心臓の鼓動が何時もより高く跳ねている。
ジム兄さんは言った。
落ちるなと。僕なんかの力でも必要なんだと。
子供の頃から親は居ず、来る日も来る日も訳の解らない実験の日々だった。
楽しい事なんかひとつも無かった。
生きている。というより生かされている。という方が正しかった。
そんな僕を外に連れ出してくれたのは、フェイトさん。
外に連れ出して、僕に家族をくれた。
フェイトさんは母親代わりと思ってるみたいだけど、僕的には大きいお姉ちゃんといった感じだ。
人並の生をくれたという意味では確かに母親?に近いかも?
そしてキャロ。
こんな事言ったら多分怒るけど、小さくて可愛い。まるで妹のように思ってる。
多分キャロは自分がお姉ちゃんだと言うと思うけど。
そして、ジム兄さん。
とても優しくて、頼り甲斐があって、強くて‥面倒見も良くて、父親って、こういうものなのかな。なんて‥恥ずかしくて、本人には絶対、言えないけど。
全員‥愛すべき、家族だ。
僕の生きる理由になってくれた。
そんなジム兄さんが僕を頼ってくれた。
こんなにうれしい事があるだろうか。
チームの事を頼まれた日は今までの人生で1番嬉しかった日で‥。
それからはキャロに頼んで、訓練も目一杯頑張ってきた。
‥だから、ジム兄さん‥見ててください。
僕‥頑張るから‥!
模擬戦開始の合図と共に、路地の入り口からティアナさんが一人で走ってくるのが見えた。
‥ジム兄さんの予想通りだ。
キャロが射撃魔法を放ち、その光線がティアナさんを撃ち抜くと、ティアナさんの姿はかききえた。
その後ろから、スバルさんとギンガさんが走ってくるのが見えた。
キャロに視線を送る。
キャロも視線を合せ、首を振る。
まだ早いということだろう。
入り口の死角では間違い無く、ティアナさんが隙を伺ってる筈だ。
と、キャロから念話が飛んでくる。
《後50㍍で同時に仕掛けるよ!》
《了解!》
《今回の接敵は本命じゃないから、無理はしないこと!いのちだいじにでいくよ!》
《わかってるよ!》
そうこうしてるうちに、スバルさん達が迎撃ポイントに差し掛かる。
《ゴー!》
キャロの合図で二人同時に飛び出る。
すると、僕の方に近かったスバルさんがマッチアップと思ったら、キャロ側のギンガさん迄キャロを無視して、僕に向かってきた。
‥ちょっ!?
「エリオ覚悟ー!」
スバルさんの右ストレートをストラーダで受け流しながらかわすと、すぐにギンガさんの右回し蹴りが向かってくる。
「くっ!」
穂先を地面に突き立て、柄の方を抑えて、
ストラーダで何とか受けた。
‥ あれ?
その後もスバルさんとギンガさんの同時攻撃は続く。
何発か、かわしきれずに食らってしまう。
劣勢だ。
でも‥僕は‥不思議な感覚に囚われていた。
世界がスローモーションのように見える。
ーキャロの拳の方が重い!
ーキャロの蹴りの方が鋭い!
ーキャロのコンビネーションの方がエグい!
ー見える!
ー僕だってやれるんだ!
二人掛りで押しきれない、スバルさん達二人に焦りの表情が浮かぶ。
《エリオ!退くよ!ティアナさんがだんだん近づいて来てる!》
キャロの念話にハッと見れば、ティアナさんのツイテールが岩の陰から覗いていた。
スバルさんが殴り掛かってきている。
ー遅い!
僕はストラーダを地面に突き立て、柄を支点にクルリと回り、スバルさんの拳をかわしながら、カウンターの回し蹴りを当て、ティアナさんの方に蹴り飛ばす。
スバルさんが吹っ飛んだところで、
スバルさんの身体の影になるように退く。
チラリと後ろを見ると、ティアナさんの悔しそうな顔がスバルさんの影から見えた。
退いてる最中に、キャロが並走してきて、
「やるじゃん♪」
と、声を掛けてくれた。
キャロに褒められたの‥初めてかもしれない。
うれしい‥。
緩む口角を必死に引き締めようと試みるが、
「何、ニヤニヤしてんのさ‥」
無理ダッター。
「だって‥キャロに褒められたの‥初めてだよ?」
最早取り繕うのは諦めて、
緩む口角もそのままに、思った事を口に出した。
「そうだっけ‥?‥うん‥少しは‥頼り甲斐出てきたかも‥ね?」
と、キャロも苦虫を噛み潰したような表情で更に褒めてくれる。耳が真赤だ。
「キャロ‥?照れてる?」
「て、照れてねーし!照れたらたいしたもんだし!」
と、そっぽを向いてしまった。
なんだ。可愛い所もあるじゃないか。
更に走り続けて、ジム兄さんの姿が見えてくる。
「エリオ‥良くやったな‥!」
スレ違いざまに、ジム兄さんのそんな言葉が聞こえて。
僕は嬉しくて、顔が熱くなってしまった。
そして思わず両拳を握り締め、走りながらガッツポーズを取ってしまう。
「いや‥この反応の差はなんか納得いかないんだけど‥」
と、キャロの呟きが聞こえたけど、意味はわからなかった。
後、ひとつでこのシーン終わらすつもりですm(__)m申し訳ない。