Fate/Grand Ordar The lost memory   作:カラクリヤシキ

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帰る場所があるのは、無償の余裕を与えてくれる。


カルデアと希望に呼ばれた英霊

ピピッという高い機械音が明かりの消えている部屋の中に一定のリズムで鳴り響く。

高音を鳴らし続けている時計が、ベットで寝ていた私をその音で目を覚まさせる。

 

「……7時半…」

 

まだ少し重い瞼を開けて時計を見れば、そんな時間だった。

この間の特異点での疲れが未だに取れていないのもあってか、まだ寝たい…

 

 

(…そうだ。今日は、ダヴィンチちゃんが私にやってもらうことがあるって言ってたから早起きしたんだった…)

 

…起きよう。

まだ寝たいなぁって思いながら体を起こして小さな欠伸をしながら腕を伸ばす。

 

――――わ、髪、ぼさぼさ…直さなきゃ

 

鏡で自分の寝癖を見て溜め息を漏らしながらブラシを手に持つ。

髪を整えて、顔を洗い、歯磨きをして…

支給されている服を着た頃にはもう眠気はある程度無くなり、意識もしっかりしてくる。

 

 

「いったぁ…」

 

身を整え終えて立ち上がろうとしたら全身、特に足に痛みが走り、思わず小さな声が漏れる。

 

「結構あちこち行ってたからなぁ。筋肉痛にもなるよね」

 

特異点ではずっと走りっぱなしだったし、休める場所なんて草木で横になったり座ったりするぐらいだったからな…でも、カルデアに帰ってきた後のベッドやシャワーが体にじわっと染み込んで完全に緊張や疲れが解れたのは良い思い出だよ。

 

 

「ほっと…」

 

…と、言うわけでまたベッドに行こう。

堅い椅子より柔らかいベッドが今の私には必要だ。絶対必要なんだ!まぁ、さすがに整えたばかりだから寝っ転がれないから座る感じになるけどね。

 

ーーーーぎしりと音を鳴らしながらベッドに座る。座ったお陰である程度、痛みも引いてくる。

やっぱり休めれる場所があるのは、やっぱり最高だ…

 

 

「……」

 

ベッドで足を遊ばせながらぼぅっとしていた私の目の端にハンガーで掛けてある着物が映る。

黒一色の羽織。フランスの特異点で黒猫さんから貸してくれた羽織だ。

着ると見た目よりも暖かくて、思ったよりも軽いものだ。

 

ーーーー特異点から戻ってシャワーを浴びようって話をしている時に羽織を返していない事に漸く気が付いてちょっとしたパニックになってたなぁ。

 

そう思いながら掛けてあるハンガーと一緒に持ち上げながら羽織を見る。

ロマンに聞けば、あの特異点で別れた黒猫さんに返せる方法が今は、無いらしい。

カルデアのシステムがまだ不安定で、同じ特異点に安全に飛べれないからだそうだ。

 

 

「ダヴィンチちゃんは、縁があればまた会えるかもって言ってたし…よし」

 

また、会えたらちゃんと謝って返そう。

そう心に決めて羽織を元にあった所に掛け直す。

 

 

「?なんだろう」

 

 

ハンガーを掛けていたら、羽織から何かがするりと落ちてきた。

カチャンッと金属音?のような音が鳴った所を見て、それを拾う。

 

…袋?

手に取ったそれは、手のひらサイズの巾着袋だった。

白い布で、中心に何かの紋章のようなものが描かれている。

中には、何か固い物が入っているのが手で触れて感じ取れる…もしかしなくてもこれ、黒猫さんの物だよね。

大事なものなのかは分からないけど、これもちゃんと返さないとね。

手に持っている袋を元にあった羽織の中に入れる――――

 

 

「中身は、見ちゃだめだよね…」

 

その言葉とは裏腹に、仕舞おうとする手を止めて袋を目の前に戻してしまう。

…中に入っているのはなんだろう?そんな好奇心が出てしまう…部屋に自分以外誰もいないのに首を動かして、視線を左右に映して確認する。

当然誰もいない。

 

「……」

 

よく分からない緊張感を感じながら袋を再び、見る。

ごくりと唾を飲みこむ。

――――ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、さっと見るだけなら…そんな好奇心と共にそーっと、ゆっくりと動く指が袋の紐を解いていく。

 

な、中には、なにが……

……

 

 

「先輩、おはようございます」

 

