中年ハンターと新人ハンター達が頑張るようです。   作:Borubo

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「」内は最後わかります


最終話 後半 「 」

「着きましたにゃ」猫タクシーに乗りしばらくすると密林のキャンプ地へと着いた。

「うむ、ご苦労さん」

ファラクは礼を言いオトモ二匹と降りる。

 

(にしても…これはわかりやすいな)

 

手慣れた狩人になればなるほど、相手の気配が掴めるようになるのだが、この気配は新米にも伝わってしまうのではないかと言うほど膨大なものだった。

(だが、これでおおよその検討はついた。そこに行こう)

一人と二匹は歩きだした。

 

 

暫く歩くと二つの咆哮が聞こえた。

一つはイャンガルルガ。

もう一つはイビルジョーのものだ。

 

遠くに二匹の姿が見えた。

ファラクは双眼鏡を取り出し、それを傍観する。

「何が見えますにゃ?」

「待ってな……」

黒狼鳥と、恐暴竜。二匹は対峙していた。

 

「二匹がお互いに睨み合ってるな…こりゃ誘導しなくてすみそうだ」

恐暴竜は走り出した。どうやら黒狼鳥に噛み付こうとしているらしい。しかし、黒狼鳥はそれを右に飛んで躱し、

 

すぐさまとんぼ返りの要領で尻尾を鞭のようにしならせ、正確に恐暴竜の顎を撃ち抜いた。尻尾の先端にある棘が、毒が、恐暴竜を苦しめる。間髪いれず、滞空したまま火球を三連続で放ち、顔に当てる。

 

流石の恐暴竜もこれには答えたようで、怯んでしまう。そこを無慈悲に、豪快にサマーソルト尻尾攻撃で恐暴竜の片足を砕いた。

「ギャアアア……」

倒れる恐暴竜。黒狼鳥は鋭い嘴で、相手の首を二度三度、叩き刺し抜くことで、絶命させた。

「おいおいおい、まじかよ」

「なんですにゃ?」

 

「イビルジョーを無傷で倒しやがったぞあいつ!」

「まさかにゃ!?」

「残念だが現実だ…」

本来イャンガルルガといえど、大半のイビルジョーには捕食対象となってしまう。だが、あのイャンガルルガは違った。それがG級なのだから。

 

「こりゃだめかもわからんね」

「縁起でもない事言うなにゃ」

「すまんすまん。どーんといこうや…いや………その必要はないな」

「……みたいですにゃ」

イャンガルルガはゆっくりとファラク達の目の前に降り立った。

「こりゃ、お強そうだ」

 

イャンガルルガの体躯は通常種より一回り大きい程だが、刻み込まれた無数の傷が、両耳が完全に破壊されているといった風態がこの個体の強さと存在感を醸し出していた。

「ガアア………」

 

 

黒狼鳥とGの狩人はお互いに睨み合いながら一定の距離を保ったまま円を描くように歩く。

まるで密林の生命全てがこの戦いを固唾を飲んで見守っているとような静けさがここにはあった。

 

一瞬。イャンガルルガは突進し足を滑らせながらその勢いを殺さず尻尾でファラクを薙ぎ払おうとする。ファラクはそれを盾で受け流し、イャンガルルガの腹部に潜り込む。

 

背中のウルクスアヴァランガ抜き、突きを繰り出す。

腹部に甲殻はない…それでもイャンガルルの腹部には少ししか突き刺さらない。間髪入れず砲撃を一発叩き込む。

 

イャンガルルガはそれを意に介さずサマーソルト尻尾攻撃を繰り出す。

ファラクはそれをガードする

 

「ぐぅぅう」

ファラクの体は勢いで数メートル後ろへと押し出された。それを足を踏ん張って堪える。

そして、火球ブレスを一発。それを防ぐと、砂埃がまい、一時的に視界が悪くなる。

「目潰しか………しかし」

 

熟練の狩人にもなればたとえ目が使えなくなろうと、モンスターの位置は気配でわかる。

(左か)

 

左からイャンガルルガが嘴で殴るように切りつけてくる。盾で受け流す。相手はその勢いのまま尻尾を振るう。

それをしゃがんで躱し、砲撃を加える。その隙にオトモのショウガはペイントボールをぶつけた。

 

