真・恋姫†無双 ご都合主義で萌将伝!   作:AUOジョンソン

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「昔はなー・・・幼馴染と『おーきくなったらけっこんしよーね!』『いいよー!』みたいな会話毎日してたけどなー」「・・・で、大きくなったらどうなったんだ?」「・・・十八歳の誕生日の朝、親から朝食と一緒に婚姻届渡された」「・・・わーお」「急いで隣の家・・・幼馴染の家に行ったら、幼馴染も凄い顔して家から飛び出してきてな。お互いに『そっちも?』って言い合ったよ」「ホント仲良いな・・・」

それでは、どうぞ。


第四十話 昔の話に

「・・・ふぅ、だいぶ落ち着いた」

 

やっぱりちょっと食べ過ぎたか。

美味しかったけどさ。やっぱり胃袋には限界があるというかなんと言うか。

・・・待てよ? 胃袋に少しだけ宝物庫の出入り口を展開すれば、無限に物を食べられるのでは!?

消化して宝物庫から戻してを繰り返せば、おそらく半永久的に栄養摂取が可能・・・!

 

「・・・でもいくら体内で起こってることとはいえ絵ヅラが最悪だな」

 

咀嚼して飲み込んだものが宝物庫に入っていくというのも中々気持ち悪いし。

 

「しかしやることねえな。壱与も卑弥呼も副長も孔雀も響も風呂行ったし・・・流石に突入するのは副長が可哀想だしなぁ」

 

だが、ここでずっと座っているのも落ち着かない。

出かけるか。誰かに会うかもしれないし。

 

「よっと」

 

声を出しながら立ち上がり、自室を出る。

特に目的地も無いので、気の趣くままにふらふらするとしよう。

そう思って一つ目の角を曲がると、見知った顔を見つける。

 

「あれ? 兄貴じゃないッスか」

 

「ああ、魏の。蜀のと呉のもいるのか」

 

「どうも、ギル様」

 

「兄貴、今日はお休みですか?」

 

「まぁ、そんなところかな。そっちは?」

 

「半分仕事で半分休みみたいなものでしょうか。一応巡回の最中なのですが、回るところも回りきってやることもなく・・・」

 

俺の質問に答えた蜀の兵士は、だからこうして駄弁っているのですよ、と続けた。

 

「成程ね。俺も仲間に入れてもらっていいか?」

 

「もちろんッス! 今は三国の兵士がいるってことで、何処の王が一番魅力的かっていう話をしてたんス!」

 

「あー・・・。呉のは、雪蓮と蓮華、どっちが王の扱いなんだ?」

 

「今は名実共に孫権様ですが、やはり戦乱を駆け抜けた孫策様も王として捨てがたく・・・ということで、二人とも議題にしてますね」

 

「ふむふむ」

 

「ギル様ですと・・・董卓様でしょうか」

 

「ま、それが妥当だろうな」

 

俺は月がマスターだし、連合軍がやってくるまでは董卓軍にいたし。

 

「まず私から語らせていただきましょう。私は劉備様の素晴らしさはやはり優しさにあると思うのです」

 

ふむふむ、と頷く面々。

分かるぞ。蜀は桃香の人格というか、あの性格に惹かれて仲間になった将たちが沢山いるからな。

 

「しかし、優しさだけでは押しが弱い。そこで私はもう一つ、優しさに次ぐ魅力を語りたいと思います!」

 

優しさに次ぐ魅力・・・?

武力・・・はほとんどないし、知力・・・も朱里たちにフォローされてるからあまり必要ないし・・・。

なんだろうか? と首をかしげていると、蜀のが高らかに宣言した。

 

「それはドジっ娘属性! あのほわほわとした外見に見合ったうっかり度! それこそが素晴らしいと私は思います!」

 

「・・・それは盲点だった」

 

そういう方面での「素晴らしさ」か。

分からんでもないぞ。確かにドジっ娘属性を持ってるからな、桃香は。

運動神経鈍いからか良く転びそうになるし、愛紗が後ろにいるのにうっかりサボタージュ発言するし。

 

「以前ギル様と劉備様が並んで歩いているところを見たのですが、そのときに転びそうになり、とっさにギル様に支えてもらって見せたあのはにかんだ笑顔! そこまでの一通りの流れが私に衝撃を与えたのです!」

 

熱を帯びてくる蜀の言葉に、他の面子もうんうんと納得するように頷く。

・・・熱いなー。その熱意、少しでも仕事に向けてくんねーかなー。

 

「ふぅ、ふぅ・・・これで私の主張を終わります。・・・少し、熱くなりすぎましたね」

 

「まぁ、良いんじゃないッスか? そのくらい熱意を持たないと人には伝わらないッスよ」

 

「そうですよ」

 

「じゃあ、次は俺ッスね!」

 

そう言って、魏のが語りだす。

 

「曹操様のいいところは何と言っても努力だと思うんス!」

 

「ほほう」

 

「物事を極めようとする努力が並大抵のものじゃないとお聞きしてるんスけど、そこが魅力的ッスよね! 普通の人なら才能があるだけですげーってなるッスけど、曹操様はそこにさらに努力を足すんスから!」

 

ふむふむ。

確かに一刀から聞いた話でも華琳はなんにでも努力を惜しまないという話は聞いている。

 

「もう俺、魏の兵士で良かったー、って思うこと沢山あるッス! でも今日はこの辺にしておくッス!」

 

「成程・・・曹操様の魅力、確かに伝わりましたよ」

 

「じゃあ、次は俺ですね」

 

そう言って、呉のは語りだす。

 

