The Dream Band   作:シベ・リア

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みなさんお久しぶりです!久しぶりの更新ですね、お待たせしました!と言ってもまだまだ2話、話は始まったばかりです。
それでは早速どうぞ!



第2話「聞いてしまいました。」

 

 

湊友希那よ。Roseliaというバンドのボーカルをしているわ。今は練習が終わって私の家に向かっているわ。なんでもお父さんがRoseliaのみんなに会いたいらしい。

私はこれまで色んなバンドや事務所の誘いを断り続けた。だから私が認めたメンバーに会いたいんだと思う。

 

「あ、みんなここだよ〜」

「ということはあれがリサ姉の家?」

「そうだよっ☆」

「お隣さん同士……いい……ですね」

「こういう関係はなんだか羨ましいですね」

 

リサはベース、紗夜はギター、あこはドラムで燐子はキーボード、そしてボーカルの私を合わせた5人がRoselia。私達は私達の最高の音楽で頂点に狂い咲く。そして1度落選したFUTURE WORLD FES.のコンテストにもう1度挑戦して、今度こそフェスへの出場権を獲得してみせる……!

 

「ただいま。遠慮せず入って」

「お邪魔しま〜す!」

「「「お、お邪魔します……」」」

 

リサはいつも通り、他のみんなは……少し緊張しているわね。

 

「いらっしゃい。リサちゃんはお久しぶりね。あとの3人が……?」

「えぇ、紗夜とあこと燐子よ」

「「「はじめまして」」」

「遠慮しないでゆっくりしていってね。優輝、みんなが来たわよ〜」

「あぁ、リビングに案内してあげてくれ」

 

リビングの方からお父さんの声が聞こえてきた。自分で出迎えに来たらいいのにと思いながら、私はみんなを連れてリビングに向かった。

 

リビングに足を踏み入れると私達に目を向けるお父さんの向かい側に誰かが座っていた。その人は私達が近付いたことを察したのか立ち上がってこちらに顔を向けた。

 

 

「えっ、嘘っ、なんで……!?」

「?紗夜……?」

「っ……湊さん!あ、あの方とはお知り合いなのですか!?」

「あの人……?」

 

紗夜はその人の顔を見るやいなや私にその人のことを問い詰めてきた。私はもう一度その人の顔を見たけれど……やっぱり見覚えがない。

 

「わ、私にも分からないわ……お父さん、その人は?」

「あははは……やっぱ最後に会ったのが小さい頃やったからなぁ……」

「小さい頃……?」

 

どうやら小さい頃の私はこの人に会っているらしい。

その人は髪の毛をくしゃくしゃとしてから私達1人1人の顔を見つめた。紗夜は珍しくどこか落ち着かない様子を見せている。

 

「ま、自己紹介しよか。オレの名前は響木雷光、ギタリストや」

 

「「「えぇ〜!?」」」

「や、やはりそうでしたか……!」

「でも、どうして雷光さんが私の家に?」

「雷光とは長い付き合いだからな」

「そうやな。お前と秋奈(あきな)ちゃんを引き合わせたのもオレやしな」

 

秋奈というのはお母さんの名前。

どうやらお父さんと雷光さんは結構長い付き合いらしい。正直びっくりしたわ。

 

「でも友希那ちゃんもリサちゃんも大きなったな〜。あん時はこんなにちっちゃかったのに」

「えぇ〜!?リサ姉も雷光さんとお知り合いだったの〜!?」

「えっと〜……そうみた、い?」

「な〜んや、2人とも覚えてへんのか?ちっちゃい頃は飴ちゃんいっぱいあげたやろ?」

 

飴ちゃん……?

 

「あ〜!飴ちゃんのおじさん!?」

「お兄さん!」

「あ、このやり取り……」

「思い出したか?」

「思い出しました。昔よく飴をくれた人。その人が飴を飴ちゃんと言うからリサと"飴ちゃんのおじさん"って呼んでた……」

「お兄さんな。でもこの歳ならおじさんって言われても仕方ないな」

 

それにしても、あの飴ちゃんのおじさんがあの有名なギタリスト、雷光さんだなんて思いもしなかったわ。

 

「まずはみんな遠慮せず座りなさい。話はそれからにしよう」

「そうね。みんな座りましょう」

「失礼します」

 

みんなが座ると雷光さんは両腕をそれぞれの太ももの辺りに置いて姿勢を前のめりにして私達ひとりひとりの顔を順番に見た。

 