「ぅわぁっはぃ!??」

 

突然、後ろのドアが開く音と人の声に思わずよく分からない声を上げながら自分の胸ポケットに袋を隠してしまう。

見られた?見られちゃった?不安な気持ちになりながらも後ろにゆっくりと向く。

 

 

「せっ先輩、どうかしましたか?」

 

「マ、マシュ?」

 

後ろに居たのは、マシュだった。

驚いた表情をしているマシュを目にしていると、今度は、白い小さな何かが私目掛けて走りながら飛んできた。

 

「フォウ!」

 

「え、フォウ?」

 

白い物体の正体は、フォウだった。

白い毛に、ウサギのようにピンと長耳を立て、首元に小さなローブを着たリスのような変わった外見をしている動物だ。

 

 

「フォウさん、いきなり飛びついたら先輩が驚いてしまいますよ。

先輩、何か慌てていたようですが、何かありましたか?」

 

「え、あ、いや!気のせい、気のせいだよ!それよりもマシュは、どうしたの?」

 

「?はい。ダヴィンチちゃんとドクターロマンが至急、先輩に来てほしいそうです」

 

どうやらマシュは、ただ呼びに来てくれただけのようだ。

話を聞く限り袋の事は見ていないと分かり、気付かれないようにほっと胸を撫で下ろす…

 

「わかった。今から行くよ」

 

「はい。では、ダヴィンチちゃん達のいる所まで案内します」

 

マシュがドアを開けて廊下に出る。それを見て私もダヴィンチちゃんとロマンのいる所に行くために部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっむい!」

 

部屋から出て暫く経っての第一声がそれだった。

マシュがロマン達のいる所まで私を案内しながら一緒に廊下を歩いていると、さっきまで暖房が効いていた筈の廊下が急に寒くなり思わず声を出してしまう。

 

 

「まだ故障している場所ですね。今日は、外が吹雪のようですから、それも原因で何時もより寒く感じるんでしょう」

 

両腕を手で摩りながら窓の外を見る。廊下の窓越しに見える景色は、白一色の雪景色。

僅かに聞こえる風の音と、今も降り続けている雪の勢いが結構強めな吹雪だという事が察せられる。

 

一年中止まないんじゃないかっていうくらい雪が降り続けている何処かの山奥。そんな場所に建てられているのがこのカルデアだ。

こんな孤島のような場所に建てたのは、多分、魔術やカルデアのシステムを表の人に晒さないためなんだろうけど、数合わせで呼ばれたマスター候補の私には、此処が何処なのかまでは詳しくは教えられてない。

でも山奥なのは分かる…まぁ、外の景色を見れば当然か。

 

 

「まだ、あの爆発からそんなに経ってないもんね…」

 

「…はい」

 

私がこのカルデアに来たばかりの日に起きた爆発。カルデアのマスター候補達と職員を狙った爆発の跡が、こんな形でまだ残っている…

 

数日前にカルデア内部で起きた爆発事件。

カルデアの魔術師であるレフ・ライノール教授の裏切りによって仕掛けられた爆弾で48人のマスター候補が行動不能になった。

そんな最悪の日、マスター候補の中で唯一私は、話し中に居眠りして追い出されて、爆発から離れている部屋にいたから助かった。未熟な私が人理修復の旅を任されることにもなった出来事だ。

 

 

そして、所長が居なくなった日でもある……

 

 

 

「先輩、着きましたよ」

 

考え事をしながら歩いていたら、ダヴィンチちゃん達のいる場所に着いたようだ。

目の前にある自動ドアは、私がまだ行ったことがない所だ…此処で何をするんだろう?

 

 

「お、来たね」

 

「おはよう。立香ちゃん。昨日は、ちゃんと寝れたかい?」

 

マシュが自動ドアの前に行くとセンサーが反応してドアが横にスライドして開く。ドアの向こうには、ダヴィンチちゃんとロマン、そしてカルデアの職員の人達がいた。

職員の人達は、各々手元にあるパソコンのような機械のキーボードを打ち続けている。

 

 

「おはようダヴィンチちゃん。ロマン。うん、ぐっすり眠れたよ」

 

「それは、重畳。ちゃんと睡眠をとらないと体の疲れが取れないからね」

 

「疲れは取れてきてるよ。それでダヴィンチちゃん、やってほしいことって何?」

 

