「よし!到ちゃ……なんだこれ」
俺がジャンプしたお家は……ひどい有様だった。
ジャンプして最初に気付いたのは人の気配が全くしなかった。
黒歌曰く人は生きているだけで何かしらのエネルギーを発しているらしく
仙術でそれを感知することによって生存しているか否かを判断できるらしい。
事実、俺もできるようにはなっている。
俺がジャンプした家にはその何かしらのエネルギーが一切感じられなかった。
誰かいないものかと思い、俺は家の中をうろうろしていると壁に遺体が貼り付けられていた。
「……ひでえな、おい」
「おやおや~!?クズな悪魔キュンですか!?」
後ろから奇声が聞こえ、後ろを振り向くとそこには白髪神父が立っていた。
「これはお前がやったのか?」
「もちの論でござんす!悪魔なんかに頼る人間なんて死んで同然♪
殺されるのは当たり前でやんすよ!」
白髪神父はさも、当然の如く人の殺しを正当化した。
こいつ狂ってるな……悪魔に頼らないと
生きていけない人だっているかもしれねえのに!
『Boost!』
俺は何も言わずに目の前の神父を睨みつけながら籠手を出すと
白髪神父は面白いものでも見ているのかニタニタしながら
俺を見てきた。
「んん~?もしかして、俺を倒す気ですかい?」
「ああ、ちょっとねじが外れているみたいだからまわしなおしてやるよ!」
「結構ざんす!」
白髪神父がポケットから何かを取り出した瞬間、俺は反射的に
伏せると壁に一発の弾丸がめり込んだ。
っ!銃声無の弾丸とかありかよ!
『しかもあれは悪魔にとって害なものがふんだんに使われているな』
マジですかい……まあ、仙術でいつ撃ってくるとかは大体分かるけど。
「おやまあ、これを避けるとは。なかなかやるねえ!じゃあ、これで!」
白髪神父は刀身の無い刀の持ち手を取り出すと、
白色に輝く刀身を創り出して俺に向けた。
今度は聖なる力でできた刀かよ!
「ザックザクに斬るざんす!」
「斬られてたまるか!」
『Boost!』
ボキィ!
「ぐべぇ!」
俺は刀を避けて二回倍加した力で腐れ神父のあごを綺麗にとらえて殴ってやると
これまた綺麗に飛んで壁に激突した。
「殺す!クズ悪魔は全員殺す!略してKAZ!」
白髪神父は悪魔の俺に殴られたことが気に食わなかったのか
銃を乱射し始めた。
ぬおぉ!何彼構わず弾丸撃って来やがった!
ていうかなんでKAZ?
「きゃあぁぁぁぁ!」
急に叫び声が聞こえてそっちの方を向くとそこには金髪シスターさんがいた。
「フ、フリード神父…一体これは」
金髪シスターちゃんは目の前の悲惨な光景に目に涙をためて
体を震わせながら白髪神父に尋ねた。
「おやおや?そう言えばアーシアちゃんはビギナーだすたな~」
へえ、この子アーシアっていうんだ。
俺の可愛子ちゃんメモリーに永久保存決定だな。
「これが悪魔に頼った人間の末路ざんすよ!クズな悪魔に頼る
人間もまた屑!殺していい存在!」
「そんなことありません!悪魔さんの中にも良い人はいます!」
うんうん、俺みたいな人とかね。
『……ただの変態だ』
はっ!失敬な!
「あぁ~そうですかい。なら死んでもらうざんす♪」
神父は顔色を何一つ変えずにアーシアに銃を向けて引き金を引こうとする!
させるかよ!ドライグ!あれをやるぜ!
『あぁ!』
『Boost!』
俺は籠手から魔力を少し出すと神父の銃に向かって魔力を放った。
「喰らえ!名づけてドラゴンショット!」
「っ!」
バキィィィィン!
近くにいたアーシアを傷つけずに銃だけを壊した。
やりぃ!鍛錬のたまものだぜ!
「ぶっ殺す!」
神父が聖なる力でできた刀で俺を切ろうとこっちに走ってきた瞬間!
「どわぁっ!」
「うげぇ!」
「きゃっ!」
いきなり家の床に魔法陣が現れて神父が壁に激突した。
今のうちにアーシアを!
俺は神父が伸びているうちにアーシアの手を取りこっちに引き寄せた。
「待たせてごめんなさい、イッセー」
「いいえ、ナイスタイミングです!
部長!このままジャンプしてください!」
俺がそう言うと部長は少し表情を曇らせた。
「イッセー。このジャンプは私の卷属しかできないの」
っ!そんな後付け設定みたいなもん今言われても!
「だったら俺がアーシアを運びます!」
「いいえ、駄目です。複数の堕天使がこちらに向かってきています」
姫島先輩!……だったらどうしたらアーシアを助けられるんだよ!