「まぁうちは二人なんでちょっと特殊なんですけど・・・お二人とも、というか姉妹三人そろって仲が良いですよね。ありがちな王位継承権でもめたりしていませんし」

 

まぁ、どちらかというと王位を奪い合うというより王位を押し付けあってるところあるからな・・・。

普通そこは「我こそが」と行くところじゃないのか、雪蓮。

 

「なんというか・・・そう、絆っていうか、そういう繋がりが強いというのが呉王の魅力かと」

 

絆か。

四次のライダーの固有結界のように宝具となるまでの絆となるか・・・。

・・・そういえば、セイバーの固有結界は兄弟との「絆」だよなぁ。

そう思うと、絆って宝具になるほどに凄いものなんだなと思う。

 

「さぁ、最後はギル様ですよ」

 

「ん、ああ。そうだな、月の魅力か」

 

優しさ、だと桃香と被るな。うぅむ、後は・・・。

 

「可愛いな」

 

「・・・死ねばいいのに」

 

「惚気は聞き飽きました」

 

「もうちょっと考えたらどうッスか?」

 

俺の一言に、異常なほど食いついてくる三人。

何だなんだ、どうしたっていうんだ。

 

「いや、可愛いだろ」

 

「そりゃ確かに可愛いですけど!」

 

「じゃあ何が悪いって言うんだ!」

 

「ああもう、二人とも、喧嘩はしないで欲しいッス!」

 

「どうどう、ですよ」

 

・・・

 

「・・・いやはや、語った」

 

月の魅力という魅力を三十分ほど語った。

内容は・・・今となっては覚えていないが。

 

「か、語られました」

 

「・・・とても、なんと言うか・・・」

 

「ご馳走様、ッスね」

 

「さーて、なんか喉も渇いたし、どこかの甘味処でお菓子食べながら茶でも飲むか」

 

「お、良いですね!」

 

「賛成ッス!」

 

「行きましょう行きましょう!」

 

ぞろぞろと甘味処へ。

男四人で甘味処って・・・と思わなくも無いが、一人で行くよりははるかに良い。

 

「さて、取りあえず俺はお茶だけで良いや」

 

「ふぅむ・・・私達も特にお腹が空いているわけでもないですし・・・お茶だけで」

 

「俺もそれで」

 

「右に同じッス!」

 

店員に四人分のお茶を頼み、それから、そういえばと話を切り出す。

 

「董のとか袁のとか術のとかは何やってんだ?」

 

「ああ、董のは普通に仕事ですよ。袁の兄弟はらいぶを見に行くとかで休んでますし、術のところのは・・・知ってます?」

 

「いや、俺は知らないな」

 

「あ、俺知ってるッスよ! なんか知らないッスけど、休みを取ってどこか出かけてるみたいッス」

 

「出掛け・・・旅行か?」

 

俺の質問に、さぁ、そこはちょっと、と答える魏の兵士。

うぅむ、謎である。

 

「まぁなんにせよ、あいつらからも聞きたかったかもな」

 

「ああ、先ほどの話ですか?」

 

「そうそう。董のはちょっと俺と被っちゃうかもだけどさ、また別の視点からの魅力があるかもしれないし」

 

そう言いながら、やってきたお茶を啜る。

 

「・・・そういえば、白蓮も頭張ってた時があったんだよなぁ」

 

「ええと、その方は一体・・・」

 

「・・・公孫賛」

 

「こう、そん・・・ああ!」

 

ぽむと手を打ってそういえば、という顔をする呉の兵士。

・・・白蓮、かわいそうに。

 

「仮面白馬!」

 

「そっちのほうで覚えてるのか」

 

魏のが言い出したまさかの名前に少し驚きつつも、あっちのほうがインパクトあるしなぁ、と一人納得する。

というか、仮面白馬の正体は分かるのに華蝶仮面の正体は分からないのかこいつら。

 

「あの方についてはちょっと語れないですねぇ・・・何せ、あまり見たことが無いので・・・」

 

「でもまぁ、白蓮は結構頑張ってるよ? 馬上でも地上でも船上でも何でも取り回せる器用さがあるし、どんな仕事を頼んでもこなしてくれるのがいいと思うね」

 

突出型ではなく、目立った能力が無い代わりに苦手なことも無いという三国の中では珍しい人材だろう。

器用貧乏と言ってしまえばそれまでだが、器用だというのはそれだけで才能だ。

実際連合軍が出来る前の白蓮の納めていた町は別段何の問題もなく運用できていたのだし、麗羽さえ攻めてこなければ大成できなくとも平穏に町を治めていくことは出来ていたのだろう。

なんてことを三人に伝えてみると、三人から同時にほほう、と納得の声が漏れた。

 

「そう考えると公孫賛さまも流石一角の将と言ったところでしょうか」

 

「伊達に戦乱を生き残っていないということだな」

 

「成程・・・これからは敬意を持ってお話しようと思います!」

 

これまでは敬意持ってなかったのか、という突っ込みはやめにしておく。

まぁ兎に角、将は全員何かしら能力があるから将をやっているのだということに気づいてくれれば良いんだ。

 

・・・

 

ある秋晴れの日のこと。

城の通路で見かけた顔に出会った。

 

「お」

 

「あっ、ギル様!」

 

とてとてとこちらに駆け寄ってきたのは猫大好き隠密、明命だ。

訓練の帰りらしく、手甲を付け、背中に野太刀を背負っている。

 

「お疲れ様、訓練だったんだ」

 

「はいっ。思春さまと手合わせして、腕が鈍っていないか確認してきたんです!」

 

「成程。平和になったとはいえ、油断は出来ないからな」

 

「ふふっ、思春さまと同じことおっしゃってますね」

 

気が合うんでしょうか、と首をかしげながら微笑む明命。

・・・本人が聞いたら問答無用で鈴の音を響かせそうな一言である。

 

「そうだ、これから暇か? これから町に行こうと思うんだが・・・一緒にどうだ」

 

「ふぇっ!? わ、私とですかっ!?」

 

「それ以外に居ないだろ。この前は逃げられたからなー」

 

「あうぅ・・・その件は、本当に申し訳ありません・・・」

 

「ははは。別に気にしてないさ」

 

あの後はきちんとぱーっと食べてぱーっと忘れることにしたからな。

結構ショック大きかったとか言わせない!