挨拶をして、大部屋の中を見渡しながら何をするのかを聞く。

職員達が使っている物以外にも大小の違う機械があちこちにあり、それらの機械から独特の音と光が僅かに聞こえ、見えることから恐らく今見ている全ての機械が起働しているんだということぐらいは分かる。

 

そして何よりも目に行くのが、その諸々の機械があるこの大部屋の中心に大きな丸い円が描かている物だ。

魔術に疎い私には、よくわからないけれど大掛かりで何かをするのは伝わる。

 

 

「ああ、話は、言うまでもなく次に行く特異点、そして我々の持つ戦力の事だよ」  

 

「次の特異点…と、戦力?」

 

「前々から思っていた事なんだけれどね。いきなり、それも闇雲に君達をその特異点に行かせるのは少々、いや、かなり危ないと思っていたんだ。

冬木で戦ったアーサー王。オルレアンでは、黒のジャンヌ・ダルクといった強敵を相手にして言えたのは、単純な戦力不足だ」

 

「戦力不足ですか…」

 

「マシュの守りは、確かに強固ではあるけど絶対じゃない。限界もあるし、ずっと君の事を守れるほど人理修復は、甘くはない。

それにマシュには、さっきの例で言った二人の持つ宝具のような高火力は出せない」

 

「…はい。確かに私の扱う盾では、黒のアーサー王、黒のジャンヌ・ダルクのような破壊力は出せません」

 

戦力不足…皆の話を聞いて確かにと思った。

今までのマシュの戦いは、英霊だからこそ出せる圧倒的な戦闘で守りが主体でも敵を盾で薙ぎ払ってきていた。けれど、そんなマシュにも限界があるのは、私でも薄々気付いていた。

 

 

「特異点先にいたサーヴァント達が味方になってくれたのは、とても大きな力となっていた。でも、次の特異点じゃそうはいかないかもしれない…だからカルデアの戦力増加をしようって訳さ」

 

その言葉と共に私達のいる部屋の中心に大きな魔法陣が青い光を放ちながら浮き出てくる。

突然の事で目を見開いてしまうけど、よく見ればマシュが特異点で何時も持ち歩いていた盾と同じデザインがしてあるのが分かる。

 

 

「これって…それに戦力増強!?」

 

「そう。我々の戦力となる者達を君が呼ぶのさ。歴史に刻まれた英雄をね!」

 

「私が英雄を…!」

 

思い浮かぶのは、二つの特異点で出会った英雄と呼ばれる人達だ。

特異点で会った英雄と呼ばれている人達の戦いは、あの迫力は今でも鮮明に思い出せる。子供の時から見てきたアニメや漫画の主人公達のように苛烈で、綺麗で、目の前で見ていた私ですら現実離れした幻想的なものだと思ってしまう程のものだった。

 

まさか自分が、数合わせで呼ばれた私がそれを間近で見れるなんて夢にも思わなかった。

…そんな英雄を私が呼んで一緒に戦う…そう思うだけで心臓の音が速くなるのが分かる。

 

 

「日々の修理でようやくシステムも安定してね。後は、魔力を注ぐだけだ。

とはいえ、修理したと言ったけどまだ万全じゃないし、そう何度も呼び出すことは出来ない。

いまならよくて6回が良いところだけど、もし呼べればこのカルデアで霊基を登録をして正規のサーヴァントとして契約されるんだ」

 

「そうなんだ…あ、でも魔力はどうするの?サーヴァントって確か魔力が結構必要じゃなかったっけ?私の魔力でも大丈夫なのかな…」

 

サーヴァントには、現界し続けるだけでも魔力が必要だって聞いたことがある。

それだけでも魔力を結構使うだろうし、なによりも肝心な戦闘は、力を沢山使うから魔力がもっと必要な筈…お世辞にもあるとも言えないような魔力量の私に出来るかどうかが不安だ。

 

 

「其処は問題はないよ。先に言っておくと、立香ちゃんの魔力量が少ないからっていうのもあるけど熟練の魔術師でも使役する数は基本一騎ぐらいなんだ。

主な魔力消費は、カルデアの電力で補って君への負担を無くすようにするから気にしなくていいよ」

 

それを聞いてほっと胸を撫で下ろす。

よかった。それなら私が魔力切れとかで倒れたら皆消えちゃうとか、そんな心配はないようだ。

 

