指に微かな熱を感じ、見やると、煙草がだいぶ短くなり、灰が落ちそうになっていた。
チッと舌打ちをひとつして、灰皿に乱暴に捩じ込む。時計を見ると、草木も眠る丑三つ時。
眠気を振り払うように、首を振り、パソコンの画面へと視線を戻す。
警ら隊のパトロール地域の選別と、担当者の編制を組んでいた。
魔法技術が発達し、犯罪にも魔法が普通に使われるようになった現状では、普通の武装局員では、一対一では、解決が難しくなっていた。
局員の安全性を考慮しつつ、確実に犯罪を取り締まるには、どうすればいいか?
簡単である。犯罪者よりも、多くの人員で当たればいい。だが、一人二人では足りない。相手が一人ならこちらは三人。およそ三倍の戦力差を以て当たる。
だが、言うは易し行うは難しとはよくいったものである。現在のミッド地上には、そんな人員も予算も無かった。
住民からの聞き込みで、治安が悪化している場所を絞りこみ、少ない人員をなんとかやりくりしながら、だましだましでやっている。
それでも何とか一定の検挙率を維持できていたのは、現場の局員の頑張りに尽きるだろう。
先日殉職した飲み友Aの顔がちらつき、胸がシクリと痛んだ。
手っ取り早く、治安を改善するにはどうしたらいいか。
治安の悪化は、市民の生活面の悪化が著しいからだ。
公共事業等、新しい産業でも造り出せれば、治安はみるみる回復するだろう。
だが、そんな予算は無かった。
「クソッ!海の連中め!忌ま忌ましい!」
もしもの備えが必要無いと言うつもりはない。
だが先ずは、普段の治安の安定化が先だろうに!
評議会の提案はわたりに船でもあった。
次元犯罪者ジェイルスカリエッティ。
マッドじゃなければ間違いなく、歴史に名を残したであろう天才。
ヤツを利用して、戦闘機人の部隊を量産出来れば、現場の局員が無茶なスケジュールで、無茶な特攻をする必要もなく、平和が手に入る。
村の身寄りの無い娘は不憫ではあるが、放置しておけば、村全体が飢え死にしかねない。
双方において悪い話ではない。
恨むなら恨め。
この地上の平和の為ならワシは鬼にも悪魔にもなろう。
むくむくと沸き上がる罪悪感を振り払うように、
今週のパトロール案を完成させる。
と、ノックと共に、オーリスが室内に入ってきた。
「とう‥中将‥まだ執務なされてたのですか?」
「うむ‥今終わったところだよ‥」
ワシは何とか、口角を上げながら答える。
「あまり、根を詰めないで下さい。お身体に障ります‥」
オーリスが心配気に嗜めてくる。
そもそも中将たるワシがする仕事ではない。
だが、自分で言うのもなんだが、こんな仕事、ワシ以外には出来ない。と、本気で思っていた。
予算も人員もなく、治安を守れという、言ってみればただの無茶振り。
それでもワシが何とか、踏ん張ってこれたのは
娘のオーリスの存在が大きいだろう。
娘の未來の為に、地上の平和を守る。父親として当然の事だろう。
それに‥ゼストとの誓いもある。
「お耳に入れたい事が‥」
「なんだ?」
ワシは嫌な予感を感じながら聞き返した。
「例の村の事が機動六課に嗅ぎ付けられました‥」
「なんだと‥!」
あの小狸め。
うーん。レジアス視点を突き詰めると、六課側が、悪になってしまう。
そうならない程度にさっさとシリアスさんにはご退場頂きますかね(´・ω・`)