Fate/Grand Ordar The lost memory   作:カラクリヤシキ

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運命は、少しずつ近づく…


休息の中での語らい

「これで全てですね…」

 

屍の唸り声が、竜の咆哮が鳴りやまなかった街が静かになり、辺りを見渡す。竜達は、地に伏し、石壁に穴を開けて突き刺さり息絶えている。屍も同様に動かなくなっている。

 

全て倒し終えましたね…これで立香さん達の所に向かえますね。さて、何処にいるか…ん?

 

 

「ガッ!!」

 

ドッ

 

後ろを振り向き、竜の噛みつきを避けた後に、足で竜の腹を蹴り飛ばす。

 

 

「取りこぼしてましたか…」

 

倒れていた竜が襲ってきた。まさか、まだ息があったとは…しかし、今ので確実に屠ったはずですが

 

 

「少し力の加減を間違えてしまいましたね。飛ばしすぎました…今のでとどめは刺せたとは思いますが…」

 

力を入れすぎで竜を見えなくなるところまで蹴り飛ばしてしまった…とどめはさせた筈なので気を取り直して探しましょう。立香さん達は何処に…いましたね…?最初に感じた強い反応とじゃんぬさんに似た反応がありませんね。代わりに強い反応が二つ、じゃんぬさん達の生命反応もとても強く反応している。戦っている可能性が高いですね…急がなくては……

 

 

 

 

「…………ん?」

 

立香さん達がいる方向に動かしていた足を止める。あの方向…たしか先程、私が竜を蹴り飛ばしてしまった方向ですよね……

 

私が竜を蹴り飛ばした場所に立香さん達がいて…先程の竜が飛んでくる。

 

 

もしその竜がぶつかりでもしたら…

……

 

 

「…」

 

血の気が引くのがわかる。その光景を思い浮かべた瞬間、私は、その場から走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「aaaaa!!」

 

「っ重い!」

 

ジークフリートに向かって攻撃を仕掛けたバーサーカーをマシュが盾で防ぐが思った以上に重く、その上、動けないジークフリートを守らなきゃいけないマシュは、迎撃することが出来ずにいる。

 

 

「ジャンヌ、マシュからあのサーヴァントを引き離して!」

 

「離れなさい!」

 

ジャンヌがマシュとバーサーカーの間に割り込んでバーサーカーの攻撃を阻止して、旗で強引に突き放して距離を取る。

 

 

「大丈夫ですか!」

 

「はい、助かりました!」

 

ジャンヌが、マシュとジークフリートの安全を確認して即座に前にいるバーサーカーに目を向け旗を構える。ジャンヌのお陰でなんとか二人とも問題はなさそう……あれ?

 

 

「?動きが止まった…」

 

「ur…a…aaa……」

 

先程まで攻撃してきたバーサーカーが動きを止めて一向に攻撃をしてこない。攻撃を休めて…いや、休めたというよりもジャンヌを見て攻撃を止めた…?いったい何が…

 

 

「aaaaaa――――――――!」

 

「なっく!!」

 

「ジャンヌさん!?」

 

攻撃を止めていたバーサーカーがいきなり雄叫びを上げながらジャンヌに向かって攻撃してきた。それもさっきよりも明らかに強く、魔力も上げながら攻撃の速度も上昇している。ジャンヌは、その猛攻に対抗出来ず、防御で手一杯になってしまっている。

 

何でいきなり…!それもジャンヌに集中して攻撃を!?

 

 

「何故急に此方を…っ!」

 

「どうやら彼の琴線(きんせん)に触れたらしいね…正気に戻すのも骨が折れる…しかたない。今回は、引かせてもらうよ。次に会ったときは、今度こそ君の首を貰うよ」

 

「あ、くそっ!」

 

向こうのアサシン、シャルル=アンリ・サンソンがワイバーンに飛び乗り、この場から去っていく。アマデウスが攻撃しようとするけど、他のワイバーンが盾になって追撃を阻止される。どうやらあっちの敵は、引いたみたい。いや、それよりも

 

 

 

 

ガギャンッ

 

マリー達の方を横目で見ていたら今までより強い金属音が前から響く。その音の発した場所に目を向けるとそこには――――

 

 

 

 

旗が空中に舞い、バーサーカーが無防備になっているジャンヌに向かって武器を振り下ろそうとしている姿があった。

 

まずい、あれじゃ直撃!?

 

「ジャンヌ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火花が散る。激しい金属音が辺りを何度も響かせる。

バーサーカーの攻撃が先程の比でなく明らかに力と速さを上げている。

 

(いきなり、何故…まずいっ)

 

バーサーカーの魔力が更に上げて手に持つ黒い鉄状の棒を横凪ぎする。あまりの猛攻で動きがついていけない…まずい、態勢がっ!