 

「えとえと、今日はご一緒します!」

 

「そっか。じゃあ、準備が出来たら門のところで待ち合わせな」

 

「はいっ。急いで着替えてきますので、少々お待ちくださいね!」

 

「あー、ゆっくりで良いからなー」

 

駆け出して行った明命にそう声を掛けると、はーいっ、と元気な返事が返ってきた。

まぁ、明命も将なんだし、そうそう転んだりはしないだろう。

 

「さて、先に行って待ってないとな」

 

・・・

 

「はっ、はっ」

 

急いで自室へと向かう。

ギル様が門につくまでに用意して向かうことは出来ないけど、それでも急がないと。

えとえと、手甲とか外して、武器も置いて・・・あぅあぅ、汗もかいてたんだった・・・!

 

「うぅ~、お風呂、行く時間は無いなぁ・・・」

 

身体を拭くくらいしか出来なさそう。

でも、汗かいたままでギル様と出掛けるよりはマシ。

以前は恥ずかしすぎて逃げちゃったから、それを取り戻すためにもきちんとしていかないと!

 

「・・・って、ま、まるでその、でぇとの前みたい・・・!」

 

一度そう思ってしまうとその考えが離れない。

はうぅ・・・た、確かにギル様はお優しいですし、色んなことを教えてくださいますし・・・。

あ、駄目だ。顔が赤くなって来た・・・。

 

「ちっ、ちが、そ、それにギル様も私なんかに好かれても・・・!」

 

はうっ! す、好きって!

誰に対して言い訳してるのかも分からないけど、兎に角何か言ってないと・・・。

 

「はぅはぅ・・・」

 

その後、どうやって着替えたのか、どうやって待ち合わせの場所まで行ったのか・・・今でも思い出せません。

 

・・・

 

「・・・どうしたんだ?」

 

「い、いえいえっ! ど、どうもしてませんよ!?」

 

やけに顔の赤い明命が待ち合わせ場所に来たのが数分前。

まぁ走ってきたみたいだし、息が上がっているだけだろうとゆっくり歩いて今に至るのだが、それでもまだ顔が赤いようだ。

・・・まさか。

 

「風邪か?」

 

「だ、大丈夫ですっ。健康ですよ!」

 

「本当かぁ・・・?」

 

「本当ですよっ」

 

「・・・ま、いっか。信じるとしよう。ほら、行こうか」

 

元気に返事をして隣に並ぶ明命となにしよっか、なんて話しながら町を歩く。

取りあえず、市場でも冷やかしに行くか? 出店を回っていればそれなりに楽しめるだろうし。

 

「やっぱり活気に溢れてますね!」

 

「ああ。この辺は一番人が集まるところだからな」

 

熱気も活気も凄まじいものがある。

 

「わわっ、す、すいませんっ。あ、あわっ、ご、ごめんなさい!」

 

「・・・明命、こっちこっち」

 

「は、はひっ、手、手っ・・・!?」

 

「悪いけど、しばらく繋いでてもらうよ。この調子だと、明命が逸れかねないから」

 

いつもの軽い身のこなしは何処へ行ったのか、人にぶつかりながら人ごみにさらわれそうになってたぞ・・・。

ふぅむ、やっぱり調子悪いのか? 

 

「あまり無理はしないように。なんかあったら俺にちゃんと言うんだぞ?」

 

「こ、子供じゃないんですから、大丈夫ですよー」

 

「・・・説得力無いぞ、今の状態だと」

 

「はうっ・・・」

 

胸を押さえながら少しだけ仰け反る明命。

どうやら、今の一言はダメージだったようだ。

 

「ほら、こっちこっち」

 

「そ、そういえば・・・どちらに向かっているのですか?」

 

「明命が喜ぶところだよ」

 

首を傾げながら俺に手を引かれる明命を連れてやってきたのは・・・。

 

「ほわぁ・・・!」

 

猫のたまり場だ。

以前風に教えてもらった場所で、日当たりが良く、人通りもほとんど無いため猫の楽園のようになっている。

さらに言うと、すぐ近くの家のおばちゃんが猫たちに餌をあげているため人懐っこくもある。

ここなら、猫への愛情過多である明命でも満足できるだろう。

 

「こ、これはっ、お猫様がたくさんっ、たくさんいますよっ」

 

「ああ。ほら、これ煮干。それ持って猫呼んでみ?」

 

「はいっ」

 

煮干を片手にとてとてと猫の元へと駆け寄る明命。

猫のほうは「ああ、また人間が来たか・・・」とでもいいたげに身じろぎするだけだ。

 

「お、お猫様っ、モフモフさせていただいてもよろしいでしょうかっ」

 

「にゃふ」

 

「ああっ、そっぽを向かないでくださいっ。煮干、煮干もありますので!」

 

「うなーお」

 