「うん、まずは『The Dream Band』に参加してくれてありがとう。Roseliaが参加してくれることを光栄に思うわ」

「いえ、こちらこそ。お誘いありがとうございます」

 

紗夜がみんなを代表して雷光さんに返答した。

あ、そういえば『The Dream Band』の参加を決めた後、その企画のチラシをみんなで確認してたら雷光さんの名前があって驚いていたわ。

 

「自分らのステージ、見させてもらったで。あのFUTURE WORLD FES.のコンテストのな」

 

『っ……!?』

 

FUTURE WORLD FES.のコンテストのライブを見ていた?あの時は予選落ちしてしまった。最初は納得できなかったけれど、私達は誰からも認められるぐらいのバンドになると決めた。結果的には素晴らしくないけれど、これからのRoseliaの目標が出来たという点ではいい経験になったと思うわ。きっと雷光さんからの評価もあの人達と同じく………

 

「………あの時のライブは感動したで!予選落ちはしたけどあんなん大人の都合や。あんなん結成間もないバンドがする演奏ちゃう」

 

「……え?」

 

正直驚いたわ。てっきり「当然の結果だ」とか言われるものだと思っていたわ。みんなの顔を見る限り、私と同じ考えだったみたいね。

 

「意外か?でもこれはオレが自分らのライブを見て思った率直な感想や。それに、ガールズバンドの素晴らしさを教えて貰ったわ。遅くなったけど、ありがとう。ええライブやったで」

 

 

 

 

 

「───す、凄いねりんりん!私達、あの雷光さんに褒められたよ!」

「そ、そう……だね……!」

 

しばらくの沈黙の後、初めにあこが声をあげた。私も、私達のライブが有名なバンドマンに褒められるなんて思っていなかったからさらに驚いているわ。

 

「友希那も嬉しいんじゃないの?」

「………そんなことないわ。私達のライブが評価されるのは当たり前だもの」

「湊さんの言う通りです、皆さん落ち着いてください。この程度で喜んでいてはいけません。もっと上を目指さなければ……」

 

紗夜は落ち着いているような口振りだけど、コップを持っている手が震えているわ。

 

「紗夜、震えているわよ?どうしたの?」

「えっ!?い、いえ、別に……」

「プッ……クックックックック………」

 

紗夜は何事もないようにコップをコースターの上に置いた。一体なんだったのかしら?リサは顔を隠しているけどどうしたのかしら?

 

「ハッハッハッハッハ!自分らおもろいなぁ。もっと真面目なガチガチの子らと思ってたわ」

「そうなのか?でもこれぐらいが普通だと思うけどな。だってこの子達はまだ高校生だし」

「それもそうやな!」

 

お父さんと雷光さんは仲がいいのね。私達を前にしてもこんなに盛り上がっている。

それに……あんなに笑っているお父さん、久しぶりに見たような気がするわ。

 

 

「りんりん、友希那さんが笑ってる……」

「そう、だね……」

「きっと嬉しいんだよ、友希那のお父さんが楽しそうにしているのが……」

 

 

あの3人はなにをヒソヒソ話しているのかしら?

紗夜は……なんだか珍しく落ち着いてなさそうね。どうしたのかしら?

 

 

「あ、あの、雷光さん。1つお伺いしたいことがあるのですが……」

「ん、なんや?」

 

───紗夜が口を開いた。

 

「……雷光さんは何故、あれ程ギターが上手なんですか?何かコツや練習法があるんですか?良ければそれを教えてください」

 

「ふむ……」

 

紗夜は真剣な眼差しで雷光さんを見つめていた。その本気は横から見ている私にも伝わってくるわ。きっと雷光さんも感じているはず。

そして雷光さんは少し考えたような仕草をした後に紗夜の目を真っ直ぐ見つめて口を開いた。

 

「自分には、"自分だけの音"はあるんか?」

 

「自分だけの音……?」

 

「そうや。ずっと聞いてみたかったんや、嬢ちゃんのギターを聞いた時から。あの音は、本当に嬢ちゃんの音なんか?」

 

「っ……!」

 

「確かに完璧な演奏やった。聞いている人を確実に魅了していた。自分が、自分らがどんなけ練習を積み重ねてきたんかようわかった。でもな、嬢ちゃんのギターにはどこか足りんとこがあるように感じた。だから聞いてるんや、『あれは本当に自分の音だったのか』をな」

 

 