 

ガギャンッ

 

 

「しまっ」

 

防御をしたがバーサーカーの攻撃を受け止めきれず、旗を手から弾き飛ばされてしまう。それによって手を上に上げられ、無防備な状態を晒してしまう。

 

 

「ジャンヌ!!」

 

立香の声が後ろから聞こえた時には、既に目の前のバーサーカーは、赤い線が浮き出る鉄状の棒を振り上げていた。

 

この騎士、さっきよりも更に早くっ防御が間に合わない!

 

目の前のバーサーカーに対応しきれず、渾身の一撃をその身に受けてしまう――――

 

 

 

 

 

 

ヒュンッ  ゴッ

 

 

その時だった。

横から赤い何かが通り過ぎていった。

 

「…え?」

 

来る痛みを覚悟して身構えていた体の力を抜いていく。何が起きたのかがわからない。それに今まさに攻撃しようとしてきたバーサーカーも目の前からいなくなっている…まさか、さっきの赤いものが原因で?

 

 

「これは…」

 

「ワ、ワイバーン?」

 

赤い何かが通った場所を見るとそこには、バーサーカーを全身で下敷きに押し潰して倒れているワイバーンがいた。何故横からワイバーンが飛んで…それに、このワイバーン、既に死んでる?

 

 

「ur…ア…サ」

 

バーサーカーが小さく呟いて金の粒子になって消えていった。座に帰りましたね…しかし、最後に言っていた言葉は…

 

 

「アーサー…あなたの王でしたか」

 

アサシンのサーヴァント、サンソンが言っていたバーサーカーの真名、ランスロットが生前に仕えていた王の名前。急に此方を襲ってきたのもそれが原因だったのかもしれませんが…何故私に…?

 

 

「…おそらく似てたんだと思います」

 

「マシュ?」

 

「私の中にいる方がそう言っている気がするんです。姿形ではなく魂が似ていると…」

 

ランスロットが消えていった場所をマシュが見据えながら言う。私がアーサー王と似ている…サーヴァントになったばかりだからか、聖杯から十分に情報を手にしていないためか、アーサー王とランスロットの間で何があったのかは、分からない…でも私が原因で襲いかかってきたのは理解した…

 

 

「ジャンヌー!無事!」

 

立香が少し青い顔になって私の元まで走ってくる。おそらくさっきの攻撃が当たると思っていたのでしょう。

 

 

「はい、なんとか無事です」

 

「よ、よかった…」

 

私が無事だったことを知ると立香が安堵の表情を浮かべる。余程心配してくれていたのでしょうね…

 

 

「戦闘は、終了しました…しかし、何故ワイバーンが飛んできたんでしょう?それに、もう死んでますね」

 

「はい…」

 

マシュがワイバーンを見る。私もそれが分からない。何でワイバーンが横から飛んできたんだろう?

 

 

『僕も戦闘で手一杯だったから、それは分からないけど…とりあえず戦闘は、無事終わったみたいだね…お!朗報だ。どうやら黒猫さんもこっちに向かって来ているよ』

 

虚空からロマンさんの声が聞こえる。どうやら黒猫さんの方も終わったらしい。彼も無事だといいのですが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「み、みなさーん、無事ですか…」

 

「黒猫さん!」

 

ロマンさんの連絡から一分もしない内に黒猫さんがこっちに向かって走ってきているのが見えた。よかった…黒猫さんも無事のようです。

 

 

「あぁ、よかった…無事みたいですね」

 

私達を見て黒猫さんが安心したようにほっと息を吐く。とても焦っていたようにも見えたけど…どうしたのだろう?

 

 

「何かあったの?」

 

「実は…そちらに竜を飛ばしてしまったんです…」

 

黒猫さんが言いずらそうに言う…え、竜?もしかして、さっきのワイバーンが飛んで来たのは黒猫さんが原因!?

