シリアスは苦手なんですよね(´д`|||)
ダンッ!!
机に叩き付けた拳がジンジンしている。
音に驚いたのかオーリスが訝しげに此方を見てくる。
「中将‥如何いたしました?」
「如何も何もないわっ!」
ワシは報告書をオーリスに見せる。
それを見たオーリスは暫し眼を瞬かせ、
紙を受け取ると、読み込んでいく。
そして、顔も険しくなっていく。
「これはこれは‥あの若者‥本物でしたか‥」
そう。報告書はジムとかいうあの若造が試験を問題無くクリアしたという報告書だった。
「ナニが本物だ!『父さん?』‥はい‥」
突然挟まれる冷たい声にワシは言葉を呑み込む。
「私‥言いましたよね?」
「今回は自重して下さいと‥」
うっ‥。
娘が恐すぎて生きるのがつらい。
「い い ま し た よ ね!?」
「はい‥」
これはあかん。こうなったオーリスには勝てた試しがない。ワシは早々に白旗をあげる。
「こんな無茶をして!相手につけこまれるような隙を与えて!ナニがしたいんですか!?Mなの?!どMなの?!」
「うっ‥大丈夫だ‥バレなきゃ問題ない(キリッ)」
「バレるに決まってるでしょうが!相手はクロノ提督が推薦してるんですよ?!」
オーリスの剣幕にワシはたじたじである。ワシ‥中将なんだけど‥いや、その前に父親なんだけど‥
「ふむ‥しかし、本物だというなら良いでしょう‥」
と、眼鏡を光らせるオーリス。
「ど、どうするつもりだ‥?」
「この件は私に任せて貰います‥」
え?それ‥答えになってな‥i私に任せてください」
有無を言わせぬトーンでピシャリと言葉と供にキッと睨まれて、ワシは沈黙する。
ふええ‥娘が怖いよう‥
◆◆◆
「やあ。クロノ。」
「すまないな。ロッサ」
自室に訪ねてきてくれた、旧知の友人に相好を崩しながら、ソファを薦め、僕も腰を下ろす。
「それで、どうだった?」
「ああ。バッチリチリバツ」
「僕の無限の猟犬達にかかれば、簡単なお仕事だったよ‥」
「仕事が早くて助かるよ」
「めったに無い親友の頼みとあれば‥ね」
そう。めったにない連絡を受けたのは、僕も一緒だ。
突然のなのはからの連絡‥いや、クレームに近かったが‥せっかく楽しみにしてたのにだの、全く要領を得ない文句を延々聞かされ続け、漸く、ジムの昇級試験で何か問題があったと察し、直ぐにロッサに連絡を取り、調査してもらっていたのだ。
と、ウィンクをひとつよこすロッサに苦笑を溢しながら、
今回のようにいつもヤル気を出せばシスターシャッハの心の安寧も少しは保たれるだろうに。
この親友は‥言ってはなんだが‥余り、勤務態度がよろしくない‥。だがひとたびヤル気を出せば、このように即座に結果を出す優秀な男なのだ。
昼行灯なこの男が本気を出す事をいとわない相手に認定されていることを誇らしく思うと同時に、
いつも頭を悩ませているシスターシャッハに申し訳無く思う気持ちが半半で、大変めんどくさい。
「それで、結果は?」
「これさ♪」
ロッサから報告書の束を受け取り、目を通していく。
‥ナカジマ三佐が加担していたとは‥‥むう‥三佐の心情は、理解できない事もない‥。
三佐が加担したことを明るみにしたり、
三佐を罰するのは、はやてに動揺を与えてしまうかもしれない‥。
なんせ三佐ははやての師匠だ。
おまけに率いる部隊での部下達からの信頼も篤い。
三佐を罰したら、地上部隊の士気が下がるのは避けられまい。
今陸の状況を悪くするのは悪手だろう‥。
三佐には、訓告程度が妥当だろうか。
問題は中将か‥。
何でこんなことをしたんだか‥。
まあ‥言うまでもなく、ぼくら、ハラオウン家に対する嫌がらせだろうな。
こちらも対処が難しい。
今、レジアスを落とす訳にはいかない。
間違い無く、陸が荒れるからだ。
海の理念が全次元世界の安定ということで、安定が守られるなら陸はどうなってもいい。なんて悪しざまににいわれたりするが、一部間違いではないんだが、少なくとも僕と母さんは違う。
