将をなんちゃらするならまず馬をなんちゃら。   作:stan

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ある兄妹の旅立ち。キャロ偏

私が目を醒ますと、周りは暗闇だった。

えっと。ここは、自分のベッド、自分の部屋だ。

私はどうなったんだっけ?

ジム兄にお仕置してたはずなんだけど、途中から記憶が無い。なんだか、とても怖い想いをしたような気がする。

と、部屋の中に私のではない呼吸音がしていることに気付く。

周りを見渡すと、ベッドの脇にはジム兄が座って寝息を立てていた。

それを見て、私はとても暖かい気持ちになる。

と、咽が乾いたので、ジム兄と反対側のベッド脇においてある、水差しとコップをそっと静かにとり、ジム兄を起こさないようにコップに水を注ぐ。

水差しを置いて、両手でコップを持ち、乾いた咽を水で満たす。

コクコクと、すんなり一杯分の水をひと息で飲み干し、

喉が潤され、胃が冷やされるのを感じる。

飲み終わり、空になったコップを脇に置き、ふう。と小さく息を吐く。

すると、きゅる~と小さく御腹が鳴った。

記憶はないが、どうやら夕飯は食べ損ねたようだ。

 

「ほれ」

 

そう言って、差し出されたのは小さいおにぎり2つ。

差し出したのはもちろんジム兄だ。

「ありがとう」

ジム兄が起きていたことに驚きを覚えるが、それより空腹が勝った私は、目の前のおにぎりに口をつける。

キャロちゃんは育ち盛りなのだ。

具はおかかのようだ。香ばしい芳香が口の中に広がる。この丁度良い、醤油加減。お母さんのおにぎりだ。わーい。キャロ、お母さんのおにぎりだーいすき♪

モクモクと、食べていると、おにぎりが喉に詰まってしまった。

息がつまり、ん~ん~と唸っていると、コップが差し出された。

もちろんジム兄だ。

急いで受け取り、喉のご飯を流し込む。

ジム兄の前ではしたないところを見せてしまった。私は恥ずかしくなり、顔を熱で染め、布団をかぶり、ジム兄の視線から避難する。

すると、間もなく、布団の向こうから、クスクスと笑う声が聞こえてきた。

私はカッとなり、

 

「ジム兄のバカ!もう出てって!」

 

と、声を荒らげる。

すると、ジム兄は‥

 

「あれれ?おにぎり一個残ってるな?勿体ないから、兄ちゃんが食うか~」

 

「食べる!」

 

ガバっと布団をはねのけると、そこには、ニヤニヤ笑うジム兄。

私はまた、顔が熱くなる。

 

「ほれ?」

と、ジム兄が差し出す残り一個のおにぎりを奪いとり、

 

「はむっ」

と、

かじりつく。

「キャロ。喰ったまま聞いてくれ」

その声色は初めて聴く、真剣なもので、思わずジム兄の顔を見る。と、ジム兄は表情もとても真剣で、

お言葉に、甘えて、二口目をかじりついたところで、ジム兄は言葉を続けた。

 

「お前‥今日のこと、覚えているか?」

 

今日のこと、記憶がすっぽり抜け落ちている部分のことだろうか?

私は咀嚼しながら、首を横に振る。

あ、梅ぼしだ。わーい。キャロ、梅ぼしのおにぎりだーいすき♪

「そっか‥」

と、ジム兄は真剣な表情で項垂れてしまう。

「簡潔に言うぞ?お前は今日暴走した」

え?

暴走?

何が?

私がquestionマークを浮かべていると、

ジム兄は言葉を続けた。

「お前はヴォルテールを竜鎧として、召還した。そして、その結果、暴走した」

ジム兄に言われて、だんだんと、記憶がよみがえってくる。

確かに、あの時私は正気じゃなかった。自分の行動も抑えられていなかった。

「それで、だ‥俺とお前はこれから、時空管理局の預かりとなる。そこで、二度と暴走しないように訓練をさせてもらえるらしい」

ブルッと身震いする。なんてことだ。私はもしかしたら、この手でジム兄を‥殺してしまっていたかもしれないのだ。ジム兄じゃなくても、誰か他の人を傷つけてしまっていたとしたら‥

昔、部族の長老が言っていた言葉を思い出した。

「強すぎる力は‥争いと、災いを‥呼ぶ‥」

私は、私は‥ガバっと自分で自分を抱き締める。

私は、この、居場所を無くしてしまったのだろうか?また居場所を壊してしまったのだろうか?

