真・恋姫†無双 ご都合主義で萌将伝!   作:AUOジョンソン

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「祭りといえば夏祭り!」「雪国のほうでは雪祭りや氷祭りなんてものもあるぞ」「秋は言わずもがな! 俺が主役のハロウィンだぁっ!」「花見は春の祭りといっても良いだろうな。・・・後、秋は月見も良いと思う」「・・・四季に応じた祭りがあるんだなぁ」「ギルにとっての祭りは夏と冬だけだろ?」「・・・それはそれで悲しい気もするが」


それでは、どうぞ。


第五十三話 祭りの本番に

「お疲れ様で・・・何やってるんですか、隊長」

 

「見て分からんか、事務仕事だよ」

 

「いや、私が言ってるのはその膝の上の璃々ちゃんのことなんですけど」

 

執務室に入ると同時に目に入った光景に、若干引き気味に聞いてみる。

隊長はなんでもないことかのように過ごしてるけど、アレは仕事中の姿なんかではなく休日のお父さんそのものである。

・・・いいよなー、紫苑さん、奥さんもお母さんも出来るもんなー。私隊長との子いないしなー。

ちっ、久しぶりに隊長に夜這いかけるかな。

 

「うおうっ!?」

 

「? どーしたの、ギルおにーちゃん」

 

「いや、なんかブルっときた。最近寒くなってきたからなー。璃々は寒くないか?」

 

「だいじょーぶ! ギルおにーちゃんとぽかぽか!」

 

「はっはっは、可愛いなー、こいつめー。・・・おっと、それで副長、何のようだ?」

 

一通り璃々ちゃんを可愛がった後、隊長はようやく私の存在を思い出してくれたらしい。

手では書類を処理したまま、こちらに視線だけを向けてくる。

 

「あ、乗馬訓練するんで、馬を連れ出す許可を貰いにきました」

 

「そっか、その訓練今日だったか。えーっと、許可証書いてあるんだよな」

 

そう言って、隊長は机の引き出しから一枚の書類を取り出しました。

隊長の判が押してあるその書類には、訓練に使う軍馬の使用を許可する旨が記載されていました。

 

「どもです。それじゃ、訓練してきまーす」

 

「いってらー。落馬には気をつけろよー」

 

「いってらっしゃーい!」

 

隊長と璃々ちゃんに手を振られて見送られると、なんだか一瞬家族に見送られているかのような錯覚が・・・。

うぅ、早く欲しいなー。

 

・・・

 

「お疲れ様で・・・何、やってるんですか。隊長」

 

「見て分からんかー。墨をすってるんだ」

 

「いや、私が言ってるのはその膝の上の鈴々さんのことなんですけど」

 

執務室に入ったと同時に目に飛び込んできた光景に、若干引き気味に聞いてみる。

さっきまでは璃々ちゃんが乗っていた気がするんですけど、いつの間に交代したのでしょうか。

 

「いやー、ぬくいよなー。基礎体温高いからか、すげーぽかぽかすんの」

 

「にゃはー、おにーちゃんもあったかいのだー!」

 

「ええい、可愛いなぁ! うりうりー!」

 

「にゃにゃっ、くすぐったいのだー!」

 

「・・・ちっ、爆発してろよ」

 

「よーしよしよしよし・・・おっと、それで副長、何の用だ?」

 

またまた一通り鈴々さんを撫で回した後、ようやく私の存在を思い出した隊長は、鈴々さんと墨をすりながら聞いてくる。

 

「ああ、乗馬の訓練終わったんで次の弓の訓練場の使用許可貰いにきました」

 

「おーおー、確かにそんな訓練するって聞いてたな。ちょっと待て、ここに許可証が・・・っと」

 

先ほどと同じ場所から許可証を取り出すと、ほら、と差し出してくる隊長。

私はそれを受け取って、中身を確認する。

うんうん、大丈夫大丈夫。

 

「どもです。それじゃ、訓練してきまーす」

 

「いってらー。誤射には気をつけろよー」

 

「いってらっしゃいなのだー」

 

・・・少し、娘が成長したような気分になった。

なんでだろうか。娘、いないのに。ぐすん。

 

・・・

 

「お疲れ様で・・・はぁ」

 

「何故ため息を吐くんだ、副長」

 

「いえ。・・・一応聞いておきますけど、なにしてるんです?」

 

「見て分からんか、書いた書類を纏めて冊子にしてるんだ」

 

「毎回言いますけど、そっちじゃないです。膝の上にいる、ダブル軍師さんのことです」

 

はわわっ、あわわっ、と慌てつつも膝の上からは避けようとしない二人に軽く舌打ちしながら、隊長の机の前まで行く。

このやり取り、今日だけで何回したのだろうか。そして、これから何度しなければいけないのだろうか。

 

「いやー、この両側から包まれる感触がたまらないよなー。・・・おっと、それで今度は何の用だ?」

 

「あ、そうそう。次は工兵の訓練するんで、衝車の使用許可ください」

 

「おー、そういえばあったな、そんなの。・・・朱里、そっちの書類取ってくれ」

 

「はわわ、はいっ、どうぞ!」

 

「ありがと。ほら、副長」

 

「・・・どもです。それじゃ、訓練いってきますー」

 

「いってらー。衝突事故には気をつけろよー」

 

・・・

 

「・・・た、隊長?」

 

「ん、なんだ?」

 

「あのー・・・大変聞きづらいんですけど、何してるんです?」

 

「いや、ほら、えっと、書いた書類の推敲してる」

 

「・・・いえ、違います。その思いっきり隊長にしがみついてる音々音さんは何してるのかって言ってるんです」

 

座っている隊長と向かい合うようにして座る音々音さんは、顔を真っ赤にしながらふるふると震えていた。

あの位置、あの顔、そしてこの匂いと水音! てめえら、執務室で何やってんだ!

 

「それ絶対入ってますよね!?」

 

「違うよ、全然違うよ」

 

「は、うっ、ぎるぅ、動くななのです・・・!」

 

「いやもう音々音さんの反応が全てを物語ってますよ!?」

 

この人ついに膝に乗せるだけじゃ飽き足らなくなったか・・・!

というか、私他人のアレを見るの二度目なんですけど! 二日連続なんですけど!

凄く気まずいというか、正直うらやま・・・げふんげふん。

 

「は、う、・・・~っ! ・・・は、ふぅ・・・」

 

「こいつ・・・この状況で・・・!」

 

なんか凄くすっきりした顔してるんですけど、この娘。

音々音さん、なんて恐ろしい子・・・!

 

「・・・副長、ほら。船の使用許可証」

 

「あ、そうそう、それを貰いにきたんでした。・・・それじゃ」

 

「おう。・・・えーと、轟沈には気をつけろよー」

 

「気をつけろ、ですー」

 

なんとも複雑な気分で、執務室を後にした。

 

・・・

 

「というわけです」

 

「・・・へぇ」

 

ニッコリ笑う月さんを前に、私はちょっと戦慄していた。

何をしているかというと、お察しの通りチクリである。別の言い方をすると、密告である。

目の前で凄くニコニコしているこの侍女長を前に絶対この人敵に回さないようにしよう、と心に誓った。

隊長、ご愁傷様です。・・・ムチャシヤガッテ。

 

「ありがとうございます副長さん。とても有意義なお話が聞けました。・・・少し、席を外しますね。三時間ほど」

 

「・・・その、私はそろそろお暇しますねー・・・」

 

「そうですか? ろくなおもてなしも出来なくてごめんなさい」

 

「い、いえいえー。急用なら仕方ないですよ、うん」

 

もう一度、ごめんなさい、と頭を下げてから、月さんは部屋を出て行った。

あの瞳には漆黒の意思が灯っていたと思う。あの人、その内重力を支配して次元の壁超えたりしないよね・・・?

