バカと天使とドロップアウト   作:フルゥチヱ

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バカテスト
問 以下の問いに答えなさい。
『調理の為に火にかける鍋を製作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いるべき金属合金の例を一つ挙げなさい』

月乃瀬=ヴィネット=エイプリルの答え
『問題点……キッチンが大爆発してしまうこと。
 合金の例……ステンレス』
教師のコメント
 確かにそれは大問題です。

白羽=ラフィエル=エインズワースの答え
『問題点……調理者がサターニャさんだったこと。
 合金の例……アルミニウム合金』
教師のコメント
 胡桃沢さん危機一髪。

胡桃沢=サタニキア=マクドウェルの答え
『問題点……地獄の業火に鍋が耐えきれなかったこと』
教師のコメント
 爆発程度じゃ済まなさそうですね。

天真=ガヴリール=ホワイトの答え
『問題点……プロメテウスの神火に鍋が耐えきれなかったこと』
教師のコメント
 まさか似たような答えがもう一人いるとは。


第十話 バカと天使とドロップアウト(前編)

 今でも夢に見ることがある。

 下界に降りたばかりの私が初めて出会った、一人の男に関する記憶だ。

 

 私が下界の礼儀に倣って持っていった粗品を受け取って小躍りするあいつの姿。まだがらんとしていた頃の私の部屋で、頼んだわけでもないのに荷解きを手伝ってくれたあいつの姿。下界のゲームとかパソコンとか、そういう知識を親身になって教えてくれたあいつの姿。何故か入学式にセーラー服姿で登場してラフィに目を付けられていたあいつの姿。図書館でとある文章を英訳し、さらにそれをフランス語に訳そうと四苦八苦するあいつの姿。放課後の教室でぐしゃぐしゃになった教科書を見て激昂し、体格で劣っているのも厭わず大男相手に殴り掛かるあいつの姿。それが誤解だと分かると、今度は新しい教科書を手に入れようと大男と共に自転車で坂を駆けるあいつの姿。

 そして──幾度となく拒絶されようとも、ドイツからの帰国子女に健気に話しかけ続けたあいつの姿。

 

 何度失敗しようが立ち上がって。何度傷付こうが立ち向かって。

 他人の為なら、バカの一つ覚えみたいに自分を犠牲にする。

 しかもあいつは、そんな苦行じみたことを笑顔で成し遂げてしまうから──私はいつしか、彼のことが頭から離れなくなっていたのだ。その気持ちは、天界からの謹慎処分により接触を禁止された期間中、自分じゃもうどうしようもないほどに膨れ上がっていった。

 

 そう、私は研修中の身でありながら、天使としての禁忌を犯した。自らの意思で力を行使し、人を癒すという罪を。

 そして罪には罰が与えられるのが道理。

 故に、私には天界からの仕送り減と、一週間そのバカとの接触を禁ずるという処分が下されたのだ。

 

   ○

 

 Bクラスとの試験召喚戦争の終結から数日が経過した。

 校舎の壁を破壊した実行犯である僕と胡桃沢さんは鉄人の親身な指導(鉄拳)と反省文(拷問)という刑罰を科せられ、ようやく解放された。

 そして今、長いようで短かった僕らの試験召喚戦争も、残すところAクラス戦のみとなる。その宣戦布告の為に、我らがFクラスメンバーは新校舎にあるAクラスの教室を訪れていた。

 

「見てガヴリール! フリードリンクに加えてお菓子が食べ放題だって!」

 

「なんだって!? 明久、とりあえず一週間分の食料を確保するぞ! ありったけを掻っ払ってやれ!」

 

「アイアイサー!」

 

 天使様の命令を受け、恥も外聞もかなぐり捨てて制服のポケットにお菓子を詰め込めるだけ詰め込む僕。プライド? なにそれ食えんの?

