Fate/Grand Ordar The lost memory 作:カラクリヤシキ
ーサァッー
風で葉が揺れ、葉と葉が擦れる音が静かな森に響く。
人が創る光も火も灯されてない月の光だけが
木々を、地を、川を照らす。
唯、静かな夜。
そんな人気等ない場所に人が一人、月を見上げている。後ろ姿しか見えないが、背格好からして男性だろう。足の
私も其なりに人をたくさん見てきているが、そのような服を着ている人はまず少ない。
そして、その上着の覆われていない足元の近くに赤い棒状のような物が見える。
あれは、刀の鞘ですね…
私が小さい時から見てきて実際に扱ってたり、今では仕事に使っているせいかそういった物に敏感になってしまっている。
だから、たとえ僅かにしか見えなくてもあれが刀だと瞬時に分かる。
月を見上げていた男は、
まるで月を掴もうとしているような動きで
「世界は、美しい…そう感じる」
広げた掌を、月を握り潰さんと拳に変えて
「だが、同じくらいに」
憎悪が籠ったような声で
――――憎い――――
怨嗟を呟いた。
「……」
パチリと瞼を開ける。
体は、何時もと変わらず少し重い…悲しい。
「私、眠ってたんですね」
どうやら私は、自分でも気づかないで眠っていたらしい。
今朝から何時もより調子が悪かったですが、見回りくらい行けるだろうと思い行こうとした時に近藤さんが私の顔色が何時もより悪いと言って今日一日非番にして休養を摂れと言われてしまった。
そこまで酷くはないと思っていたのですが、この調子だと思っていたより悪かったようです。
「近藤さんに感謝ですね…」
休んだお陰で体が少しは楽になっている。
これなら明日は、大丈夫そうですね…
「…はぁ」
少しため息をついて私がまた寝ようと目を閉じようと思った時先程見た夢をふと思い出す。
「そういえばあの夢なんだったんでしょう…」
怨嗟を呟いていた黒服を着た男の人が出た夢。
顔は、見えなかったが夢に出た男性に見覚えなど無い。
おそらく、ただの夢なんだろう。
ただの夢…そう思うのに…
「…」
何故か気になってしまう。
理由は、わからない…
もしかしたらその夢が、ただの夢ではないと心の何処かで感じて…
「おかしなことを…」
たった一度の夢に、そんなことを思うなんてどうかしてますね。
そう思いながら瞼を閉じる。
ーーその時ーー
ドシャッ
「なんです?!」
外からなにか重いものが勢いよく落ちたような音がした。
少しビックリして身体を起こしてしまいましたよ…
「…?」
布団から出て襖をゆっくりと開ける。
開けた先に目に映るのは、いつもと変わらない縁側と広い庭に黒い服を着た人が倒れていた。
人が倒れていました…
…
……え?
「え!?ちょ、ちょっと大丈夫ですか?!」
一瞬、訳がわからなくて頭が真っ白になりましたが、すぐに気を取り直して庭に倒れている人の所に駆け寄る。
「あの…」
倒れている人の所に着く、男性ですね。
私は、うつ伏せになっている彼の背中を少し擦る。
どうやら意識が無いようだ。
「…はぁ、っあ……はぁ…」
そして、息が荒い。額から汗が滝のように流れている。
もしかして熱?そう思って手を彼の額に触れる。
「!…すごく熱い」
これは、酷い風邪か別の何かを引かれてますね…
新撰組は、私以外全員出払っていて誰もいません。
こうなったら私だけで運ぶしかありませんね。
「よいしょっと」
とりあえず、私の部屋に運ぼう。
私は、倒れている彼の左腕を首に掛けてゆっくりと立ち上がる。
(?思っていたより軽いですね…
私より身長が高い男性なので重いと踏んでいたのですが…まぁ今の私にとっていいことなんですが)
想像していたものより楽だったので難なく部屋にゆっくりと運ぶ事が出来た。
「…こんな感じですかね?」
部屋に運んで早1時間くらいが経つ。先程まで私が寝てた布団に寝かせて、吸った水を絞った手拭いで顔の汗をふいてからまた水に浸けて絞り、手拭いを折り畳んで額に乗せたりと、ある程度の処置をした。
他人の看病なんて初めてで、咄嗟にこれくらいしか考えられなかったので少し不安だ…
「しかし、何であんなところに倒れていたんでしょう…」
泥棒ではなさそうですし、こんな状態で誤って外を出歩いたりするというのも変だ。
……
…
「ま、考えても仕方ありませんね」
とにかく今は、この人が起きてもらうまで待ちましょう。
…そういえば私は何をやっているのでしょうか?