 

「・・・まぁ、隊長のことだからなんだかんだ言って月さん諭して夜戦突入するんだろうなぁ」

 

・・・

 

「たいちょー、お疲れ様で・・・ああ、本当にお疲れ様でーす」

 

「毎回思うけど、お前タイミング悪いよなー・・・」

 

「ふあっ、ギルさぁんっ・・・!」

 

翌日私が執務室に書類をとりに行くと、昨日の音々音さんと全く同じ格好をした月さんが、顔を真っ赤にして隊長にしがみついていた。

・・・私も混ざっちゃおうかなー! こんちくしょー!

 

・・・

 

「ギル、相談があるの」

 

「どうした雪蓮、そんなに真剣な顔で相談なんて。ただ事じゃなさそうだな」

 

自分の部屋で寛いでいたところ、雪蓮がやってきた。

いきなり俺の目の前までやってくると、だん、と机を叩いたところで先ほどの言葉である。

こんなに真面目な顔をした雪蓮は大戦中でもあまり見たこと無いぞ・・・。

どんな相談が飛び出してくるのか、と身構えていると、雪蓮がゆっくりと口を開いた。

 

「堂々と・・・堂々と真昼間からお酒が飲めるような行事は無いのっ!?」

 

「さて、そろそろ昼飯の時間だなー」

 

「あぁん、もう、露骨に話し逸らさないでよぅ」

 

そう言って立ち去ろうとした俺の腕に抱きつく雪蓮。

召喚直後辺りの俺なら狼狽していたのだろうが、桔梗や紫苑や祭やらで鍛え上げた俺はこの程度ではうろたえないッ!

全く、雪蓮は仕方ないなぁ。

 

「いい感触だ・・・」

 

「え?」

 

「あ、いや、こっちの話」

 

しまった、本音と建前を間違えた。

思ったより狼狽しているらしい。

 

「・・・ま、秋だしな。紅葉狩りでも提案してみるか」

 

華琳の審査通るかなぁ。

 

・・・

 

「却下よ」

 

ですよねー。

華琳と桃香、蓮華の三人を集めて提案したは良いが、蓮華にばっさり斬られた。

企画書の内容を見て、雪蓮の息が掛かっていると勘付いたのだろう。こういうところは姉譲りである。

 

「まぁ、面白そうではあるけどね。山の紅葉を見ながらお酒を飲むのも」

 

「お兄さんと一緒なら、山でも海でも、何処でも行くよー!」

 

「桃香っ、そういうのはずるいぞっ」

 

きゃっきゃとはしゃぎ始めた二人を見てため息を吐く華琳。

この三人が集まって三国会議とかやってるときは大抵こういうオチになる。

・・・仕方ない、雪蓮から報酬の前払いも貰ってるし、もう少し食い下がってみるか。

 

「華琳、そろそろ秋も深まってきて外でやるような行事も減ってくるだろ? 今のうちにやっておかないと、また一年待たないといけないんだしさ」

 

「そうね・・・確かに、寒くなってくるとそういうことも出来ないものね・・・。まぁ、私はあんまり反対派って訳ではないし? 賛成に一票入れてあげる」

 

「よし。次は・・・桃香かなー」

 

とは言っても、特に説得する意味もない気が・・・。

 

「桃香はどうだ?」

 

「ふぇ? 私はさっきも言ったけど、お兄さんとお酒を飲めるなら大丈夫だよー! お仕事はちょっと溜まっちゃってるけど、頑張るもん!」

 

よし、二票目。これで過半数だけど、どうせなら蓮華も快く参加して欲しいし。

 

「蓮華は・・・やっぱり嫌か?」

 

「嫌というわけではないわ。・・・その、お姉さまの思惑が透けて出てるのよ」

 

「蓮華、逆に考えるんだ。いつも酒を飲むな飲むなというから飲みたくなるんだと。一回浴びるほど飲ませてみたら、ちょっとは懲りるかも知れないだろ?」

 

「・・・一理あるわね」

 

ふむ、と眼を閉じて考え込む蓮華。

何度か一人で頷いた後、そうね、とこちらを見る。

 

「分かったわ。他ならぬギルの言うことだし・・・一度、試してみようかしら」

 

「よしっ! ありがとう蓮華っ」

 

よーしよし! と抱き締めて頭を撫でる。

蓮華にはこれくらいオーバーな表現をしてあげたほうが照れて可愛い反応を返してくれる。

 

「ひゃあっ!? ちょ、ちょっとギルっ、人前でこんな・・・ん、もう・・・」

 

最初は恥ずかしくて暴れていた蓮華も、諦めたように俺に体を預けてくる。

んっふっふ、可愛いなぁ。

 

「あーっ、もうっ、蓮華ちゃんばっかり贔屓して、ずるいよー!」

 

その後、背中に抱きついてきた桃香と正面で抱き締める蓮華の二人の感触を楽しんだ。

 

・・・

 

「良くやったわ! ウチにきて蓮華とシャオを襲っても良いわよ!」

 

どうだった!? と俺に詰め寄る雪蓮に、開催することになったことを伝えると、上の言葉を貰った。

 

「妹を差し出すんじゃない。・・・かといって、雪蓮だったらいいって事でもないからな?」

 

「ちぇー」

 

俺が発言を先回りして潰すと、雪蓮はつまらなそうに唇を尖らせる。

大戦中血を見て興奮した雪蓮に襲い掛かられてから、なんだか狙われている気がする。

・・・まさか、とは思うんだけどなぁ。

 

「ま、これで雪蓮のお願いも聞いたし。それじゃ、部屋に戻るなー」

 

「はいはーい。ありがとねー」

 

「構わんさー」

 

何時も通りの軽い口調でお礼を言いながら去っていく雪蓮にこちらも軽く返す。

報酬もきっちり貰うしな。

 

「さてと、ああいうことを言った手前、きちんと準備はしておかないとな」

 

部屋に戻り、書類を書き上げていく。

ふむ・・・ま、山だし、人数は制限しなくて良いか。

かといってあんまり多くても・・・いや、頑張るかー。

 

「警備と、酒、つまみ・・・多いなぁ」

 

だが、今の俺に出来ないことなんてほとんどない!

