アルンヘム編開始。
夏休みに入る直前のある日、ふとあることに気がついた。
茂「なあ、飛行機どうする?」
ペリーヌ「え?」
俺の発言にペリーヌが驚いた。
リーネ「どうしたんですか?急に」
茂「いやさ、今月の終わりには飛行場完成するでしょ?
そこに一応クロステルマン家保有の格納庫もあるんだけど何を入れようかなって。」
ペリーヌ「だったら現代の旅客機か輸送機でいいのでは?」
今月の終わりには完成予定のパ・ド・カレー空港の格納庫に何を入れるかという話をするとペリーヌが現代の旅客機や輸送機でいいと言う。
茂「無理だ、ここ近代的な計器着陸装置もGPSもないだろ?
現代の旅客機も輸送機もこれと連動してるんだ、だから使えない」
アメリー「茂さん、候補はあるんですか?」
茂「まあね。
候補はボーイング707、ダグラスDC-8、ロッキードC-130ハーキュリーズ、フォッカーF27、デ・ハビランドカナダDHC‐8、ボーイング737、ダグラスDC-9とか。
それ以上に問題なのは、お前ら操縦できるの?」
現代の旅客機は高度な電子装備を持っているがその装備はインターネットやGPSと連動して運用するので最新のは使えない、その上電子技術もないしまだジェットじゃなくレシプロ機時代だから候補になるのは設計の古い、それこそ50‐60年代の機ばかりになるんだよな…
それにこの時代の機は殆どが機長・副操縦士・航空機関士体制だからパイロットは最低3人はいるんだよね…
737とかDC-9とかは航空機関士がいらないし性能的にも十二分だけど。
ペリーヌ「一応ジャン・ポールは飛行機の操縦が可能でしたわよね?」
茂「え?」
ジャン・ポールパイロットなの?
ペリーヌ「ええ」
ジャン・ポール「左様、執事たるもの一通りの乗り物の操作法は覚えておかなければならないので。」
茂「しゅごい」
ペリーヌの後ろに立つジャン・ポールが答える。
それに凄いという言葉しか出なかった。
茂「でさ、もう一人どうする?」
だけどまだ一人いる。
それを聞いているとアメリーがゆっくりと手を挙げた。
アメリー「茂さん、その、私でいいのでしたら…」
茂「え、いいのか?」
アメリーに聞き返す。
アメリー「はい、ウィッチはパイロットへの転換がし易いって言いますし」
茂「そうなのか?ペリーヌ」
ペリーヌにウィッチとパイロットの関係を聞いた。
ペリーヌ「ええ。シャーリーさんもパイロットの免許持ってますし。
比較的簡単になれますわね。
元々原理は似たようなものですし規定では1ストライカー飛行時間が1.5航空機飛行時間として換算されてますわね。
事実上生身で飛ぶ関係で×1.5で計算されてますの」
茂「へぇー知らなかった。
でも訓練どうする?夜間か?」
うん、ジェット旅客機とストライカーは月と鼈だぞ。
ましてや下手に訓練できないから夜間にやるしか…
ペリーヌ「勿論実機を飛ばすのは夜間でしょうけどシミュレーター忘れてませんこと?」
茂「ああ、あれか。
あれと夜間の実機飛行の組み合わせ?」
ペリーヌ「そういう事ですわよ」
納得した。
シミュレーターと夜間実機飛行でどうにかするのね。
茂「で、それで決まればいいけどどれにする?
お勧めは737-200だけど。」
ペリーヌ「それでいいですわよ。
勿論アドヴァンスですわよね?」
茂「勿論、離着陸性能が高い方がいいだろ?