 

 

「飛ばした後に、そこに立香さん達がいることに気づいて急いで来てみたんですが…」

 

大丈夫でしたかと、黒猫さんが心配そうに私達を見る。おそらく…彼は、私達を巻き込んでしまったのではないかと思っているんでしょうが…私もそんな奇跡があるとは思ってもみなかったので唖然としてしまっている。

 

 

「ファインプレーだよ黒猫さん!!」

 

立香が黒猫さんに近寄る。その顔は、先程の青い感じではなく、喜びを隠さずに凄くキラキラとした感じになっていた。

 

 

「?ふぁいん??」

 

「あのワイバーンを飛ばしてくれたお陰でジャンヌが無事だったんだよ!」

 

『…え?あれ黒猫さんが飛ばしたの!?待った待った。ワイバーンを倒したの百歩譲ってわかるけど、それを西側から飛ばしたって…一体どんな力持ちなんだ君は!?』

 

虚空からロマンさんの声が驚愕を隠しきれないでいる。実のところ私も驚いている。彼が強いのは、わかっていましたがまさかこれ程とは…

 

 

「…すみません。いまいち状況が、あと言葉もよく分からないものが…」

 

「先程、私と戦っていたサーヴァントの攻撃が後少しで私に当たるところにあのワイバーンがその攻撃してきたサーヴァントに当たったんですよ」

 

「…なんと」

 

黒猫さんは、信じられないといった顔で目を見開て固まる。こんな奇跡みたいなことが起きるなんて信じられないでしょうね…

 

 

本当に彼には、助けられてばかりですね…

 

 

「でも、本当に良かったわ。黒猫さんも無事で」

 

「うん、竜殺しも見つかって、黒猫も無事だったことだし、早くこの街から離れよう。またあのおっかない竜を連れた黒いジャンヌが戻ってくるかもしれないしね」

 

マリー達の方も終わったようだ。たしかにまたあの黒いジャンヌが向かってきたらまずい…

 

 

「じゃあ休めそうな所まで行こう!」

 

立香を合図に私達は、街から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう使われていない砦のようです。今夜の宿にしましょう」

 

街から離れた私達は、使われていない砦を見つけて、そこを宿にすることにして少し落ち着いたところでジークフリートの傷の治療をした。

 

 

「呪いを取り除くには、あと一人聖人が必要ですね…」

 

だけど、その傷は呪いを受けた傷らしく、マリーの宝具でも治しきれない。ジャンヌが言うには、あと一人聖人がいないと呪いが解けないらしい。

 

 

「それじゃあ、明日は、聖人探しかな」

 

砦の中で話し合い。明日、ジークフリートの呪いを治せる聖人を探すことを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜になってみんなが寝て休んでいるけど……

 

眠れない…横になって30分くらい経ったと思うけど、眠気が来ない。多分、まだ朝の出来事がまだ忘れられないのが原因だと思う。私自身は、もう気にしていないと思っているけど、まだ体の方が緊張しているらしい…外に行って気分転換しよう。

 

 

 

 

 

「…わぁ」

 

砦から出て近くの草原に座って空を見上げる。

現代では、都会から離れた山からじゃないと見られないような数の星が輝輝いて、辺りを照らしている。そういえば、レイシフトしてから夜に寝る時はいつも森の中だったし、夜になる前には森の中で薪の準備もしてたから見れてなかった。

 

綺麗だなぁ…

 

 

「立香さん?」

 

「わわっ」

 

後ろから突然声が聞こえてビックリして慌てて後ろを向くと、黒猫さんがいた。

 

 

「黒猫さん…どうしたの?」

 

「少し夜風に当たろうと思いまして…立香さんは、眠れないのですか?」

 

「…うん、少しね。でも眠くなかったからこんなに綺麗な夜空が見れたんだし、得した感じだよ」

 

「そうですか…」

 

黒猫さんが私の隣に座って空を見上げる。

私もまた空を見る。何度見ても綺麗だな…

 

 

「……」

 

沈黙が流れる中、私は、今日の出来事…黒いジャンヌとあの邪竜を思い出す。

見ただけでわかった。あの邪竜には勝てない…助かったのも攻撃してこなかっただけ。ジークフリートが宝具を発動してくれたからあの黒いジャンヌは、撤退をしてくれた。運が良かっただけだ…本当に…でも次は、そうはいかないかもしれない。今度こそ私達に何の躊躇(ためら)いもなく攻撃してくると思う。

 

 

近いうちにまたあの邪竜と戦闘になるんだろうな…

 

 

「不安ですか?」

 

「…え?」

 

横から声が聞こえて、考え事を止める。横を見ると黒猫さんが少し心配してそうな顔をして私を見ている。

 

 

「とても、思い悩んでいたような顔をしてましたので…」

 

どうやら自分でも気づかないうちに表情に出ていたらしい。

表には出さないようにしてるんだけどな…前にもそんなことを言っていたね。

 

 

「…私ってそんなに顔に出てる?」

 

「いえ、ただ私には…どこか無理をしているように見えました」

 

「……」

 

「少し違いますが、貴女のように耐えようとする人と前に一緒にいたので、そういうものに敏感になってしまったようです。まあ、気のせいということもありますか…」

 

