時は少し遡り、ジムの執務官補佐のテストが終わった日の夜。
◆◆なのはside◆◆
隊舎の寮の自室で私は、はやてちゃんと、食卓を囲んでいた。
約束通り、はやてちゃんが、夕食を作りに来てくれたのだ。
はやてちゃんのご飯は美味しい。
「ご馳走様でしたー」
「お粗末さまや」
「美味しかったの♪」
「そうか?おおきにな♪」
「はやてちゃん。嫁に来いなの」
「どうしよう。同性の親友にプロポーズされてもうた」
「全く‥こんな良い女が二人して、独り身なんて、世の中の男供はどうかしてるで!」
「クスッ全くなの‥」
「やれやれ。でも、このままじゃフェイトちゃんんに先越されそうやな?」
「やっぱりそう思う?」
「ああ。あれはもう落ちてるな‥」
「フェイト‥!色を知る
年齢(とし)か‥‥っ!」
バキッ。
あ、箸が折れちゃったの。
割り箸は直ぐに折れちゃうから、困っちゃうの。
はやてちゃんが目の前でなんか震えてるの。どうしたのかな。とりあえず私は特注のステンレス製の箸を取り出した。
「と、とりあえず‥ウチはそろそろ‥
と、思ったら、急に、はやてちゃんが帰り支度を始めたの。
私ははやてちゃんの手首を掴む
「どうしたのかな?まだ夜はこれからだよ?」
はやてちゃんはビクッとこちらを向いて、顔をしかめる。あ、ちょっと、力強く握り過ぎちゃったかも。
私ははやてちゃんの手首を解放する。
はやてちゃんはホッと一息つくと、手首を擦りながら、椅子へと座り直した。
流石はやてちゃん。話しがわかる。だから好きなの。
そういえば、随分、気にしてたみたいやけど?」
「ほえ?あ、ジム君?」
「そうだね。彼、面白いよ。今日も、全然本気出して無かったし。」
「ほんまか工藤?」
はやてちゃんが
聞き直してくる。
「ほんまやで~」
これは本当。
今日の彼は、全然本気を出して無かった。
でもまぁ、相手もガジェット5体だけだったし、仕方ないんだけど。底が見えないのは初めてだった。
今迄、私は、大体の人間は動きを見ただけで、
その実力を推し測れていた。
それが、彼に関しては、全く測れなかったのだ。
初めての感覚に戸惑いもしたが、もっと解せないことがある。
彼の私を見る時の目、そこにあったのはたしかな怯え。
なんで?初対面だよね?見た目はこんなに可愛い女の子なのに、どこに怯える要素があるというのか。
それはすなわち、彼には、私の実力がバレている。看破された。ということなのだ。
今日の私は、全く、そういったものを見せていないはずだ。なのに、彼は見破ったというのか。
私は、戦闘中の彼を見ても、その実力が推し測れていないというのに。彼は私よりもひとつ上のステージにいるといえる。
そう考えると、胸に熱いモノが宿った。
もっと彼を近くで見たい。
高町なのはは、慢心しない。今迄、どんなに絶望的な状況下でも、不屈の心を胸に、切り抜けてきた。才能も確かにあった。だがそれだけではない。どんな時でも彼女は、自分というものを通してきただけなのだ。
幼い頃から戦ってきた彼女は知っている。世界において、自分を通すことの難しさを、力無きモノは蹂躙され、奪われるのが、この世界の正体だと、その身を持って誰よりも知っているのだ。
だから、彼女は貪欲に強くなる。
大切なものを奪われない為に、不屈に強くなるのだ。そんな彼女が感じた感覚。
彼の傍に居れば、きっと自分はもっと強くなれる。
だから、私は、はやてちゃんに切り出した。
「はやてちゃん。ジム君欲しいな‥」
高町なのはは慢心しない。
エースオブエースと呼ばれても、魔王と呼ばれても、未だに、純粋に強さを追い求めていた。
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◆◆はやてside◆◆
唐突だが、機動六課の話しをしよう。
機動六課。それは私の夢の部隊。初動の遅い、管理局のシステムから独立し、助けを求める人を迅速に助けられるよう私が前に進む為の部隊。
いわば私の翼である。
部隊の設立は困難を極めた。
カリムの予言に対抗するための部隊。まさかの事態への対抗部隊やから、実力が無いと、意味が無い。しかし、部隊には魔道師保持制限がある。
裏技を使う事を思いつき、活きのいい若手FW陣、加えてウチの身内の強力なべテラン陣を集める事には成功した。
だが、事はそう単純にはいかなかった。
そこで気付いた。、ウチにも盲点があったのだ。
現場の実動部隊は集まった。後方支援、バックヤード、等の、医療、メンテナンスチームも、なんとか確保した。
だが、部隊の屋台骨、裏方の事務員が集まらなかった。
管理局には、二種類の人員がおる。
戦闘もこなす、現場に出る魔道師。
魔力が少なく、現場には出ない、非戦闘員。
そういった人間は、主に、事務系の仕事に就いている。適材適所。当たり前のことや。
では何故、事務員が集まらなかったのか。
ウチには、空のエース。教導隊の鬼の教官。管理局の白い魔王。悪魔。物騒な呼名にことかかない高町なのはがおる。
そのネームバリューたるや、管理局で知らんモノはおらんほどである。
つまり、非戦闘員のみなさんは、びびってしまったのだ。同じ部隊になったらしごかれるのではないかと‥
事務員を探しているときに、六課入りを断った、人間から、そんな理由を聞いた時は愕然とした。
そんな、アホな理由が、あるかと憤慨しても、実際に、事務員は集まっていないのだ。
じゃあどうする?