やはり煮干は強いな。

面倒くさそうに鳴いていた猫を一瞬でその気にさせた。

 

「そ、それでは失礼して・・・」

 

そう言って、明命は階段に座り込み、膝の上に猫を乗せる。

 

「モフモフ~、えへへー」

 

それから猫をモフモフしたり耳の裏やら首やらを掻いてやったりと存分に楽しんでいるようだ。

もちろん報酬の煮干をあげることも忘れたりしない。

 

「・・・おいでー」

 

取りあえず俺も一匹呼んでみる。

恋のところの動物たちにはあり得ないほど懐かれているので、報酬なしでも大丈夫かと思ったのだが・・・。

 

「うなぁ」

 

「にゃー」

 

「なおー」

 

「ふにゃん」

 

「・・・おお、大漁」

 

滅茶苦茶懐かれた。

一斉にやってきたぞ、こいつら・・・。

 

「はわっ、ギル様凄いことになってます!」

 

「あ、ああ。頭の上とか凄く重い」

 

三匹くらいひしめき合ってるんだけど。

他にも全身猫だらけである。

スキルに「動物集め」とかありそうだ。

 

「ギル様の域へと到達するにはどれほどの訓練が必要なのでしょうか・・・」

 

「いや、これは多分訓練とかでどうにかなるものじゃないだろ」

 

俺自身動物に好かれるような訓練やら特訓をした記憶はない。

というか訓練したら懐かれるようになるとかそれちょっと怖いぞ・・・?

 

「あぅ・・・良いなぁ、ギル様・・・」

 

「・・・仕方ないな。明命、猫に囲まれたくないか?」

 

「? それはもちろん囲まれたいですけど・・・」

 

「じゃ、こっちおいで」

 

そう言って明命を手招きする。

猫を一旦降ろしてからこちらに寄ってくる明命に、自身の膝の上を叩いて示す。

 

「ここ、座って」

 

「えぇっ!? そ、それはその、ええと・・・」

 

「良いから良いから」

 

「・・・えぇと、お、お邪魔します」

 

顔を真っ赤にしながら胡坐をかいている俺の膝へと腰を下ろす明命。

 

「よし。猫たち、集合だ!」

 

「うなー」

 

「にゃー」

 

「なー」

 

「ふなー」

 

「は、はぅはぅ・・・ぎ、ギル様のお膝の上・・・お猫様がいっぱい・・・はきゅぅ・・・」

 

「・・・明命?」

 

あれ? なんか顔が真っ赤のまま思考停止してるっぽいんだけど・・・。

あ、そっか。流石に膝の上は恥ずかしかったのか?

・・・いかんな、最近こういうことばっかりしてたから判断がつかなくなってきてる。

明命とはそれなりに仲良くなってると思ってたし大丈夫だと思ったんだが・・・キャパオーバーか。

 

「仕方ない、か。目が覚めるまでは介抱しておくとしよう」

 

こうしていると明命は温かいし、このまま昼寝するのもよさそうだ。

 

「俺たちも日向ぼっこだ。ほら、集まれ集まれ」

 

少し冷えてきたからな。猫たちにも協力してもらって、一緒に温まろうじゃないか。

 

「お休み、明命」

 

気絶しても猫の感触は分かるのか、幸せそうな顔をして寝息を立てる明命。

そんな明命から陽だまりの様な香りを感じながら、俺も目を閉じる。

 

・・・

 

「おはようございます、お兄さん」

 

「・・・風?」

 

「はい、そですよー?」

 

目を覚ますと、明命のとなりに風が座っていた。

成程、だからちょっと重く・・・げふんげふん。

 

「何か妙なことを考えている目ですね~」

 

「い、いや、全然そんなことないですよ?」

 

「・・・じゃあ、なぜ敬語なのでしょう~?」

 

「気分だよ、気分! それにしても、いつの間にここに?」

 

「少し前ですよ。いつものように一号たちを観察に来たのですが、なにやらお兄さんが犬と猫を膝の上に乗せてお昼寝中だったので~」

 

「・・・犬?」

 

「はい~」

 

そう言って、ちらりと明命へと視線を向ける風。

いや、分からんでもないけど・・・犬呼ばわりは酷くないか。

 

「なるほど、とか思いませんでしたか~?」

 

「ぎく」

 

「・・・お兄さんはたまに分かりやすいのです」

 

「褒めてくれて嬉しいよ」

 

「あーうー・・・頭がぐらぐら~」

 

強めに頭を撫でると、ふわふわとした物言いで左右に揺れる風。

ゆらゆらとした振動が伝わったのか、うぅん、と唸りながら目を覚ます明命。

 

「おはよう、明命」

 

「おはようございますなのですよー」

 

「ふぇ? あ、おはようござい・・・ふぇっ!? な、何でお膝に!? 何で風さんが隣に!?」

 

「面白いほどに取り乱してますね~」

 

「あまりからかってやるなよ?」

 

頭上に大量のクエスチョンマークを浮かべながら取り乱す明命はとても可愛らしい。

はわあわ言っている時の朱里や雛里のような庇護欲を誘う可愛らしさである。

 

「わ、わわわっ、お、重くなかったですか!?」

 

「全然。全く重さなんて気にせずに寝ちゃったよ」

 

「そうですか、良かったぁ・・・じゃなくて!」

 

「忙しいこった」

 

宝譿がなにやら明命に感心したような声を上げる。

うん、まぁこうやってると見てるだけで中々楽しいものがあるけどさ。

 

「ほら、落ち着いて明命。ゆっくり深呼吸」

 

「は、はいっ。すー、はー」

 

