンバー全員の前で話した方が良かろうと判断し、ライちゃんの「カモン」シグナルでダイくん、タクト、アヤちゃんの3人を集めてもらった。
そして、優香は言った。
「あたしは、花園優香。
『あっち』では、フェルだったけどね。
ついでに言っとくと、シェリィはガチであたしの妹。
こっちだと花園真紀。」
「フェルちゃーーーん!!!!」
ライちゃんが思いっきり抱きついてきた。
痛い。特に左腰。長いことブキ持ってたからか握力凄いことになってる。
「ちょ、ちょま、こっちじゃ『ゆうちゃん』で頼むよライちゃん!」
「あいだがっだよーーーー」
ライちゃん、涙声で変な風になってる。
ハンカチ後で渡そ。
「んで、優香」
後ろから、声。
悠人だ。
「レポート。書いてこい。どっちにしろ政府からお達しがくるしな。あと、校長先生ん所行ってこい。今すぐ。こいつらいつでもここに入れるようにな」
レポート……日記じゃダメなのかなぁ。
などと考えながら、とりあえず、《カラーパルス》の面々を連れて、校長室へと向かった。
----------------------------------------------------------------------------------------
門田校長先生からは、「またお前か」みたいな顔で見られた。
全く手続きに忙殺されるこちらの身にもなってみろ、と言わんばかりに、ため息が漏れる。
残念だが、こちらだって好きで異世界に行ってるわけではない。
行かされていたり、突発的事故だったりもする。
今回は事故に近い。
それにたった2日しかハイカラシティを体験出来ていないのだ。
まともなレポート、今回は期待しないでください、町役場のおじさん……。
何とか明日中に特別通学証発行を約束させ、明後日水曜日の朝礼で全校発表することになった。
さて、レポートとPV作りだ。
忙しい。
ほぼ月一でこういうことが起こるから、もう慣れている。
「失礼しましたーー」
さて、書類作成を頑張らねば。
教室に帰ると、担任の雪華先生が、待て、と手で制してきた。
さらに口パクで、「ブキは持ってきてるの?」と言ってきた。
カチャリと音がしたと思ったら、ケースからリッターを出すタクト君の姿。持ってきてたんだ……
更に、指示出して、一発、と。
構えて、引き金に指が触れた瞬間、レーザーポインター機能とチャージ機能が働いた。きゅうううっ、と音が鳴り、インクが圧縮される。
ピリッ。
チャージ完了。
それを合図に、「Splattrack」が流れ出す。
なるほど、どこかから情報を得た雪華先生、特別生のプレゼン練習にこの場を貸したということらしい。
教室の壁は濡れない。絶妙な距離感で解き放たれたインク弾が着弾し、直後に四匹のイカがその中を泳いでいった。
異世界移動は花野特有の現象で、政府も町役場も一部マニアも色々知りたいのでしょう。
そのために花園姉妹はレポート提出を余儀なくされているのです。