ハイになって書類を片付けていると、こんこん、とノック。

俺の部屋をノックするような礼儀正しい人間にはあまり心当たりは無いが・・・。

 

「こんにちわ、ギルさん。月です」

 

「おー、月か。どうぞー」

 

わざわざ入る前にノックして名乗るのは、俺の知る限り月と朱里、雛里、七乃辺りの礼儀正しい娘たちだ。

他は転移で部屋にやってきたり、扉や窓を吹き飛ばしたりこっそり入ってきたりするのばかりだな。

・・・セキュリティ、強化すべきか。

 

「お邪魔します。・・・お仕事中、ですか?」

 

俺が考え事をしているうちに、月が扉を開いて部屋の中に入ってきた。

月は俺の手元を見て、仕事中だと思ったのか少し申し訳なさそうにそう聞いてきた。

 

「いや、これは関係ない書類。どうした?」

 

「あ、えと・・・お仕事が終わったので、ギルさんとお話しようかなって」

 

「おー、大歓迎だ。よし、ちょっとキリの良いところまで終わらせちゃうな」

 

「はい。あ、お茶を淹れてきますね」

 

「ありがと。頼むよ」

 

「はいっ」

 

ぱたぱたと俺の部屋に備え付けてある崑崙に向かう月。

手際よくお湯を沸かしたり茶葉を用意したりしている後姿を見てると、なんだか知らないがうんうんと頷きたくなってくる。

・・・おっと、さっさと終わらせないとなー。

 

「ふんふんふーん」

 

筆を走らせていると、上機嫌になったのかお茶を入れている月が鼻歌を歌っていた。

ここからは後姿しか見えないが、なんだか浮かれているようにも見える。

 

「・・・うん、よしっ」

 

準備が出来たのか、嬉しそうな声と共に再びぱたぱたという足音。

ふと視線だけ向けると、笑顔の月がお茶のセットを盆に載せてこちらに来ていた。

 

「はい、お茶です」

 

「ありがと。・・・なんか、機嫌良いな」

 

「へぅ・・・分かりますか?」

 

「うん。いや、隠そうとしてたのか・・・?」

 

それにしては体中から嬉しさみたいなものが漏れ出てたみたいだけど・・・。

 

「そういうわけではないのですが・・・」

 

「はは、ま、機嫌が悪そうに見えるよりは良いよ。こっちもキリが良いところまで終わったし、一緒にお茶にしようか」

 

「はいっ」

 

執務をする机ではなく、軽食を取ったりお茶を飲んだりするための卓に移り、月の入れたお茶を飲む。

寒くなってきたこの時期、こういう暖かい飲み物はとてもありがたい。

 

「ふう・・・寒くなってきたな」

 

「そうですね・・・。そろそろ、上に一枚羽織らないと風邪をひいてしまうかもしれませんね」

 

ずず、と俺と同じように湯飲みを傾けながら、月が窓から外を見る。

俺も釣られて一緒に窓から外を見ると、枯れ葉が風に飛ばされているのが見えた。

・・・うーん、紅葉狩りするときに紅葉が残っているだろうか。

 

「・・・よ、夜も、寒い・・・ですよね」

 

「ん? そうだなぁ、布団ももう少し欲しいよなー」

 

「お、お布団も、そうなんですけど・・・!」

 

「え? ・・・あー、そうだなぁ。人肌恋しい季節だよなぁ」

 

と言っても、俺はほとんどの夜を誰かと過ごしてるんだけど・・・やっぱり最近月と寝てなかったしなぁ。

寂しいのかもな。・・・俺じゃなくて、月が人肌恋しいんじゃないだろうか。

 

「よし、月、おいで」

 

一度立ち上がって寝台に座り、ぽんぽんと膝の上を叩く。

まだまだ昼間だし、一緒に寝てはあげられないけど、膝枕くらいなら大丈夫だろう。

そう思ってのことだが、月も察してくれたらしい。

少し遠慮気味に俺の隣に座って、ぽん、と膝の上に頭を乗せてきた。

 

「・・・少し、恥ずかしいです」

 

「ははは、何時も俺にやってることじゃないか」

 

「するのとされるのとは違うんです。へぅ・・・」

 

そうかそうか、と俺の膝の上に乗った月の頭をゆっくりと撫でる。

こちらからは顔が良く見えないが、きっと顔を赤くしているのだろう。

 

「やっぱり、ギルさんと一緒にいると・・・幸せです」

 

「そう言われると照れるな。俺もこうして月の頭を撫でてるのは幸せだよ」

 

そういうと、月は向こうを向いていた顔をこちらに寝返らせた。

俺の腹に顔を押し付けると、ぎゅうと抱き締められる。

 

「どうした、月。照れ隠しかー?」

 

からかうように聞いてみると、コクコクと首だけでの返答が来た。

・・・図星ですか。可愛いなぁ、本当に。

 

「・・・えい」

 

ようやく顔を離したかと思うと、俺の腹を突いてきた。

急なことだったので力を入れてしまったからか、月は少し間を空けてから文句を言うように呟いた。

 

「硬いです」

 

「力入れてるからな。急にどうしたんだよ」

 

「私のお腹はその・・・お肉が付いていてこんなに強くないですから、不思議で・・・」

 

「月のこれで肉が付いてると言われたら・・・ほとんどの女性が泣くことになるぞ」

 

そう言って、月の腹をふにふにと触って確認してみる。

 

「あは、うふふ、くすぐったいです、ギルさん」

 

くすくすと笑いながら、身を捩る月。

それに対抗してか、月もこちらの腹を突いてくるが、それは全く無駄な抵抗になっていた。

 

「あはは、だめぇっ、ずるいですギルさん、こっちもくすぐってるのに、やんっ」

 

「はっはっは、全くくすぐったくないね!」

 

うれうれ、と月の柔らかい脇腹を突いてみたり撫でてみたりと好き放題してみる。

脚をぱたぱたと暴れさせるも、逃げる気はない月に、手の動きも激しくなっていく。

だんだんと何時もの月の口調ではなくなってくるのが少し面白い。

 

「んぅ、あははっ、も、だめぇ、お腹、くすぐったいよぉ・・・!」

 

月の腹部の柔らかさと手触りと反応を十分に堪能した後、ごめんごめんと手を離す。

しばらく息を整えていた月だが、少しすると目じりに浮かんだ涙を拭いながら笑う。

 

「こんなに笑ったの、初めてかもしれません。・・・へぅ、何かギルさんに失礼なことを言っていた気が・・・」

 

「そのくらい、気にしないって。自分でやっておいてこういうこと言うのもアレだけど、大丈夫か?」

 

「はいっ。大丈夫ですよ。むしろ元気いっぱいです!」

 

こちらを見上げてえへへ、と笑う月の服を直しながら、そうかそうか、と返した。

ずっと機嫌よさそうにしている月を見ていてこちらも楽しくなってきたのは確かだし、なんだか今日は良いことがありそうだ。

 

「月、少し外を散歩しないか?」

 

「ぜひっ。少し用意しますね」

 

そう言って、寝室にある化粧台に向かう月。

・・・あまりにも俺の寝室で朝を迎える女の子たちが多いので、化粧台を設置したのだ。

鏡と簡単な化粧品位はあるし、ここで過ごしていくうちに自分の化粧品やらを置いていくお陰で男の部屋においてあるのに異常なほどラインナップが充実した化粧台となっている。

月は手早く自分の顔を確認すると、軽く髪と服を調える。

 

「うん。お化粧は・・・大丈夫」

 

一人鏡で確認する月を見ながら、よいしょと立ち上がる。

月は化粧をあまりしないし、しても薄化粧くらいなので時間が掛かることはほぼ無い。

卑弥呼とか壱与とかは顔に儀礼用のらしき化粧をするのでちょっと時間が掛かるのだが。

さて、今日は何処でお菓子を食べるかなぁと考えながら、月と手を繋いで部屋を出た。

 

・・・

 

「ん?」

 