「それと呼ばれるサーヴァントは、特異点先で縁を結んだサーヴァントくらいだろうね…と、忘れてた。はい、これ」

 

サーヴァントの説明をしていたロマンが何かを思い出したのか、いそいそと白衣のポケットに手を突っ込んで取り出して私に渡す。

 

「これって…石?」

 

受け取った物を見ると、其処には虹色に輝く綺麗な石があった。

まるで星のような形をしている特徴的な石で、手で握れば簡単に隠せるぐらいの大きさだ。

そんな変わった石と同じものが三つ、渡されていた。

 

 

「聖晶石と呼ばれている特殊な魔力が込められている石だよ。立香ちゃんには、これからそれを使って英霊を呼ぶんだ」

 

「この石で!?」

 

まさかこんな小さな石で英霊を召喚出来るなんて思いもしなかった。

もっと、こう、特別に難しい呪文とかを唱えないとダメかと思ってた…

 

「下準備は、もう済ませてあるから後は、その石を召喚サークルに投げるだけだよ」

 

「投げるだけっていうのも驚きなんだけど…この石ってそんなに凄いんだ」

 

カルデアの人達が魔方陣の準備をしてくれたからっていうのもあるけれど、それを差し引いても召喚出来る程の魔力がある石だと言われて、まじまじと自分の掌にある石を見てしまう。

 

「集めるのも一苦労な貴重な一品だよ。前々回の特異点先から少しづつ入手していたんだけどね。でも、なかなか手に入らなかったんだけど、ついこの前まで修復しに行っていたオルレアンでこの石が大量に回収出来たんだよ!その数はなんと30!!」

 

「オルレアンで?…って、これが30個も!?」

 

「僕達も驚く異常な数だったよ。僕達が知らないところでかなり大規模の戦闘があったんだろうね。お陰で今回の召喚に使う石にも余裕が出来たよ」

 

私達が知らない場所で起きていた大規模な戦闘。

そういえば私達が戦った数は、其ほど多くはなかったし、見掛けてもそんな大規模になるような数はいなかった。

恐らくマリー達のような英霊やフランス軍の人達がワイバーンを沢山相手してくれてたのかもしれない。

こんな形で助けてくれていることに、心の中で感謝する。

 

 

「と、まぁ大事な説明も大体終わった事だし、早速やってみようか。ちなみに一度の召喚に使う石の数は、三つだから、そのまま全部召喚サークルに投げてね」

 

「全部だね。わかった!」

 

掛け声と一緒に思いっきり石を浮かび出ている魔法陣に投げつけると召喚装置が石に反応して起動する。

起動し、光を放つ魔法陣の上に白く光る円状の輪っかが三つ高速に回転し始める。

 

「勢いがあるのはいいけど、そんなに強く投げなくていいからねー」

 

「え、そうなの?ご、ごめんなさい…」

 

「霊基パターン検索、クラス、バーサーカーです!」

 

職員の人がアナウンスで伝えるのは、サーヴァントの反応。

光の輪が収束して一つになる瞬間、一瞬強い光を放ち光の柱になる。

その光に目を細めながら、いよいよ誰が来るのかとドキドキしながらじっとその光を見続ける。

 

 

「…あら?此処だと思ってきましたが…」

 

「清姫?」

 

強い光が収まった魔法陣の中心にいたのは、前に行ったオルレアンで出会った清姫だった。

青い着物と視線を左右に揺らしながら何か探しているように見えたけど、私の声に気付いて此方に視線を向ける。

 

 

「はい、清姫です。立香、貴女がますたぁになるのですね。お久し振りという程、日は経っておりませんが、これからどうぞよろしくお願いしますわ」

 

「うん、よろしく!」  

 

清姫が差し出してきた手を握る。

最初に来るサーヴァントが清姫だとは思わなかったけど、ちゃんとマスターとしての自分と英霊の清姫が繋がっているのを右手に刻まれている令呪から伝わってくる。

 

 

「よし、ちゃんと呼べてるね。その調子で今度は、これを全部一気に投げ入れてね」

 

ダヴィンチちゃんからまた聖晶石を手渡される。

受け取った箱に入っていた石の数は、15個。召喚で6回行うって言っていたから清姫のと合わせれば丁度の数だ。

 

「了解!」

 

「それでは、私は下がりますね」

 

「ありがとう。それじゃ次いくよ!」

 

