将をなんちゃらするならまず馬をなんちゃら。   作:stan

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35話

ある昼下がり。俺は八神司令に呼ばれ、部隊長室へと足を運んでいた。

軽くノックをすると、室内からすぐに入室を促される。

「失礼します」

と、中へと身体を滑り込ませると、

そこには先客がいた。

応接テーブルを囲むように、八神司令、フェイトさん。なのはさん。そして、ヴォルケンリッターの騎士の面々。

視線が一気にこちらに向かい、少したじろぐ。

「お待たせしてしまいました?」

俺は不安になり、そう声を掛ける。

指定された時間ぴったりだけどね。

「いんや。すまん。先に少し話し合い始めてたわ。リィン?ジム君にも資料を」

 

「了解でありますぅ」

と、リィン曹長が紙の束を持って、

こちらへと、ふわふわ飛んでくる。

その姿がとても愛らしくて、なんとも和む。

資料を受け取り、礼を言うと、曹長は嬉しそうな顔をして、自分の席へと飛んでいく。

「ちょっとそれ、一読しといてくれるか?」

「了解しました。拝読します」

敬礼と、共に返事を告げ、早速資料を読み込んで行く。

 

これは‥

地上の陸士隊の活動記録?

活動理念と、中期目標?

ふむふむ。

サクサクと、流し読みしていく。

俺がひととおり読み終わったのを確認してか、八神司令が、声を掛けてくる。

「どう思った?」

 

ええ‥どう答えるのが正解なんだろう?

俺が返答に迷っていると、

 

「単純に君の感想が知りたいだけや‥忌憚なく頼む」

 

「は、はあ‥」

 

どういう事だろう‥

それでも返答を渋る、俺に八神司令は更に声を掛ける。

「ここにいるメンバーはウチの大切な家族でほぼ全員身内や。だからどうしても、私寄りの考えになってしまう‥それは嬉しい事でもあるんやけどな?」

と、そう語る八神司令は確かに嬉しそうで、また誇らしげでもあった。

 

「だから、フラットな意見が聞きたいんや‥」

 

「なるほど‥」

 

「では‥僭越ながら‥まだまだ、一読した限りですが、とても‥優しい‥ですかね‥」

 

「優しい?」

 

「はあ?どこがだよ?!」

八神司令が聞き返し、ヴィータ副隊長が声を荒らげる。

フェイトさんやなのはさんも、回答が意外だったのか、目を丸くしてこちらを見ている。

 

「ヴィータ!」

ヴィータ副隊長がおもむろに立ちあがり、こちらへ掴みかかろうとするところを、間一髪で、八神司令が嗜める。

すごすごと、ヴィータさんは席へと座り直す。

 

「その心は?」

 

八神司令が続きを促してくる。

 

「そうですね‥この理念は、誰の為の、何の為の理念か‥ですが」

 

「現場の捜査員の為、平和の為の理念であると、愚考します」

 

「というと?」

 

「力の無い捜査員でも、安心かつ安全に任務を遂行する為に作られている。ということです」

 

「力が無いのは、本人の努力が足りないからだ!」

 

と、シグナムさんが断じる。

俺が困った顔で見ていると、

八神司令もチラリとシグナムさんに目配せをする。その視線を受けて、

シグナムさんはコホンと咳ばらいをひとつして、すまなそうに、佇まいを正す。

 

「ここにいる方達は強者です‥だから見過ごしてしまう‥自分も周りも強いから、出来て当たり前のハードルが上がり過ぎていることに気づかない。ですが、世の中の大多数の人は貴方達の思う出来て当たり前が出来ない人達です‥」

 

言い過ぎただろうか‥?

だがシグナムさんを筆頭に室内の面々は思うところがあるのか、顔を伏せて、考えこんでいる。

「スペシャル。優秀な人員は、称賛されてしかるべきですが、

その人達に依存するようなシステムは組織としてはあるまじき、形だと思います」

 

「貴方方はスペシャルです。それは疑いようの無い事実です」

 

「この理念はそういった、スペシャルでない人達の事を考えて作られた。これが、私がこの理念と活動報告から読み取った事です‥と、愚考しました‥特筆すべきは、この運用案ですね。素晴らしい。のひと事につきます‥此処まで予算も人員も削られてるとは、思いませんでした‥これで、この検挙率は驚愕ですよ?効率良く警らの地域を絞り、編制も完璧です。これを考えた人は、とんでもなく、優秀ですね。」

室内がシーンと鎮まり返ってしまった。

 

「そうか。ありがとう。参考になったわ‥」

 

「恐縮です」

 

「あの‥?そもそも、この集まりはなんなのでしょうか?」

「ジム君の村で見つかった、レジアス中将とスカリエッティの癒着に関しての対策会議や‥」

「は、はあ‥」

「先ずは、管理局を代表して、謝罪を‥この度は、君の村に迷惑を掛けて‥申し訳無い。」

 

と、八神司令がふかぶかと頭を下げてくる。

「ちょっ‥止めて下さい!」

俺は慌てて、八神司令を止める。

「確かに中将がスカリエッティと繋がっていた事は、大問題ですが‥それと、先程の質問がうまく繋がらないのですが‥?」

と、俺が素朴な疑問を口にすると、八神司令はゆっくりと首肯して、こちらへと視線を向けた。

「中将を断罪するべきか‥最近、思うところがあってな‥少し迷ってるんや‥」

迷って?」

フェイトさんが八神司令へと聞き返す。

「せや‥」

八神さんはゆっくりと迷いを話し出した。

「先日の陸士隊が全滅した事件‥みんなも知ってるやろ?」

「ガジェットドローンの新型が出た時の事件?」輸送中のレリックが狙われ、その確保にある陸士隊が

装備も人員も不足した状態で、確保に向かい、新型のガジェットドローンの前に、なす術なく、全滅させられた事件。

隊の隊長はベテランの優秀な、魔道師だったが、危険に晒された部下を庇い命を落としたらしい。

なんとも後味の悪い事件だった。フェイトさんの問い掛けに八神司令は苦々しく答える。

「それや‥その隊長のお葬式でな、棺の前で号泣している中将を見てな‥なんや、この人も私達と変りないやん‥ってな‥」

 

八神司令の言葉に俺達は言葉を失う。

「そう思ってから、中将の事をちゃんと調べてな‥そうして出てきたのが、さっきの資料や‥」

「ジム君が言った事は大体私も納得出来る‥むしろ少々、耳が痛いわ‥」

と、八神司令は苦笑いする。

「じゃあどうするの?」

なのはさんが八神司令へと真っ直ぐ視線を飛ばす。

見逃すなんてありえない。と、言いたげな厳しい表情である。

「決まってるやろ?罪には罰を‥きちんと責任とってもらうで」

そう言った八神司令の笑顔はかなり黒かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
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