秋晴れの午後。

天気が良いと東屋で作業をしていると、中庭を風が横切っていくのが見えた。

その後ろには猫が数匹続いており、更にその後ろには身を潜めながらそれらについてく明命がいた。

・・・何をやってるんだろう、あの忍者娘は。

 

「んー? おぉ~、お兄さんじゃありませんか~」

 

風を先頭にした不思議な隊列を見ていると、視線に気付いたのか風がこちらに声を掛けてきた。

進路を変えた風に釣られて、猫たちと明命もこちらに向かってくる。

 

「よぉ。今日はどうしたんだ?」

 

「今日はお天気も良いので、お散歩を少々~」

 

「健康的だな。・・・後ろの猫たちは?」

 

「先ほどまで日向ぼっこをしていたので、懐かれたのかとー」

 

「・・・背後の明命は?」

 

「・・・おぉ~。いつからかいたみたいですね~」

 

俺の言葉に、風は後ろを振り返る。

少し間が空いた後、手をぽんと叩いて何時も通りの間延びした声で答える。

 

「明命、こっちおいでー」

 

「はわっ!? み、見つかってしまいました!」

 

がさがさっ、と茂みを掻き分けながら明命がこちらに駆けて来た。

 

「流石ですギル様っ。隠密状態の私を発見するなんて・・・!」

 

感動した面持ちでこちらを見上げる明命だが、正直あの状態の明命を「隠密状態」とはいえないだろう。

気配遮断の欠片も無かったぞ・・・。

 

「い、いや、あー、うん・・・俺は凄いからなっ」

 

「はいっ! 流石ギル様ですっ!」

 

面倒くさいので、明命の話にあわせることにした。

 

「・・・なるほどー。これが「もういいかなー」って気分なんですね~」

 

「はっはっは。風、流せ・・・」

 

「はいですよ~」

 

ニコニコと笑いながら風は俺の頭を撫でてくれる。

座っているからか、風の身長でも俺の頭に届くようだ。・・・優しさが身に染みるなぁ。

 

「ところでギル様は今何を・・・?」

 

「ん、ああ。いや、ちょっと以前から考えてたことを纏めておこうかなーと」

 

国の政策だとか、こうすれば良いんじゃないかなーって言う案を纏めておいたりすれば後々見返せるし楽かなぁと思ってこうして纏めているのだ。

後は辞典だな。サーヴァントがらみの用語だとか、魔術関係の専門用語だとかを纏めておくかと孔雀たちの協力を得ながら作成中だ。

前は自室で作業してたんだけど、あまりにみんなの突撃も多かったし、部屋で女の子と二人きりで篭ってるとなんだか妙な気分になってくるので、こうして青空の下で健康的に作業をしているのだ。

・・・たまに、星みたいな外でも構わない娘に襲撃はされるけど。

 

「これ全部政策に関することなのですか!?」

 

「・・・軽い山になってるのですが~。これを全てお兄さん一人で処理しているのですか~?」

 

「凄いですっ。私はもう書類を見るだけでちょっと苦手に思っちゃうので・・・」

 

「はは、褒めても何も・・・いや、お菓子くらいなら出るな。ほら」

 

ぱちん、と指を鳴らすと、書類の山が宝物庫に戻っていき、代わりにお菓子とお茶が出てくる。

それを見て嬉しそうに席に着く二人を見ながら思うが、これは正直常人が処理できる件数じゃないだろう。

なんだか最近は俺の感覚も鈍ってきているけど、まぁ俺の能力が上がってるってことだから良いことだと思おう。

 

「お、猫たちもか。・・・そういえば前捕まえた魚介類が残ってるな。食べるかー?」

 

「にゃー」

 

わらわらと集まってきた猫たちが俺の足元に集う。

猫たちが食べやすいように皿に盛って地面に置くと、猫たちが殺到する。

おうおう、ゆっくり食べろよー。

 

「はぅはぅ・・・お猫様ぁ・・・」

 

明命はそんな猫たちの様子を見てお菓子を食べる手が止まってるし。

目がキラキラしてるなぁ。

 

「ん・・・もうこんな時間か」

 

「この後何かご予定が~?」

 

「ああ、まぁ、予定って程じゃないんだけど。この後商業区画の・・・そうだ、二人も来るか?」

 

「風たちも、ですか~?」

 

「ふぇっ!? わ、私もでしょうかっ!?」

 

「ああ。商業区画の区画長から相談受けてたことなんだけど、二人にぴったりだと思って」

 

そう言って、首を傾げっぱなしの二人を連れ、俺は城を出て目的地へと歩き出した。

 

・・・

 

「獣害?」

 

「ああ。屋台とか八百屋とか魚屋とかで、野良猫やら野良犬やらの被害が出てるみたいなんだ」

 

俗に言うお魚くわえたドラ猫という奴だ。

そこで、俺に陳情として上がってきたのだ。

・・・俺が散れと言えば猫たちも従うのだが、それでは常に俺がいないといけなくなる。

恋の負担をこれ以上増やすわけにもいかないし。猫好きと猫っぽい二人なら、何か良い方法でも思い浮かぶかなぁと思って連れてきたのだが。

 

「・・・急に言われましても、少し難しいかとー」

 

「はぅ・・・も、申し訳ありませんギル様っ。私では画期的な方法は・・・」

 

「んー・・・だよなぁ」

 

実のところ俺も頭を悩ませているのだ。

あまりにも増えすぎた野良動物たちは衛生上良くないし、たまに人を襲うようなのもいる。

基本的に武器を持っていない人間が適うはずも無く、噛まれたりして病気に、なんてのもあまり笑えない。

うぅむ、本格的に保健所的な何かを作るべきか。

 

「・・・犬、犬か」

 

「? どうしたのですか、ギル様?」

 

「いや、良いこと思いついたかもしれない」

 

・・・さて、集めてきたのは仕事がないと嘆く若者たちだ。

彼らには、これから捕まえてきた野良犬たちを飼いならして貰い、獣害を押さえてもらう。

特別講師は恋だ。流石の飛将軍。若者たちが「こんなつもりじゃなかったのに・・・」みたいな顔をしている。

ちなみに、猫のほうは猫カフェに雇用予定だ。これで、だいぶ被害は抑えられるだろう。

新しく商業地区に雇用も生まれるしな。うんうん、良いアイディアだろう。

・・・ちなみに、衛生面にはきちんと気を使ってるぞ? 専門の人間も雇ったしな。

 

「お猫様ぁ・・・! ギル様、ふくぎょう、というのは素晴らしいものですね!」

 

猫喫茶特別顧問、明命の誕生である。

猫のこと詳しいし、更に大好きだし。

平和になってから明命の仕事も減って時間もあることだし、とても良い人事だと思っている。

しばらくはマニュアル作成に時間を取られるだろうが・・・まぁ、明命の嬉しそうな顔を見ているとそのくらい良いか、と感じる。

 

・・・

 

「今日は何の日だ! 答えろ!」

 

「・・・ランサー、ライダーのテンションが高くて俺はどうすれば良いのか分からない」

 

「私に振らないでください! セイバー、任せました!」

 

「ふん、私の行く手を阻むというか、ライダー! 行くぞ的盧! 私と共に!」

 

「セイバーが逃げたぞ! 私も逃げるっ。賢者の石!」

 

「アサシン、地獄の果てまでキャスターを追え!」

 

「バーサーカー、お前はセイバーだ!」

 