清姫が私の後ろに下がったのを確認した後、今度はさっきのような勢いよくではなく、下から優しく召喚サークルに聖晶石を全て投げ入れて起動する。

清姫が来た時と同じ三本の光の輪が回った後に一つになって強い光を放ち、新たなサーヴァントが召喚される。

 

 

「あら、召喚に応じたら凄い人の数…まぁ!やっぱり貴女が呼んでくれたのね。立香!」

 

「マリー!来てくれたんだ!」

 

「貴女の呼び掛けですもの。快くお受けしました!」

 

召喚されたのは、清姫と同じく一緒に戦ってくれたマリーだった。

オルレアンで会った時と変わらない赤と白の服と黒のミニスカート、特徴的な赤い帽子から出ている綺麗な白い髪を躍らせながら駆け寄ってくる。

 

すると魔方陣が間髪なく、また光の輪が出て一つになるってまさかの連続!?

 

 

「まさか僕が召喚されるとは夢にも思わなかったよ…しかも、マリアもいるなんてね。ちょっと心が踊るなぁ」

 

「アマデウス!貴方も来たのね。また会えて嬉しいわ!」

 

「うん、僕もだよマリア。まさか君と同じところで召喚する物好きなマスターがいるとは…ああ、これなら良い音が出せそうだよ。立香、マシュ、これからよろしく頼むよ」

 

「う、うん。此方こそ!」

 

「はい。よろしくお願いします!」

 

紫と黒を基調とした服を揺らしながらアマデウスが私達の所に来る。

…自然と勢いで来てくれたことのお礼を元気よく言い放っている私だけど実は、内心結構舞い上がっていて混乱している。

 

石を全部投げたから召喚が一気に行われてるのか、次々と英霊が召喚されていっているから気持ちの整理がついていないのが主な理由だろう…

出来ればもう少し心の準備がほしいけど、今まで出会った人達とまた一緒になれる嬉しさが勝ってわくわくしている自分がいる。

 

 

「セイバー、ジークフリート。召喚に応じ参戦した。またよろしく頼む」

 

そんな事を考えている間にサーヴァントがまた一人召喚される。

胸元と背中を大きく開いた鎧を着た灰色の長髪をした長身の男性だ。

背中に大剣を背負い、露出している胸元には、緑色に光る変わった紋様が刻まれている特徴的な姿をしている。

 

 

「ジークフリートも来てくれたんだ。こっちこそよろしく!邪竜を斬った人が来てくれて心強いよ!」

 

「ああ、俺も貴女のマスターになれて光栄だ。迷惑の掛からないよう努力する…?誰かが来たな」

 

会話の途中、ジークフリートが後ろを振り向くともう一人サーヴァントが召喚されていた。

深い青髪を腰まで伸ばし、右手に十字の杖を持った白を基調とした赤を混ぜた服を着た女性だ。

 

「私は、マルタ。ただのマルタです」

 

彼女は、そう名乗って私達の所に来る。その容姿を見た私は、オルレアンで会った時の事を思い出していく…もしかして…

 

 

「貴女は…もしかしてあの時に戦ったマルタさん!?」

 

「ええ、私も貴女方の事を覚えてます。あの邪竜を倒したのですね」

 

「うん!あの時は、大変だったけどなんとか倒せたよ…マルタさんがジークフリートの事を助けてなかったら、もうどうなってたことか…」

 

「それは、よかったです。無事に特異点も直って貴女も何事もなくて私も嬉しいです」

 

言っている事は、正に聖女と言われているだけあってとても丁寧で、佇まいも堂々としている感じがする。

それにオルレアンで狂わされていたような感じが全く感じられない。

 

――――聖女っていう人ってみんなこんな感じなのか…少し憧れるなぁ

 

 

「聖女マルタか、あの時は世話になった。礼が遅くなってすまない…」

 

「いえ、聖女として当然の事をしたまでです。お気になさらず」

 

「…すまない。しかし、あの悪竜を倒すのではなく鎮めた聖女が味方になってくれるとは…マスターの言葉を借りるのなら、俺も心強い」

 

「…え、ええ。私もそう思いますわ…はは…」

 

「マルタさん?」

 

「さぁ、いよいよ次が最後の召喚だよ!」

 

話の最後、マルタさんが変な空笑いをしているように見えたけど…今は、置いておこう。それよりも、召喚陣を見れば、既にサーヴァントの召喚をした光が放たれているから、そっちに意識を集中させよう。

 

