問 以下の( )にあてはまる歴史上の人物を答えなさい。
楽市楽座や関所の撤廃を行い、商工業や経済の発展を促したのは( )である。
月乃瀬=ヴィネット=エイプリルの答え
『織田信長』
教師のコメント
正解です。
白羽=ラフィエル=エインズワースの答え
『総見院殿贈大相国一品泰巌大居士』
教師のコメント
色々な意味で言葉が出ません。
胡桃沢=サタニキア=マクドウェルの答え
『第六天魔王(※私のライバル!)』
教師のコメント
頑張って下さい。
天真=ガヴリール=ホワイトの答え
『本能寺燃やされたやつ』
教師のコメント
偉人に対してちょっと敬意が欠けていると思います。
番外編 お姉さま襲来す/バカ篇①
人には、何の前触れもなく胸がざわつく瞬間がある。それを虫の知らせというらしい。大して勉強に集中しておらず、国語の授業は聞き流しがちな僕でも、何故かその慣用句だけは頭に鮮明に記憶されていた。今思えば、この不可解な現象そのものこそが虫の知らせだったのかもしれない。
貴重な休日の午後、僕は家に引きこもってひたすら料理の研究に興じていた。意外に思われるかも知れないが、これでも僕は料理に凝っているのだ。幼い頃から我が家の炊事の担当は僕だったので、生活の中で自然と身についた技術なのである。
「うーん、やっぱり砂糖と塩の割合は、7:3の黄金比がベストなのかなぁ……。でも、こっちの6:4も甘じょっぱくて捨てがたい……!」
砂糖と塩は、料理のさしすせその中でも最重要視すべき調味料だ。何故ならこの二つさえあれば、カロリーとミネラルが摂取でき、必要最低限の栄養素を確保することが可能なのである。過去にはこれらの調味料を巡って戦争さえ起こったらしいけれど、それも納得だよね。
茶碗に注いだ水道水に配合した調味料を投入しテイスティングを行う。うん、やっぱり7:3だね。何も足さない、何も引かない──それこそが正解なのだ。
「ごちそうさまでした」
今日の夕御飯を完食し、両手を合わせる。
すると、不意に我が家のインターホンが鳴った。甲高い呼び鈴の音が僕一人のリビングに響き渡る。
「はーいっ」
茶碗を流しに置き、間延びした声を上げながら玄関へ向かう。誰だろう? 宅急便を頼んでいた覚えはないから、ガヴリールか雄二だろうか。特にガヴリールは隣の部屋に住む隣人なので、彼女はよく僕の家に転がり込んでくる。溜まったゴミ袋や余ったダンボールなどを押し付けられることもあり、もはや物置として扱われているような気もするが、深く気にしたら負けだ。
鍵のロックを外し、ドアノブに手を掛ける。
僕はこの時、ちゃんとドアスコープを確認するべきだった。
「──お久しぶりですね、アキくん」
「人違いです!」
バタン! と全力で玄関を閉じて、鍵を施錠し念の為チェーンも掛けておく。
それは服というにはあまりにも露出が激しすぎた。布面積が小さく、薄く、軽く、そしてタオル生地だった。
それは、まさにバスローブだった。
「な、なんで姉さんが……!?」
僕の平穏な日常が、ガラガラと瓦解していく音が聞こえる気がした。
○
『アキくん? 何故入れてくれないのですか? もしかして姉さんの顔を忘れてしまいましたか?』
そんなドア越しの声と共に軽いノックの音が聞こえてくる。それは僕にとって侵略者の足音にも等しい。
何故なら、彼女は海外留学をしていて本来ならここにいないはずの人間なのだから。
僕の実の姉であり、そして僕の天敵──吉井玲。
一年ぶりに再会を果たした姉は、何故かバスローブ姿だった。
「……ふぅ~…………」
僕は大きく深呼吸をし、冷静にこの状況を分析する。
物事には理由が存在するはずだ。考えろ、姉さんが今この状況で帰国してきた原因を……っ!
