校正が甘いのは仕様です。
とりあえず礼儀として、中将と三佐に自己紹介を済ませ、所在無さげにクロノ提督の隣へと座らせてもらう。
「あの‥?クロノ提督‥?本日は‥どういう‥趣旨なんでしょうか?」
「ああ‥すまない‥端的に説明しよう‥実は‥カクカクシカジカ‥マルマルモリリモリ‥」
みんな食べるよっ!って端的過ぎるわっ!
そうか‥先日の試験のアレは中将の嫌がらせだったのか‥てっきりクロノ提督の嫌がらせかと思ってました。ホンマすんません。
等と、クロノ提督とコソコソ話していると、
いつの間にかオーリス三佐が傍に来ていた。
「あらあら?仲がよろしいのですね?ジムさん?私とも、お話ししませんか?」
と、身を寄せながらそんなことを囁くオーリス三佐。
上官にそんなことをされてしまっては、恐縮するばかりだ。
やはり、ハニトラなのだろうか?
チラリと、クロノ提督を見ると、コクリとひとつ頷きを返された。
まさかのハニトラ肯定である。
「うふふ‥それじゃ‥お許しも頂けたようですし、あちらに‥行きましょうか‥?」
と、三佐は艶かしい仕種で、改めて俺の腕を抱きき寄せる。
そしてしっかりと力を入れて、俺を立たせた。
勃たせたと変換した人、正座。
そしてそのまま、腕を抱き抱えられながら、俺を奥のスペースに連れていく。
そこは、暖簾のようなカーテンだけで入り口は仕切られ、中から薄く淡い間接照明の灯りだけが漏れていた。
ヤバい。
え‥ホンマに‥?
俺のJr.食べられちゃうのん?
脳裏にフェイトさんの悲しげな顔が浮かぶ。
「‥私のウィンナー食べられちゃうの?」
フェイトさん。そこはせめてソーセージでたのんます。
等と、脳内のフェイトさんにクレームを付ける事で、俺は冷静さを保つ。
程なく、奥の部屋に付き、
部屋の入り口にかかる、暖簾のようなカーテンを二人でくぐると、そこには、
中将がムッツリ顔でいた。
ウボアアアアア!
息子が萎んだ。
僕の気持ちを弄んだな!
なんて事すんねん。
お前ら、これで俺のJr.がEDになったらどうしてくれんの?
ショックであれだけ叫びたがってた、俺の股間が今や借りてきた猫みたいにシンとしてるよ!
それくらいのトラウマものだよこれは!
テーブルを挟んで、中将の正面に座らされる。
「ジム君‥」
「ハッ!」
中将の呼掛けに立ち上り、敬礼で返す。
「そんなにかしこまらんで良い」
そんな俺を手で制し、着席を促す中将。
「は‥はぁ‥」
御言葉に甘え、座り直す。
「今回は私の不徳のせいで迷惑を掛けた‥どうか、許して欲しい‥」
と、頭を下げられてしまった。
「お、お止めください‥」
別に命を取られたわけでもない。
いや、死ぬかと思ったけど。
この程度の嫌がらせなんて可愛い方である。
この程度で中将が一士ごときに頭を下げちゃいけない。
まあ、だから場所変えたんだろうけど。例え密室であってもだ。
「私は気にしておりませんので‥地上の平和に尽力し続けておられる日々の中将の心労に比べれば‥今回の事等、些事に過ぎません」
むしろ謝るなら先程のハニトラフェイントの方だからね?尚、ハニトラフェイトは大歓迎です。
俺の言葉に中将は何とか頭を上げてくれた。
その瞳は不安に揺れており、俺は人間味を隠せないこのオッサンが少し好きになった。
すると、いつの間にか隣にいたオーリス三佐が再び俺の腕に抱き付き、
「まあ‥寛容ですのね?それに‥父の気苦労にも心を砕いてくださってるようで、娘としても嬉しく存じますわ♪」
ふわりと漂う甘い香りに心を奪われていると、
中将が憎々しげに俺の抱き付かれている腕を見ていた。
「さて‥ジムさん?」
と、ここで、オーリス三佐の纏う雰囲気が変わった。
「はい?」
「少し‥真面目な話しを‥致しましょうか?」
等と眼鏡の奥の目を細めながら告げてくる。
一応提案の体をとってはいるが、雰囲気は有無を言わせてくれそうにない。
「真面目な話‥とは?」
ゴクリと、喉を鳴らしながら、問い返す。
「うふふ‥そんなに構えないで?貴方は‥今の管理局を‥どう思います‥?」
と、目線を合せながら、問いかけられる。
「どう‥とは?」
「今の有り様です‥問題点を感じませんか‥?」
オーリス三佐はじっと俺の、唇を‥見ている。
いや、見ているのは、俺の呼吸か。