そう集中させた私の目に映ったのは、長い金髪を三つ編みに結んだ女性だった。

召喚の際に起きた風の残りが十字の描かれている濃紺色のマントを少し浮かばせ、その下に着ている銀色の鎧が見える。

そして手に持っている物は、白く大きな旗…私は、あの旗を何度も見てきている。

あのオルレアンで私達が最初に出会ったサーヴァント、最後まで一緒に戦ってくれたあの聖女その人だ。

 

 

「ルーラー、ジャンヌ・ダルク。召喚に応じました。立香、マシュ。また貴方達に会えてよかった!」

 

「私も会えて良かったよジャンヌ!来てくれてありがとう!」

 

「はい。私もジャンヌさんと出会えて嬉しいです!」

 

「ジャンヌ、貴女も来てくれたのね!」

 

「マリー、貴女も来てたのですか!?」

 

「ええ!立香に呼ばれたんですもの。でもまさか、貴女とも一緒に旅が出来るなんて…大好きな人達がこんなに沢山…!もう、今日はなんて素晴らしい日なのかしら!」

 

「あー、確かにあのフランスで気に入ったマスターが僕達も呼んで、しかも最後はあの超憧れと言っていいジャンヌ・ダルクが来たら、そりゃもうマリアにとっては夢のような最高の光景だろうね」

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く、召喚室でお互いの再びの再開を喜んで少しの間、話に花が咲かせる。

 

「ライダーが二騎で、バーサーカー、キャスター、セイバー、ルーラーがそれぞれ一騎ずつと…結構どころか凄くいい結果じゃないか!

これならこの先の幾つもの特異点での戦闘もかなりやり易くになるよ!」

 

ロマンがガッツポーズをしながら召喚の結果に喜んでいる。

どうやら思っていたよりもずっと良い結果だったらしい。私としては、召喚に応じてくれた事だけでも大喜びなんだけどね…

 

 

「まさか不具合もなく、六名のサーヴァントを呼べるなんてね。天才の私も驚きだよ。

さて、それじゃあ召喚に応じてくれた英霊のみんな、今の状況を詳しく話したいから召喚室を出てこの人数でも座れる部屋に案内するよ」

 

ダヴィンチちゃんの案内にサーヴァントの人達がダヴィンチちゃんのいる所に行くのを後ろで見ていた私は、一息つく。

 

――――皆が来てくれて本当に良かった…失敗しなくてよかったよ…

 

 

「ますたぁ」

 

「清姫?どうしたの?」

 

召喚も一段落して落ち着いた時、清姫が私の所に来た。

何だろう?何か忘れ物でしたのだろうか?

 

「何か隠してたりしませんか?」

 

「え、隠す?」

 

「はい。貴女の所からとても匂うんです…あの方の匂いが」

 

清姫は、そう言いながら私に近づいてくると私の胸元辺りを見て手に持っている扇子を向ける。

私の胸元のポケット?……あ

 

(しまった。慌てて入れてたの忘れた…!)

 

ポケットにある袋を今更思い出す。英霊召喚の話の大きな話ですっかり忘れてた…!

ど、どうしよう。どう話して誤解を解けるか…いや、別に疚しいことをしてるわけじゃないし…

 

「あ、いや、これはね…」

 

「やはり何か隠していますね…では、嘘だけは言わないでくださいね。ますたぁといえども思わず火を吹いてしまいますわ」

 

「え!また火!?いや別に隠し事じゃないよ!」

 

「先輩、どうかしましたか?」

 

「おや、なにか楽しいお話かな?時間は、まだあるから私も混ざってもいいかな?」

 

「んー、聞こえた話だと誤解っぽい話だったね」

 

清姫との話で私が少し大きめの声を出してしまったのが原因でマシュやダヴィンチちゃん達に英霊の皆の視線が此方に向けられる。あれ?なんだかよく分からない感じに大事っぽくなってない!?

ご、誤解を早く解かないと…!