冷静に頭を回しながら、ベランダのバルコニーに輪ゴムを括り付け、何とかバンジージャンプの要領で脱出できないか試みる。すると背後から、ガチャッと鍵が開かれる音が響いた。
「なんで開いたの!? 一人暮らしをする時に鍵は換えておいたのに!」
家族がいつ帰ってきてもいいように防犯対策はバッチリだったはずだ。それなのに解錠されてしまったことに驚愕の声を上げると、姉さんは幼子を説得する母親のような口調でこう言った。
「アキくん、姉さんは大学で教育課程を修了しました」
「え? ああ、うん。ボストンにある大学だよね?」
「はい。つまり姉さんは立派な学士です。なので当然、ピッキングの資格も習得しています」
さも当然のように言ってのける姉さんである。
おかしい……! この人やっぱりおかしいよ……! 大学にはもっと世のため人のためになるような学びが沢山転がっていたはずなのに……!
「ですが困りました……。チェーンが掛けられてしまっては、ピッキングではどうしようもありませんね」
よしっ! 念の為チェーンもしておいて正解だった!
「仕方ありません。ここはお隣さんにお願いして、ベランダ越しに入らせてもらいましょう」
カチャカチャ ガチャン!
「姉さんおかえり! 元気そうでなによりだよ! 長旅で疲れてるでしょ? シャワー浴びてきなよ!」
「あらアキくん、気が利きますね。まるで話を逸らしたがっているみたいです」
「な、何を言ってるのさ姉さん! 帰国した姉を優しく迎え入れるのは弟の使命だよ! あ、荷物預るよ。重かったでしょ?」
「そうですね。ではお言葉に甘えて」
姉さんからキャリーバッグと大きな紙袋を受け取る。キャリーバッグには姉さんの私物が色々入っているんだろうけど、この紙袋はなんだろう? もしかして僕へのお土産とかだろうか。
「ふふっ、分かってますよアキくん。あなたの想像通り、それはアキくんへのお土産です」
「姉さん……! ありがとう、嬉しいよ!」
主に常識とか倫理とか色々なものが欠けている姉さんだけど、優しいところもあるんだよね。きっと僕が一人暮らしということを慮って、食料品とか衣類を持ってきてくれたのだろう。いつもギリギリで生き延びている僕にとって、物資の支援は素直にありがたい。
姉さんに感謝しながら紙袋を開くと、どうやら中身は衣服のようだった。本当は食料が欲しかったが、贅沢を言える身分ではない。紙袋の中に手を伸ばし、僕はその白い服を──白いナース服を取り出した。
「………………姉さん、これは?」
「おや、ご存知ありませんか? これはナース服といって看護師などの医療従事者が──」
「違う! 僕が訊きたいのはこれが何なのかじゃなくて何でこれを僕へのお土産に選んだのかってことだよ!」
「なるほど、確かにアキくんの心配もごもっともですね」
「分かってもらえて何よりだよ」
「ですが問題はありません。ちゃんと男物のナース服を選んできましたから」
「問題大ありだよ! 着せる気!? 僕にそのスカート丈の短い服を着せる気っ!?」
一体どこに需要があるというのだろう。こういうのはガヴリールや秀吉のように可憐な女の子が着るから良いというのに。僕なんかが着たところで、変態が一人爆誕するだけだ。ついこの前清涼祭で仕方なくメイド服を着たばかりだというのに、今度はナース服だなんて、本当に後戻りできない領域に至ってしまう。
「はあ、姉さんに期待した僕がバカだったよ……」
「酷いですアキくん。私はアキくんのためを思って一生懸命選んだのですよ?」
うっ、そう言われると悪いことをした気分だ。確かに、どんな形であれ親切にされたのを無下にするのは良くなかったかもしれない。
「ごめん、姉さん……」
「良いんですよアキくん。アキくんが私のナース服姿を見たかったということはちゃんと理解しました。次は私に合うサイズのナース服を注文しますね」
「理解してない! 姉さんは何一つ僕のことを理解してないっっ!」
どこの世界に実の姉のナース服姿を見たいと思う弟がいるというのだろう。姉さんの常識知らずっぷりは知っていたけれど、留学してから益々酷くなっている気がする。この人は海外で一体何を学んでいるんだ……?
