「シューティングレイ!」
私の砲撃魔法はジム兄にあっけなく盾で防がれる。流石。ジム兄。
さすおにである。
ジム兄は私の不安に気付いてる。
私の過去のトラウマといっても良い。部族を追われた想い出。黒竜の巫女と呼ばれ、何をしたわけでもないのに、村を追放された想い出。
人間は弱いから、自分の理解出来ないモノを排除しようと動く。
まあお陰で、ジム兄に出会えたのだから、人生はわからない。ジム兄のいるこの村に来てから、
私は幸せだった。
ジム兄のお義母様のキングさんもとても良い人。
時々、ダジャレで空気を凍らせるけど、それを差し引いても、私は彼女が大好きである。
彼女とジム兄に家族としての愛を貰い、
フリードに続いて、新しい友達も増えた。
見事な美しい翼を生やした、美しい彼女がニコリと微笑む。
愛のアルカナ。パルティニアスこと、パルちゃんである。
《あなたが、愛を忘れない限り、私はあなたと、共にあります》
うん。ジム兄がいる限り、私は愛を失う事はないよ
《そうですね。貴女のジムへの愛はとても心地好いです》
えへへ。パルちゃんたら、照れちゃうよ。
そんな中、ジム兄が
槍を振り上げる。
「フリード!業火の攻刃!」
すると、ジム兄の槍が焔に包まれる。
フリードとジム兄の息はピッタリみたい。
二人の仲がいいのは、私にとっても喜ばしい。「紅墜閃!」
と、ジム兄が私に向かって突進してくる。
はあ。ジム兄‥カッコいいなあ。
フリード。ちょっと。仲良すぎじゃない?
私は目を細めて、槍、そして鎧となったフリードを睨む。
そこで私は気づいてしまう。
ジム兄とフリードが力を合わせて、私と戦っている?
ジム兄の一番は私だよ?その辺ちゃんとわかってるのかなあ?ねえフリード?
すると、フリードが怯む気配が伝わってきた。
怯むだけじゃなく、槍自身が勝手に動き、明後日の方を向く。
ふふふ。可愛い子。
さて。隙だらけのジム兄に、私の愛をぶつけるとしよう。ね?パルちゃん。
《ふふ。キャロは本当にジムさんが好きですね》
パルちゃんたら。からかっちゃ‥やだよ。
私は頬が熱くなるのを感じながら、
愛を込めて、魔法陣を展開させる。
「すっごい‥!」
ぶんぶんと右腕を回しながら、愛を右腕に充実させていく。
「愛の!鉄拳パーーンチ!」
足元に魔力を爆発させ、その勢いでジム兄へと突っ込む。
最初ジム兄は盾で防ごうとしたが、
私の愛を受け止めない?
そんなのジム兄じゃないよね?
ねえ?フリード?
そしてジム兄は盾を私の鉄拳の軌道上から外してくれた。
そうして私の鉄拳は無事にジム兄の頬を捉える。
ちゃんと受け止めてくれるジム兄大好き!!
やっぱり私の居場所はここなんだと安心する。
バウンドしながら吹っ飛ぶジム兄に私は頬がにやけるのをこらえながら、
「ジム兄。大丈夫?」
「当たり前田のクラッカー!」
そう言って、すぐさま立ち上がるジム兄はやっぱりカッコいい。膝が笑ってるのも素敵。
私の不安に気付き、それで、私の居場所たろうとしてくれているのだ。こんな純粋な愛をぶつけられたら、私はもうメロメロである。
もう私の全部をジム兄にあげていい。
ジム兄への愛しさと心強さと切なさがハキュンドキュンしていると、突如邪魔者が現れた。
時空管理局?執務官?ナニソレ?おいしいの?
突如現れた金髪ツインテールのその女とジム兄は、私そっちのけで見つめ合っている。
は?
《キャロ?》
どうしたの?パルちゃん?
《言いにくいのですが、ジムさんから、あの女性へ、尋常でない、愛が向けられています》
は?
意味がわからないよ。
そんなの絶対おかしいよ。
私のソウルジェム濁っちゃうよ。
パルちゃんは愛のアルカナである。
パルちゃんが間違える事はないだろう。
認めたくない事だが、ジム兄はあの女に懸想しているらしい。
なんだ。簡単だ。あの女を消せば良いんだ。
キャロちゃんマジ天才。
待ってて。ジム兄。
今その女を排除して目を覚まさせてあげるからね。
かつてない程に愛がみなぎっているのを感じる。
「すっごい~‥!」
「愛の!鉄拳パーーンチ!」
いつもよりも加速力のある突進で、私はその女に向かう。
貫けええー!
ドムン!
あれ?ウソでしょ?この殴り心地の好い感触は‥
私が恐る恐る目を開けると、そこには、あの女ではなく、ジム兄がいた。
は?
え?今空間飛んだ?
ちょっと待ってよ。だってジム兄。今、武装解除してて、生身なんだよ‥‥。
ゆらりと、ジム兄が態勢を崩す。
「ジム兄!」
私は慌てて、ジム兄を支える。
と、ジム兄はポンっと私の頭に手を乗せ、
「ばーか。何て顔してんだ。この程度で、兄ちゃんが、どうにか‥なる、とでも‥っぐっ‥」
そこで、ジム兄は後ろに倒れる。ジム兄を支えようと、伸ばした私の手は空を切る。
そして、ジム兄はあの女に抱き締められていた。
は?
この女‥よわっているジム兄に何を‥!
すると女は、ジム兄を横に寝かせた。
今度は何をする気なの⁉️
よく見ると、ジム兄はおびただしい量の鼻血を出していた。
ちょっと!そんな状態で寝かせたら‥!
みるみる、ジム兄の顔色が悪くなってきた。
鼻血が気管に詰まってしまったのだろうか?
とても苦しそう。
この女‥!
すると、次の瞬間には、女はジム兄にくちびるを重ねていた。
は?
しまったー!これが狙いだったのか!
汚ない!流石時空管理局!汚ない!
危なかった。
昨夜、しといて良かった。
守られた。ジム兄のファーストキスはこのキャロちゃんである。良かった。
しかし、この女。一体何時までしている気なのか。そうこうしているうちに、ジム兄が更に鼻血を噴き出した。
「ぱよ~~~~‼️」
私は思わず威嚇の声がもれてしまう。
すると、ジム兄の意識が戻り、私へと、手を伸ばしてくれる。
ジム兄に撫でられるのは好き。
どんなに嫌な事があっても、あの優しい手で撫でられると、とても癒されるのだ。
ジム兄に撫でられるのが好き。
どんなに寂しい時でも、あの優しい手で撫でられると、自分の居場所はここだと安心できるのだ。
ジム兄に撫でられるのも好き。
ジム兄の優しい笑顔、声。全てが好きだけど、
あの暖かい手で撫でられると、全てどうでも良くなってしまう。
これが噂のなでぽなのかもしれない。
そんなジム兄の手を待ち焦がれ、私は待ちきれないとばかりに、頭を寄せる。
すると、なんということでしょう。
「君!あまり喋らないで!」
あの女があろうことか、私へと伸ばされたジム兄の手を遮るように、私とジム兄の間に身体を割り込ませやがったのです。
は?
良いでしょう。その宣戦布告。確かに受け取りました。
「ん~?キャロ?なんか頭やわらかいな~?」
ジム兄はあの女の忌ま忌ましい胸を撫でながら、間の抜けた声をあげます。
ブチィッ!
久びさに切れちまったよ!こんちくしょう。