私には雷光さんの言っていることがわからない。紗夜の音は完璧で、それはこれまで培ってきた練習量から出せる音。私はそれを見込んだこともあって紗夜をバンドに誘った。いえ、それが大きな理由でもあったわね。

"あれ"は紗夜の音。紗夜自身が学び、練習してきた音。でも雷光さんはそれを、()()()()()()()()()()を聞いている。

だけど、雷光さんがあえてそれを聞くということは何か意味があると思うわ。紗夜もそれに気付いているからこそ、一点に視線を集めて考えている。

 

「オレから言えるのはそれだけや。

この日本には色んなガールズバンドがいた。でもその中でもRoseliaはトップクラスのバンドだった。自分らも思い知ったはずや、FUTURE WORLD FES.のコンテストに出てたバンドはどこも凄かった。その人らからすれば、プロからすれば自分らはまだ卵からかえって間もない雛や。だからこそオレはRoseliaに期待してる。自分らならまだまだ成長できる、上を目指せるんや。もちろん自分もやで、紗夜ちゃん」

 

「は、はい……!」

 

 

正直、雷光さんがここまでRoseliaに対して期待してくれているなんて思いもしなかったわ。みんなも肩に力が入っているみたいね。

 

 

────その期待に答えなくては。

 

 

私の胸の中でそんな感情が膨れ上がっていた。

 

 

 

「オレから話すことは以上や。本番、楽しみにしとくわ」

 

そう言った雷光さんはコップに残っていたお茶を一気に飲み干した。

 

「ご馳走さん。オレはそろそろ帰らせてもらうわ」

「先輩、もう帰られるんですか?」

「あぁ、残ってる仕事があるからな」

「そうか、気をつけて帰れよ」

「あいよ。また暇やったら遊びに来るわ」

「お待ちしてますね」

「ほんじゃあな、Roseliaの嬢ちゃん達」

『は、はい!』

 

雷光さんが帰った後、みんなはお母さんが作ったグラタンを味わいながら余韻に浸っていた。その気持ちが練習にいい方で影響すればいいけど。

そんなことを願いながら私はメンバーを見送った。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

私、氷川紗夜は湊さんの家から帰ってきてからリビングにいる母と父に挨拶をして、自分の部屋でギターの練習をしていました。することは今日の練習でした部分の復習から始まります。

 

 

『あの音は、本当に嬢ちゃんの音なんか?』

 

 

────不意に雷光さんから言われたことが脳内をよぎり、音が外れてしまった。

 

「全然ダメだわ。もっと集中しなきゃ……!」

 

深く深呼吸をしてから再びギターを弾く。

 

 

────私の音。それは練習に練習を重ねた、"あの子"に負けない音。いえ、負けなくない。

私はあの子に負け続けていた。でもこのギターだけは負けたくない。そう思いながらずっと練習を重ねてきた。

確かに軽率だったのかもしれない、あの雷光さんにギターのコツや練習方法を聞こうとした事が。あの子より上手くなるにはより上手い人に教わるのが手っ取り早いと思ったのかもしれない。

 

『自分には、"自分だけの音"はあるんか?』

 

────私らしくもなく感情のままギターを鳴らしてしまう。それを意識した時にはもう弾く手を止めていた。

 

「……今日はもう休みましょう」

 

私はギターをケースに入れて壁に立て掛けました。

そういえば、そろそろ定期メンテナンスの時期だわ。また楽器店に行かないと。

ギターの練習を終われば次は明日の授業の予習。いくらバンドをしていても私はまだ高校生、"学業第一"ですから。

 

 

「……お姉ちゃん、少しいい?」

 

数回のノックの後、ドアの向こうから"妹"の声が聞こえた。

 

「なに?私、今勉強しているのだけれど」

 

「ごめん、ちょっと話したかっただけだから……おやすみなさい」

 

「おやすみ」

 

私はいつもあの子を、妹の日菜を遠ざけてしまう。

それは私の中にあるコンプレックスのせい。

日菜は天才だ。見たものはすぐ覚えて出来るようになるし、学校の成績も、何もかも私はあの子に抜かされてきた。だから私はこのコンプレックスを持ってからはあの子と同じことを避けてきた。もう私にはギターしかなかった。でもあの子までもがギターを始めた。しかも、アイドルバンドにオーディションを受けて入ったみたい。

 

 

────ギターだけは、絶対に負けない。

 

 