 

「あなたたち、朝っぱらから元気ね……」

 

 そんな僕らを呆れたような視線で見るのは、Aクラス所属の悪魔でガヴリールの友達、月乃瀬=ヴィネット=エイプリルさんである。

 月乃瀬さんはお菓子を喰らい尽くさんばかりの勢いで頬張る駄天使の首根っこをひょいと掴みあげて、残りのお菓子を救出した。

 

「なにするのさヴィーネ! 私にはこのお菓子たちを美味しく平らげて天へと導く大事な使命があるのに!」

 

「天使が暴食してんじゃないわよ。そもそも、ガヴたちは宣戦布告に来たんでしょ?」

 

「宣戦布告ぅ~? いいよそんなの、どうせ私がその気になればこの世界滅ぼせるんだし」

 

「こいつ本当に天使か?」

 

 月乃瀬さんの至極真っ当な疑問に僕は頷くしかない。

 

「…………!(パシャパシャパシャパシャ)」

 

 ふと隣を見ると、そこには擦り切れてしまいそうな勢いでシャッターを連写するムッツリーニの姿があった。

 

「……なにしてるの、ムッツリーニ」

 

「…………Aクラスの女子はレベルが高い……!」

 

 そんなムッツリーニの言葉を受けて、僕はレンズの先にいる女子生徒たちに目を向ける。

 月乃瀬さん、白羽さん、秀吉の姉の木下優子さん、名前は知らないけどボーイッシュな女の子、そして──学年主席、Aクラス代表の霧島翔子さん。それ以外にも、Aクラスには顔面偏差値の高い女子が揃っていた。

 僕らのFクラスは一部を除いてむさい男ばかりの教室だし、なるほど、彼が興奮するのも頷ける。

 

「でもムッツリーニ、ダメじゃないか。いくら可愛いからって、無許可に撮影なんかしたら盗撮だよ? 女の子が可哀想だと──」

 

「…………天真の新作写真、一枚百円」

 

「五ダース買おう。──可哀想だと思わないかい?」

 

「あらあら、吉井さんは本当に自分の欲望に素直な方なんですね」

 

 ち、違うんだ! 今のは本能が脊髄反射しちゃっただけで、決して僕の意思では……!

 

「お久しぶりです。吉井さん、ムッツリーニさん♪」

 

「…………!(ブンブンブン)」

 

「いや、この状況で否定しても不毛なだけだからね?」

 

 堂々とカメラを構えながら無様にも首を横に振る友達の将来に一抹の不安を覚えながら、僕も彼女の方へと向き直る。

 そこにいたのは、神秘的なまでに綺麗な銀色の髪と抜群のプロポーションが特徴の、Aクラス所属の天使でこれまたガヴリールの友達である白羽=ラフィエル=エインズワースさん。しかし、その本性は人を玩具にするのも厭わない真性のサディスト、つまりドSである。

 別に嫌いというわけじゃないが、僕は正直この人が得意ではない。というのも、この人と関わると碌なことがないからだ。この間椅子にされたことも記憶に新しい。

 

「げっ、白羽さん……」

 

「ん? 吉井さん、今『げっ』と仰いませんでしたか?」

 

「言ってません! 白羽さんとの邂逅を神に感謝していたところであります!」

 

「そうでしたか、敬虔な人ですこと♪」

 

 笑顔で脅迫され、片膝をついて天に祈りを捧げる僕。

 っていうか笑顔で脅迫ってなんだよ。僕の中の笑顔という概念が崩壊しそうだ。

 

「ふっふっふ。ラフィエル、そんな余裕でいられるのも今のうちよ。もうすぐAクラスの教室は、この大悪魔胡桃沢=サタニキア=マクドウェルのものになるのだから!」

 

「でもサターニャさん。この教室はいくらサターニャさんといえど、一人で使うには些か広すぎるかと」

 

「フッ。逆よラフィエル、狭すぎるくらいだわ。私はやがてこの世の森羅万象を統べる者! この教室には下界侵略の拠点として、その礎になってもらうわ!」

 

「千里の道も一歩から、というやつですね」

 

「セロリ? なんでそこで野菜が出てくるのよ?」

 

 ちょうど近くに僕以上に白羽さんに目を付けられている人がいたので、彼女をスケープゴートにして戦略的撤退を行う。これが観察処分者同士の絆だ!