なのはちゃんは、機動六課のメイン兵装だ。外すわけにはいかん。
私の脳内に思わず、オージンジの音楽が流れた。
そんな時やった。フェイトちゃんからジム君の話を聞いたのは、聞けば、事務系の仕事迄完璧にこなすそうだ。実力もあるらしいし、性格も良いらしい。
これは、神様がくれたウチへのプレゼントに違いない。
ウチはなんとか、ジム君を機動六課に引き込めないかと考えた。
そしてフェイトちゃんの執務補佐ということにすれば、引き込みやすいんちゃうかと考えた。
結果はバッチリやった。実力は想定以上。FWとしても、是非とも欲しい人材やった。しかも事務系の仕事もこなせるのだ。もう絶対離さへんで。
そう。大事に大事に育てるのだ。
だのに。だのにだ。
魔王が、駄々をこね始めた。
オージンジオージンジ。
誰かタスケテー!
私は考えた。
なのはちゃんの希望を聞いた場合どうなるかと。
まずフェイトちゃんが拗ねる可能性が高い。
そして、ジム君が、なのはちゃんに磨り潰されるかもしれない。
あかんやん。デメリットだらけやん。
私は断固として断ることに決めた。
「昼間も言うたやろ。フェイトちゃんが離さへんよ」
「フェイトちゃんにはなのはからお願いしとくの」
あかん。部隊設立前に、隊長二人が仲違いとかやめて!
考えろ。はやて。
こういったトラブルを纏めるのも、上に立つ者の役目や。
「それはあかんよ。なのはちゃん」
私はじっと、なのはちゃんの目を見て、諭す。
「例えば自分の立場だったとしてどうや?」
「え?」
「なのはちゃんに好きな人ができたとする。
それを、ウチやフェイトちゃんがアプローチかけたら、なのはちゃんはどう思う?」
「お話しして、頭冷やすの!」
なんでやねん!なんでや!ウチの親友はいつから、こんなジャイアン思考になってしもうたんや!
「なあ。なのはちゃん。うちら三人は親友や。多分、一生付き合う親友や。親しき仲にも礼儀ありっていうやろ?こういうことに燗しては、お互い邪魔しないようにしていこうや?」
「こういうことって?」
「恋愛事や。人の恋路を邪魔するモノはなんとやらっていうやろ?」
「わかったの。」
ショボンとしながら、なのはちゃんが了承してくれた。
良かった。ちゃんと付き合ってみれば、本当は友だち想いの優しい子なんや。話しても‥わかんないことも、時々、あるけど。
「じゃあはやてちゃん?」
「なんや?」
私はいやな予感を感じながら、尋ねる。
「明日、リミッター外してほしいなー」
なんでや!?ナニがじゃあなのかさっぱりわからんわ!
「出来るわけないやろ!」
「リミッター無しで、本気でやりあいたいの‥」
相手は12歳の子供やぞ!
ホンマニ何言ってるん?
それで、ボコボコにしてジム君が六課入り嫌がったらどうするのん?
誰かタスケテー!オージンジオージンジ!
読んで頂き、ありがとうございますm(__)m