予定より、魔王樣が粘ってくれたもので‥。
エリオとキャロとスレ違い、追走してくるギンガさん、スバルさんと正対する。
二人が俺を視界に治め、エリオとキャロから意識を切り替えた所で、エリオとキャロが少し離れた岩影に身を隠す。
俺とスバルさんの間にギンガさんが身を滑り込ませ、
スバルさんを下がらせる。
「二人掛りじゃなくて良いんですか?」
「言ったでしょう?妹に良いとこ見せるのは私だと‥」
なんて‥大真面目に言うものだから、
俺はつい苦笑を漏らしてしまう。
それが気に障ったのか、ギンガさんはこちらを憎々しげに睨み、構えを取った。
「良い機会です‥どちらがより妹を愛しているか、決着を付けましょう!」
「貴方の妹愛を見せてみなさい!」
「見せてやるさ!‥まあ‥その時には、あんたは‥八裂きになっているだろうけどな!」
「どうしよう‥二人のノリに全くついていけない‥」
ローラーが地面を擦る悲鳴を轟かせながら此方に急加速で肉薄してくるギンガさんの右ストレートを右手で掴み、受け止める。
殺しきれない威力に身体が少し後ろに圧される。
この細い腕のどこにそんな力が秘められているのか。そんな驚きを仕舞い込みながら、空いてる左腕を叩き付ける。‥《トライシールド!》
が、同じように受け止められてしまう。
まさか受け止められるとは思わず、軽く目を見開くが、
見れば、ギンガさんは受け止めた手に小さなシールドを張って、俺の拳の威力を相殺させているようだった。
瞬間、瞬間での判断力に歴戦の猛者の実力を感じ、
戦慄する。
その後、お互いの拳を受けとめ、掴んだまま、押し合い、引き合い、拮抗していると、
こ、これは‥千日戦争‥?!」
と、スバルさんが驚愕していた。
随分懐かしいネタ知ってますね。
と、俺が苦笑を漏らした瞬間、ギンガさんの眼が光った。
《wingroad!》
ギンガさんの思惑に気付いた時には、俺の顎にギンガさんの膝が肉薄していて、
俺は掴んでいたギンガさんの右拳を横に引き、何とか軌道を変えることに成功した。
そのまま、wingroadに乗って離脱するギンガさん。
揺れる双丘に目を奪われる。
そんな俺の懐にスバルさんが飛び込んできた。
「隙ありっ!」
「なんのっ!」
俺は更に1歩近付き、スバルさんの拳の出所を潰す。
勢いを殺された拳は力を失い、簡単に止められる。
その反動で双丘も揺れる。
ん~。感謝っ♪
いかん。おっぱい姉妹の暗器(乳揺れ)
がいちいち俺に効果がばつぐんである。
その後もスバルさんの乳揺れを凝視しながら攻撃をいなしていると、
背後から戻ってきたギンガさんが襲い掛かってきた。
「ちいっ!」
姉妹の息の合ったコンビネーションは当たらないようにいなすのが精一杯で‥
「スバルっ!合わせてっ!」
「うん!ギン姉っ!」
ギンガさんの掛け声に合わせて、スバルさんが魔力を溜める。
ヤバい。
このまま留まるのは危ない。
俺は上へと跳躍する。
一先ずの緊急避難である。
ひと息つく暇もなく、跳躍㊥の俺の横に二条のwingroadが開通する。
油断無く構えるが、
視界の端に動く影。
苦し紛れな跳躍だったが、とうやら僥倖だったらしい。
すっかり忘れてましたよ‥ティアナさん。
そう‥。あのまま、姉妹の相手をしていたら、ティアナさんに撃たれていただろう事は想像に難くない。
偶然ながら、ピンチを脱せていたのだ。
だが、だからといって、状況は好転しない。
スナイパーの存在に気付いただけで、
ナカジマ姉妹の猛攻は続いているのだ。
風の道を滑走してくる姉妹を見据えながら、考える。
姉妹の攻撃は鋭さを増してくる。
スナイパーの存在を気にしながら、何時までも、相手をするのは不可能に思えた。
ティアナさんの射線を意識しながら、体勢を入替えながら、考えていると、スバルさんが飛び込んできた。
位置、角度共に、ディモールト!グッド。
スバルさんの右拳を受ける寸前に、軽く力を抜く。
踏ん張りを無くす事により、
簡単に後ろに吹っ飛ばされる俺。
そんな俺を追撃しようとティアナさんが姿を見せる。
狙い通り。
「プラズマランサー!」
振り向きざまに、高速砲を放つ。
ティアナさんの眼が驚愕に拡がり、
かわすか、そのまま俺を撃つかの一瞬の逡巡。
直ぐにかわす事を選択していれば、
かわせたかもしれないが、
その一瞬の迷いは残酷にかわす選択肢をかきけした。
かわせないと判断したティアナさんは魔法を発動しようとするが、
「‥パンツめくれ‥!」
発動する前に俺の魔法は着弾した。
《デデーン!ティアナー!アウトー!》
無感情なシステムボイスがティアナさんの撃墜を告げる。
「ティアー!」
スバルさんがティアナさんに慌てて駆け寄る。
隙だらけだ。
俺はそーっとスバルさんの背後に忍び寄る。
そして、拳を振り下ろした。
「来ると思ってましたよ‥」
と、俺の拳を受けとめているギンガさんに声を掛ける。
「スバルはやらせません!」
「美しい姉妹愛ですね‥だが‥無意味だ」
俺の答えに理解不能という表情を浮かべるギンガさん。
‥そんなギンガさんの後ろで倒れるスバルさん。
「そんな‥なんで‥」
童動揺するギンガさんが視界をさ迷わせると、
そこには無表情に拳を構えるキャロとエリオが立っていた。
そう。ティアナさんが堕ちた時点で、二人が潜む意味は無くなった。
不意を撃てるなら即撃つのみだ。
《デデーン!スバルー!アウトー!》
そして再び、システムボイスが撃墜を告げる。
「さ?ギンガさん3対1じゃ流石に貴女でも勝ち目は薄いでしょ?降参してもらえると助かるんですが‥」
「3対1‥?笑わせてくれますね‥」
なんだ?この余裕‥?
