ゼロの使い魔~ハルケギニア上空、敵機なし!~   作:疾風海軍陸戦隊

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貴族の誇りと帝国軍人の志願

フーケの襲撃から、一夜明けたトリステイン魔法学院では大騒ぎになっていた。秘宝である『破壊の杖』が盗まれたからだ。

 

「それで、犯行現場を目ていたのは誰だね?」

 

オスマンが切り出した。

 

「この4人です」

 

コルベールが自分の後ろに控えていた4人を指差した。その人物はナオにルイズにキュルケにタバサの4人である。

直哉と才人も傍にいたが、使い魔なので数には入っていない。

 

「ふむ・・・・君たちが?」

 

オスマンは興味深そうに才人を、そして直哉を見つめた。

 

「詳しく説明したまえ」

 

ルイズが進み出て、説明を始める。

 

「あの、私達が大きな音を聞いて広場に向かった時です。大きなゴーレムが宝物庫の壁を殴りつけていたんです。私達は何とかくい止めようとして、使い魔達がゴーレムを倒すことには成功しました。ですが、その隙にナオがゴーレムに捕まってしまったんです。ナオを助けている内に、黒いローブを着たメイジが宝物庫に開いた穴から中に入って、何かを・・・・・、その『破壊の杖』だと思いますけど・・・・、盗み出した後、倒されたゴーレムの土を使って、一回り小さなゴーレムを作って、それに乗りました。ゴーレムは城壁を越えて歩き出して・・・・・その後を、ミス・タバサが風竜で追っていたんですけど、最後には崩れて土になってしまいました」

 

「それで?」

 

「後には、土しかありませんでした。肩に乗っていた黒いローブを着たメイジは、影も形も無くなっていました」

 

「ふむ・・・・」

 

オスマンは髭を撫でた。因みにルイズの言ったことに嘘は無い。

宝物庫の穴を開けたのは直哉であったのだが、先程の説明には、「ゴーレムが宝物庫の壁を殴りつけていた」と言っただけで、ゴーレムが穴を開けたとは言ってない。

そんな事を言えば、どんな責任を取らされるか、分かったものではないからである。

説明していたルイズは、内心冷や汗ものであった。

 

「後を追おうにも、手がかり無しというわけか・・・・・」

 

それから、オスマンは、なにか気付いたようにコルベールに尋ねた。

 

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」

 

「それがその・・・・・・朝から姿が見えませんで」

 

「この非常時に、何処に行ったのじゃ?」

 

「どこなんでしょう?」

 

そんな風に噂していると、ロングビルが現れた。

 

「ミス・ロングビル!何処に行っていたんですか!?大変ですぞ!事件ですぞ!」

 

コルベールが興奮してまくし立てる中、ロングビルは落ち着いた態度でオスマンに言った。

 

「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」

 

「調査?」

 

「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこの通り。すぐに壁にフーケのサインを見つけたので、これが国中を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」

 

「仕事が早いの。ミス・ロングビル」

 

そして、コルベールが慌てた調子で促した。

 

「で、結果は?」

 

「はい。フーケの居所が分かりました」

 

「な、なんですと!?」

 

コルベールは素っ頓狂な声を上げる。

 

「誰に聞いたんじゃね?ミス・ロングビル」

 

「はい。近在の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」

 

「黒ずくめのローブ?それはフーケです!間違いありません!」

 

ルイズが叫ぶ。その言葉にオスマンは目を鋭くして、ロングビルに尋ねた。

 

「そこは、近いのかね?」

 

「はい。徒歩で半日。馬で4時間といったところでしょうか」

 

「すぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

 

コルベールが叫んだ。だが、オスマンは首を振ると怒鳴った。

 

「馬鹿者!!王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ!その上、身にかかる火の粉を己で振り払えぬようで、何が貴族じゃ!魔法学院の宝が盗まれた!これは、魔法学院の問題じゃ!当然我らで解決する!」

 

ロングビルは、まるでこの答えを待っていたかのように微笑むとオスマンは咳払いすると、有志を募った。

 

「では、捜索隊を編成する。我と思うものは、杖を掲げよ」

 

だが、誰も杖を掲げようとはしない。困ったように顔を見合すだけであった。

 

「おらんのか?おや?どうした!フーケを捕まえて、名を上げようと思う貴族はおらんのか!?」

 

オスマンは更に言うが、教員の誰も杖を掲げない。しかし、一人だけ名乗り出るものがいた

 

「自分が行きます」

 

それは直哉であった。彼は一歩前に出てオスマンにそう言う。その行動に全員が驚いた

 

