ウッ!オロロロロロ‥
両膝に手をつき、肩で息をしながら、自分が吐き出した吐瀉物を見つめながら、考える。
―何時になってらこの地獄が終るのだろうと‥。
酸素をよこせと早鐘を打ち続ける、心臓にゆっくり酸素を送り込みながら、口の中に残る、酸味を唾棄する。口を手で拭いながら、息を整える。
「もうバテちゃったー?後、ニセット残ってるよー?」
頭上から掛けられる、甘ったるい声に苛立ちを覚えながら、震える膝に喝をいれて頭上を振り仰ぐ。
栗色のツインテールを風に揺らしながら、こちらを見ている魔王と目が合った。
その目には微塵も心配の情は無く、どこまでも無感情に、機械的に、こちらの残り体力を見透かそうとしているかのようだった。
終る迄は逃げられない。許されない。それは‥ここ数ヶ月の訓練で嫌と言うほど想い知らされた事実だった。
「ふう‥ふう‥エリオ君‥どんな塩梅?」
私は隣で大の字で倒れているエリオに声をかける。
「はあ‥はあ‥‥限界‥かも‥」
訓練内容は、サーキットトレーニングをやりきるか、途中で魔王に一撃入れられれば終了。
サーキットは陸戦シミュレーターで、山あり谷あり、坂ありの御機嫌なコース。途中でマリカーも真っ青の妨害トラップ等が跋扈する。そして、申し訳程度に時々ガジェットも出てくる。当然全部撃破必須。因みに私には、全部で100kgの重りもついている。亀の甲羅は何とか回避して、アンクルタイプだ。え?良く動けるなって?もちろん軽くブースとかけてます。魔王が言うには、それもトレーニングになるのだとか。
魔王的には、常に戦闘モードで訓練してほしいそうだが、流石にそれは、魔力が保たないので、ご勘弁頂いた。セルゲーム前の悟空と悟飯の修行っぽくしたかったのかもしれない。この世界で、あの世界観に、ついていけるの貴女だけですからーー!ザンネーン!‥‥戦闘民族‥斬り‥!話が逸れたね‥。
ただし、やりきるにしても、二人共でなければいけないのだ。私一人でゴールしたとしても、連帯責任で、周回追加されるのだ。なんだそのクソゲー。
私は予想していたエリオの答えに泣きたくなる。
はあ‥ペア相手が正兄だったらなあ‥
舌打ちを抑えた私を誰か褒めてほしい。
「ごめん‥ね‥キャロ‥はあ‥はあ‥」
息も絶え絶えに謝罪してくるエリオを養豚場の豚を見るような目で見ながら、答える
「はあ‥はあ‥いいから‥体力回復に‥集中して‥」
「うん‥ごめんなさい‥」
ホンとだよ。もう何周お前の分肩代わりしてると思ってるんだよ‥
「このままじゃ‥ジリ貧‥だね‥なんとか、なのはさんに‥一撃入れよう‥?」
これ以上、体力を減らしたら、クリア自体が難しくなる‥
「ど、どうやって‥?」
どうやってじゃねーよ。
お前も考えろよ。
再び、養豚場の豚を見る目で彼を見る。
「はあ‥はあ‥キャロは‥凄い‥ね‥はあ‥」
「はあ?」
「こんなに‥キツい訓練なのに‥きちんと‥クリアを‥目ざしてるんだもん‥」
ぷちっ。
私は激怒した。
キャロには弱い者の気持ちはわからぬ。
ただ、甘ったれには敏感であった。
何としても、この甘ったれを叩き直さねばならぬ。
私はエリオの服の首元を掴んで起こす。
「何時まで甘ったれてんだ?男だろ?!」
私の態度に、面食らったのか、エリオはされるがままで、眼を見開いている。
「力が無いまま、現場に出たら、死ぬかも知れないんだぞ?!お前が死ぬだけじゃない!一緒に闘う仲間も死ぬかも知れないんだぞ!この間の部隊が全滅した事件も知ってるだろ!この訓練だってそう!私達がきちんと無事に帰ってこられるように、強くしようとしてくれてるんだよ!?」
「更に言うなら、私達が訓練を受けられるように、ジム兄が私達の事務仕事を肩代わりしてくれてるんだよ!この訓練中に、私達が無駄に過ごして良い時間なんざ一分だって無いんだよ!」
一息に思いをぶちまけてしまった所で我に帰る。
いけないいけない。キュートなキャロちゃんのイメージが。養豚場の豚‥いや、エリオどころか、
魔王迄ポカンと、口を開けて、こちらを見ている。
こっちみんな。
「ごめん‥キャロ‥そうだよね‥僕が間違ってたよ‥!」
お?エリオ‥覚醒?
よし。その勢いで逝ってこい。
「良し‥!一撃は僕が入れる!」
おう。やったれや。
「キャロ‥隙を作ってくれる‥?」
ズコー!覚醒しても、豚は豚だった。
でもしゃあない。それが1番現実的だしね。
ほな。いっちょやったるか。
――愛魄召還!」
私は戦闘モードへとチェンジする。
エリオもストラーダを振り回して、ポーズを決める。
向かう先には、何処までも無表情な魔王が降り立った。
これで失敗したら、体力も魔力も尽きるだろう。
こうして、私達の背水の陣が始まる。パートナーが頼りなくて、泣きたくなるけど。
久しぶりのキャロメインの話なのに、ゲロはかせたり、エリオを豚扱いしたりと。やりたい放題すみません。