図星だと思った…黒猫さんは、まだ確信していない感じだけど多分、それは気のせいじゃないと思う。当たってると心の中で頷く。

 

近くにいた人…この特異点じゃない黒猫さんがいたところに私と似た人がいたんだ……そうだ

 

 

「黒猫さんは、怖くないの?」

 

「私ですか?」

 

「うん、だっていきなり起きたら知らない場所にいたんでしょ?しかも色んな敵が襲い掛かってくるんだよ…怖くはないの?」

 

「……」

 

気になった。黒猫さんが私達と出会う前までは一人で、知らない場所で戦っていた。だれにも頼ることもできない。頼る人がいないこの特異点にいた…そんな状況、普通はとても怖いんじゃないのか、戻れなくて不安なんじゃないのか…

 

 

でも、すごく強いんだからそんなことはないのかな…

 

 

「私も少なからず不安はありましたよ」

 

「…そんなに強いのに?」

 

意外だと思った。てっきり不安や怖いものなんてないと言うのかと思ったから…だって凄く強くて、苦戦なんていうものとは無縁だと思った人に不安があるなんて思わなかったから。

 

 

「強さは、関係ありません。どのような強い力を持っている人でも不安というものは抱えているものです」

 

「そうなの…?」

 

「はい」

 

どんなに強い人でも不安があるものなんだ…強ければ怖いもの無しなんだと思ってたから、新鮮な話に聞こえた。

 

 

「不安が溜まれば心身によくありません。それをどのように無くしていくのかを考えるのが大事ですよ」

 

「無くす…黒猫さんは、その不安をどうやって消していくの?」

 

聞いてみたい。私にも出来るのなら黒猫さんのやり方を参考にしてみたい。

 

 

「私の不安は、もうほとんど消えました」

 

「…え、消えた?」

 

…そういえば黒猫さんは、初めに『ありましたよ』って言っていた…でもどうやって消えたんだろう?

 

 

「あなた方と出会ったからでしょうね」

 

「私達に?」

 

私達と会ったことで不安が消せた?どういうことだろう…

 

 

「一日だけですが、あなた方の話を聞いて、未来を取り戻そうと必死に頑張っている姿を見て、何を不安がっているんだと私自身を叱って消しました」

 

私達を見て、話を聞いて、自分を叱って不安を消した…と黒猫さんが言うけどそんな簡単に消せるものなんだろうか…

 

 

「それだけで不安は消えるものなの?」

 

「勿論全てではありません。不安を消す方法は、人によって様々ですが意外と切っ掛けさえあれば解決するものだと私は、思っています」

 

意外と近くに解決する方法があるか…今度、探してみようかな。

 

「……そっか」

 

でも今は、ワイバーンだって無傷で倒しちゃうくらい強いこの人にも不安があったことに…不謹慎かもしれないけど、心のどこかで私は、それに安心感を覚える。そして共感も…

 

黒猫さんも私と同じで不安だったんだ…

 

 

「立香さんは…」

 

「立香でいいよ」

 

一緒に行動しようって言ったときから思っていたけど、やっぱり『さん』付けより呼び捨ての方がいい。それにこの人には、そう呼ばれたいと思った。

 

 

「また明日も一緒に頑張ろうね。黒猫さん」

 

「…はい。よろしくお願いいたします」

 

黒猫さんが頭をペコリと下げて応えてくれる。

うーん、やっぱりまだ固い感じがするけど…まぁ、何日も付き合えば(ほぐ)れるでしょ…きっと

 

 

「ふぁ…」

 

話を終えたら欠伸(あくび)が出ちゃった。結構話してたから時間もそれなりに経って、ようやく今日の疲れがきたんだろう。(まぶた)が重い…

 

 

「ックシュッ」

 

それにくしゃみも…少し外にいすぎたかな。ちょっと体を冷やしちゃったかも…

 

 

「明日も歩くでしょうから、早くお休みになった方がいいですよ。見張りをしておきますので安心して寝てください」

 

私が寒かったのに気づいたのか、黒猫さんが自分の着ていた羽織を私の肩に掛けてくれる。寒かった体が暖まるのがわかる。

 

あったかい…初めて会った時にも思ったけど、やっぱり優しい人なんだと思う。

 

 

「ありがとう…」

 

黒猫さんが見張りもしてくれるらしい。うん、黒猫さんなら安心かな。

 

あっ今の欠伸も聞かれちゃってたってことだよね…少し恥ずかしいけど、やっぱり思ってたより疲れてたらしい。眠い…

 

 

「黒猫さんも見張りが終わったらちゃんと寝てくださいね」

 

「えぇ、そうします。おやすみなさい。立香」

 

「――――」

 

早速、呼び捨てで呼ばれた。どこか他人行儀っぽくて距離があるなって思っていたのがなくなった感じがする。

 

うん、やっぱり呼び捨ての方がいい。それになんだか心地が良い。

 

 

「――――うん、おやすみ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

立香さん…いえ、立香が砦の中に入るのを見る。

さて、生命察知を少しやってみますか…

 

 

「…?」

 

砦の入口の影に誰かがいるのを感じる。これは…?