「そうですね‥システムとして、地上が割りを食ってしまっていますよね‥このままではいけないと存じます」
俺の答えに三佐は我が意を得たり、と大きく頷きを反す。
ひと息に話して、そこで息継ぎと呼吸を求める。
「まあ‥ジムさんは‥聡明でいらっしゃるのね‥」
等と、俺の膝を指でグリグリしてくる。
キャバ嬢かよ。
肺に取り込んだ、酸素と共に三佐の賛辞が心に麻薬のように溶け込んでくる。
三佐の賛辞の言葉が心地好い。
その時、スッと目の前にグラスが差し出された。
相も変わらぬムッツリ顔で中将が差し出していた。
げんなりした。
戸惑いつつも受け取り、グラスを飲み干す。
喉が渇いていたので正直有り難い。
ホッと一息つく俺を幾分和らいだ表情で中将は見つめていた。
「‥ではお前の考えるシステムの問題点とは何だ?」
いきなりそう問われた。
俺はクロノ提督に一尉になれと言われてから、管理局の状態を調べ、自分なりの問題点を考えていた。
一応、尉官ともなれば、そういった事も考える必要があると思ったからだ。
これはひょっとしたら二曹に上がる為の面接試験のようなものなのかもしれない。ある程度、管理局の未來のビジョンを描けている。ということをアピらなけらばいけない。
俺なりの考えを答えようと、頭でまとめ始める。
「はい‥先ずは、人材に於ける問題点として‥先ず、地上が予算を割いて、運営している訓練校。ここで育てられた優秀な生徒が海に吸い上げられてしまっている点。
それは一重に、管理局の花形が航空次元隊であると認識されてしまっていることにつきます。
上を目指す志しの高い者の目標がこの部隊。というレールにも、違和感を感じますね。
海〉地上という現状を崩さない限り、この解決は不可能ではないでしょうか‥」
一口に語ってしまい、
周りがシンとしているのに気付く。
「す‥すみません‥偉そうに‥」
慌てて、謝罪をする。
と、そこでオーリス三佐が更に頭をもたれてきた。
キャバ嬢かよ。
「フフッ‥本当に‥優秀な方‥」
おっぱいが柔らかい。
甘い香り。
中将の顔が怖い。
げんなりした。
三佐の反応からすると、とりあえず正解だったのか‥でも中将の顔は怖いし‥。
「エインヘリアルについては‥どう思う?」
と、中将が柔らかく聞いてきた。
これは難しい質問だ。エインへリアル自体は現在の管理局の有り様に逆行した代物。
肯定的な意見を出したらマイナス査定ではないだろうか?敷かし、面接官の中将自体がアインへリアル推進派であるのは間違いない。
否定的な意見を言おうモノならキレちゃうんじゃないかな。とりあえず俺は、自分なりの正直な考えを答えることにした。これで駄目ならしゃあない。
「ハッ‥AMFの対策が先だろう?等と、批判は色々あるようですが、先程言った通り、AMF対策を扱えるレベルになった魔道師は海に吸い上げられていて、現状では対策しようにも、どうしようもない事ですよね?地上の戦力増強、犯罪抑止力の観点から見ても、とれる方策が少ない中で‥少しでも地上の価値、先程述べました、海〉地上の構図を少しでも改めようとバリューを上げようとした施策かと愚考致しました‥が?」
そこで、俺は言葉を止める。いや、飲み込まざるを得なかったのだ。
何故なら、中将が俯き、その大きな肩を震わせながら、大粒の涙を溢していたから。
そんな中将にソッとオーリス三佐は寄り添い、二人で部屋を出ていった。
ずっと孤独に闘い続けて来たのだろう。
中将の泣き顔は何故かとても俺の心に残った。
あれ?これ面接試験じゃなくね?
だって面接試験だとしたら、流石に中将も泣かないでしょ?
その後、五分程で御二人は戻られた。
中将はおしぼりでガシガシと顔を拭きながら、
「失礼した‥」
「いえ‥そんな‥」
中将の謝罪に俺は恐縮するばかりだ。
「中将は嬉しかったのです」
と、三佐が説明するかのように、ポツリと呟いた。
「貴方のような優秀な方が‥地上の未來を担ってくださると助かるのですが‥」
「は、はあ‥」
と、三佐が更に俺にもたれかかってくる。
あ‥二の腕におっぱいが‥
肘になんかツンツン突起物が‥
首に息が‥
鼓動がどんどん早くなっていく。
だが、息子はピクリともしない。
あれ‥?これマジでEDなんじゃね?