自分も病人なのに、何で他人の看病なんてしているんでしょう…
「ふふっ」
病人が病人を看病するなんてと思ったら思わず笑ってしまう。
私、何してるんだか…
「…」
「あ、目が覚めたんですね!」
男の人が目を開ける。
呆然とした顔でじっとしてしまっている。
「…?」
「あのぉ…」
「あ、ああ!すみません…」
驚いてしまったのか、横になっている身体を一気に起こそうとして…
「っ…」
「だ、ダメですよ。まだ安静にしてなきゃ!」
無理に起きて眩暈を起こした彼の身体を手で支えてゆっくりと横にする。
「ありがとうございます…」
「いいですよ。それより体の方はどうですか?」
「はい、なんとか…」
そうは言っているが、表情が優れないように見える。
やはりまだ体の調子が悪いのだろう。
「まだ
「すみません…」
彼は、ゆっくりと深呼吸して落ち着かせている。
少し落ち着くまで待ってみよう。
外の葉音が聞こえるぐらい静かになって数分。
落ち着いたのか、彼の顔色は心なしか初めに見た時よりも良く感じられる。
「落ち着きましたか?」
「はい…」
彼が上半身をゆっくりと起こす。
「大丈夫なんですか?」
「はい、少しは回復しました…ところでここは?」
彼は、視線を右に左に動かしながら言う。おそらく何処にいるのかを聞いているんだろう。
「此処は、新撰組の屯所ですよ」
「新撰組?」
彼は、よくわからないという感じに首を傾げる。
まさか
「…もしかして新選組を知らないんですか?」
「…すみません」
ガーンと少しショックを受ける。新選組を知らないですか…
沖田さん、結構張り切って活躍してるから知らない人はいないんじゃないかなーって
思っていたんですが…少し自意識過剰で恥ずかしい。
「ただ、私が無知なだけだと思われます。気を悪くされたのでしたら申し訳ありません」
「い、いえ、気なんて悪くしてませんよ!大丈夫ですから!」
落ち込んでいたのがわかってしまったのだろうか、気を使われる始末…
話を切り替えよう。そうしよう。
「そ、そういえば、何故庭で倒れていたんですか?」
「え?」
彼は、何を言っているのか分からないといった感じで呆けた顔をしている。
「貴方は、其処の庭で倒れていたんですよ」
「私が…?」
身に覚えがないのか困惑しているようだ。
もしかして
「すごい音でしたよ。まるで高い所から落ちてきた感じでしたよ…覚えてないんですか?」
「…はい」
どうやら彼は、本当にわかっていないようだ。
私でもこれぐらいの嘘か本当かなんてことぐらい分かるつもりだ。
「そうでした…私の
何かを思い出したのか、少し焦った口調になっている。
たしか倒れていた所にそんな人はいなかったはず。
「いえ、貴方しかいませんでしたよ?」
「そう…ですか」
落ち込んでいるのが目に見える。それはもう絵にすればズーンとするくらいに…
確かに思い出した希望が切れたようなものですよね…
「ま、まぁとりあえずここで少しゆっくりしてください」
「は、はい」
ど、どうしよう。希望をバッサリ切っちゃった手前で少し気まずい…
「そうでした…」
少しの沈黙が破れる。
彼が私の方に体を向けて
「言い遅れました。助けていただいた上に看病まで
していただきありがとうございます」
ゆっくりと頭を下げる。
「そんなことしなくても大丈夫ですよ!顔を上げてください」
「しかし…」
「いいですから!」
いきなり頭を下げるから少し驚きましたよ。
少し納得してなさそうな顔をしているけど止めさせる。
この少しの会話でも彼の事が少し分かった気がします。
この人、多分善人ですよ…
――――そういえば
「あ、まだ名前を聞いてませんでしたね」
名前を聞いていないことに今更気付く。
貴方や彼と呼ぶよりは名前の方がいいでしょう。
「私は、沖田総司です。あなたは?」
新選組を知らないようですし
「私は」
私と彼の視線が合う。
「黒…黒猫と、そう呼ばれております」
「――――」
名前を聞いた一瞬、思考が停止する。
…え?