 

「誤解だって!た、多分これの事でしょ!って、あぁ!!」

 

急いで誤解を解こうという気持ちでポケットから出そうとしたのがいけなったんだろう。

慌てて出した拍子に紐が緩んでいた袋の中にあった物が勢いよく飛んでしまう。

勢いが強くて飛ぶ前にキャッチすることも出来ない。

そして飛んでいった先にあるのは、さっきまで使っていた召喚サークル。

石の魔力を使い終えてもう起動していない召喚サークルの中心に袋から出たそれが金属音を鳴らしながら召喚室内に響き渡らせる。

 

 

 

 

その瞬間、強い風が私達を襲った。

 

 

 

 

「わわっ!あいった!!」

 

「先輩、大丈夫ですか!?」

 

そして同時に私の額に袋から出たものがぶつかって私の元に戻ってくる。

それと同時に私の体勢も崩れ、強風の追い風のせいで尻もちを着きそうになる所を戦闘服に変えたマシュが盾を展開しながら支えてくれる。

 

 

「こ、これは、サーヴァントの反応なのか…!霊基パターンは!」

 

「は、はい。たった今解析が終わりました!霊基パターン…アーチャーです!」

 

「わわ、なんで独りでに起動してるんだ!?それに、この召喚反応…普通じゃないぞ!更に強くなってるぞ!?」

 

「ただ事じゃなさそうね。私達もマスターを守るわ」

 

「お願いします!」

 

突然の召喚反応に混乱するダヴィンチちゃん達、さっきまでの穏やかなやり取りから一変して緊張の走る空気が流れる。

マシュやサーヴァントの皆が私を守ろうとそれぞれの武器を顕現して荒れ狂う召喚陣に向けて構える。

 

 

「っ!」

 

嵐のような風が舞う中、召喚に生じるあの光の輪が収束していくのが見えた。

 

――――来る。

そう直感して、目を見開く。

収束した光の輪が柱となって眩い光を放った。

 

 

 

 

 

 

「召喚に応じ参りました」

 

召喚によって引き起こしていた暴風が止むと其処には、女性がいた。

右肩に赤い肩当てを着物の上に付け、腰に刀を差した銀髪の麗人。綺麗な顔立ちに凛とした赤い目、そして声と共に長い銀髪が(なび)く。

 

 

「――――」

 

ゆっくりと視線を動かしていた赤い目が、私の目と合う。

何もされていない。ただ見た、見られただけなのに、まるで幻想のような姿を見た私は、一瞬だけ思考を停止してしまう。

私と同じくらい細身の体…なのに、とても力強いという矛盾した何かを感じた。

何故そう感じたのかは自分でも分からないけれど、そんな感じがした。よくバトル漫画に出るオーラとかそういった雰囲気といえばいいのか…いや、それよりも――――

 

 

「ダ、ダヴィンチちゃん。ロマン。たしか縁のある人が来るんじゃ…」

 

「…説明不足だったね。サーヴァントの召喚は、なにも全てが縁のあるサーヴァントだけじゃないんだ。

例えば召喚するマスターと合うサーヴァントが呼びかけに応えてくれることもあるんだよ」

 

「…でも、今回のはそういう感じじゃなさそうなんだよね。石も使っていないのに…それも勝手に起動して、いきなり強い反応が来るなんて普通じゃない。まるで…」

 

――――何かに引き寄せられたかのような…

そう言いながらダヴィンチちゃんとロマンは、召喚サークルにいるサーヴァントを見る。

どうやらダヴィンチちゃんやロマン達から見ても異常な事だったらしい。

 

なんで召喚が勝手に…それに異常で、いきなりそんなことになった……

 

 

「もしかして…」

 

召喚サークルに転がり落ちた物を手に取る。もしかしてこれが原因で…?

 

「それは!?」

 

召喚された女性が私の持っている物を見て目を見開き、私の元に早足で近づいてくる…え?私、何かしたの?!

 

 

「え、えっと、どうかしましたか?」

 

「…そちらに持ってらっしゃる物なのですが」

 

「これ?」

 

「はい。どうか一度、貸していただいてもよろしいでしょうか?すぐにお返ししますので、どうか…」

 

どうしよう…いきなりのお願いに戸惑ってしまう。

別にただ渡すだけなら私もそんなに考えなかったけれど彼女が渡してほしいって言っているのは、黒猫さんが持っていた物だ。

これ以上勝手にしていいものか…なんて今更な事を考えてしまう。

でも、かなり必死な感じで頼んでる所を見ると只事じゃなさそうだ…

 

 

「いいんじゃない?別に悪さをしようって感じじゃなさそうだし」

 

「私もそう思います。危害を与えるようには見えませんし、それに何処かとても必死さを感じられます…」

 

「そう…だね。はい、どうぞ」

 

「!ありがとうございます」

 

