将をなんちゃらするならまず馬をなんちゃら。   作:stan

29 / 70
ある兄の事件簿五。

村に戻った翌日。

フェイトさんを連れて、村長の元へ。

「村長~?いる~?」

村長宅のドアをノックしながら、中へと呼び掛ける。

「ん?おお。ジムじゃないか?」

程なく中から、老年の男が出てきた。

「お久しぶりです」

 

「元気そうで何よりだ。キャロは元気かい?」

「お陰さんで。元気過ぎて困ってますよ」

「はっはっは。そうかそうか‥」

「お前達兄妹は村の元気印だったからな‥いなくなって寂しく思ってる者も多かったんじゃよ?」

「初耳ですね。てっきり清々してるかと‥」

「貧しい村じゃからな‥お前達の食扶持を創るのも、村の年寄りの生き甲斐になっていたんじゃよ?」

「そうですね‥余所者の俺達兄妹を此処まで育ててくれて、ありがとうございます。」

「ん?何。礼ならキングに言いなさい。」

「母さんに?」

「ああ‥キングがどうしても。というので、受け入れた。それだけじゃよ‥」

昔と、変わらぬ優しい微笑みで穏やかに話す村長は、とても口減らしをしているようには思えなかった。

俺は違和感を感じながら、更に会話を進める。

「でも、母さんが言ったからって、よく受け入れてくれましたね?」

 

「ん?」

「俺が言うのもなんですが、ここはほんとに貧しい村です。村を離れ、外で勉強するとよくわかる。子供とはいえ、俺達二人分の食扶持確保も大変だったんじゃないですか?」

すると村長の目が細まり、俺をじっと見つめる。

探っているような視線を黙って受け止める。

少しの時間が経ち、ふう。と村長はタメ息を吐くと、

「大人になったんだなあ‥ジムよ‥」

ゆっくりとそんな事を言われ、リアクションに困ってしまう。

その目は、まるで孫の成長を喜ぶ好々爺にしか見えなくて、

何となく、居心地悪くなりながら俺はじっと、言葉の続きを待つ。

「もう、今のお前には話しても、良いだろう‥」

「話してもって?」

 

「少し歩こうか‥」

そう言って、村長は家とは別の方向に歩き出そうとする。

「あ。ちょっと待ってください。」

ここだ。このタイミングだろう。俺はフェイトさんに視線を送り、村長を呼び止める。

「ん?」

「今日来たのは、帰郷の挨拶と、上司を紹介したくて‥」

 

「紹介?」

「うん。俺の故郷を見たいってことで、一緒に来てて、それで、少しの間滞在するから、それで村長に是非挨拶しときたいってことで‥」

出任せの理由をでっち上げる。

村長との会話は先程からフェイトさんにはオープンチャンネルで開いている。

このでっち上げの理由もちゃんと伝わっているだろう。

そして、フェイトさんがゆっくりと歩み寄って、声をかける。

「初めまして。時空管理局執務管のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです‥」

名刺を渡しながら、ペコリと村長に礼をするフェイトさん。

「これはご丁寧に‥」

「執務官ですか‥」

と、その時だ。名刺を確認しながら、村長の目が鋭くなった。

「ジム君にはいつもお世話になってます‥今回は私のワガママで、無粋にも着いてきてしまいました。つきましては、二~三日滞在するのを許して頂けないでしょうか?」

フェイトさん

が顔を上げたその瞬間には村長の表情は元に戻っていた。

「あ、ああ。ご覧の通り、何もない、小さな村ですが、お時間さえ良ければ、いくらでも居て頂いて結構ですよ」

「ありがとうございます」

「ジムはどうですか?管理局に入局したとは、本人からの手紙で知っておりましたが、なんせこんな村育ちでしょう?ろくな教育も受けさせてやれなんだ‥そんな子がちゃんと働けているのか心配でしてな‥」

やめてくれよ恥ずかしい。

「とても優秀ですよ」

 

「私の補佐をしてもらっているのですが」

 

「とても助かってます」

 

「ほう‥あの悪ガキが‥」

 

「その、お話詳しく」

 

そこで俺はもう限界だった。

 

「ほら。村長。なんか話してくれるんだろ?」

そう言って、俺は村長の背中を押して、その場から離れる。

 

「あら。残念‥」

珍しく、フェイトさんが悪ノリしている。

と、フェイトさんは悪戯っぽく微笑みながらウィンクをひとつくれる。

そ、そんなので許したり‥

 許せるっ!

 

「はっはっは‥」

 

そんな俺達を見て、心底可笑しそうに笑う村長。

そんな彼はやはりただの好々爺にしか見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。