「はーい、明命ちゃん、ひっひっふー」

 

「ひ、ひっひっふー」

 

なぜか風が割り込んで別の呼吸法を教える。

というかそれは深呼吸ではなくラマーズ法だ。

 

「ひっひっふー・・・お、落ち着きました!」

 

勘違いして別の呼吸をしている時点であんまり落ち着いていないような気もするが、まぁ気にしたら負けだろう。

偉い偉いと頭を撫でると、やはり犬のように嬉しそうにしてくれる。

 

「ずいぶんと猫にも懐かれたみたいだな。明命の膝の上、ずっと猫がいるぞ」

 

「本当ですっ。わぁ・・・モフモフ・・・」

 

俺が起きた時からずっと乗っていたので、相当懐かれていたのだろう。

今もモフモフされているが、特に嫌がられることなく撫でられている。

 

「・・・よっし。なんか小腹が空いたな」

 

「おぉ~?」

 

「そういわれると・・・少し」

 

「俺の予想によると・・・今魏の厨房へと向かえば流流が季衣に何かおやつを作っている場面に出会えそうな気がする!」

 

「ほほぅ・・・お兄さんは未来予知も出来るのですねぇ」

 

「いや、ただの勘だけど」

 

ま、取りあえず行ってみようぜ、と二人を促す。

 

・・・

 

「あ、にーさま!」

 

「やっほー、にーちゃん!」

 

「・・・ギル様、凄いですね・・・」

 

「俺もちょっと驚いてる」

 

隣に立つ明命のちょっと戦慄した声に答えながら、厨房の中へと足を踏み入れる。

 

「お、これは・・・」

 

「あ、それは以前お聞きしたくっきぃというものです!」

 

確かに作り方を教えたが・・・良くオーブンの代用品を考え付いたものだ。

真桜の発明に対する情熱というか才能は数世代先を行ってるんじゃなかろうか。

・・・あれ? ちょっと魔力反応がするんだけど・・・。

その疑問について聞いてみると、なにやら真桜が開発段階で甲賀から「余った宝具で作った高温加熱機」を借り受けたらしい。

余ったってまさか、風呂作るときに出した『傷つけ害なす魔法の枝(レーヴァテイン)』とかじゃないだろうな・・・?

あれ宝物庫に片付けた記憶無いからな・・・。

 

「ん、美味しいな」

 

「さくさくですねっ」

 

「おぉ~・・・この歯ごたえ、癖になりそうですね~」

 

五人でクッキーをさくさく頬張る。

季衣が圧倒的な速度で食べているので、クッキーの減りは相当に早い。

 

「んー、美味しく出来てよかった~」

 

「さくさくしてておいしーよ! ・・・でも、結構喉乾くね、これ」

 

「ぱっさぱさ! ぱっさぱさだよぱっさぱさ!」

 

「・・・にーさま、急にどうしたんですか?」

 

「知らないのか? クッキーを食べて喉が渇いたときはこう言わないと駄目なんだぜ」

 

「知らないも何も、流流ちゃんがクッキーを作ったのは初めてなのですよー?」

 

風の指摘に、そういえばそうか、と納得する。

まぁ、俺のこんな与太話を信じたのは前世も含めて一人くらいしか居ないのだが。

 

「さて・・・お菓子のお礼に俺も何か提供しようか」

 

そう言って、俺はごそごそと宝物庫を探る。

なんか良いのあったかなぁ。

クッキーとあうのは紅茶とかだろうが・・・。

流石にそれは入ってないか。

 

「お、ジャム」

 

「・・・赤い蜂蜜?」

 

「いや、これはイチゴって言う・・・とりあえず、クッキーに乗せて食べてみるといい」

 

俺がジャムを乗せたクッキーをほら、と勧めると、風は恐る恐るそれを口にする。

 

「もむもむ・・・ほほぅ、これは中々。酸味が利いていて美味しいですね~」

 

もう一口ください~と口をあける風へクッキーを与える。

・・・うむ、ハムスターか何かを餌付けしている気分である。

 

「にーちゃん、ボクにも!」

 

「おう。ほら、あーん」

 

「あーん!」

 

「あぶなっ」

 

危うく手ごと美味しく頂かれるところだった。

その後、流流と明命にもジャムを分け、全員で味わった。

ふむふむ。これはいい発見をした。

 

「・・・私も、あーんが良かったなぁ」

 

「? なんか言った、流流?」

 

「え? あ、ううん、なんでもないよ、季衣。じゃむ美味しいねって言ったの」

 

「うん! 美味しいよね!」

 

・・・

 

「次こっち」

 

「あむあむ・・・んー、美味しい!」

 

「そりゃ良かった。・・・次はこっちな」

 

「はーい!」

 

俺の目の前で美味しそうにお菓子を頬張る天和に、次のお菓子を勧める。

今日は地和と人和が別のレッスン中で、今日は珍しく頑張った天和に新作の饅頭を食べてもらっているところだ。

来ているのは以前来たらいむなんちゃら。・・・再び名前を忘れてしまった。

 

「そういえばー、何で今日はこんなにご馳走してくれるのー?」

 

「ん? いやほら、今日は天和、結構頑張ってたろ」

 

珍しく「えー」も「もう休憩したーい」も無く、意外と一生懸命レッスンを受けてたからな。

そういう時は褒めてやらないと。

・・・いや、決して「初めてでも大丈夫! 犬の賢い飼い方」なんてものを読んだ訳じゃないぞ?