 

「俺たちFクラスは試験召喚戦争として、Aクラス代表に一騎討ちを申し込みたい」

 

「一騎討ち、ね。なにが狙いなの?」

 

「勿論、Fクラスの勝利が狙いだ」

 

 現在、交渉の席には、Fクラスからは我らが代表坂本雄二が、Aクラスからは木下優子さんがついていた。

 雄二は我が物顔でリクライニングシートを占領し、足を組み直してから言った。

 

「ところで、Cクラスとの戦争はどうだった?」

 

「時間は取られたけど、それだけだったよ? CクラスがAクラスに勝てるわけないでしょ?」

 

「だろうな。んじゃあ、次はBクラスとやりあう気はあるのか?」

 

「Bクラスって……昨日来たあの……」

 

 木下さんや他のAクラス生徒たちの表情が苦虫でも噛み潰したかのように歪む。Bクラスといえば根本くんが代表を務めるクラスだが、彼は雄二の命令通り、女装したまま戦争の意思をAクラスに伝えてくれたらしい。

 本来、試験召喚戦争で敗北したクラスは戦争の泥沼化を防ぐための措置として、三か月の準備期間を経ないと再び宣戦布告はできない。しかし今回のBクラスとFクラスの戦争は和平交渉によって終結したことになっている。つまりBクラスはAクラスに戦争を仕掛けることができるのだ。さらに言えばDクラスも。

 ……これって、完全に悪役側の交渉というか、脅迫だよね。

 

「わかったよ。その挑発に乗ってあげる。ただし、代表同士の一騎討ちじゃなくて、五対五の一騎討ちならだけどね」

 

「よし、その案を呑もう。教科の選択権はこちらが三つ、そっちが二つでいいか?」

 

「……条件がある」

 

 突然交渉の場に現れたのは、Aクラス代表の霧島翔子さん。全く気配を感じなかったからちょっとビックリ。それはクラスメイトの木下さんでも同じだったようで、彼女も目をぱちくりさせていた。

 

「条件とはなんだ、翔子」

 

 僕らとは対照的に雄二は少しも動揺を見せず、顎に手を当てて訊く。

 

「……負けた方は、何でも一つ言うことを聞く」

 

 な、何でもだって!?

 何でもってことは、あれもこれも、どれもそれも命令できちゃうってことですか!?

 

「いいだろう。交渉成立だな」

 

「ま、待ってよ雄二! 何でもなんて、そんなの危険すぎる!」

 

 これほど才色兼備ながら男の影一つない霧島さんには同性愛者疑惑まであるというのに! もしFクラスの数少ない女子であるガヴリールや姫路さんや秀吉に被害が及んだらどうするんだ!

 

「心配すんな。絶対お前らには迷惑をかけない。翔子、勝負は十時からでいいか?」

 

「……わかった」

 

 霧島さんは無表情のまま一つ頷くと、そのまま踵を返して教室の奥に引っ込んでしまった。

 これにて交渉成立。

 僕たちはポケットだけでなく、ガヴリールのパーカーのフードにもお菓子を詰め込んでから、Aクラスを後にした。

 Fクラスの試験召喚戦争は、遂に最終決戦の時を迎える。

 

   ○

 

 午前十時。

 学年を代表するバカである僕らFクラス一同は、Aクラスの教室で学年の頂点に君臨するエリートたちと対峙していた。

 立会人を務めるのは、Aクラスの担任と学年主任を掛け持ちしている高橋洋子女史。

 

「それでは先鋒の方、前へ」

 

「Aクラスからはアタシが出ます」

 

「では、Fクラスからはワシがやろう」

 

 向こうの先鋒は木下優子さん、対してこちら側はその弟である秀吉が前に歩み出る。

 秀吉は演劇部のホープと言われるだけあって、演技力や変装には長けているが、学力は所詮Fクラス並みだ。では何故秀吉が先鋒なのかといえば、相対するのが彼の姉である木下さんだからだ。