その気持ちがさらにギターに対する思いを強めていった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

オレはCiRCLEで受付をしている時あるガールズバンドと出会った。

"Afterglow"。話を聞いた限りではメンバー5人とも幼馴染で、みんなで「いつも通り」いたいためバンドを始めたらしい。

彼女達の演奏はとても熱く、情熱に満ちていた。ライブを1度見させてもらったが、聞いていてついつい体が動いてしまいそうになった。この子達にも注目すべきやな。

 

 

そしてオレは夜勤の仕事が終わって帰る時、駅前であるガールズバンドと出会った。

"ハロー、ハッピーワールド!"。この子達の演奏を聞いていると自然に笑顔が零れてきた。ボーカルの弦巻こころちゃんは「世界を笑顔にしたいの!だからあなたも笑顔になってくれて嬉しいわ!」と言っていた。

この子達の演奏は聞く人を笑顔にする力がある。これはどのバンドでもできることではないし、注目していきたい。DJの着ぐるみがいたのは驚いたがな。

 

 

さらにオレはアイドルバンド、Pastel✿Palettesのライブに招待された。

流石はアイドルや。観客達の割れんばかりの歓声が耳を刺激してきた。バンドのライブとはまた違う雰囲気だ。

アイドルはよくわからんが関係者席の近くに座っていた人に聞くと、生演奏というのは珍しいらしい。ただでさえ歌のレッスンや他の仕事でも忙しいのに、それに合わせて楽器の練習もしているのは大したものだと言っていた。アイドルやから普通のバンドと求められるものは若干違うかもしれないが、その技術はガールズバンドと比べても遅れを取っていない。ここも注目していきたい。

 

 

Poppin'Party、Roselia、Afterglow、ハロー、ハッピーワールド!、そしてPastel✿Palettesの5バンドはガールズバンドパーティーを成功させたバンドだ。特に注目すべきなのはこの5組だろう。着々と日本全国からガールズバンドの参加表明が届いている。

『The Dream Band』の5つのバンドは都内の指定したライブハウスで行われるコンテストの優勝者で選出する。出来ればあの5バンドは固まって欲しくないが、5バンドに共通する点は、メンバーが近くにある中学、高校の2つの生徒だということだ。ということは同じ会場を選ぶことも無くはない。オレとしてはそれは避けたい事態やけど、これもルールやしな。それにチャンスは1回だけなんて決めてないしな。

 

 

 

「雷光、会場は全部決まったか?」

「あぁ、バッチリや」

 

3バンドとの出会いを思い出しながら居酒屋で呑んでたら、待ち合わせしていた涼真が隣に座り、自分の分のビールを注文した。

今日は企画のことを話すついでに呑みに行こうと誘われたんやけど、恐らく呑むのがメインやろうけど。

 

「それはよかった。中々手こずってたからどうなることかと思ったよ」

「心配おかけしてすんまへん、涼風さん」

「その呼び方はよしてくれよ」

「ははっ、冗談や冗談」

 

ビールが机に置かれるとオレ達はつまみになる一品を頼んでから遅れての乾杯をした。

 

いよいよ来月から第1回のコンテストが始まる。それに向けての準備とかに忙しくなるが、それ以上に今はその日が待ち遠しくてワクワクしている。しかし、コンテストの前に挨拶しないといけないのがめんどくさい。主催者というか、企画の担当者やから仕方ないか。

 

「何はともあれ頼んだぜ、雷光」

「あぁ、任せとき」

「絶対に成功させるぞ、この企画を」

「もちろんや」

 

オレと涼真は拳を合わせて『The Dream Band』の成功と互いの健闘を誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

───翌月。

 

───市ヶ谷家。

 

 

「よし、行こう!」

「うぅ、まだ眠い〜」

「私も眠い〜おやすみ〜」

「おたえ寝るな〜!」

「ははは、有咲は朝から元気だね」

「そういう沙綾もな」

「私はパン屋で慣れてるから」

 

今日は『The Dream Band』の予選当日!

早く行きたいから朝は早起きしたんだ。そうじゃないと混んじゃうからね!有咲の家でお泊まりして正解だった〜!家だったら絶対寝坊してたもん。

 

「それじゃあ、レッツゴー!」

「お〜!」

「お、おー」

「「お〜……」」

 

いざ、秋葉原へ!

 

 

 

───続く。

 

 





ありがとうございました!
何度も言いますが、雷光さんは主人公ではないです(ここ重要)。なのになんか雷光中心で物事が進んでる気が……
とにかく、この物語はここからがスタートですので!お楽しみに!
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