「宮藤さん。なんで?」

 

才人が尋ねる。

 

「一応、その宝が盗まれた原因を作ったのは自分ですから」

 

「如何いう事じゃ?」

 

直哉の答えに疑問を持ったのか尋ねる。

 

「ええ。宝物庫に穴開けたの、自分なんで」

 

その言葉に、ルイズ達は、「何でバラすのよ」といった表情になり、他の教師達は驚愕し、ここぞとばかりに直哉に責任全てを擦り付けるために、言葉を続ける。

 

「貴様、フーケの仲間か!」

 

「貴様のような平民の所為で我らが学院の宝が!」

 

などという言葉を直哉に浴びせるのだが・・・・

 

「止めんかっ!!」

 

オスマンの怒号が響き、教師達は黙ってしまう。

 

「少なくとも、フーケの仲間という事はないじゃろ。そうだったとしたら、こんな所で名乗り出るなどという真似はしないはずじゃ。それで、君はミス・ユミエールの使い魔の少年じゃったな。先程言ったことをもう少し詳しく教えてもらえんかの?」

 

オスマンに言われ、話を続ける。

 

「はい。自分はナオがゴーレムに捕まったの見て救出しようとし、刀・・・剣でゴーレムの腕を斬り裂きました。ですが、その時の衝撃で、宝物庫の壁に穴を開けてしまったんです。そしてナオをを助けに行った隙にフーケが宝物庫に侵入したんです」

 

そう言うと、1人の教師が直哉に言った。

 

「貴様!何故その場で宝物庫を守らなかった!」

 

「先ほど申し上げた通り、ナオが捕まったからです。したがって人命を優先としました」

 

「だから、何故秘宝を守らなかったと聞いている!その場にはミス・ユミエールの他に貴族が3人もいたのだろう。何故秘宝を優先して守らなかった!?・・・それでも・・・」

 

教師がそう言葉をつづけようとしたとき

 

「黙れっ!!!」

 

「「「っ!???」」」

 

小柄な直哉に似合わない大きな怒声にその場にいた皆は固まる

 

「秘宝がどんな物か知りませんがね、秘宝だろうが国宝だろうが、人命の前ではただの置物にすぎん!!命とは尊い物だ!!ましてはたった一つの命だ!物は奪われてもいつかは奪い返せる。しかし失った命は戻ることはない!!貴様それでも教師の端くれか!!」

 

「ひっ!?」

 

直哉の殺気のこもった眼で睨まれ、その教師は恐縮してしまう。するとオスマンは

 

「やれやれ・・・秘宝を置物扱いとか少し言い過ぎじゃが、命と物、天秤にかければどちらが重いか言うに及ばんじゃろ。どうも貴族たちは命を軽視しすぎていかん」

 

「しかし、オールド・オスマン・・・・・・」

 

「それに彼は、ミス・ユミエールの使い魔じゃ。使い魔が主を優先して助けるのは当然じゃろ」

 

「・・・・・・・」

 

その教師は何も言えなくなってしまった。

直哉は別にナオが主だったから助けたわけではないのだが、それを言うとまた面倒なことになると思ったので黙った。

 

「それで、君は何故名乗り出たんじゃ?」

 

オスマンは話を戻し、直哉にそう問いかけた

 

「今回の件。先ほど申し上げた通り盗まれたのは自分にもあります。他のものが名乗り出て解決するのならそれもいいですが、誰も志願しないのであれば今回の原因を作った自分が責任を取るため志願することにしました」

 

直哉はコルベールを除き周りの教師に向けた嫌味と嫌悪も含めてそう告げた

 

「ふ~む・・・・」

 

オスマンは髭を撫でながら考えると

 

「宮藤さんが行くなら俺も行くぜ」

 

「才人?」

 

「宮藤さんだけ、かっこつけさせるわけにはいきませんよ。それに同じ日本人であり兄貴分の宮藤さんが行くのであれば俺も行かなければ日本男児の名が廃る・・・てね?」

 

「カッコつけやがって・・・・・まあ、ありがとよ」

 

才人の言葉に直哉は嬉しそうに礼を言うと俯いていたルイズがすっと杖を掲げた。

 

「ミス・ヴァリエール!?」

 

シュヴルーズが驚いた声を上げた。

 

「何をしているのです!?あなたは生徒ではありませんか!ここは教師にまかせて・・・・・・」

 

「誰も掲げないから、使い魔達が行くと言っているのではありませんか。そして、私は貴族でメイジです。使い魔だけを行かせるわけにはいきません!」

 