お互いに一歩も譲らない。途轍もなく高等な闘いが繰り広げられている。

しかし徐々にファラクが押していると見られた。

 

「手出しできないにゃ」

「にゃ」

 

闘いが始まってか数時間が経過した。

ファラクの攻撃により、イャンガルルガは確実にダメージを食らい、ボロボロになってきていた。

だがしかし。突然限界は訪れた。

 

「ハァ…ハァ……」

ファラクのスタミナが切れたのだ。

四十八歳という、ハンターとしての寿命はとうに過ぎ去った年齢。

今までは技術でカバーしてきていたが、もうそれは通じない。

 

イャンガルルガの攻撃を回避するのが精一杯な状況だった。

イャンガルルガが嘴が叩きつけようとしてくるのをすんでのところで躱すと、ついにファラクは膝をついてしまった。そこをイャンガルルガに蹴り飛ばされる。

 

「ぐふぁ!」

木に叩きつけられ、崩れ落ちるファラク。イャンガルルガはゆっくりと迫ってきていた。

「待つにゃ!」

「ご主人に手出しはーーー」

 

飛び込んできた二匹のアイルーをうざったい羽虫を手で払うが如く顔で弾き飛ばすイャンガルルガ。

オトモはファラクと同じ方向に飛ばされ、地面を転がる。

「「にゃにゃにゃにゃにゃ」」

「ダメだったか…すまんお前ら……アロ、ライタ…どうやらここまでのようだ……」

 

イャンガルルガがサマーソルト尻尾攻撃をする態勢を取った。

(くそっ………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

「うおおぉぉ!!」ライタの声がした。

ライタがイャンガルルガの背中の上に飛び乗ったのだ。

「ガアア!」

イャンガルルガは背中にいるライタを振り落とそうと暴れまくる。

そこに、「ファラク!」アロが駆けつける。「お前ら……」

「はい、これ」

アロはファラクの口に回復薬グレートと、強走薬グレートを流し込んだ。

「む…おお…!おお!!」

ファラクが立ち上がると同時にイャンガルルガはライタを振り払い、ファラクへと突進する。ファラクはそれを盾で防ぐがその勢いに押され出す。盾と嘴がぶつかり合い、ギャリギャリと音を立てる。

 

どうやらイャンガルルガはファラクを押している先の木でファラクを押しつぶそうとしているらしかった。「ぬぅ…!」

しかし…「俺を忘れんなやぁー!!!」

 

ライタがイャンガルルガの背中にスリンガーを打ち込み、再びイャンガルルガの背中の上に飛び乗ったのだ。

「ガアア!!」

イャンガルルガは態勢を崩しかけるが持ちこたえようとする。

 

が、「うおおりゃあああ!!!」「「にゃー!!!」」

追いついたオトモ達の剣豪猫七支刀[宮]とアロの斧モードの剣斧「ヴァーヴルンシンガー」がイャンガルルガの脚を切り払った。

ガギ!と音を立てて、イャンガルルガはその勢いを徐々に殺しつつ崩れる。

 

「「「「ファラク(ご主人)!!!今だ(にゃ)!!!」」」」

 

 

「うおおお!!!!」

 

 

ファラクは相手の突っ込んでくる勢いを活かし、イャンガルルガが嘴を開けたその時、銃槍をその嘴にねじ込んだ。

イャンガルルガの嘴の中の銃槍が青い光を放ち始める。

「喰らえぇ!!」

 

対モンスター用特殊兵装ーーーーーー

 

「竜撃砲!!」

 

 

イャンガルルガの嘴の中で龍撃砲が炸裂した。ドグァ!!!という巨大な音とともに豪炎がイャンガルルガを内側から焼き焦がす。

イャンガルルガは自らの命の光を失っていくのを感じた。

銃槍を嘴から引き抜く。

G級イャンガルルガ、討伐完了だ。

「や、やったぁあ!!!」

「「うおおおお!!」」

「やったにゃーー!!」

と三人と二匹は歓声を上げた。

「……にしてもよく来たな」

「うん。実は………」

 