 当然秀吉は、お姉さんの弱点や苦手科目なんかも把握しているはず。集中力の乱れが操作に大きく影響を及ぼす召喚獣での一騎討ちならば、秀吉にも勝利の可能性はあるだろう。

 それに、この初戦はFクラスの士気にも関わってくる。秀吉には勝つとまではいかなくとも、是非善戦してもらいたいところだが──

 

「ところでさ秀吉、Cクラスの小山さんって知ってる?」

 

「む? 誰じゃ?」

 

 召喚獣を呼び出す前に、木下さんがニコニコと秀吉の元へと歩み寄ってその腕を握る。まるで捕らえた獲物を絶対に逃がすまいとするハンターのように。

 前哨戦というやつだろうか? それにしてはやけに不穏な空気が漂っている。

 

「じゃあいいや。ちょっと話があるからこっちに来て?」

 

「姉上よ。そんなに固められると痛いのじゃが……」

 

 腕を引かれて廊下へと連行される秀吉。

 確か小山さんと言うと、Bクラス戦の時に秀吉が煽りまくったCクラス代表の名前だったような……。

 

「ねえ愚弟? どうしてアタシがCクラスを豚呼ばわりしたことになってるのかな? お姉ちゃん気になるなー」

 

「ああそれはじゃな、姉上の本性をワシなりに推察して……あ、姉上っ! 背骨はそっちに曲がるようには出来ていな──(ボキッ!)」

 

 ……今、人体から鳴ってはいけない音が鳴ったような気が。

 ガラッと扉を開けて、そこから顔だけを覗かせる木下さん。

 

「ごめんなさい。アタシたち、ちょっと急用を思い出したから早退します。月乃瀬さん、アタシの代わりに先鋒戦に出てくれないかな?」

 

「えっ? 私? いいのっ?」

 

「うん。月乃瀬さん、Cクラス戦の時は代表の護衛であまり戦闘に参加できてなかったでしょ? だからお願い」

 

「あ、ありがとう木下さん! 一騎討ちって聞いてまた私出番ないんじゃって思ってたから、凄く嬉しい!」

 

「良かったですね、ヴィーネさん」

 

 ニコニコと微笑むAクラスの女子三人。とても麗しい光景なのだが、扉の陰に倒れている小柄な男子生徒のような物体が恐怖を煽って仕方なかった。秀吉、無事でいてくれ。

 

「……とりあえず、天に祈りを捧げときますか」

 

「そうだね……」

 

 手を合わせて拝む僕とガヴリールを尻目に、木下さんは教室を出て行ってしまった。

 

「では、今のはノーカウントということで仕切り直しましょうか」

 

 高橋先生がノートパソコンを操作すると、プラズマディスプレイにこう表示された。

 

 生命活動

『Aクラス 木下優子 DRAW VS Fクラス 木下秀吉 DEAD』

 

 まだ生きてると思います。……多分。

 

「おい明久、天真。あの月乃瀬って奴は実際どれくらいやるんだ?」

 

 腕を組んだ雄二が前に出てきて、僕とガヴリールに問うた。

 

「Aクラスでも上位なのは間違いないよ。多分、苦手科目もないと思う」

 

「逆にぶっちぎりの得意科目もないな。全部オーソドックスに点数を取る。ヴィーネは真面目だからね」

 

「ちっ、そういうタイプか。ある意味一番厄介だな……」

 

 雄二の言う通りだ。全てオーソドックスに出来るということは、つまり穴がないということである。今まで僕らは相手の弱点に付け込んだり、搦め手を使って勝利をもぎ取ってきたから、単純な学力が物を言う勝負にはてんで弱いのだ。

 雄二が何かを考え込んでいると、そこに一人の女子生徒がやってきた。

 

「クックック、どうやら私の出番のようね。ヴィネット、相手してやるわ」

 

 自信満々にそう告げるのは、我らがFクラスの愉快な仲間の一人、胡桃沢さんである。

 彼女は月乃瀬さんと同じ悪魔。もしかしたら、何か弱点でも知っているのだろうか?