そのルイズを見て、才人はポカンとした。ルイズが杖を掲げているのを見て、キュルケはしぶしぶ杖を上げた。

 

「ツェルプストー!?君は生徒じゃないか!」

 

コルベールが驚いた声を上げる。

 

「ふん。ヴァリエールには負けられませんわ」

 

キュルケはつまらなそうに言う。キュルケが杖を掲げるのを見て、タバサも掲げた。

 

「タバサ。あんたはいいのよ。関係ないんだから」

 

キュルケがそういったら、タバサは短く答えた。

 

「心配」

 

キュルケは感動した面持ちでタバサを見つめ、ルイズも唇をかみ締めてお礼を言った。

 

「ありがとう・・・・タバサ・・・・」

 

そして、杖の先が震えながらも、もう一つの杖が掲げられた。

 

「ナオ!?」

 

これには、さすがの直哉も驚いた。

 

「ナオ、無理すんな。唯でさえ昨日怖い目にあってるんだから・・・・」

 

直哉がそう言うが、

 

「わ、私も、友達を守りたい・・・・・それに・・・・自分に嘘はつきたくないから・・・・」

 

「・・・・・そうか」

 

ナオの強い意志を見た直哉はこれ以上言うのをやめた。言ったところで彼女は引き下がらないだろうと思ったからだ。

そんな様子を見て、オスマンは笑った。

 

「そうか。では、頼むとしようか」

 

「オールド・オスマン!私は反対です!生徒たちをそんな危険に晒すわけには!」

 

「では、君が行くかね?ミセス・シュヴルーズ」

 

「い、いえ・・・・私は体調が優れませんので・・・・・」

 

「彼女たちは敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」

 

教師達は驚いたようにタバサを見つめた。そのタバサは、返事もせずにぼけっと突っ立っている。

 

「本当なの?タバサ」

 

キュルケも驚いている。

 

「ルイズ、『シュヴァリエ』って?」

 

才人はルイズに尋ねる。

 

「『シュヴァリエ』っていうのは、王室から与えられる爵位としては、最下級なんだけど、他の位の低い爵位と違って、純粋に業績に対して与えられるものなの。つまり、実力の称号ってことよ。私たちの歳で持ってる人なんて滅多にいないわ」

 

「そうなのか」

 

そう話している間にもオスマンの言葉は続く。

 

「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」

 

キュルケは得意げに髪をかきあげる。

そして、ルイズが自分の番だと言わんばかりに胸を張った。だが、オスマンは困っていた。褒めるところがなかなか見つからなかったのだ。コホン、と咳をすると、オスマンは目を逸らしながら言った。

 

「その・・・・ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが?しかもその使い魔は!」

 

それから才人を熱っぽい目で見つめた。

 

「平民ながらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという噂だが」

 

オスマンは思った。

 

「(彼が、本当に伝説の『ガンダールヴ』なら、土くれのフーケに、遅れを取ることはあるまい)」

 

更に、コルベールが興奮した調子で、オスマンの言葉を引き取った。

 

「そうですぞ!なにせ、彼はガンダー・・・・・」

 

オスマンは慌ててコルベールの口を塞いだ。

 

「むぐ!はぁ!いえ、なんでもありません!はい!」

 

オスマンは落ち着くと言葉を続ける。

 

「そして、ミス・ユミエールは、現在このトリステイン魔法学院で成績優秀な優等生であり、ミス・タバサに及ばないながらも、中々の風の使い手であるトライアングルメイジと聞いておるが?更にその使い魔もミス・ヴァリエールの使い魔同様、グラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ち先程の報告が正しければ、フーケのゴーレムを破壊したのは、ミス・ユミエールの使い魔じゃ」

 

教師達はすっかり黙ってしまった。オスマンは威厳のある声で言った。

 

「この4人に勝てるという者がいるなら、一歩前に出たまえ」

 

と、そう言うのだが、誰もいなかった。オスマンは、直哉、才人を含む6人に向き直った。

 

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

 

「「「「杖にかけて」」」」

 

ナオ、ルイズ、キュルケ、タバサの4人は、直立して真顔になり、そう唱和した。

 

「では、馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。魔法は目的地につくまで温存したまえ。ミス・ロングビル!」

 

「はい。オールド・オスマン」

 

「彼女たちを手伝ってやってくれ」

 

「もとよりそのつもりですわ」

 

ロングビルは、頭を下げそう告げた。こうして6人は秘宝「破壊の杖」を盗んだ、土くれのフーケを捕まえるべく立ち上がったのだった

 

 

 

 

 

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