「く、黒猫ですか?変わった名前ですね…」
「よく言われます」
動揺を変に隠したせいで変わった名前と言いましたが『それ』は…その名前は――――
「この名前、結構気に入っているんです。特に付けられた意味が」
「…どんな意味ですか」
私は
――――私にとってとても重要なもので、たとえ迷信でも縋りたいモノで
「―――――――――――という意味ですよ」
それを聞いた瞬間に私は
「――――それは、とても良い名前ですね」
自然と口元が緩んで心から微笑んでしまった。
――――――――
――――
…あ
「そろそろ新しい水と布に交換しますね」
目の端に映りもう水も
…綻んだ顔を見られて恥ずかしかったのを隠しているわけではない。
ないですとも…
「すみません」
「気にしなくてもいいですよ。ほらまだ治ってないんですし横になってください」
幸い、彼には気づかれていないようです。
また体を横にさせるために両肩を手で掴んでゆっくりと体を倒す。
その時
「おう、沖田起きてる…か…」
障子が開かれる。
其処に立っているのは、新選組の皆さんや周りの方々から鬼の副長と呼ばれている土方さんが沢庵を片手に持って佇んでいる。
何故だか知りませんが信じられないようなものを見たような顔をしています。
「総司、どうだ調子のほう…は…」
そして、土方さんに続いて新選組の局長である近藤さんが入ってきました。
近藤さんは絶句しているような顔をして佇んでます。
なんでしょうこの空気…というか何で二人が此処に…あ、もうお昼休みの時間でしたか…
「沖田…」
「な、なんですか土方さん?」
「俺も
「え?」
「しかも、テメエに男がいるような話なんてきいたことねぇ…まさか無理矢理連れてきたんじゃねぇだろうな…」
土方さんは、何を言って……あ、少し考えたら分かってしまった。
今は、誰も居なかった時間の所に男女が二人だけで個室に布団が敷かれていて、しかも傍から見れば私が男性を押し倒しているように見えて…
つまりそういうことって、
「い、いえ、違いますよ!」
手と顔を左右に振り続ける。これで誤解は…
「じゃあ、その男はなんだ?」
「庭に倒れていたので看病を…」
「ほう、テメエだけしかいないときに庭で男が倒れてたから部屋に連れて看病していたと…
んな都合がいい状況があるかぁ!!!!」
土方さんが持っていた沢庵を懐に仕舞って鬼のような形相でこっちにゆっくりと近寄ってくる。
正直に言っていいですか?怖いんですが…は、早く誤解を解かないとまずいことに…!
「いや、ほ、ほんとうなんですって!」
「そういやぁ、近藤さんから体調が悪いって話を聞いていたが、そんな時に男を看病するなんて出来るとは思えねぇ…ってことは仮病か?」
あらぬ勘違いが膨れ上がってきてますよ――――!?
「いえ、ちが…」
「仮病をして、
そこへなおれ沖田、俺が直々にその腐った性根を叩いてやる」
最早聞く耳なしですか!!?
…仕方ありませんっ――――縮地!!
私は、素早くこの場から離れる。おそらく今まで使っていた縮地より早い自信があります。
これなら…!!
「逃げんじゃねぇぞ沖田ぁああぁあああぁあぁ!!!!」
…考えが甘かったです。
土方さんがすっごい顔してこっちに走ってきてる!!??
「だから本当なんですって!!もうやだ――――!!!」
なんでこんなことになったんですかぁ!!!
いよいよ短編予告を連載小説にして第一話を書き終えることが出来ました!
初の連載でこれもまた緊張してますが、これからこの連載小説を頑張って書いていこうと思います。
初心者故に誤字や他の誤りなど至らないことがあるでしょうが、これからお読みになられる方々、どうぞよろしくお願い致します。