「・・・」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

数秒後、城内で大きな爆発が二回起きた。

更に数分後、全員のマスターが集合してそれぞれのサーヴァントを叱責している場面が、複数の兵士によって目撃されている。

 

・・・

 

それはそれで、と気を取り直したライダーは、俺たちにもう一度何の日かと聞いてきた。

 

「はぁ・・・ハロウィンだろ?」

 

「分かってるじゃねえかソウルブラザー!」

 

「五月蝿い。ユニゾンしそうな呼び方をするんじゃない」

 

嬉しそうに俺にまとわりつくライダー。

その外套ひん剥いてやろうか。・・・誰が得するのか。やめておこう。

 

「先ほど町を歩いてみましたが、皆様仮装を楽しんでらっしゃいましたよ」

 

「宣伝した甲斐があるというものだ。なぁライダー?」

 

「おうよ! 俺は・・・俺は感動してるぜぇ!」

 

ぶわわっ、と目から涙のようなものを噴出させるライダー。

ついに水分も出るようになったのか、その目。

 

「一刀からもなんか言ってや・・・一刀?」

 

「不味いぞギル・・・強盗が出たらしい。人数も多いから、発見したけど逃したって」

 

俺たちがくだらないことを言っている間に、一刀は警備隊となにやら深刻な話をしていたらしい。

ライダーとは真逆の表情を浮かべながら、一刀は凪から受け取った人相書きを見せてきた。

 

「仕方ないな・・・ちょっくら空から探しt」

 

十月最後の日(ハロウィーン)!」

 

俺が台詞を言い切る前にインターセプトしてきたライダーは、なにやら不穏な言葉を吐きやがった。

・・・ああっ、周りの人間がみんなカボチャ頭に! 目の前に立つ一刀らしきカボチャは俺にカボチャにしか見えない人相書きを渡してくるし。

なんだ、確かS県辺りのふるぅつ屋の女装した長男が同じような能力持ってたような気が。

 

「くそっ、ライダー宝具を解除・・・もういない!」

 

「? どうしたんだ、ギル」

 

「・・・幻惑無効の魔術礼装貸してやるよ」

 

宝物庫から取り出した魔術礼装を一刀に渡すと、ライダーの宝具の「周りがカボチャ頭だらけなのに違和感を持たない」という効果が打ち消されたようだ。

悲鳴を上げ始めた一刀を落ち着かせて、早速サーヴァントの協力を取り付ける。

まず元凶であるカボチャ頭をどうにかしないとこの国民総カボチャ頭状態は続くことになってしまい、カボチャ頭の強盗にも逃げられてしまうだろう。

やばいぞ、目に入るのがカボチャ頭過ぎてゲシュタルト崩壊してきた。

 

「兎に角一刀・・・違う、これセキトだ!」

 

「おいおいギル、流石に犬と俺を間違えるのは・・・違う、これ張々だ!」

 

「お二人とも何をしているのですか・・・」

 

それぞれ別の犬を抱きかかえた俺たちがコント紛いのことをしていると、ランサーに呆れられてしまった。

・・・うん、ふざけてる場合じゃないな。

 

「宝具を無効化する宝具を今から探すのは流石に非効率かな」

 

今だ全てを開拓していない宝物庫を今から漁るのは流石に意味が無い。

となれば、原因のライダーをボコって解除させるか。

 

「多分ライダーはテンション上がりすぎて上空で「お菓子をくれな(トリック・オア)きゃ悪戯するぞ(・トリート)」もあわせて発動させてるだろうから、俺は空から探すよ」

 

「俺は・・・どうしたらいいんだ?」

 

「壱与でも探してくれ。多分あいつならきっとこの宝具の効果範囲内でも惑わされずに人探しできるはずだ」

 

「りょーかい!」

 

そう言って走り出した一刀を見送りながら、宝物庫から上空に飛行宝具、黄金と宝石の飛行船(ヴィマーナ)を取り出す。

屋根の上から跳躍して乗り込むと、上空からライダーを探す。

・・・何故か、俺のほうがライダーっぽいことをしているような気がするが、気にしたら負けだ。構わずいこう。

 

「うおっ!?」

 

上空を飛んでいると、蝙蝠やら良く分からない鳥やらが飛んできた。

敵意は無いみたいだが、この外見・・・ライダーの眷属か。

 

「なんて期待を裏切らない奴なんだ・・・」

 

自分で言っておいてなんだが、まさか本当に上空にいて、宝具で妖怪を吐き出しているとは思わなかった。

 

「取り合えず・・・宝具を解除したくなるように、適度に痛めつけるしかあるまい」

 

こうして、俺は妖怪を避けながら、即席STGに挑戦するのだった。

 

・・・

 

「・・・なるほど。ギル様がそんなことを」

 

「ああ。だから壱与ちゃんにも協力してもらって来いってギルが」

 

「了解です! 邪馬台国次期女王であるこの壱与が! あのカボチャ頭を破壊します!」

 

「破壊しちゃ駄目だよ!? っていうかそうじゃなくて強盗を見つけ・・・あれ、聞いてる? 聞いてないよね!?」

 

なにやら大声で応援してくれている(ように聞こえます)御使いさんを尻目に、上空へと浮かびます。

さてと・・・未来予知だと・・・こっちですね!

 

「ふっふっふ。あのカボチャの魔力の波長はすでにこの折紙に染み込ませてあります!」

 

いつ誰がギル様や卑弥呼様の敵になるか分かりませんからね! こうしてサーヴァントやマスター、主な武将の魔力や生命力や匂いなんかは折紙に染み込ませて溜め込んでるんです!

 

「そして! ギル様にほっぺたつねつねされながら改良した追跡魔法で!」

 

カボチャの魔力波長を染み込ませた折紙を数枚宙にばら撒くと、独りでに折鶴の形に変わっていく。

そして、完成した折鶴は羽を広げ、本物の鳥と遜色ない速度で飛んでいく。

 

「速度、追跡能力、魔力効率! 数ヶ月前に魔法を手に入れましたが・・・こんなにもッ! スガスガしい気分は初めてですッ! うりぃっ!」

 

なんだか気持ちが高ぶって妙なことを口走ったような気がしますが、上空にいるのなんか私くらいのもの。

追加で隠蔽魔術もかけてるのですから、何を口走ろうが気にすることはないですよね!

 

「あっちですね・・・うん? ギル様のにおいもする!」

 

しばらく飛んでいると、黄金の飛行船に乗って飛んで来る妖怪たちを避けているギル様が見えてきました。

・・・遊んでる・・・わけじゃないですよね?