ポロポロと、涙が止めどなく流れてくる。

「キャロ!」

ジム兄が私の名前を呼びながら、抱き締めてくれる。

「お前の居場所は壊れてなんかいない。言ったろ?お前の居場所は俺だ。兄ちゃんだって」

「あはっ。そうだったね‥ジム兄。ジム兄~」

ジム兄の温もりがどこまでも温かくて、私はひてすらに、ジム兄にすがり付いて泣いていた。

私が泣いてる間、ジム兄はずっと、私の背中を撫でてくれていた。

おかげで今は心がポカポカ暖かい。

「私、ジム兄と離れたくないよ‥」

ギュッとジム兄の服を握り、そんなことを独白する。

「ばーか。話しちゃんと聞いてろよ?

管理局に行くのは俺も一緒だ」

ジム兄も一緒。

それだけで、私の心はスーッと、軽くなった。

「そっか‥えへっ‥良かった‥良かったよぅ‥」

私はまた泣き出してしまった。

でも大丈夫。今度のは、安堵の涙、嬉し涙だ。

ポンっと、頭に手が置かれ、くしゃりと髪を鋤くように優しく撫でられる。

ああ。安心する。

すると、キュル~と小さく御腹が再び鳴った。

キャロちゃんは育ち盛りなのだ。

「ははっ‥母さんに何が作ってもらうか?」

「うん♪」ジム兄に手を引かれ、私は母さんのところへいく。

 

「母さ~んキャロがあれだけじゃ足りないってさー、グフッ」

声を張り上げるジム兄の背中にドスっと、正拳を入れる。

全くジム兄はもう少し、でり‥デリ、デリバリーを持ってほしいものである。

「あらあら♪何が食べたい?」

 

「青椒肉絲!ピーマン大盛りガフッ!!」

 

光りの早さでジム兄の顔に正拳を叩き込み黙らせる事に成功した私は、大好きなお母さんのメニューをリクエストする。

「卵焼き!甘いの!」

 

「はいはい♪キャロは卵焼き好きね♪」

 

「うん♪」

 

卵焼きも好きだけど、お母さんの笑顔も大好き。お母さんと離れるのは非常に寂しい。

そこで私は、更にワガママを言ってみた。

 

「あとね、今日はお母さんと一緒に寝たいな?」

 

「あ!俺も!」

 

ジム兄がちゃっかり、便乗してくる。

 

「はいはい♪そうね。今日は久しぶりに三人で川の字で寝ましょうか?」

 

「わーい♪キャロ。川の字だーいすき♪」

 

夕飯を、済ませ、布団を敷き、お母さん、私、ジム兄の順で並んで寝る。

優しい家族に挟まれている。この安心感が、私は大好きである。

温もりに包まれて、私が早くも、ウトウトし始めると、微睡みの中で、ジム兄とお母さんの会話が聞こえてきた。

「母さん‥一人にして、ごめんなさい。」

 

「バカね‥大丈夫と、言ったでしょ?」

 

「俺‥立派な大人になるから」

 

「キャロは勿論、周りにいる人、みんなを笑顔に出来るような‥母さんが誇りに思ってくれるような、立派な大人になるから‥」

 

「バカね。貴方はもう‥私の誇りよ?私の愛しい、とても優しい子‥」

 

「‥母さん‥」

そして二人は、私を間に挟みながら、強く抱擁をする。ギューっと前から後ろから、かかる圧力が、とても心地よい。

うん。私にとっても、ジム兄は誇らしい、優しいお兄ちゃんだ。

私の顔には、お母さんの胸が、どたぷ~ん。と、押し付けられており、少し息が苦しい。

私も、これくらい、育つかな‥?

だと、いいな‥

そうすれば、きっと、ジム兄も喜んでくれるはず。

私は兎に角、最後になるかもしれないお母さんの温かさを刻み込もうと、ギュッとお母さんにすがり付くのだった。

 

ジム兄の独白にも似た、言葉を聞いて、私も強くなろうと、心に決めた。守りたい、優しい人を。私に笑いかけてくれる人達を。

自分の力で、意志で、守りたい!

そして、ヴォルテールを制御出来るようになって、戻ってこよう。この場所に。もちろん、ジム兄と一緒に。

それは、私にとって、何よりも叶えたい願い。

魅力的な夢だった。

そのためなら、どんな辛い事だって我慢出来る気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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