 

「えへへー。頑張ったよー?」

 

「だからご褒美だよ。前も言ったろ? きちんと頑張ったらご褒美をあげるって」

 

「そうだっけ? まぁ、美味しいから良いよ~」

 

のほほんと饅頭に手を伸ばす天和。

この天然具合が人気の秘訣なのだろうか。

彼女はきっと意識なんてしてないのだろうけど。

 

「ふぅ・・・お腹いっぱいになったねぇ」

 

「ん、そうか? じゃあ、お茶飲んだら帰ろうか」

 

「うんっ。ありがとね、美味しかったよー」

 

「そういうのは、俺じゃなくて作ってくれた人に言うんだぞ」

 

「はーいっ。おじさーん、美味しかったよー!」

 

天和に手を振られ、照れながら手を振り返す店主。

まぁ、アイドルに手を振られたらそりゃ嬉しくもなるよな。

いつの間にか回りは天和のファンらしき人たちが増えてきてるし。

話しかけてこないのは・・・多分俺がいるからだろう。

 

「よし、じゃあ地和たちと合流しようか」

 

「分かったよー。ふふーん、二人に自慢しちゃおーっと」

 

るんるんと鼻歌でも歌いだしそうなほどに上機嫌な天和と共に、地和たちと合流しようと事務所へと向かう。

きっと二人も今頃レッスンも終わって一報亭のシュウマイでも食べているころだろう。

 

「たっだいまーっ」

 

「あ、お帰り姉さん」

 

「お帰り。・・・上機嫌ね」

 

「ふふー。そう見えるー?」

 

「ま、姉さんはいっつも上機嫌みたいなもんだけど」

 

そう言って、地和はシュウマイを一つ食べる。

それでちょうど最後だったらしい。人和が食器なんかを片付け始める。

 

「今日はねー、ギルにご褒美でお饅頭いっぱい奢って貰っちゃったんだー」

 

「えー!? ちょっとギル!? 姉さんばっかりずるいんじゃない!?」

 

「はっはっは、今日は文句も言わずに一生懸命だったからな。お兄さん感動しちゃって」

 

「えへへー。なでなでもしてもらっちゃったー」

 

最近それなりに仲のいい娘だと撫でて機嫌を取れることに気づいてな。

こういうときに結構多用していたりする。

ふふふ・・・あ、でもあまり使いすぎると黒月とのエンカウント率が異常に高くなるのが難点だな。

 

「・・・姉さんは長女なのに一番子供っぽいわよね」

 

地和がはぁ、とため息をつく。

まぁたしかに、撫でて機嫌が取れてる時点で若干精神年齢が低いといわざるを得ないよな。

ちなみに、それで喜ぶ筆頭は璃々と鈴々だったりする。

 

「ギル! 今度はちぃとれっすんするわよ!」

 

「ご褒美目当てなのが丸分かりだな」

 

「ふんっ。姉さんだけご褒美なんてずるいの! ちぃだって今日頑張ったんだもん!」

 

「はいはい、分かった分かった」

 

「撫でないの!」

 

ふぅむ、まだ地和には使えないようだ。

レベルが足りないか。

 

「よし、後でレベルを上げて物理で殴ろう」

 

「ちぃ殴られるの!?」

 

「・・・ああ、違った違った。副長じゃないんだもんな」

 

「副長は殴っちゃうの!?」

 

地和に突っ込みを受けていたのと丁度同じ時間帯に、兵舎からへくちっ、という可愛らしいくしゃみが連続して聞こえたらしい。

 

・・・

 

「・・・」

 

「ああっ、黙々と仕事をなさるギル様・・・とても素敵ですっ!」

 

「・・・」

 

「ああっ、少々政策に頭を悩ませるギル様・・・変わらず素敵ですっ!」

 

「・・・」

 

「ああっ、淡々と私にエアを向けるギル様・・・天下無敵に素敵ですっ!」

 

天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!」

 

「ああんっ! あーれー・・・!」

 

いくら軽めにしたとはいえ、対界宝具の一撃は壱与を部屋から吹き飛ばすのに十分だった。

後で窓を直さないと、なんて思いながら書類を片付けていく。

 

「ハァハァ・・・いつ受けてもギル様の攻撃は快感です!」

 

「・・・無敵かこいつ」

 

窓から這い上がってきた魔法王女に呆れながら筆を置く。

 

「分かった分かった。何が望みだ? デートか? 健康的なことだったら何か付き合ってやるから」

 

「そ、そんなっ、えと、別に催促したわけでは・・・」

 

「じゃあ良いのか?」

 

「そんなわけありませんっ。でぇと! いたしましょう!」

 

ふんす、と意気込む壱与の手を握り、さて何処に向かおうかと思った矢先。

なんだか、壱与の手が異常に重いような・・・。

 

「はきゅぅ・・・」

 

「き、気絶してやがる」

 

俺耐性低すぎだろこいつ。

手握っただけで気絶って。お前は男子中学生か。

いや、男子中学生でももうちょっと異性耐性あるぞ。

ピュアすぎるというかなんと言うか・・・。

 

「・・・仕方ない。寝台に寝かせて悪戯してるか」

 

「ていっ」

 

「あぶねっ」

 

寝台に寝かせた壱与に手を伸ばすと、背後から鈍器(銅鏡)で襲われた。

凄まじい魔力が充填されていたので、完全に俺を殺す気だったみたいだ。

 

「卑弥呼か。どうしたんだよいきなり」

 

「・・・あ、ごめん。ほぼ無意識だった」

 

鏡の魔力を散らしながら、卑弥呼が真顔で謝罪する。

・・・俺無意識で殺されそうになったのか。

 

「・・・っていうか、何しようとしてたのよ」

 

「何って・・・悪戯」

 

「やらしー」

 

ジト目で引きつつ軽い一言を掛けて来る卑弥呼。

 

「・・・いいや。じゃあ、卑弥呼に悪戯してやるから」

 

「悪戯・・・あ、あんなこととかこんなこととか・・・!?」

 

「・・・卑弥呼?」

 

「はふぅ・・・」

 

「そ、想像だけで気絶しやがった」

 

うわっ、卑弥呼のキャパ、低すぎ・・・?

