村に戻った翌日。
フェイトさんを連れて、村長の元へ。
「村長~?いる~?」
村長宅のドアをノックしながら、中へと呼び掛ける。
「ん?おお。ジムじゃないか?」
程なく中から、老年の男が出てきた。
「お久しぶりです」
「元気そうで何よりだ。キャロは元気かい?」
「お陰さんで。元気過ぎて困ってますよ」
「はっはっは。そうかそうか‥」
「お前達兄妹は村の元気印だったからな‥いなくなって寂しく思ってる者も多かったんじゃよ?」
「初耳ですね。てっきり清々してるかと‥」
「貧しい村じゃからな‥お前達の食扶持を創るのも、村の年寄りの生き甲斐になっていたんじゃよ?」
「そうですね‥余所者の俺達兄妹を此処まで育ててくれて、ありがとうございます。」
「ん?何。礼ならキングに言いなさい。」
「母さんに?」
「ああ‥キングがどうしても。というので、受け入れた。それだけじゃよ‥」
昔と、変わらぬ優しい微笑みで穏やかに話す村長は、とても口減らしをしているようには思えなかった。
俺は違和感を感じながら、更に会話を進める。
「でも、母さんが言ったからって、よく受け入れてくれましたね?」
「ん?」
「俺が言うのもなんですが、ここはほんとに貧しい村です。村を離れ、外で勉強するとよくわかる。子供とはいえ、俺達二人分の食扶持確保も大変だったんじゃないですか?」
すると村長の目が細まり、俺をじっと見つめる。
探っているような視線を黙って受け止める。
少しの時間が経ち、ふう。と村長はタメ息を吐くと、
「大人になったんだなあ‥ジムよ‥」
ゆっくりとそんな事を言われ、リアクションに困ってしまう。
その目は、まるで孫の成長を喜ぶ好々爺にしか見えなくて、
何となく、居心地悪くなりながら俺はじっと、言葉の続きを待つ。
「もう、今のお前には話しても、良いだろう‥」
「話してもって?」
「少し歩こうか‥」
そう言って、村長は家とは別の方向に歩き出そうとする。
「あ。ちょっと待ってください。」
ここだ。このタイミングだろう。俺はフェイトさんに視線を送り、村長を呼び止める。
「ん?」
「今日来たのは、帰郷の挨拶と、上司を紹介したくて‥」
「紹介?」
「うん。俺の故郷を見たいってことで、一緒に来てて、それで、少しの間滞在するから、それで村長に是非挨拶しときたいってことで‥」
出任せの理由をでっち上げる。
村長との会話は先程からフェイトさんにはオープンチャンネルで開いている。
このでっち上げの理由もちゃんと伝わっているだろう。
そして、フェイトさんがゆっくりと歩み寄って、声をかける。
「初めまして。時空管理局執務管のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです‥」
名刺を渡しながら、ペコリと村長に礼をするフェイトさん。
「これはご丁寧に‥」
「執務官ですか‥」
と、その時だ。名刺を確認しながら、村長の目が鋭くなった。
「ジム君にはいつもお世話になってます‥今回は私のワガママで、無粋にも着いてきてしまいました。つきましては、二~三日滞在するのを許して頂けないでしょうか?」
フェイトさん
が顔を上げたその瞬間には村長の表情は元に戻っていた。
「あ、ああ。ご覧の通り、何もない、小さな村ですが、お時間さえ良ければ、いくらでも居て頂いて結構ですよ」
「ありがとうございます」
「ジムはどうですか?管理局に入局したとは、本人からの手紙で知っておりましたが、なんせこんな村育ちでしょう?ろくな教育も受けさせてやれなんだ‥そんな子がちゃんと働けているのか心配でしてな‥」
やめてくれよ恥ずかしい。
「とても優秀ですよ」
「私の補佐をしてもらっているのですが」
「とても助かってます」
「ほう‥あの悪ガキが‥」
「その、お話詳しく」
そこで俺はもう限界だった。
「ほら。村長。なんか話してくれるんだろ?」
そう言って、俺は村長の背中を押して、その場から離れる。
「あら。残念‥」
珍しく、フェイトさんが悪ノリしている。
と、フェイトさんは悪戯っぽく微笑みながらウィンクをひとつくれる。
そ、そんなので許したり‥
許せるっ!
「はっはっは‥」
そんな俺達を見て、心底可笑しそうに笑う村長。
そんな彼はやはりただの好々爺にしか見えなかった。