‥しまっ‥!
「キャロ!今すぐにギンガさんを倒すぞ!」
「えっ!?‥はいっ!」
俺とキャロが前後から同時に襲い掛かる。
shellshield!》
ギンガさんを包むように魔法のバリアが張られる。
悪いけど時間稼ぎなんてさせない。
俺の拳でバリアを破壊し、破壊した箇所からキャロが潜り込み、ギンガさんの腹へと、ブローを叩き込む。
「ぐっ‥妹にやられるのなら‥我が妹生に一片の悔い‥無し‥ガクッ‥」
《デデーン!ギンガー!アウトー!》
そして再びシステムボイスが響く。
何とか間に合った‥。
と、ひと息つくと、
「あれあれー?みんなやられちゃったのー?」
魔王‥降臨‥である。
そう。ギンガさんの余裕はこれだったのだ。
時間を稼いで、魔王樣が来れば3対2だろうと全てひっくり返る。
「さあ‥なのはさんもちょっと遊んでもらおうかナー‥」
お断りしたい‥。
「御相手お願いします!飛んで火に入る夏の虫ですよ」
ごねても無駄骨なのはわかっている。
覚悟を決めるしかないのだ。
魔王からは逃げられないのだから。
だから精一杯の勇気の言葉で以て自分を奮い立たせる。
「‥へえ?‥まさか‥だけど‥3対1なら勝てる‥なんて幻想‥抱いてないよね?」
怖いんですけど‥。
殺気というか、覇気が漏れていて、言葉のひとつひとつが、俺達の戦意を奪っていく。
答えない俺達をじっくり睨みながら、
「ふふーん。ならばその幻想をぶち壊す!‥」
と、拳を掲げるなのはさん。
チラリと、俺は俺の周りを見る。
死屍累々‥スバルさん達が倒れている。
「場所を‥変えましょう?」
「必要ある‥?」
「え‥?」
いや、流石に倒れている人達の傍で戦うのは色々危ないでしょう?
「そんなのいいからさ‥早く‥闘ろうよ‥」
アッ!なんか変なスイッチ入ってる。スゴいワクテカしてらっしゃる。
俺が煽ったから?
やっぱりわかってなかったの?
ジム君‥もしかしてまだ‥自分が死なないとでも思ってるの?」
えっ?俺死ぬの?
ちょっとなのはさんキャラぶっ壊れ過ぎじゃないですかね?
ごめんな。キャロ、エリオ。やっぱここ死地だわ。
「行くぞ!フォーメーションJだ!」
「「了解ぃ!」」
なけなしの戦意を振り絞り、叫ぶ俺に同調してくれるキャロとエリオ。
先ずは俺が魔王に突撃。
俺の身体に隠れるように
キャロとエリオも追走しているはずだ。
行くぜ!家族ならではの三位一体のフォーメーション。
先制の俺の右フックは簡単にいなされ、魔王はそのまま上へと跳ぶ。
次いで、エリオがそこに向かって、ストラーダで突撃。
接敵の瞬間、エリオが軽く頭を下げる。
そのスペースを狙い、キャロが砲撃。
「小賢しい!」
キャロの砲撃を軽く頭を傾けてかわす魔王。
エリオのストラーダは指一本で止められている。
まだまだぁ!