 

「とりあえず、壱与と並べておくか」

 

流石にもう悪戯するとは冗談でも言えないな。

まぁ、頬をつんつんするくらいなら許されるだろう。

 

・・・

 

取り合えず魔法王女と魔法女王は俺の部屋においてきた。

結界を張ってあるので、多分起きてもしばらく追いかけてくることは無いはず。

・・・でも、壱与って天才だからなぁ・・・。すぐに抜けてくるだろう。

 

「お、副長」

 

「んあ、隊長ですか。ちわーっす」

 

「・・・寝起きか」

 

昼寝でもしていたのだろう。

副長は寝起きだと言語がわやわやになるからな。

 

「ふわぁ・・・あふ。そです。ちょっとお昼寝してました」

 

「そか。あ、ほら、寝癖」

 

「んー? ・・・あ、どもです。うわー、そっか、髪の毛直さないと・・・」

 

「直してやるよ。ほら、動くなよ」

 

「あ、あ、えと、はい、動かないです」

 

さらさらとした黒髪に少し指を通すと、すぐに跳ねた毛は大人しくなった。

それから自然と俺たちは歩き始める。

向かう先は訓練場だ。俺と副長がそろって行くところなんて八割そこだ。

 

「・・・お前、金髪なら良かったのになぁ」

 

「いきなり毛の色に文句言われた・・・」

 

帽子を被りなおしながらこちらを見上げる副長。

目には非難の色が混ざっているように見える。

 

「っていうか、金髪とかふりょーなんですよ、隊長。やっぱり優等生は黒髪長髪じゃないと駄目ですよねー」

 

「じゃあなおさら染めないと」

 

「不良扱い!?」

 

「っていうかお前風とか華琳に喧嘩売ってるのか?」

 

「うあ゙」

 

そういえば、とでも言うような顔をする副長。

いまさら気づいたのか。

 

「と、取り消しておきます・・・」

 

「それが賢明だろうな」

 

「でもま、優等生が黒髪長髪って言うのは譲れませんけどー。私も昔は長かったんですよ? 今はちょっと短めですが」

 

「へぇ。孔雀も昔長かったみたいなんだよな。副長は伸ばさないのか?」

 

「長いと手入れが大変で。私ずぼらなんで、わしゃーっと洗ってずばーっと流せる今の長さがお気に入りです」

 

ふぅん、と相槌を打つ。

そういえば生前同じことを言っていた奴がいたなぁ。

あいつもこのくらいの髪の長さだったはずだ。

 

「本当は七乃さん位の長さが一番良いんですけど・・・私だとおかっぱにしかならないんですよねぇ」

 

「あー、分かるかもしれんな」

 

「だからちょっと長めなんです。ふふん、どうですか? お洒落にも気を使ってるんですよ?」

 

「・・・ああ、うん、そう」

 

「何ですその投げやりな返事!」

 

いや、だってなぁ・・・。

服を選ぶ基準が「道具の内容量」でブラを持たない女の子ってお洒落とは言わないような・・・。

 

「お、噂をすれば七乃だぞ」

 

「あ、ほんとですね。おーい、七乃さーん」

 

「はい? あらー、こんにちわー」

 

「こんにちわ。珍しいな、七乃がこんなに早く来るなんて」

 

「そうですかー? 私、結構真面目にやってるんですよー?」

 

「・・・まぁ、確かに」

 

朝早く俺の部屋に来て書類を持って行ってくれと言えばきちんと早朝取りに来るしな。

 

「そういえば・・・なんでしたっけ? みゅーちゃん?」

 

「お嬢様のことですかー?」

 

「だったら名前は美羽、だぞ。そんな百五十一匹目の幻の存在みたいな名前じゃない」

 

「ああ、そうでした。なんか真名を預けられたのは良いんですけど、あまり会わないから・・・」

 

「へぇ。じゃあ意外と気に入られてるのかな、副長」

 

「意外と副長さんは面倒見の良い方ですからー」

 

確かに、子供とかに懐かれてること多いよな。

迷子とかも真っ先に泣き止ませるし。

 

「偉い偉い」

 

「急に褒められた・・・明日は世界が終わるのでしょうか」

 

「・・・終わらせても良いけど・・・」

 

「すいません嘘ですっ!」

 

うんうん、今日もいい反応である。

 

・・・

 

「はい、というわけで今日の相手は白蓮です」

 

「は? え、ちょ、ギル? 私急に呼ばれたんだけど・・・何なんだ?」

 

「取り合えず副長と戦ってくれない?」

 

「無理だろ! 絶対私より強いじゃないか!」

 

「行きますよー!」

 

「残念。副長はもうやる気みたいだ」

 

「ああもう! やればいいんだろやれば! 後で何か奢れよ、ギル!」

 

そう言って、白蓮は剣を構える。

今日は副長の新装備があって、そのテストの相手をしてもらおうと思っているのだが・・・さて、どうなるかな。

 

「新装備! 巨人の剣!」

 

そう言って副長が構えたのは、副長の身の丈の倍以上はある巨大な剣。

盾も持てなくなるし、取り回しも最悪だが、威力は折り紙つきである。

 