「そんなことよりアキくん」
「そんなことよりっ!? 解くべき誤解を丸ごと全部そんなことよりで片付けないでよ!」
「私はアキくんのナース服姿と同じくらい大事な用事があって帰国したのです」
「だから待って! なんで僕のナース服姿が姉さんの中でそんな最重要課題みたいな扱いになってるの!?」
「これよりアキくんの生活と成績を調査し、このまま一人暮らしをさせてよいか判断します」
「……ゑ?」
ま、まさかの抜き打ち調査だと……!?
このままだと、僕の悠々自適な一人暮らし生活が送れなくなってしまう……! どうにかしてこの悲惨な現状を隠し通さないと……!
「あ、姉さん! あれはなんだろう!?」
「ん? なんでしょう?」
僕が姉さんの意識を逸らすため廊下の方を指差すと、まるでタイミングを見計らったかのように隣室のドアが開いた。
「明久、朝っぱらからうるさい……こっちは今起きたところなのに」
現れたのは、ボサボサの金髪と大きな欠伸を隠そうともしない女の子、ガヴリールだった。僕の隣人であり、同じFクラスに所属するクラスメイトである。
彼女は朝っぱらと言っているが、今の時刻はもう昼過ぎだ。恐らく徹夜したあと朝に眠り、そして今起きたばかりなのだろう。
いや、そんなことはどうだっていい。この状況は、非常にマズイ……!
「……アキくん、こちらの方は?」
姉さんはにっこりと破顔して僕に尋ねてくる。とても晴れやかな笑顔のはずなのに、どうしてだろう。身体の震えが止まらない。
対してガヴリールはそんなこと知る由もなく、眠そうに瞼を擦っている。そんな彼女の格好を思い出してほしい。ガヴリールが普段、どんな服装で過ごしているのかを。
そう、彼女はジャージの上着だけという、非常に際どい格好なのだ。勿論家の中でどんな格好をしようがそれはその人の勝手だけど、玄関先となれば話は別である。まあ、それは僕の姉さんにも言えることなんだけれども……。
「んあ?」
だんだん意識が鮮明になってきたのか、ガヴリールと姉さんの目が合う。僕は必死にアイコンタクトを送り続けていたが、どうやら少しだけ遅かったみたいだ。
知らない女性──つまりは姉さんの存在を認識し、ガヴリールは頬を赤らめて目を逸らす。
「ご、ごめん! お客さんがいたのか! わ、私は部屋に戻るよっ!」
そしてガヴリールは、慌てた様子で自分の部屋に引っ込んだ。僕はそれを見送ってから、恐る恐る姉さんに顔を向ける。その笑顔は、さっきまでと一ミリも変わっておらず、思わず悲鳴を上げそうになった。
「アキくん。私が出した一人暮らしをするための二つの条件、ちゃんと覚えていますか?」
「え、えっとね、姉さん。姉さんは昔からずっと綺麗だなって」
「質問に答えてください。さもなくば──」
「さ、さもなくば……?」
「──お嫁に行けなくなるチュウをします」
「わああっっー!? 勿論完璧に覚えてます! ゲームは一日三十分と! 不純異性交遊の禁止だよね!」
「よくできました」
「ぎゃぁぁっ!? なんで正解したのに顔を寄せてくるの!?」
「ご褒美のチュウです。ちゃんと覚えていてくれたアキくんには、お嫁に行けるチュウで勘弁してあげます」
「どちらにせよ逃げ道なんてなかったのか……! ま、待って姉さん! いやあああっ!?」
この後のことはよく覚えていない。
ただこの人がいる限り、僕に平穏ってやつは絶対に訪れない。それだけははっきりしていた。