俺は今、山登りをしていた。
あのレーティングゲームとか言う試合が決まった翌日、俺と白音に使い魔みたいなのが
家に来て、泊りがけで修行の合宿を行うから付いて来い……と言われた。
学校はどうすんだと聞くと、使い魔が俺たちになり済まして行ってくれるんだと。
そしたら、その翌日に物凄い量の荷物を持った部長さんがやってきて
『山に修行に行くわよ』と言われて大急ぎで準備をして今に至る。
「こんなにも荷物いりますかね?」
俺が両手に持っている荷物はよく、マンガとかで見るようなカバンが
張り裂けるんじゃないかと思うくらいパンパンに膨らんだものだった。
「女の子は荷物が多いのよ」
……あ、そうか! 部長や朱乃さんみたいに巨乳な人はブラジャーが何枚も
「ふん!」
ボコォォォォン!
「おうっふ!」
ぐはっ! マ、マイシスターよ……俺にプライバシー権みたいなのは
「あるはずがありません」
オーマイガー!
そんな感じで軽く絶望しながら山を登っていく。
「あ~疲れた!」
山の道を登ること15分、山小屋に辿り着き荷物をそれぞれの部屋のもとへ持っていって
ようやく、俺はベッドに横になって休憩を取ることができた。
「お疲れ様です……兄様」
「え、えっと確か小猫ちゃんの部屋はあっちじゃなかったっけ?」
木場が少しためらった表情で白音に言ってくる。
「私と兄様はいつでも一緒です」
そう言って白音は腕にくっついてくる。
可愛い奴め!
「イッセー、祐斗。行くわよ」
すると部屋のドアを開けて赤色のジャージを着た部長さんと
アーシア、そして姫島先輩が来た。
んじゃあ、俺たちも行きますかね。
俺たちも重い腰を上げて部屋から出た。
レッスン1――――木場君と剣修行!
「はぁぁぁぁ!」
ブゥゥゥゥン!
木場が振り下ろした木刀を俺がかわす。
ムハハハハハハ! 仙術を嗜んでいる俺にその程度の速度の剣など当たりやせんよ!
俺は仙術を使って相手がいつ、どのような事をしようとしているのかが気配で
丸わかりなのである。
「うりゃ!」
「んん!」
ただし、俺の剣の実力はクズレベルである。
剣なんて昔に、チャンバラした時くらいしかやってねえし。
「そこまで!」
結局、どっちに軍配が上がる訳でもなく時間切れとなってしまった。
「イッセー君に、一回は当てようと思ったのにな」
そう言って木場はニコッと笑みを浮かべる。
きぃぃぃぃぃぃ! そのイケメンスマイルが頭にくるぅぅぅぅ!
レッスン2、朱乃さんと魔力の鍛錬!
「そうじゃなくて魔力は体全体から集めてくるような感じで」
残念ながら俺に魔力を操るという才能は塵以下らしく一向に魔力は集まってこない。
てか、むしろ逆に仙術のエネルギーが集まって来ちゃってるよ。
はぁ~俺って魔力に関しては駄目駄目だわ。
『……仙術のエネルギーを集められる時点で凄すぎるわ』
頭の中でドライグにツッコミを受けてしまった。
まあ、これでもあの黒歌に仙術講座をしてもらってるしな。
「できました!」
「あらまあ、アーシアさんは魔力の才能は凄いですわ」
アーシアの手元には白い輝きを放っている魔力の塊がフワフワと浮いていた。
うぅ! ドラゴンショットは出来るのになんで俺は魔力の塊を作れないんだ!
『相棒は単細胞だからな。小難しいことには向いてないのさ』
だ、誰が単細胞だ!
レッスン3―――マイシスターとの殺し合い!
「うらぁぁぁぁ!」
「ふぅぅん!」
ボコォォォン! バキィィィィ!
先程から俺と白音は殴り合いを続けている。
相手の拳を避ければ地面に穴があき、大木を大きくへこませる。
「はぁぁぁ!」
「よっと!」
ドォォォォォン!
俺は白音の拳打を足で受け止めると辺りに暴風が吹き荒れ、木が大きく揺られた。
「強くなったな、白音」
「兄様こそ」
俺達の当たらない攻撃の応酬は部長に止められるまで続いた。
レッスン4―――部長と
「ヌオオォォォォォォ!」
俺は今、険しすぎる山道を巨大な岩を両手に乗っけ、さらにはこれまた巨大な
岩を体に括りつけ、その上に部長を乗せてかれこれ、20往復はしている。
「す、凄いじゃない! イッセー、一体いつこんな力を」
「俺の大好きな人から体を鍛えろって言われてましてね!
去年くらいからこんなのとは比じゃないくらいキツイ筋トレをさせられたんすよ!」
「そう、ならそれを超えるものを今日はしましょうね。
山頂まで行ったら各種筋トレを5分間で150回ね」
部長は笑顔を浮かべてそう言ってくる。
一瞬、黒歌とおなじ黒い笑顔が重なったような気がした。
……ノオォォォォォォォォォ! それはねえでしょうが!