「行きます! はっ!」

 

「うぅ・・・こ、こいっ!」

 

副長が駆け出すのと同時に、白蓮も駆ける。

動きに淀みは無い。きちんと基本を修めているからだろう。

 

「せいっ!」

 

「あぶなっ」

 

ただの横薙ぎも、あの剣ならば広範囲への斬撃へと変わる。

あれで回転切りをすると味方も巻き込むジェノサイドアタックへと早変わりだ。

牽制にも有効だ。あれは剣の癖に槍のような間合いを持っているからな。

 

「うわっとと・・・やっぱりちょっと重いかな。でも、いけます!」

 

「一撃一撃は凄い・・・けど、大振りだ。隙はある!」

 

赤い髪を揺らして、白蓮が大きく回りこむ。

副長は未だに扱いに慣れていないのか、巨人の剣に振り回されているような動きを見せる。

 

「ふんっ! ・・・わっとと」

 

「そこっ!」

 

「ひゃっ!? わぷっ」

 

回り込もうとする白蓮に牽制で剣を振るう副長。

だが、白蓮はそれを読んでいたようだ。すぐに副長へと剣を振るう。

それを何とか巨人の剣で防いだものの、衝撃と剣の重みでたたらを踏んでしまう。

そのままバランスを崩し、副長は転んでしまう。

白蓮はそこへ剣を振り下ろす。

 

「終わりだっ!」

 

「ま、まだまだっ!」

 

だが、副長はまだ諦めていないようだ。

転んだときに手放した巨人の剣が自分の身体へと倒れこんでくる。

巨人の剣の柄を自身の手で引っ張って加速させ、自分の身体をシーソーの支点のようにして剣を跳ね上げた。

危ないなぁ、あれ、自分の身体に当たってるのが刃じゃない部分・・・鎬と言ったか? そこじゃなかったら身体真っ二つだぞ。

あの一瞬で良く判断できたものだ。

 

「嘘だろっ!?」

 

「こ、こわー・・・。で、でも、これでっ!」

 

剣を腕ごと弾かれた白蓮に、副長は巨人の剣を倒れたまま振るう。

退魔の剣では届かなかったであろう体勢からの攻撃でも、巨人の剣ならば余裕で届く。

 

「くっ!?」

 

お互いの剣が激しくぶつかり合い、火花が散った。

だが、それで完全に白蓮の体勢は崩れた。

 

「今なら!」

 

片手で巨人の剣を支えながら起き上がった副長は、残った片手で白蓮の身体を押した。

体勢が崩れている白蓮は、それだけで容易に転んでしまう。

 

「いたっ・・・!」

 

「よっこいしょー!」

 

「え? わ、きゃあっ!?」

 

「よーし、そこまでー」

 

ぴたり、と寸止めされた巨人の剣を見ながら、俺は試合の終了を告げる。

副長は応用力というか、閃きが凄いな。

まさか、転んだところで起き上がることを考えるよりそのまま剣を振るうほうを選ぶとは。

確かに梃子の原理を使えばあの重さも片手で跳ね上げられるけど・・・それでも、普通はそんな事思いつかんぞ。

 

「ふ、ふー・・・。お疲れ様です、公孫賛さん」

 

「・・・白蓮でいいさ。副長、あんた凄いなぁ。それ持ったの初めてだろ?」

 

「ええ。基本的に新装備は急に渡されるので」

 

「それを戦いの中で使いこなすなんて・・・流石はギルの右腕ってことか」

 

「え、えへへー。褒められたー」

 

「よし、じゃあこの調子で恋行ってみるか」

 

「良いですよ! この調子でやったります!」

 

・・・

 

「負けましたー!」

 

「早い・・・! 敗北も諦めも・・・!」

 

いや、まぁ、分かってたけど。

巨人の剣も使い慣れてないし、あれ使ってる間は道具ほぼ使えないし。

隣の白蓮も少し呆れ気味だ。

 

「はーい、副長さん、あっちで手当てしましょうねー」

 

「はい・・・うぅ、今度は勝つもん・・・」

 

「頑張りましょうねー」

 

「・・・副長って、その・・・変わってるな」

 

真面目代表の白蓮にそう言われる様になったら終わりだな。

 

「ま、いいや。副長はしばらく拗ねてるだろうし、七乃はそれを宥めすかしてるだろうから・・・白蓮、代わりに訓練見てくれるか?」

 

「はぁ!? い、いや、無理だろ! 私程度じゃギルみたいな精鋭部隊の面倒なんて見切れないぞ! っていうか、ギルが見れば良いじゃないか!」

 

「いや、俺は恋の相手しないと・・・それとも、俺の代わりに恋と試合するか? そうしたら俺訓練見れるけど」

 

「・・・訓練、見てます」

 

「賢明だな」

 

蛇狩りの鎌(ハルペー)を取り出しながら、白蓮に笑いかける。

目の前では、恋が戦闘準備万端とばかりにこちらを見つめている。

・・・今日も、長い訓練になりそうだ。

 

・・・




「副長さんって、結婚とかしないんですか?」「ふぇっ!? え、えと、相手とか、居ないですし・・・」「あー、そですか」「で、でも、一応、申し込まれたことはあったり・・・断りましたけどね」「断ったんですか?」「はい。急に家まで来て、結婚してくれー、って言われたんで、一昨日きやがれー、って断りました。やっぱり、結婚とかは・・・その、好きな人としたいですし」「彼氏居ない暦イコール年齢が何か言ってるー」「い、壱与さんって容赦なく私の心抉っていきますよね・・・」


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