ミッド地上も大事だと考えているし、ミッド地上の平和を蔑ろにするつもりもない。
しかし、解せない。あの慎重なオーリスが付いてて、こんな軽はずみな行動をとるとは。
しかしジムには、申し訳無い事をした。完全に管理局の対立のとばっちりを食わされた形だ。
それでもクリアしたのは流石といったところか。
頼もしくて結構な事だ。
今回のような件はあってはならないことだ。
明るみに出れば、レジアスを断罪しないわけにはいかなくなる。
しなければ、全管理局員の士気を下げる結果になるだろう。
かといって隠蔽したら、アイツがどうでるか‥
ったく。レジアスもせめてアイツを巻き込まないでいてくれれば良かったのに‥
今回の件は間違い無くレジアスの独断専行だろう。
陸と海の対立に関しては、直ぐにどうにかできる事でも無いため、今まで、問題を先送りにしてきてしまったが、今回のような件が起きるなら一刻も早く解決に向けて動くべきかもしれない。
‥頭が痛い。
一度、ジムを含めてオーリスと話し合うか。
こんなドロドロした裏側を見せたらジムに幻滅されるかもしれないな‥。
《母さん‥厄介事です》
《わかったわ‥今晩は早めに帰ります‥ぇ~!?リンディ帰っちゃうのぉ~!?ちょっと‥レティ‥飲み過ぎよ?‥久しぶりの親友との飲み会より息子を優先するなんて‥女の友情って‥本当に儚いわぁ~!びえぇえ~ん!》
どうやらレティ提督と晩酌を供にしていたらしい‥。申し訳ない。
レティ提督は、普段は聡明な方なのだが、
お酒が入ると‥少々‥‥やっか‥ゲフン、いや、大変に、なる。それ以外はとても尊敬出来る御方なのだが‥ほんとうだよ?
母に連絡を入れた後、とりあえず解散する。
勿論、ロッサにはひとまず沈黙をお願いした。
その後、僕は、名簿を開き、ある連絡先を探す。
これ以上、状況を悪化させない為に、先手を打つ必要がある。
《はい‥こちらオーリス、ゲイズ》
《突然済まない》
《これは‥クロノ提督‥ご無沙汰しております》
《ああ、悪いが、社交辞令は結構‥ジムの件で話がある‥》
そう伝えると、彼女の目が細まった。
《事務の件と申しますと?事務手続きで何か不備でもございましたか?》
とぼけてきた。いや、此方が何処まで掴んでいるのか、探っているのだろう。
だが、時間がない
。今回の件がレジアスの暴走であるならば、
何を仕出かすかわからないからだ。
一刻も早く、オーリスにレジアスを抑えて貰う必要があった。
《ジム=ニー一等陸士の昇級試験の件だよ》
そう伝えれば、一瞬の沈黙の後、彼女は口を開いた。
《‥私に何をお望みで?》
本当に聡明な女性だ。
海の提督がわざわざ自分にコンタクトしてきた事で、大体の事を察したのだろう。
《話が早くて助かるよ》
と、此方が礼を伝えれば、
《此方も海の提督が御懸命な方のようで助かります》
ははは。こやつめ。
《君もわかっているだろう?今回の件は‥行き過ぎだと‥》
《‥いまいち仰有られている事がわかりませんが‥其れで何をしろと‥?》
《少なくとも僕は君達の気持ちや、理屈、事情も、多少は理解しているつもりだ‥だからこそ、これ以上、拗れる前に、お互い歩み寄りたいと考えているんだがどうだろうか?》
《‥調整致します‥明日には御連絡差し上げますわ‥》
暫しの沈黙の後、彼女からは、完結な答えが返ってきた。頭の回転が早くて大変助かる。
《うん。頼むよ》
とりあえず、後は連絡待ちか‥
通信を終え、ひとつ大きく息を吐き、この後は‥母さんと何処まで、折り合えるかの最終調整だ。
今まで、散々議論してきたのだ。
今更、大きな指針変更は不可能だろうけど。
今回の件が良い転機になると良い。
僕は‥重たい頭を振り払うように、未來に想いを馳せるのだった。
読んで戴きありがとうございますm(__)m
寒くなってきましたね。みなさまお身体にはお気をつけて。