俺が必死に少ない頭をフル稼働させながら案を考えていると
アーシアが繋いでいた手を急に離した。
「ア、アーシア?お前、何を」
「イッセーさん……行ってください」
アーシアがそう言った瞬間に
ジャンプの準備が整ったことを知らせるように
魔法陣が紅色の輝きを放ち始めた。
「もう時間がないわ!イッセー!」
「駄目です!まだ、アーシアが!」
俺がアーシアのもとへ駆け寄ろうとした瞬間、ジャンプした。
「また会いましょう、イッセーさん」
それから数日後、俺は学校の放課後白音と一緒に河原に座っていた。
「なあ、白音」
「はい、兄様」
「俺って弱いな」
赤龍帝の力を宿しているのに女の子一人救えないなんて……最低だ。
「そんなことありません。あれは状況が」
白音……ありがとうな、こんな俺を慰めてくれて。
俺はお礼の念を込めて白音の綺麗な白髪を撫でた。
その時、俺達の後ろに誰かが立っている気配を感じた…けど
その気配は気分が悪くなるほどの憎しみがこめられていた。
「……堕天使か」
「あら、正解。さっさと後ろからザクッと行こうと思ったのに」
後ろを見てみると黒い翼を生やした女の子がいた……っていうかこの子
確か前に俺に告白してきた子じゃ。
「本当はこの前に殺す予定だったんだけどね」
「無駄です。貴方ごときの力で兄様を倒せるわけがありません」
「クズな悪魔とは喋りたくないの」
『Boost!』
白音を……侮辱した奴はどいつだ。
堕天使の女はおれの赤い籠手を見ると見下したような視線を俺に送ってきた。
「ああ、そういえばあんたもありきたりな神器持ちだったわね」
白音を侮辱した奴――――――目の前の堕天使か……殺す!
『Boost!』
ドゴォォォォン!
「ぐぅ!」
俺が踏み込んだ瞬間に、あいつも何かを感じたのか背中の二対の翼で
自らを覆って防御の姿勢を取ったけど俺はそれごと目の前の堕天使を
殴り飛ばした。
「つぅ!よくも!良くも下級悪魔の分際でこの私を!」
堕天使が光の力で槍を作り俺に向かってきたが
「はっ!」
ゴォォォン!
「がぁ!」
白音が間に入り魔力が最も集まっている部分に拳打を二発撃ちこんだ。
「貴方の魔力を散らしました。これで貴方は力は使えません」
「げほっ!」
腹を抱えて苦痛に耐えている堕天使に俺はゆっくり近づいて行き
そいつの首を掴んで片腕の力だけで持ち上げた。
「ぐぅ!」
「教えろ。アーシアはあの教会にいるのか」
「はっ!教えるとでも思うの!?」
……そうか、アーシアは教会にまだいるんだな。
俺が質問した瞬間に、こいつは教会の方向を一瞬だけちらっと
だけ見たし…何より気配が俺に教えてくれてる。
「まあ、いい。お前に恨みはないけどひとまずここで」
「っ!兄様!」
「ちっ!」
ズドドドドドドドドドドドドド!
空から突然、光の力でできた槍が何本も俺たちに向かって降り注いできた。
「白音!一旦退く!」
「はい!」
俺は白音を連れて急いで槍が降り注いでいる場所から離れた。
「レイナーレ、何をしている」
「ドーナシーク」
「今晩行われるのだぞ」
「ええ、分かってるわ……行きましょう」
堕天使の襲撃から難を逃れた俺達は早速、アーシアが囚われている
と思われる教会に行こうとしたのだが運悪く、お出かけ中の部長と
姫島先輩に見つかってしまい部室に強制連行された。
「イッセー、小猫、貴方達一体どこに行こうとしていたの?」
「プライベートな事も話さないといけないものなんですか?」
「いいえ、でも貴方達の表情はそんな感じじゃなかったわ」
……鋭い感覚だ事……女性って感がめちゃくちゃ鋭いよな。
「……アーシアを助けに行こうとしていました」
「駄目よ。あのシスターの事は諦めなさい」
……諦めろ…か。
「断ります。ダメと言うなら俺だけで行きます」
パシィィ!
部長さんが俺を叩くために振ってきた手を俺は難なく片手で止めた。
「駄目よ」
「……それでも行きます」
俺は部長の返事を聞かずに部室を出ていった。
その日の晩、俺は教会の傍にある林でどうやるかを考えていた。
「…別に白音までこなくてもいいんだぞ?」
「いいえ、兄様に任せておくと教会ごと吹き飛ばしそうなので」
「あ、それ僕も分かるよ」
白音の後ろには木場がちゃっかりいた。
なんで木場までこっちに来てんだよ。
「なんでお前までいるんだって顔をしてるね。部長に言われてきたんだ」
…まあ、あの人が本気であのシスターを諦めるはずがないのは
仙術で気配を覗くまでもなく一瞬で分かる。
「ま、この三人で行くか」
「はい」
「勿論」
俺達のアーシア奪還作戦の幕が開いた。
こんばんわっす!いや~日が経つのも早いですね!
もうすぐ、公募制推薦入試が始まります(泣)