エリオに反撃しようとする魔王の背後から、
プラズマランサーを放つ。
魔王はそれを一瞥もせず、かわす。
だが、ここまでは織り込み済み。
かわされたランサーはエリオへと向かうが、
エリオにもこれは話してある。
エリオはストラーダを振って、ランサーを魔王へ向けて弾き返した。
流石の魔王もこれは予想外らしく、足を止めて、シールドを張る。
続けて、エリオがそこへと突撃する。
キャロのブーストもあり、威力は十分。
勿論俺も背後から突撃。
流石の魔王にも焦りの表情が浮かんだ。
足を止めて、シールドを張らせて、前後から超威力の挟撃。
普通なら‥これでチェックメイトである。
でも多分魔王なら‥!
魔王はゆっくりと、エリオへと近付き、
突撃で身を低くしたエリオの上を飛び越え、
エリオの背中を軽く蹴り、エリオの突撃をかわしてみせた。
「僕を踏み台にしたっ!?」
飛び越えた後にお土産代りに数十の魔力弾をエリオへと放っていく魔王。
やっぱりか。
でも‥ここまでは読んでいる。
魔王を過小評価なんてしちゃいない。
過大評価でもまだ足りない。
だからこそ、魔王は魔王なのだ。
「とにかく‥すっごい‥」
エリオを飛び越えた魔王がビクッと下を見る。
そこには、既にチャージを完了したキャロが構えていた。
―そう。ここまでは想定内。
魔王が射程内に入ると同時にキャロの超必殺が発動した。
「‥ハートフルゥ!パーンチ!」
タイミングはバッチリ。
魔王の回避行動、予想移動地点、
状態。全てを計算しつくして、
その通りに事を運んだのだ。
‥ ヤッちまえ‥!
キャロの拳と 魔王のシールドが激突した。
爆発が二人を呑み込み‥
なのはさん撃墜のアナウンスが流れない‥?
ウソだろ‥?あれで失敗したのか‥?
油断なく、煙の中心へと眼を凝らす。
そこから現れたのは‥
キャロの右腕を掴み、頭上迄腕一本で掲げた魔王樣だった。
「‥ジム兄‥ごめん‥なさ‥ぃ」
キャロのか細い声が聞こえる。
掴まれた腕が痛むのか、
顔をしかめながら謝る、愛する妹の姿に‥俺は‥
自分への怒りで頭がどうにかなりそうだった。
作戦が甘かった。
魔王を相手にするには足りなかった。
戦い前の想像通り、俺は‥妹を死地へ送り込んだのだ。
ラスアタは俺が行くべきだった‥
《ジム兄‥!》
不意に届いた念話にはっとなる。
《諦めちゃダメだよ!私はまだ‥やれるよ!》
キャロの念話に消えかけていた心に焔が灯る。
《すまん‥情けないとこ、見せた‥》
《ううん‥それより、さっきの攻撃だけど、少しはダメージ入ってる筈‥だから、きっともう少しだよ!》
《二対一ならまだ希望はあるよ!》
《そうだな‥!いっちょやってみるか‥!》
「作戦会議は終わった?」
唐突に魔王が口を開き、俺達の思考はフリーズする。
どこまでこの人の掌で踊ればいいのか‥?
「さっきのは結構楽しかったな♪」
「また、楽しませて‥ね!」
魔王が言い終わる前に俺は飛び掛かる。
それを読んでいたかのように魔王が左腕を一閃した。
キャロをこちらにほうり投げたのだ。
俺はキャロを受け止めようと両手を開くが‥
キャロの視線を受けて、止める。
一瞬の視線の交錯。
それだけで、
俺は理解したのだ。
キャロがこちらに向いながら、左腕を横に差し出した。
俺もそれに合わせて、左腕を構える。
それを見てキャロはフッと微笑むと、
お互いの左腕をぶつけ、肘を支点にぐるりと回転。
‥そして、その勢いのままに、お互い反対方向へと、飛び出した。
「愛の!鉄拳パーーンチ!」
俺はその後ろから更にプラズマランサーを放つ。
そして、キャロは砲撃が当たる寸前に頭を下げた。
魔王の死角から突然高速砲が魔王を狙う。
時間差でキャロの突進技も迫っている。
その時魔王は、視線を泳がせながら、キャロを見つめていた。
が‥フッと微笑むと、ランサーを片手で弾き、そのまま、キャロを迎え撃った。
再び、爆発。
《デデーン!高町ーアウトー!》
数瞬後、流れたアナウンスに俺は雄叫びをあげる。
「ヨッシャー!」
「あーん!耐えきれると思ったのにー!くやしー!」
そして、対照的に地団駄を踏む魔王。
‥確かに、模擬戦のシミュレートのHpにより、撃墜判定は出たが、魔王樣自体はまだピンピンしているように見える。
そう。模擬戦じゃなければ、落とせていないだろう。
ほんとどんだけだよ。
何でやろ。スタンの妄想のなのはさんが強すぎる。
もうなのはさんとは闘わせません。
長くなるから‥(笑)
本当はね‥キャロの一発目のハートフルパンチで終わる予定だったの。
なのに、いざ書いてみたら‥
これが遅くなった理由です。以上、言い訳でした。スマソm(__)m