と、俺が恐怖していると、
「その辺にしていただけますか?」
と、不意に入り口から声が聞こえた。
頼れる義兄の登場である。
あぶねえ。やはりハニトラだった。
耐えきりましたよ!フェイトさん!
「‥スゴいよジム‥大好き♪‥御褒美に‥ずりばいしてあげる♪」
脳内フェイトさんが何故かマニアックプレイを持ち出した。
いや、別に俺、赤ちゃんプレイとかそんな趣味ないからね?
だが、勝手に脳が妄想を始めてしまう。
フェイトさんがばぶばぶ言いながら、
此方に尻を左右に振りながら匍匐前進してくる姿が‥浮かんでくる。
―興味があります。俺の上を匍匐前進してほしい!
―そこからどんな御褒美を戴けるのか、私‥気になります!
と、そこで、俺は、気付く。股間に血液が循環していくのを感じる。
ホッとひと安心。
大丈夫だ。俺はまだ戦えるのだ。
それにしても流石はフェイトさんだ。
本来の嗜好と違う提案からでも、俺をこんなにも興奮させてくれる。
フェイトさんの可能性はまさに無限大。
正に無限の欲望。
一生突いてイキます!
それが俺のsecretambition!
と、俺がしょうもない思考をしてる間に、
いつの間にか、クロノ義兄が隣に座っていた。
そんなクロノ義兄を憎々しげに睨む中将と三佐。
その視線を事も無げに、受け流すクロノ義兄は流石と言える。
「お話の途中で割り込んでくるなんて、失礼じゃありません‥?」
「ゲストを長時間ほったらかすホストも十分失礼じゃないかな?」
俺を挟んで、刺のある会話の応酬である。
息子は再び萎えた。‥お疲れ様です。
「まあ‥丁度よかろう‥ジムよ‥決めろ‥」
と、中将が真っ直ぐ俺を見て、促す。
な、何をでしょうか‥?
「先程、話した通り、今の管理局の現状はお前から見ても、歪であろう?海に付くのか?陸に付くのか?」
ええっ?
フェイトさんのずりばいからなんでそんな話しに?
どちらを選ぶかと言われれば、どちらも選びたくはない。
だってそうだろう?確かに、地上の状況は悪い。
けど、それで悪=海とはならない。
海には海の存在意義があるし。
それで殊更地上に嫌がらせしているわけでもない。
無い袖は触れないというだけだ。
俺がどう答えるか迷っていると、
「さっさと決めんか!」
と、中将が怒鳴る。
やれやれと、俺は答える。
「決める必要があるのですか?」
「なんだと?」
「僭越を承知で申し上げますが、矯枉過直‥地上と海、どちらも正しい。そんな2つを無理にどちらが正しいかを決めれば後々余計な弊害が出ると存じます」
「ならばどうするというのだ?‥地上は今のまま我慢してろと‥?」
「そうは申しません」
「地上と海は元々、敵対しているわけでは無いのですから、お互い協力して、予算も人員もシステムも最小で最大限の恩恵が出るように、今こそ協力し合うべきではないでしょうか?」
「ふん‥こちらは最初からそう提案している!」
と、クロノ提督を見れば、苦々しい顔をしている。
まあ、海とて、潤沢な予算があるわけでは無いのだろう。
おまけに言うなら、海が手掛ける事件は難易度も危険度も地上の比ではない。
それこそ、次元ごと消滅なんて危機にも繋りかねない、それこそ、全人類で無条件に協力し合うべき、究極的な危機だ。
それこそ、起こるかわからないからなんて理由で疎かにしていい案件では無いのだろう。
だからこそ、クロノ提督も迷っている。
彼とて、現状を肯定しているわけではないのだ。
起こるかもしれない究極的な危機と今そこにある小規模な危機。
どちらを取るか?と聞かれて、即答できる人間なんかいるわけ無い。
それでも多分、フェイトさんなら‥
俺は、両方取りたい。
あの底抜けにお人好しなあの女性なら多分、どちらも見捨てないと思うのだ。
できるか出来ないかは二の次三の次。
不可能を可能にするたったひとつの方法は不可能に挑戦すること。
「クロノ提督‥レジアス中将をどう思います
か?」
「?」
唐突な俺の問い掛けに目を瞬かせるクロノ提督。
ですよねー。
クロノ提督どころか、中将も三佐も押し黙っている。
「中将は優秀な方です。百年に‥いや、二百年に一人の傑物ですよ‥」
「それに関しては‥異論はないが‥?」
唐突な持ち上げに中将も戸惑い、きょとんとしている。
三佐も俺が何を言いたいのかわからないといった顔である。
「ですよね‥そして、今現場には、なのはさん、フェイトさん、八神司令。といった、史上類を見ない、精鋭が揃っています」
「あ‥ああ?」
はやてさんの名前を出した所で中将が眉をひそめた。
どんだけ嫌いなんだよ。
それでも、何とか堪えて、話しの続きを待ってくれている。
「そして、言うまでもなく、クロノ提督自身も大変優秀でいらっしゃる」
「ん?んん?」
「つまりですね?これだけ優秀な人材が揃う事なんて、今後あるかどうか‥ですよ?」
「ふむ?」
「今、未來の為に動くべきじゃないんですかね?」
そこで漸く、クロノ提督の瞳に理解の色が浮かんだ。
そう‥。こんだけ優秀な人材が揃っている時に勝負かけないでどうすんねん?ですよ。
ポーカーでストレートフラッシュが揃ってるのに下りるヤツなんていないでしょ?