 

「教科は何にしますか?」

 

「えっ、私が決めていいんですか? えっと、じゃあ世界史で!」

 

 月乃瀬さんが言うと、高橋先生は即座にフィールドを展開した。作戦会議を続ける僕らに対して、早くしろと暗に告げているのだろう。

 

「サターニャ、一応お前の世界史の点数を聞いてやる」

 

「ハッ、あまり私を舐めないことねガヴリール! 世界史なんて、この私が刻む歴史にとっては些末な過去に過ぎないのよ!」

 

「いいから言えよコラ」

 

「やれやれ。いいわ、教えてあげる。アレは後ちょっとだったのよねー。そう、確かあと一点で」

 

「あと一点で?」

 

「あと一点で二桁だったわ!」

 

「下がってろ産業廃棄物」

 

「ちょ! 大悪魔たる私に向かってなによその口の利き方は! そういうアンタこそ世界史何点だったのよ!」

 

「高橋せんせ、Fクラスからは私が出ます」

 

「無視すんなー!」

 

 喚く胡桃沢さん(世界史9点)をスルーして、月乃瀬さんと相対したのは我らが駄天使ガヴリールである。なんだか自信あり気だけど、ガヴリールって世界史得意だったっけ?

 対峙する月乃瀬さんの顔も、少しだけ緊張気味だ。

 

「ガヴ、まさかアンタとこうして戦うことになるなんてね」

 

「そうだね。だけど、相手がヴィーネでも手加減しないよ」

 

「私もそのつもり! 全力で戦いましょう!」

 

「ああ、正々堂々(・・・・)とな」

 

 と言って、ニタァと嫌な笑みを零すガヴリール。

 どう見ても正々堂々とは対極に位置する表情だ。

 

試獣召喚(サモン)!」

 

 そんな僕の思考を遮るように、月乃瀬さんがお馴染みの短い単語を詠唱して魔法陣を展開させた。

 同じ悪魔である胡桃沢さんは謎の口上も言ってたけど、やっぱアレは彼女だけなのか……。

 

 世界史

『Aクラス ヴィーネ 376点』

 

「三百点台後半か……!」

 

 やはりAクラス上位並みの点数。しかも現れた月乃瀬さんの召喚獣は背丈ほどもある長く鋭い三叉槍を携えていて、見るからに強そうだ。

 Aクラスの生徒たちから歓声が上がり、月乃瀬さんは照れくさそうに頬を掻く。

 これはクラスメイト達から見てもかなりの点数なのだろう。単純に月乃瀬さんが慕われているというのもあると思うけど。悪魔ってなんなんだ本当……?

 

「さあガヴ、どこからでもかかってきなさい!」

 

 そう気合を入れて、召喚獣の槍を構える月乃瀬さん。

 

「その前にヴィーネ、一つだけ訊いておきたいんだ」

 

 対してガヴリールは、何故かひどく澄んだ瞳で月乃瀬さんに尋ねる。

 

「なに?」

 

「もしテストで正解が分からない選択の問題が出た時、ヴィーネならどうしてる?」

 

「え? そりゃあ消去法で絞り込んで、その中から……まあ、勘で選ぶかな」

 

「だよね。多分その点数の中にも、勘で選んで正解だったやつがあるよね?」

 

「あると思うけど……そんなこと確認してどうしたのよ? ガヴ」

 

「いや、これで心置きなく戦えると思ってさ。試獣召喚(サモン)

 

 ガヴリールの足元にも同じように幾何学的な魔法陣が展開される。

 その中から顕現するガヴリールの召喚獣は、いつも通り小さな弓とセーラー服を纏っていて──

 

 世界史

『Aクラス ヴィーネ 376点 VS Fクラス ガヴリール 400点』

 

 いつも通りじゃない、莫大な点数を叩き出していた。

 

「──さあヴィーネ、私たちの試験召喚戦争を始めよう」


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