 

「ギールーさーまー! 壱与ですー! あなたの壱与ですよー!」

 

「・・・ん? 壱与? って、壱与!?」

 

黄金の飛行船に急制動を掛けて、物理法則をまるっと無視した軌道でこちらに反転してくるギル様。

流石思考で動く飛行船。ああいうの一台あると、新婚旅行とか捗りそうです。

 

「強盗は? 見つけたか?」

 

「はい?」

 

「・・・は?」

 

「えっ?」

 

ギル様の言葉に首を傾げると、ギル様も驚いたように目をまんまるくしてしまいました。

・・・あら、何か聞き間違ったのでしょうか。確か、御使いさんからは「ギル様の手伝いをして欲しい」という内容の言伝を貰ったはずなのですが・・・。

直接ギル様に聞いてみると、はぁ、とため息をついて首を数回横に振りました。

 

「人の話は最後まで聞こうな。多分一刀が説明してる途中で気持ちが逸ってこっち来たんだろうけど」

 

そう言って、ギル様は壱与のおでこを指でぱちん、と弾きました。

 

「ありがとうございますっ」

 

「・・・うん、まぁいいや。きちんと説明するぞ?」

 

壱与がお礼をすると、ギル様は何かを諦めたような顔でもう一度首を振り、詳しく説明してくれました。

・・・なるほど、あのカボチャ頭の宝具で見分けがつかなくなった強盗を捕まえろ、ということだったのですね。

いっけない、壱与ったらあわてんぼさんっ。てへっ。

 

「てりゃっ! ・・・おっと、すまん。急に凄く不快になって」

 

「ありがとうございますっ!」

 

急にギル様から手刀のご褒美をいただき、ほとんど反射でお礼の言葉が出てくる。

うん、ギル様はぶりっ子は嫌い・・・と。以前のつんでれ、くーでれと共に封印ですね。

それにしても、壱与の心の中まで分かるなんて、まさに以心伝心! 愛が溢れて止まりませんわ!

 

「ではでは、不肖ながらこの壱与、ギル様のために強盗を捕まえて半殺しにした後荒野に放置してきます!」

 

「それは遠まわしに殺してるな。一応事情聴取とかもあるから、捕まえて城に突き出してくれるだけで良いぞ」

 

「分かりました! 言葉だけ喋れるようにしておきますね!」

 

「・・・できれば後々回復可能な程度に痛めつけてくれよ?」

 

「はいっ! 壱与にお任せ、です!」

 

壱与の返事を聞いて、よしよし、偉い偉い、と壱与の頭を撫でるギル様。

・・・うふふ。手刀や張り手を頂くのもご褒美ですが、こうして優しく撫でていただくのも大変なご褒美ですね。

ギル様が手を離した後も温もりが残っているような気がする頭頂部に触れつつ、それでは、とギル様に別れを告げて急降下。

卑弥呼様の直弟子であるこの壱与の魔術と魔法をたっぷりと御覧あれ!

 

「人物探索魔術、鏡花水月!」

 

目の前の銅鏡に手を翳すと、鏡面が揺らめき、程なくして眼下に広がる町の様子を映し出す。

うわぁ、見事にカボチャ頭ばっかり。

ええと、どうやって探そうかな。

 

「取り合えず、走ってる人間を映し出しなさい!」

 

鏡に向かってそういうと、壱与の周りに追加で銅鏡が現れ、それぞれに走っている人間――カボチャ頭ですけど――を映し出す。

後は、ここから更に絞っていくだけ。

 

「ええと、何かを手に持って走っている人間!」

 

条件を絞ると、周りの銅鏡が更に減る。

 

「うーん・・・三人か」

 

残った銅鏡は三枚。

それぞれに走るカボチャ頭を映し出しているので、どれが強盗かは直接見ないといけないかも。

・・・ん?

 

「あはは、なるほどね、これは分かりやすいわ」

 

つい乱暴な言葉遣いになるほどに驚いてしまいました。

銅鏡の一枚。走るカボチャの頭に、赤い血が。

 

「これは、抵抗でもされたときに怪我しましたか? ・・・まぁ良いです。ここはギル様と卑弥呼様の治める世界。そこに住む民に危害を加えるというのなら、殺害も厭いません」

 

更に急降下して、走る血のついたカボチャ頭の前に降り立つ。

 

「おおっ!? な、なんだ!? 空から女の子が!」

 

「一つだけ聞きます。あなた、強盗ですか?」

 

「何を言って・・・」

 

「確定しました。あなたは強盗です」

 

強盗の言葉に被せるように一方的に言い放つ。

読心魔術、明鏡止水。

銅鏡に人を映して質問をすると、その質問に心の中でどう思っているのかが映し出される。

心では嘘つけないですからね。

・・・ちなみに、魔術名の名付け親は卑弥呼様です。

確か、14の頃に何かに目覚めたらしくて、何かに取り付かれたかのように魔術に名前を付け始めたらしいです。

弟様曰く、「何かの病気のようだった」といっておられました。

 

「・・・はっ、ばれたんなら仕方ねえな。見たところ、ここの武将って訳でもなさそうだし・・・わりぃが、人質になってもらうぜ」

 

「は?」

 

「じゃらじゃらしてるその宝石とかも売れそうだな・・・痛い目見たくなきゃ大人しく服を脱ぎな」

 

一人で飛び出してきたのは失敗だったな、といいながら、懐から刃物を取り出す強盗。

・・・確かに壱与は少女と言って良い外見してますし、あんまり腕っ節強そうには見えませんけど・・・油断しすぎじゃありません?

 

「やめておいたほうが良いですよ。襲われたら、抵抗しなければなりません。その頭の傷より酷いことになりますよ?」

 

「はっ。これは大の男が抵抗したから出来た傷だぞ。そんな鏡しか持ってない嬢ちゃんじゃ、できっこ・・・ねえよっ!」

 

「うわ、あっぶな」

 

「ごぶえっ!」

 

刃物を振り上げ、壱与に飛び掛ってきた強盗はしかし、空中に配置してあった光弾にぶつかって潰れた蛙みたいな声を出しました。

地面に落ちた強盗は、おなかを押さえながら疑問符を頭に浮かべているようです。

 

「? ? な、なにが・・・?」

 

「あ、襲われたので抵抗しておきますね。きゃー、こわーいっ」

 

あ、ぶりっ子は封印してたんでした。

 

「ま、いっか」

 

「ちょ、ま、あぶぶぶぶぶぶぶぶっ!? ・・・ごふ」

 

私の発射許可を得た光弾たちは、三百六十度、逃げ場のない光弾の結界に閉じ込められた強盗に殺到しました。

光弾に全身を打ちのめされ、なにやら良く分からない断末魔を残して強盗は気絶してしまいました。

 

「めでたしめでたし、ですね。あ、城まで持って帰らないと」

 

・・・

 

「で、壱与。これは何だ?」

 

「はい! 強盗です!」

 

「・・・取調べとかあるから、後々回復可能な程度に痛めつけろって言ったよな?」

 

「はい! ですので、後々回復可能な程度に半殺しです!」

 

「全治半年を半殺しとは言わんのだ」

 

? ギル様は何をおっしゃっているのでしょうか。

 

「半年間死にそうな状況にするから半殺しというのでは・・・?」

 

「誰から教わった?」

 

「卑弥呼様と弟様からです!」

 

「よし、後で卑弥呼には拳骨だ。・・・あと、弟君には後ほど何か疲れが取れるものを送っておこう」

 

「あのっ、ギル様っ。褒めてください! できればなでなでとかつねつねとか希望です!」

 

「チョップ」

 

「ありがとうございますっ」

 

びしびしも大好物です!

 

「まぁいいや。お手柄だ、壱与。流石だよ」

 

そう言って、壱与の髪を優しく撫でるギル様。

・・・ハッ、これは閨での前戯と同じ手つき・・・。

 

「こ、こんな青空の下、衆人環境の中でなんて、そんな、想像だけで達しますよ!?」

 

「何だそれは! 俺はもしかして脅されてるのか!?」

 

「わ、分かりました。他の人に見られるのは恥ずかしいですが・・・ギル様のためなら!」

 

「脱ぐな! 何なのこの娘! 邪馬台国ってこんなのばっかりか! 人の話を聞け!」

 

「きゃうんっ」

 

ギル様に襲われやすくなろうと服を脱いでいると、首に衝撃が来て意識が遠くなっていきました。

ああ、まさかの気絶してる壱与をめちゃくちゃにしようという行為ですか? もうそれだけで壱与は・・・!