「ふむ‥それが‥君の考え‥か?」
「はい‥生意気ですみません」
「いや‥確かに‥だな。今、この歪さを正さなければ、この先ずっと歪なままかもしれない‥そして、その歪さは、いずれ、管理局全体に斜陽を迎えさせるだろう‥どうです?中将?‥これだけ若者に未來の心配されて‥このままじゃいられません‥よね?」
「‥当然だ‥」
コクリと鷹揚に頷く中将。
その中将の声を受けて、沈黙を守っていた彼女が口を開いた。
「提案が御座います」
オーリス三佐その人である。
陸と海からスペシャリストを選抜して、特別チームを編制しては如何でしょうか?
クロノ提督、中将と順番に表情を伺い、
一拍の間の後、口を開いた。
私はそのチームのリーダーにジム一士を推しますわ‥」
エエエ?なんで?
当然ながら、クロノ提督も中将も眉をひそめる。
当たり前である。
これは陸と海の共同の一大プロジェクトになる。
失敗は許されない。そんなプロジェクトのリーダーに何の実積もない一士風情を推す?
あり得ない。
「あの‥?何故私なのでしょうか?」
何を企んでいるんだ。
このハニトラさんめ。
「そうですね‥理由は色々ありますが‥」
「ひとつ。海、もしくは地上‥どちらかの人間がリーダーを勤めた場合、軋轢が発生するであろうこと」
なるほど。あり得る話しだ。
敵対しているわけでは無いけれど、合同の一大プロジェクトとなれば、自分達で先導したいと考えるのは自然な事だろう。
「なので、ポッと出のどちらに属しているわけでもない、彼が適任なのです」
間違いじゃないけどポッと出って‥もう少し言い方なあい?
「何よりジムさん?貴方は今、手柄が咽から手が出る程欲しいのではなくて?」
それも間違いじゃないけどさ、やっぱりオブラートに包んでくれないかな?
と、俺がげんなりしていると、
「‥クックックッ‥いやすまん。すまんなジム君。誰に似たのか気が強い娘で‥」
と、おかしくて堪らないといったように笑いを溢す中将。
「中将(父さん)ですよね?」
と、三佐と俺のツッコミがハモる。
それを聞いた中将は顔を赤くして、店員を呼び寄せた。
「酒を追加だ!」
そして間もなく、テーブルに乗り切らない程の酒が並んだ。
その光景を唖然としながらクロノ提督が問う。
「結構高価なお酒も入ってますが、これで貴方は何が得られるのですか?」
クロノ提督が訝しげに問う。
なるほど。俺にはよくわからんが、こういった席で酒を奢る奢らないでも色々あるのだろうか?
大人の世界ってめんどくさい。
しかし、中将は事も無げに言い返した。
「幾ばくかの、二日酔いと、仲間意識だろうよ‥」
「くはっ‥違いない‥」
それを聞いたクロノ提督は軽く吹き出して、グラスを中将のグラスへとぶつけ、酒をひと口に煽った。
この日、陸と海は揃って歩き出したのだ。
そして、その二人三脚に俺は巻き込まれたのだった。
だがメリットは確かにある。
三佐の言う通り、フェイトさんとのゴールの為に、手柄は死ぬほど欲しい。
おまけにここで、中将、三佐との繋がりを作っておけば、一尉なんてすぐかもしれない。
荷が重いというか、役者不足感が半端ないが、せっかくクロノ提督と中将がいい感じなのだ。
そこに水を差すのも憚られる。
不安ながらも、俺は巻き込まれるのを善とした。
三佐がずっとこっちを熱っぽく見ているのを気付かない振りをして。
読んで頂きありがとうございます。次は多分また来週m(__)m
時間がとれたら、明日出すかも?(ノ´∀`*)