それに航続距離も十分」
737‐200は737の系列の中でも最も古くて形式としても2番目のタイプ、一番最初期のモデルの―100のストレッチ型(胴体延長型)で最初期の世代にあたる。
作る予定の737‐200Advはその―200の離着陸性能を向上させたモデルで1971年生産開始。
航続距離は4000キロ以上で座席数も130、この時代なら十分すぎる性能。
ペリーヌ「ところで飛行場の航法設備はどうなってますの?」
茂「勿論滑走路灯はつけるよ。
後一応06にILSを設置予定。
06ならうちの土地を使える、24は無理だ。」
ペリーヌが計器着陸システムを聞いてきたので答えた。
北東向きの滑走路06は進入コースの真下がクロステルマン家の土地なのでここにILSのT-DMEを、滑走路の端にグライドパスとローカライザーを設置予定。
ペリーヌ「それでお願いしますわ、さてとリーネさん、アメリーさん、茂さん、これから忙しくなりますわよ」
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それから数日後
アメリー「アウターマーカー接近、高度2400。
グライドパス、オンコース、DMEは5。
滑走路視認」
ジャン・ポール「滑走路視認了解、フラップ5」
アメリー「フラップ5、こちらチャーリーロメオ737ブラボー、タワー滑走路24を視認、着陸許可を求む」
茂「タワー、チャーリーロメオ737ブラボー、滑走路24への着陸を許可。」
俺とアメリーとジャン・ポールは屋敷の地下に設置したボーイング737‐200Advのシミュレーターの中にいた。
何をやってるか?決まってるだろ、操縦訓練。
一応今日はアメリーが副操縦士、ジャン・ポールが機長席について俺が航空管制官役。
それから10分ほどして訓練が終わった。
アメリー「ふぅ、疲れました…」
茂「どうだ?737は?」
アメリー「色々変わっていて大変ですね、茂さん」
茂「だろ?」
ジャン・ポール「茂様、そろそろ私はお嬢様の所に」
そう言うとジャン・ポールは立ち上がりシミュレーターがから出て行った。
茂「そろそろ俺達もいくか」
アメリー「そうですね、茂さん」
それに続いて俺達もシミュレーターから出て行った。
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ペリーヌ「では、掃討作戦の間は私達は待機ですわね。
了解です。ミーナ隊長もご武運を」
茂「なあアメリー、サン・トロンとセダンとディジョンのチャートっているかな?」
アメリー「茂さん、電話中ですから少し黙ってください」
それから少ししてペリーヌは元上官と電話していた。
そして同じ部屋で俺は737に乗せるチャートを選んでいた。
当たり前だけど現代のチャート(航空用地図)はこの時代だと地形以外全く役に立たないのでほぼ全部新規です。
まあ固有魔法のお陰でとりあえずこの時代の航空路図を現代の地図の地形データに合成するだけだし。
ペリーヌ「え?不審な電波?」
茂「ん?どうしたペリーヌ?」
するとペリーヌが何か電話口で聞かれたようだった。
ペリーヌ「知りませんわ、こちらで少し調べてみます。
では。
茂さん、ちょっと」
するとペリーヌは電話を切ると俺を手招きした。
茂「なんだ?」
ペリーヌ「不味いですわよ、どういうわけか現在テスト中のカレー空港のVOR/DMEをナイトウィッチが受信して聞いてきたのよ。」
茂「え!あれをか?
ILSでも積んでるんじゃないか?」
あれを受信するには専用の装置が必要だぞ。
ナイトウィッチ凄いな…
ペリーヌ「どうします?空港が完全に再開したらアレを06で常時動かすことになりますけど。」
茂「ある程度誤魔化すしかないな」
すると突然ドアが開き振り返った。
するとジャン・ポールと子供を抱えたリーネが入ってきた。
リーネ「ペリーヌさん!」
ペリーヌ「どうしました!」
ペリーヌはすぐに立ち上がってリーネに駆け寄った。
この光景に見覚えがあった。
茂「なぁ、これ遠すぎた橋じゃね?」
アメリー「多分…」
小声でアメリーと会話する。
その間に例のユリウスもやってきていた。
リーネ「この子、熱が」
ペリーヌ「急いだ方がいいわね。
ジャン・ポール、お医者様と客間の用意を」
ジャン・ポール「かしこまりました」
ペリーヌ「アメリーさんはお湯を沸かして」
アメリー「分かりました」
ペリーヌ「茂さんはこの子をお願い」
茂「えーめんどくせー小遣いくれるのか?」
ペリーヌ「一発食らわせますわよ?」
茂「はい、やります。」
ペリーヌが指示して、なおかつ脅してきたので従った。
ペリーヌのブレンガンで鍛えられた腕力相当強いから辛い。(辛い)
各自動き始めると俺と例のガキ以外いなくなった。
茂「ああめんどくせえ、こっちこい、遠慮するな。」
「いいのか?」
茂「ここで黙って座っていればいい。
お菓子ならキッチンにいくらかあるぞ、なんだったらジュースとかもある。
後テーブルの上に置いてるのは触るなよ、そこに書いてる事を外に漏らせば俺達の首が物理的に飛ぶ。」
とりあえず例のガキを椅子に座らせた。
その間に俺はテーブルの上のチャートを片付ける。
茂「ところでガキ、名前は?」
ユリウス「ユリウス」
茂「俺は井上茂、おたくらの言うところの扶桑人てやつだ。
お菓子とジュース持ってくる」
ユリウスの名前を聞いてから俺はキッチンにお菓子とジュースを取りに行った。
まあ面倒な事になるのは確定したな…
コールサインで出した機体記号CR-737Bは実在しない機体です。
CRそのものはクロアチアが独立した一時期に使用した物だけどクロアチアの機体記号はアルファベットだけなのでアルファベット+数字はない。
数字と番号は勿論ボーイング737から。