第二次月戦争の跡 少年編   作:まぐねたー

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外に逃げ出した少女が自分の身体の情報を渡してしまい、研究所の仲間の安否を心配している頃、少年達は…


サイクル

 僕は「アポロ」と呼んでくれる人が居なくて元の番号で呼ぶ人しか居なくなった。囚人みたいで良い名前じゃないってあの人は言ってた。あれから僕は念願の狙撃兵兼衛生兵になる事が出来た。これなら怪我を治してみんな僕に感謝してくれる。きっと認めてもらえる。

「おいどんくさ、その救急箱は一番大事な物なんだ。絶対に敵に盗られるなよ。俺達にどんな薬品が効くか分かっちまうからな。」

「分かってるよ。」

「お前は運動音痴だし足も遅いから心配なんだよなあ。そうだあいつらに盗られそうになった時の為に時限爆弾をつけとけよ。」

「うん。」

 隠れてスコープで敵を探していると敵意を感じて振り返った。彼が何かのボタンを押そうとしていたので銃で腕を撃った。

「ねえ、何してるの?」

「う、撃ちやがったな…俺はテメーが嫌いだっ…テメーが気に入らない奴を殺してるのは分かってんだぞ?皆お前に厳しく当たってた兄弟だ。しごかれなきゃ強くなんねーんだよ。テメーが落ちこぼれだから悪いんだよ…」

「違うよ。あんたも僕を嗤ってた癖に。八つ当たりなのも憂さ晴らしなのも目を見れば分かるよ。あんたは僕の受けた扱い全てを見てきた訳じゃない。」

「へっ…そんな被害妄想…」

 僕は素早く走り幅跳びをして飛んでいる最中彼の頭に薬箱をダンクした。

「なっ…!?は、外れないっ!」

「僕がいつまでも運動音痴だと思った?ねえ、これでも僕は落ちこぼれなの?あんたは落ちこぼれじゃないんでしょ?だったらあんたを殺したら僕は落ちこぼれじゃなくなるね?」

「そんな訳ねえだろ…外せえっ!クソガキが!」

「どんな訳なのか僕には分からないよ。ルールは弱肉強食だろ?」

「俺達に気に入られようとしねえからだ!」

「はあ?人と仲良くなれなかったら落ちこぼれ?流石に土下座しても仲良くなろうとしない人とは仲良くなれないよ。そんな人と仲良くなったってメリットなんてないよ。…あ、そろそろ時間だね。残念だよ。死んでも僕を認めてくれないなんて。」

 拾ったスイッチを押して爆発と同時に小さな岩陰に隠れた。子供で良かった。

(地獄に堕ちろ、クソ野郎。)

「何か爆発音がしなかったか?」

「誰か、ゲノム兵みたいなのが死んでるぞ。また殺した人数を報告しなきゃいけないのかなぁ。やれやれ…」

 敵二人が死体を見ている隙に頭を撃ち抜いた。

「また殺したのか?本当に殺すのが好きだな。必要最低限にしろって言ってるだろ。生きた人間にも活用方法はあるんだから。」

「はーい…」

 僕達は足りない人員を確保する為、罠を張り、麻酔銃を構え、死者を操っていた。僕はずっと3人のグループを観測していた。

「何でこんな小競り合いをしなきゃいけないんだ。」

「戦闘機は金がかかるからな。」

「戦後だから物資もない。戦闘機もほとんど壊されてる。」

「金が掛かったって大型戦闘機で一気にドーンとやれば良いんだ。こっちは死者も出てるんだぞ。おかしいだろ。」

「だから彼等を殺すべきじゃないって声も多いんだって。俺らだって何人も殺してるよ。一部の人にとっては俺達が悪なんだよ。ドーンってやったらみんな死ぬだろ。」

「いや説得も捕獲も無理だ。もうこっちの事は絶対信用してくれないんだ。」

「それにあいつらどんどん化け物に仕上がってきてる。反射神経の高さと瞬発力で銃撃を躱すし。跳躍力で飛びかかってナイフで殺す。高い視力もあるだろうから狙撃も数km先から来ているんだろう。生命力も高くて手足がもげてもショック死や失血が少ない、毒薬も麻酔薬も効かない。生物兵器としての開発に切り替えたんだろうな。」