 

 

「ましゅさん?」

 

近づいて確認すると其処にいたのは、ましゅさんだった。

 

 

「あ、いや、その…先輩がいなかったので外にいるんじゃないかと思いまして…」

 

隠れていたことが()れたせいなのか、慌てた様子を露にする。

 

しかし、何故立香を探していたのに隠れて…あぁ、もしや私と立香が話しているところを見て思わず隠れてしまった、といったところでしょうか…ということは

 

 

「もしかして、先程の会話を…」

 

「…すみません」

 

ましゅさんが、申し訳なさそうに謝る。やはり、先程の話を聞かれてしまいましたか…

 

 

「お恥ずかしいところを御見せしました…」

 

「い、いえ、恥ずかしいことなんてありませんよ!それにとても(ため)になる話でした」

 

「…そうですか」

 

為になるようなことは、言ったつもりはありませんが…

 

 

「あの、ありがとうございます」

 

「?」

 

「先輩のことです。元気付けてもらって…先輩が悩んでいるなんて考えてもみませんでしたから…」

 

それで私にありがとうと…

 

 

「お気になさらず…彼女、立香のことを大切に思っているんですね」

 

「はい!私にとってとても頼りになる大事な先輩です」

 

「大事ですか…」

 

端から見ても、とても仲の良い二人だと思っていましたから、このように心配するのも納得ですね…そういえば、為になると言っていましたが…もしかして

 

 

「ましゅさんも何か悩みがあるんですか?」

 

「…はい、ですが私のはとても単純なものなので時間は、そんなには掛からないと思います」

 

一瞬、ましゅさんが目を見開いていたがすぐに元に戻して返答する。やはり、ましゅさんもでしたか…だう゛ぃんちさんの話によれば彼女は、元は戦う事が出来ない者であったらしい。今まで戦えているのは、ましゅさんの中?にいる英霊の方のお陰だとか…

 

 

「そうですか…もし、まだ悩むようでしたらいつでも頼ってください。頼れるほどの力があるかどうかは私自身にもわかりませんが出来る限りの力を尽くしますよ」

 

「――――はい、ありがとうございます」

 

先程まで悩んでいたような雰囲気を消してお礼を言うましゅさんを見る。

つまりそれは、ましゅさんの肉体は、その人のお陰で戦闘に慣れてはいるが精神の方がまだ慣れていないということ。

年端もいかない子供をいきなり戦場にいかせるようなもの。大なり小なり不安や恐怖があって当然。

立香も同様に戦場とは無縁だった二人…そのような人達を放って見放すことは出来ませんが…少しお節介が過ぎましたか…

 

 

「黒猫さん?」

 

「あぁ、すみません。少し考え事を…さ、そろそろマシュさんもお休みになってください」

 

「?はい、では黒猫さん。おやすみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

ましゅさんが私に一礼をしてから砦の中に入って今度こそ一人になり、草原を見渡す。気配も視界にも敵は、見当たりませんね。

 

 

「…」

 

この数日は、本当にどたばたとしましたね。起きてみれば、見知らぬ外国で竜や動く屍に強い生命力を持った方々を退治して、立香達と共にすることになって今に至ると…本当に色々とありましたね。

 

しかし…

 

 

「大事なもの…ですか……」

 

先程のましゅさんが話していた大事なもの…

私にも大事なものはある。それはもう沢山。私が出会った方々がおそらくそれだ。もちろん、立香達もそれに含まれるでしょう。

 

 

 

 

 

なら――――

 

 

 

 

記憶があった頃の私には、そういうものがあったのでしょうか…




やぁ、こんばんは。ちゃんと書けているのか未だに不安です…
いよいよ中盤に差し掛かる頃合いです。次は、いよいよかな…黒猫の不安も後々に書けるといいな…頑張ろう。第9話の予定もいつも通りに活動報告にて書かせてもらおうと思います。よかったらどうぞ見に来てくださいませ!感想等がありましたらどうぞ!欲を言えば前向きが好みです。
では、活動報告でお会いしましょう!
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