 

「うわ、地面がびしょびしょだ。・・・水、多めに用意してやらんとな」

 

ギル様のそんな言葉を聞きながら、壱与の意識は真っ暗になりました。

 

・・・

 

「壱与が倒れたぁ?」

 

「ああ」

 

目の前のギルの言葉に、また何かいやらしい事でも想像したんでしょ、と聞いてみるとまさにその通りだったらしい。

本当に期待を裏切らないわね、壱与ったら。

・・・つーか、わらわもギルに触られて気絶したことあるから人のこと言えないんだけどさ。

 

「そ。ま、あんたは壱与についててあげなさいな。ついでだから寝込みでも襲ってやんなさいよ。・・・何なら手伝うわよ、わらわ」

 

「・・・それも面白そうだな。卑弥呼、ちょっとこっちおいで」

 

んん? な、なんでわらわ?

ちょっとドキドキする胸を押さえつつ手招きされるままにギルの元へ行くと、よいしょ、と壱与に跨るように四つんばいにされる。

 

「・・・え、ちょっとまって、まさかこのままとか・・・」

 

「壱与が起きたら多分大変なことになるだろうから、声抑えろよ?」

 

「や、ちょ、ま、流石に過激すぎ・・・ひゃうんっ」

 

慌てて口を片手で押さえるけど・・・押さえ切れるかしら、わらわ。

 

・・・

 

「ぜー、はー、ぜー・・・あ、ある意味拷問ね、あれは」

 

途中でぜっちょ・・・違う。絶叫してしまったため、飛び起きた壱与に事がバレて凄まじいビンタ食らったわよ、全く。

腰がくがくいってたときだったし、もう目とかほとんど何も見えてなかったから食らっちゃったけど、その後で凄まじく謝られた。

土下座までされたもんだからわらわもギルも目を丸くしてたわ。全裸で。

その後壱与も混ざってやらかしたり、三人でせっせか片づけしたりと面白かったけど・・・。はふ、しばらく三人では禁止ね。

 

「・・・あら、ゴールドぐるぐるドリルじゃない。良く会うわね」

 

取りとめもないことを考えて反省していると、目の前に良く見知った金髪が現れた。

そいつはわらわの台詞を聞いたと単にため息を吐いて全く、と呟く。

 

「・・・何度も言うけれど、私の名前は華琳よ。その呼び方だと麗羽と被るじゃない。やめなさいよ」

 

「意味分かるの? 流石は秀才ね。・・・天才であるわらわには敵わないけれど?」

 

「ふん。・・・ギルのところの副長に聞いたのよ」

 

ああ、なるほどと頷く。

確かにあのプロぼっちなら語学も堪能だろうしね。

流石は王女ってことかしら。わらわには敵わないだろうけど。

 

「すんすん。・・・ゴールド・・・ああもう面倒くさい。華琳。あんた、わらわと同じ匂いしてるわね」

 

「はぁ? ・・・っ! そ、そういうことね」

 

「取り合えず、その小脇に抱えてるものを見るに、わらわと目的地は一緒みたいね。取り合えずいくわよ」

 

「はいはい」

 

呆れたように再びため息を吐きながら頷く華琳を隣に、わらわたちは浴場へと向かう。

浴場の入り口には札が掛かっていないのが確認できた。

これで男が入っていれば「男入浴中」の札が、女が入っていれば「女入浴中」と書いてある札が下がっているのだ。

敷地的な問題によって男女分けてそれぞれ別の浴場を作ることは出来ないので、今はこうして対処している。

からん、と木の札をかけ、暖簾をくぐる。

・・・ちなみに、男の札と女の札とはまた別に、「ギル入浴中」という札がある。

それが下がっているときには、風呂場で情事が行われている可能性があるので、男女共に一部を除いて進入禁止である。

 

「時間的に一番風呂かしら」

 

「そうじゃない? まぁ、常に湯が注がれているのだから、あまり意味はないかもしれないけれど」

 

「はっ、大和魂がないわねえ、そんなだから乳が貧しいのよ」

 

「あなたにだけは言われたくないわね」

 

「わらわのは貧しいのではないの。この身体に一番合う乳がこの大きさなのよ。故に美乳。美しい乳なの」

 

見なさい、ほら見なさいよと華琳に裸体を見せ付けてみる。

実際わらわは自分の身体に自信あるもの。化け物おっぱいたちに囲まれていてもわらわは自分の胸を誇れるわ。

まぁ、「美乳? 微乳の間違いじゃないんですか?」とか言ってきた壱与は思いっきり殴ったけど。

 

「・・・そこまで突き抜けていると流石としか言いようがないわね」

 

「ふん。女王舐めんな。・・・まぁ、流石にギルに見せるときは緊張したけど」

 

「あら、自慢の胸はどうしたのかしら?」

 

「あんたも分かるんじゃない? 乳のおっきいのが好きな男もいるから、もしかしたらわらわの乳は気に入られないかもしれないって思うこと」

 

「・・・ふぅん。ま、否定はしないけれど?」

 

胸を張って自分の乳を見せられるのと、好きな男に自分の胸が気に入られるのは別問題なのだ。

特にわらわはその・・・うん、まぁ、はわわとかあわわ、侍女長にもちょっと劣るくらいの大きさだったから・・・。

こいつもその口だろう。自分の容姿にも能力にも自信はあるし誰にも負ける気はしないけど、やっぱり好きな男の前では気になるってのがあるはず。

 

「ま、そんなわけだから遠慮なくわらわの身体を見なさい」

 

「嫌よ。確かに私は春蘭を可愛がったりもするけれど、生意気なのは好みじゃないの」

 

「あら、そうなの? ま、わらわもギル以外に従順になる気はないしねー」

 

ギルの前だとしても、壱与ほどはっちゃける気もないけど。

あれはちょっと愛が溢れすぎだ。

 

「ふふ、本当に気が合うわね」

 

そう言いながら笑う華琳は、からりと浴場へ繋がる扉を開ける。

同性しかいなくてもきちんとタオルで身体を隠す辺りは流石だと言える。

わらわなんか、肩に掛けてるだけだし。・・・あん? 親父っぽい?

るっさいわねえ、弟とおんなじこと言うのね。

 

「それにしても、毎回思うのだけれど・・・」

 

「あん?」

 

「宝具っていう神秘の塊で、お風呂を沸かすって・・・英雄王ともなると、宝具の使い道に困ったりするのかしら?」

 

「あー・・・ま、そうよね」

 

普通はそう思うわ。英霊に宝具は大体一つ。二つ三つあれば良いほうだし、四つあるのはほとんどいないでしょ。

王の財宝って一つの宝具ではあるけど、その中に無限と言って良いほどの宝具が入ってるなんて、本当に凄まじい。

そりゃ使い道に困ったりするし、若返りの薬やら何でも合成する壷なんてものをもてあましたりもする。

 

「でも、こういう平和な使い道なら歓迎するわよ、わらわ」

 

「そうね。・・・大戦中から草案はあったって聞いたときは本当に流石一刀と同じ天の御使いねと思ったものだけど」

 

「あら、ほんとに? あいつ、そんな時期から平和になったときのこと見据えてたのかしら」

 

「能天気とも言うけれどね。本当に天の国は平和みたいだし、その考えを引きずってるんじゃないかしら」

 

「あー・・・」

 

確かにそうかも。

・・・でも、あいつって英霊なのよね? なんで現代の御使いと考え同じなのかしら。

ま、聖杯の知識って言うのもあるし、あいつ自身柔軟な考え方してるのかもしんないわね。

 

「ふぃー・・・」

 

でもま、どうでもいいわ、そんなもの。

わらわにとってあいつは愛する人。それだけよ。

・・・ふふん、詩人っぽい? っぽい?