結局、俺は山頂に辿り着いたとたんに本当に死ぬかと思うくらいの筋トレをさせられた。
「兄様、御代りです」
「おう! ありがとな!」
俺は通常のドンブリよりも二周り大きい器に特盛り以上の量を白音に
よそってもらい肉一枚で半分を口の中に入れた。
「むっはぁぁぁぁ! 最高だ!」
うぅ! こんなにも美味しい肉を量を気にせずに入れられるご飯と一緒に喰う!
これこそ成長期男子の幸せの一つだぁぁぁぁぁ!
俺は肉一枚でごはんの半分を飲み込むと、もう一枚肉を取り
残りのご飯を口のなかに押し込んだ。
「ふふ、凄い食欲ですわ」
むふふふ、姫島さん、俺をなめちゃいけませんよ。
「おかわり!」
カポーン。
「ふぅぅぅ~いい湯だわ」
「だね」
今、俺は露天風呂に入っている……畜生!
なんで俺は男と一緒に露天風呂に入らないといけないんだこの野郎!
隣にはエデンの園があるっていうのに! 一目見ることすらできないなんて!
隣からは女性陣の声が響いてくる。
「イ、イッセーくん、なんで泣いてるの?」
「エデンの園……見るんだ!」
俺はザバッと立ち上がると女子風呂と男子風呂を隔てている壁に向かって
歩きだすが高速で俺の目の前に移動してきた木場に遮られた。
「邪魔をするというのか、汝は」
「勿論。ここから先は工事中でね」
「そうか……ならば剣を交えてでも貴様を倒す!」
『Boost!』
俺は左腕に籠手を、木場は魔剣をその手に持ち対峙した。
「行くよ!」
木場は魔剣を手に俺にまっすぐ突っ込んできた。
「ふん! 甘いわ!」
ザッブゥゥゥゥゥゥン!
「うわぁ!」
俺は籠手で思いっきりお湯を弾けさせて木場にぶっかけてやった!
「今のうちだ!」
俺は木場がうろたえている隙を狙ってダッシュで横を通り過ぎた。
「エデンの園ぉぉぉぉぉぉ………」
「ジー」
………か、壁から白髪に白い猫耳をピーンと立たせている
マイシスターが俺をにらんでいた。
「兄様、一体何をするつもりで?」
「エ、エデン」
「姉様に」
「いやぁぁぁぁぁ! 良いお湯だな! 木場よ! 男同士の裸の
付き合いも良いもんだ! ガッハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
結局、俺は風呂から上がった後、黒歌直伝の関節技を白音に決められた。
「……水」
「うにゃ……」
俺はのどが渇いたので、隣で健やかな寝顔を浮かべている白音を起こさないように
ベッドから起きて一階に行くと部長がテーブルで分厚い本と紙を交互に見ながら
鉛筆を走らせていた。
「まだ、寝ないんですか?」
「イッセー……まあね」
こちらを振り向いた部長はメガネをかけていた。
おぉ、メガネをかけた部長は理知的な感じがして
いいね……今度、黒歌にもかけてみよう。
「隣良いすか?」
「ええ、どうぞ」
俺は部長に断りを入れて隣の椅子に座った。
テーブルの上に散らばっている紙に視線を移すと、色々な形の
フォーメーションかなんかが書かれていた。
「へぇ~。凄いっすね。こんな、
フォーメーションみたいなのを考えつくなんて」
「そうかしら? 私は唯、既存している形を変えているだけよ」
いや、それもそれで才能だと思いますがね~。
俺なんか既存の物を変えるどころか新しいものを作り出すことすらできませんよ。
「でも、こんなのは気休めにしかならないわ」
そう言うと部長さんはノートをパタンと閉じてしまった。
「ですよね~。相手は何と言ってもあの不死身のフェニックスすからね」
フェニックス――――――それが流す涙は全ての傷を癒し、またその体内に流れている
血液を飲めば永遠を手に入れられるという噂のフェニックス。
神話なんかでは自分の死が訪れると、自らの炎に身を落とし、また新たな
生命として生まれ変わると言われているが悪魔のフェニックスは違う。
攻撃を受けてもその傷は瞬く間に回復していき、倒すには神を消し飛ばすほどの
威力の物を当てるか、もしくは相手の精神が途切れるまで倒す。
「今の俺じゃ、神を消し飛ばすほどの威力のものは出せませんが
そいつが降参するまでタコ殴りにして勝ちますよ!」
俺がそう言うと部長はなぜか笑い始めた。
「フフフフフ! イッセーは面白い事を言うのね……期待してるわ」
部長はそう言うと本を持っていって自室へと帰っていった。
「んじゃ、俺も寝ますかね」
俺も部屋へと戻っていった。