ファラクが出てから1〜2時間後の集会所にて

「なぁ、アロ」

「何よライタ」

二人は集会所でファラクの帰りを待っていた。

「やっぱり…俺行きたいわ。足手まといにしかならないってのはわかってるんだが」

「奇遇ね。私も」

「お前も同じ気持ちか」

「うん」

「そうときまれば」

「行くしかないわね!」

二人は集会所の外にいたポポ荷車に飛び乗り、密林へと向かった。

ゴロゴロという音に受付嬢が気づいて外に出たが、時すでに遅し。荷車はもう小さくなっていた。

「二人とも!!何してるんですか!」

「ちょっと行ってくるわ!!」

「ちょっとって!ちょっと!!」

 

「こんなことがあったの」

「どこで戦っているのかはペイントボールのおかげで見つけることが出来たしな」

 

「ゲハハハ!!お前らと来たら!こりゃ帰ったら受付嬢はカンカンだな」

「はぁ〜憂鬱だろ」

「そういうなライタ。俺も怒られてやるよ!………………まぁ、なんだ。………有難うなお前ら」

「いいってことだ」

「気にしないで」

「ショウガ、トウフ。お前らもだ。有難う」

「「にゃ!!」

「お前達がいなければ、誰か一人掛けてたら、イャンガルルガは倒せなかっただろうな。 そうだ。アロ、ライタ。」

「何?」

「成長したな」ニッと笑うファラク。

「と、当然よ!」

「ま、まぁな!!」

そっぽを向いて照れる二人。

「さてと……そろそろ剥ぎ取って帰るぞ!」

 

 

 

三人と二匹は集会所に戻ってきた。

「コラー!二人とも!何やってんですか!!」

受付嬢が走ってくる。

「まぁまぁ。こいつらのおかげで俺は死ななくて済んだし、イャンガルルガに勝てたんだよ。だから大目に見てやってくれ」

 

「そうですけど…二人が行ってから心配で心配で……」

見れば薄っすらと目が潤み始めている。

そこにギルドマスターがやって来て言う。

「うふふ。この子。ライタとアロが行ってから自分も行こうとしてたのよ」

 

「「えっ!!」」

驚くライタとアロ。

「な、何を!そんなこと!するわけ!……ないじゃないですか……」

徐々に声が小さくなる受付嬢。

「へぇ〜。あんたがねぇ。」

「なかなかいいとこあるな」

ニヤニヤする二人に

「う、うるさいうるさい!」と赤くなって逃げる受付嬢だった。

 

「あ!待て!」

ライタとアロは受付嬢を追いかけて行った。

「ファラクさん」

「なんだ?」

 

「成長しましたね……」

「それ、ライタとアロに言った手前、あんたに言われちゃ形無しだな!」

ゲハハハ!!と笑うファラク。

「明日から村総出で祭りだな」

「うふふ…ですね」

 

「この村にはアロと、ライタがいる。ほかにまだまだ頭角を現していないだけで、いい新芽が沢山いるだろう。もう俺がいなくても、平気だ」

「………ふふっ。そうですね。貴方も休みなさい。お疲れでしょう」

 

「ああ。そうさせてもらうよ」ファラクは集会所を後にする。だが、ファラクは帰路に着く前に

墓の前に来た。モナのだ。

「よう。」

墓を見つめる。

 

「今日な……少しだけ、あの時のお前の気持ちを理解できた気がしたんだ。

まぁどんなに強くなっても俺なんかお前に比べれば全然……」

 

「謙遜するなって!」

 

「あぁいや!追いついたよな!?謙遜はよくねぇよな!……ん?」

一瞬だけモナの声が聞こえたような気がした。

気のせいだったかもしれない。

だが、確かに聞こえた。

 

ファラクはジャギィノス牙の首飾りを握りしめ、黙祷を捧げる。

しばらくして、ゆっくりと目を開ける。

ふっ…と鼻で笑った後、

「有難うな!また来るわ!じゃあな!!」

と笑顔を作る。

そして、踵を返し、帰路へと向かった。

 

 

 

最終話 後半

「中年ハンターと(元)新人ハンター達が頑張ったようです。」完

 




一応第1部完結です



ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!

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