 

「あ、やっぱり華琳さんと卑弥呼さんだー」

 

「? あら、桃香じゃない」

 

「えへへー。こんにちわー」

 

「こんにちわ。どうしたのよ、こんな真昼間から」

 

異常に自己主張をしてくる一部分をちらりと見ながら、天然ボケに聞いてみる。

柔らかく笑いながら、天然ボケは身体を洗い流す。

 

「んーとね、ちょっと夜通しお仕事してて、ようやくさっき終わったのー。眠かったけど、先にお風呂入っちゃおうと思って」

 

「夜通し? ・・・まさか、仕事を溜めてたんじゃないでしょうね」

 

「違うよー。一応機密だからあんまり詳しくは言えないんだけど、夜中じゃないと出来ない仕事でねー」

 

肩もこっちゃうよー、と困ったように自分の肩をとんとんと叩く天然。

ちっ、別の理由なんじゃないの、その肩こり。

 

「ちっ」

 

わらわと同じ考えにいたったのか、隣の華琳からも小さな舌打ちが聞こえてくる。

・・・え? 自分の胸に自信持ってるんじゃないのかって?

はっ、愚問ね。自分の(モノ)に自信を持って誇れるのと、自分にはない巨乳(モノ)を持っている奴を妬むのはまた別よ。

あのネコミミは気に入らないし、いつか絶対に落とし穴の借りは返すけど、貧乳党は支援してるしね。

 

「んしょっと。お邪魔しまーす」

 

「・・・排水量凄いわね。また太った?」

 

「ふぇっ!? ふ、太ってないよぅ! た、多分・・・」

 

湯船に溜まっていたお湯が結構流れ出たのを見て呟く。

天然は必死に否定しているが、語尾が弱い。何か心当たりでもあるんだと思う。

 

「そういえば、華琳」

 

「なによ」

 

「知ってるかもしれないけど、町のほうに新しい甘味処が出来たらしいわよ」

 

「・・・ああ、それなら知ってるわ。味もまぁまぁよ」

 

「ええ。・・・そこ、ある程度のお金を払うと「食べ放題」って出来るらしいのよ」

 

「ぎく」

 

わらわたちの言葉に、天然がしまった、という顔をした。

ちなみに、甘味処の食べ放題のことを天の国では「すいーつばいきんぐ」と言うらしい。・・・なーんか、言葉自体が甘い響きを持っている。

 

「・・・開店記念の式典に、やたら乳のでかい女が来てたらしいわ」

 

ちなみに、その食べ放題は一部の武将は利用禁止である。

言うまでも無いか。

 

「ぎくぎくぅっ」

 

「・・・分かりやすいわね、桃香は」

 

「はん。食ったものが腹と乳にいくなんて、分かりやすい太り方すんのね、あんた」

 

「ふ、太ってないもん!」

 

「少しつまめるわね、ここ」

 

「ふにゃあっ!? つ、つまめないもん!」

 

いやいや、それは流石に苦しいわよ。

華琳が指先で天然の腹の肉をつまんでいるのを見ながら、手を顔の前で振ってみる。

 

「うぅ・・・運動しないとぉ・・・」

 

「愛紗と頑張るのね」

 

「ああ・・・あの照れっ娘ね。あいつは中々引き締まった身体してるじゃないの。・・・なんでその姉はそうならなかったのかしらねぇ」

 

「ふふ。大戦中に一度誘ったことはあるのだけれど・・・どうもつれなくてね」

 

「その頃からギルにお熱だったんじゃないの? ・・・自分で言っててイラついたわ、今の」

 

あの巨乳の癖して純情乙女とか、マジでファッk・・・おっと、私はそんな言葉知らないわ。だって女王だもの。

品位が疑われるような言葉を発しない教育を受けているのよ。

つーか、誘ったって自分の陣営にって事よね? 閨にって事じゃないわよね?

・・・いや、こいつならどっちもって事だろう。あーやだやだ、わらわは薔薇の花も百合の花も興味ないのよ。

 

「ふぃー・・・そろそろわらわはあがるわね。後はあんたら二人で乳繰り合ってなさい」

 

「ふぇっ!? か、華琳さんって私も守備範囲なの!?」

 

「・・・ありえないわ。変な言いがかりをつけないで頂戴。私も出るわよ」

 

疲れたようにため息を吐く華琳と連れ立って、風呂場を出る。

後ろから、じゃねー、と軽い調子で言いながら手を振る天然に軽く手を挙げて応えながら、自身の脱衣かごの前に。

 

「やっぱさっぱりするわよねー」

 

「そうね。少なくとも一日に一度は入らないと気がすまない程度には必要よね」

 

するするとお互いなれたように袖を通していく。

すぐに着替えが終わり、二人して浴場を出る。

 

「そろそろ風呂上りにもう一枚くらい羽織らないと湯冷めしそうね」

 

「秋ねー。・・・そういえば、紅葉狩りするそうじゃないの」

 

「耳が早いのね。ギルから聞いたの?」

 

「ええ。ふふん、わらわ今から楽しみよ」

 

紅葉を見ながらお酒を飲むなんてねぇ。風情溢れるわよね。

湯船にお盆を浮かべながら飲むのも良いわよねぇ。今度やろうかしら。

 

「ふぅん・・・あなたにもそういう感情があるのね」

 

「あんた、わらわのことなんだと思ってたのよ・・・」

 

まさか快楽殺人鬼みたいな性格だとでも思われてんの?

そんなクレイジーなのは壱与に譲ったわー。

 

「・・・あら、あれは一刀じゃない」

 

「ん? お、ギルもいる」

 

二人してなにやら楽しそうに話しているのを見つけて、わらわと華琳は目配せして笑う。

なんだかんだ言って、こういうときには気持ちが高ぶるものなのだ。

 

・・・




「人物捜索魔術、鏡花水月!」「きゃー! きゃー! やーめーてー!」「読心魔術、明鏡止水!」「いーやー! それ以上黒歴史を発掘しないでー! わらわが死ぬ! わらわのあいでんててーがくらいしす!」「封印魔術、鏡戒鏡誠!」「壱与ー! あんた降りてきなさい! わらわの・・・邪馬台国の恥を晒さないでぇぇぇ!」「・・・落とし穴に落ちた時並に取り乱してるな、卑弥呼」「・・・う、うぅっ、ぐす・・・」「14の頃に何かに取り付かれた様に魔術に名前をつける卑弥呼様を見て、弟様は『夢中で二つ名をつける病』略して『中二病』と名付けられたのです!」「・・・卑弥呼が人前に姿を現さない理由ってそれ患ってたからとかじゃないよな・・・?」


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