「まるでゴキブリだ。」

「おい。彼等に失礼だろ。」

「サイボーグ化もされてるし。そいつらはさらに凶暴だ。でかい義手で頭を握り潰したり、ジェット機能のついた足で追いかけて飛び蹴りとか、背後から踵落としとか、ジェットの噴射熱で焼き殺すとか…」

「背中についた機銃は気付いた敵の射線をしゃがんで避けると同時に攻撃も出来るんだ。あの位置に機銃があると急所も打てないし。ああ…もうやだなぁ。」

「これでも和解出来ると思うか?」

「しなくちゃいけないんだ。声を掛け続ければいつかは…」

「おーい…おーい!」

「あれって…お前死んだはずじゃ!?」

「彼等に助けてもらったんだ。研究所を裏切ってまでね。分かってくれる人がいたんだよ!」

「へええ。彼等と話をしてみたいもんだ。」

「でもその前に彼等をここから出さないと。裏切ったから攻撃されて動けなくなった人も居るし、隠れ棲んでて物資が足りないんだ。分けてもらえないか?」

「もちろん。じゃあ彼等のところまで案内してくれ。」

「ああ。任せてくれ。敵の居ないルートは知ってるから。」

 谷を歩いている所を上から兄弟が見下ろしていた。全員一人も逃さないよう麻酔銃もネットも構えていた。

「だいぶ歩いたな…疲れてないか?休憩しようか?」

「大丈夫さ。」

「そうか。」

 立ち止まった頃合いを見計らって兄弟がネットを投げた。

「うわっ何だこれ!?外れない!早く切るんだ!」

「おい!助けてくれ!」

 操っている一人はネットに掛けなかった。麻酔銃を当てないように、彼等を運ぶ手間を省く為に避けさせた。数人集まっていると麻酔銃を撃っても助け出されたり逃げたりしてしまうが罠に掛かっていれば確実に当てられる。少しずつ距離を詰めればもっと確実だ。

「おい!何で…うぐっ!」

 一人ナイフで網を切ろうとした奴、銃を持った奴から麻酔銃で撃った。

「敵に見つかってる!?ひいいいっ!」

 操られた人間はぼーっと見ているだけだった。

「うわああもうだめだぁ!降参!降参しますから命だけはあ!」

 崖を滑り降りた兄弟がうるさいので黙らせる為に説明をした。

「俺達はお前等を殺さない。お前等、俺達と和解したいんだって?だったら俺達の為に働け。死ぬまでな。」

「ううっ…はい…」

「いや、死んでも働かせる。逃げたり裏切らない様にこいつと同じ様に脳に機械を埋め込んでもらう。」

 ネットに掛からないまま呆然と突っ立ったままの人間には額に装置が付いていた。

「なっ…!?」

「大丈夫さ。頭に装置を埋め込めば俺達に逆らえなくなるし、嫌とも、もう帰りたいとも思わなくなるから。生きたまま施術をするのはまだ成功率が低いんだが…技術の向上に協力してくれるな?俺達の為に。」

 そいつらは引きずられて研究所に連れて行かれた。彼らが操れるようになったら外の食料と人間を連れてきてもっと操り人形を増やすんだ。もっと外で支持者を増やすんだ。研究所の雑用は足りてきてる。でも今頃お姉ちゃんはどうしてるかな?女子だから対して戦闘データは取れないし大丈夫かな。それに前に逃げたお兄ちゃんも僕達の旧型だから多分大丈夫…それよりも二人共役目を果たせてると良いな。ここまで人を殺してきてどんどん憧れた物に遠ざかってる気がするけど、作戦が成功すれば外の世界を征圧できる。そうしたらきっと…

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