ダヴィンチちゃんとマシュとが私と似た感じを彼女に感じていたのを知って決心し、彼女にそれを渡す。

黒猫さんが持っていたそれは、鉄で出来た変わった装飾品で形状は、歪で何を表しているのかはよくわからない物だった。

 

 

 

 

「あの…」

 

「間違いありません。これは…」

 

それから暫く彼女は、それを手で触り続け、じっと見つめている。

とても、深く考え込んでいるのか私の返事に答えてくれる様子がないない程集中している…

 

 

「っ!すみません。つい懐かしい物を見つけてしまったもので…」

 

程なくして漸く私に気付いた彼女は、そう言って私に返してくれた。

 

…懐かしい?

それって、憶測だけど黒猫さんが持っていたこれが、彼女の生きてきた時代にもあったということになる。

…もしそうだとしたら、凄い偶然だ。

 

 

「あ、そうだった。まだ自己紹介してないよね。私は、立香!このカルデアでマスターをやってます!」

 

「私は、そうですね…インフェルノとお呼び下さい」

 

「インフェルノ?」

 

それが名前?まるで外国の名前みたいだ。

私がまだ知らないだけかもしれない。今度、本で調べてみようかな…

 

「インフェルノ…んー、そんな名前の英雄は聞いたことないね。真名を隠した偽名かな」

 

「偽名…あ!偽名だったんだ。ちょっと信じちゃったよ…」

 

「誤解させてしまい申し訳ありません。誠に勝手ながら真名は、伏せさせてもらいます…すみません」

 

そう言って彼女、インフェルノさんは頭を下げる。

真名を言わないのは、私が嫌だからっていう感じではなさそうだ。

何処の時代の人なのかは分からないけど悪い人には見えないし…うん。真名は、カルデアや今後の特異点とかで話し合ってこっちから打ち解けてからまた聞いてみよう。

 

 

「そんな頭を下げなくてもいいよ!誰だって言えない事もあるしね。じゃあ改めて、これからよろしくね。インフェルノさん!」

 

「…はい。よろしくお願い致します」

 

「よし、最後にドタバタがあったけど一件落着だね。それじゃ、移動しようか」

 

その言葉を最後に、突然起こった騒ぎも何事もなく終わり、私達と最後に来たインフェルノさんも含めた全ての英霊達が召喚室から立ち去った。

 

これがカルデアで呼んだ英雄達との最初の触れ合い。初めての英霊召喚で、未知の特異点を修復するための大きな一歩。

どんな時代に行くのか、敵が来るのか、仲間が出来るのか…私には予想も想像もつかないグランドオーダーの始めて間もない出来事の一つだ。




――――その頃の黒猫と武蔵は…

「村の人に街があると聞けば、なかなか活気のある所ですね」

「…うどん、最高…ふふ…」

「玄信さん、いったいどんな夢を見ているんでしょうか…」

――――眠っている武蔵を担いでいる黒猫。
目的の宿を探すこと数刻が経つが…

「まさか宿が全て埋まっているとは…」

「おや?旦那さん、見かけない顔だね。旅の人かい?」

街の宿らしき場所を探すも見つからず途方に暮れる所に


「ずっと担いできた感じかい?大変だねぇ。見た所、宿が見つからなかった感じだね」

「よく分かりましたね」

「はは、そりゃそうさ。今日は、祭りみたいなもんだ。宿が埋まってない方が可笑しいぐらいなんだよ」

「そうだったんですか…」

「んー、やっぱり宿が無いと困る感じか…なら、うちに来るかい?」

「…え?いいのですか?」

「なに、大の男と女の一人や二人どうってことないさ。悪そうな奴でも無さそうだしね。その代わり、家の手伝いをしてくれたら助かるよ」

「それは勿論。是非お願いします」

「決まりだね。家は、こっちさ」

「はい。…これで玄信さんを寝かせれますね」

「…うどん、お代わり、大盛で……」

「…玄信さん。うどん、そんなに好きなんでしょうか?」

なんとか無事に宿を確保した黒猫と武蔵。
そして、夢にまで出てくるほど、武蔵がうどん好きだという事を知った黒猫でした。
――――
―――
――



やぁ、こんばんは。
帰還したカルデアのお話を一つ終わらせる事が出来ました。
また活動に今後の予定を書かせてもらっておりますので、どうぞ時間がありましたら寄って下さいませ!
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