「ここら辺でいいか」
俺はイカレ神父から十分に遠ざかったのを確認すると木場を降ろした。
木場は俺を殺意をふんだんにこめた眼で俺を睨んでくる……おいおい、
そんな目で俺を見ないでくれよ。
「冷静を失った状態で戦いに勝てると思うのか?」
俺がそういうと木場は何も言えなくなり、気まずそうにその場を去った。
「はぁ。なんか俺、あいつが暴走しないか不安だ」
俺はそう呟いて家に向かって歩き始めた。
『そういえば相棒。黒歌と付き合って何カ月だ? もうすぐ記念日だろ』
そう、俺と黒歌が付き合ってはや半年が経過した。
その記念日が今日というわけだ。無論、黒歌は今日の晩ごろに家に来る予定だ。
ああ、そのためのプレゼントもすでに用意しているさ。
なんで、そんなこと聞くんだ?
『いやな。お前と黒歌のイチャイチャを見ている俺からすればお前たちは
結構面白いんだよ。人間と猫又の異種族間の愛。まあ、今は二人とも悪魔だがな。
それに今まで俺を宿してきた宿主の中ではとびっきりおまえが幸せそうに見える』
当たり前だろ! 俺はあの美人な黒歌と付き合っているんだ!
もしもこれでお前は不幸だ、なんて言われたら俺はそいつをぶっ飛ばしてやる!
『ま、限りある愛を育むことだ。後悔の無いように』
どういう意味だ? なんで後悔なんか
俺がドライグにそう尋ねようとした時には既にドライグは奥底に潜っていた。
「よく分からん。ただい……客か?」
ドライグと話をしているといつの間にか家にたどり着いていた。
俺は玄関のドアを開けて入ろうとしたとき、見知らぬ人の靴が二人分置かれているのが見えた。
それに何やら俺の部屋がある二階から何か、すごいオーラが感じる。
「……まさか!」
俺はダッシュで二階へと上がった!
もしかしたら俺を殺そうとしている輩が俺の部屋にいるんじゃ!
それにアーシアと白音もすでに帰っているはずだ!
俺は母さんたちの安否が気になり慌てて俺の部屋に入った!
「でね? これが小さいころのイッセーの写真よ。あら、あんた帰ってきたの?」
どうやら俺の心配は杞憂に終わったみたいだ。
たっく、心配させんなよ……だったら、この部屋から漏れ出ている
オーラはいったい……そういや、なんかこの部屋に満ちているオーラの中に懐かしいものが
「あ! イッセー君!」
俺の姿を見つけた栗色の髪をした女の子が立ちあがって俺に近寄ってきた。
「へ?」
「えぇぇぇ~! 覚えてないの? 私だよ!」
「……イ、イリナ? お前、紫藤イリナか!?」
「そうだよ!」
なんと、俺の部屋に懐かしの幼馴染がいました!
ひえぇぇ~。懐かしいな! 何年ぶりだ!?
「久しぶりじゃねえか! イギリスに行ったっきり手紙もないから心配したぜ!?」
「まあ、いろいろと忙しくてさ!」
悪魔となった今ではイリナが何をしていたのかは分かる。
教会に所属しエクソシスト関係の仕事をしているんだろう……となると
イリナが持っているやつは聖剣関係か。
イリナの腰のあたりには布でぐるぐるに何重にも巻かれたものが携えられていた。
「……兄様」
白音とアーシアが不思議そうな顔をして俺を見てくる。
「あ、悪いな! こいつは紫藤イリナ。おれの幼馴染だ。んで、この白髪の方が
俺のマイシスターの白音、金髪の方がアーシアだ!」
そういうとイリナは疑問を感じているようで首を可愛く傾げていた。
「妹? ……え!? まさか」
「ああ、違う違う。妹っていうものを証明するものはないけど白音は俺の妹だ!」
すると、イリナはそれを聞いて若干、引いたような眼で俺を見てきた。
俺、何か引くようなこと言ったっけ?
「イッセー君……まさか、妹趣味に」
「走ってねえ!」
「もう! 冗談に決まってるじゃない!」
口ではそういうもののイリナの表情は本気で俺が妹趣味を持ってしまったものだと認識していた。
勘弁してくれ……赤の他人を自分の趣味で妹なんかにしねぇよ。
「母さん。少し、話したいから席はずしてくれねえか?」
「ええ、良いわよ。若い人同士積もる話もあるでしょういに」
そう言って母さんは俺の幼いころの写真が貼られている
アルバムを持って俺の自室から出てくれた。
「あ、紹介し忘れていたけどこっちは私のお友達のゼノヴィアよ!」
そう言って部屋の隅っこの方で座っていたゼノヴィアという
名の女性は俺に会釈をしてきた。
「で!? 何の話をする!?」
イリナは目をキラキラ輝かせて俺の方を見てくる。
「そうだな……じゃあ、お前が携えている聖剣の話をしようか」
俺がそう言った途端、二人のオーラが一気に驚いたように棚引いた。
それと同時にゼノヴィアとか言う女の方から敵意の色を感じた。
「ああ、安心してくれ。別に俺はここでドンパチしようとか思ってねえから」
「……イリナ。君のフレンドは無関係だと」
「え、ええ……この数年で関係者になったのね」
二人は何やら俺たちに聞こえないようにコソコソと話をし始めた。
「…………君に話すことは何もないさ。行こう、イリナ」
そう言ってゼノヴィアっていう子は俺の部屋から出て行った。
「え、えっとま、また来るね! じゃ!」
イリナもゼノヴィアを追いかけて部屋から出て行った。
「……兄様。少し、KYにもほどがあります」
「え? マジで?」
アーシアの方へ視線を移すと彼女もうんうんと
首を縦に振って白音の言い分に肯定を示していた。
マ、マジでか……とうとう、アーシアにもマイシスターにもKYと称されてしまった。
「にゃ? なんだか妙な空気にゃ」
「……姉様」
「黒歌さん!」
「黒歌!」
突然、第三者の声が部屋に響き渡った。
誰かと思い窓の方へ視線を向けるとそこには黒い着物に奇麗な黒髪を持ち、
猫耳、猫の尻尾を生やした女性――――そう、俺が愛してやまない女性である黒歌だ!
「久しぶりだな! 最近忙しかったのか?」
「にゃあ。忙しかったのにゃ白音もアーシアも久しぶりにゃ」
「お久しぶりです」
アーシアはぺこりとお辞儀をしながら、白音は無言でお辞儀をして久しぶりに会う
黒歌に挨拶をかわした。
「にゃ~。じゃあ、仙術講座をするにゃ」
こうして、俺と白音の仙術講座が始められた。
そして、仙術講座が始まってから一時間ほど経過したところで本日の授業は終了した。
「にゃ、お疲れ様。二人とも成長していてびっくりにゃ」
そりゃ、そうだろうな。おれも偶発的にとはいえバランスブレイクを発動し、
それに惹かれてか仙術も一段階上がったし、白音なんかすでに俺よりも遥かに高い段階だ。
とてもじゃないが、白音にウソをつき通せるとは思えない。
「……では、あとは」
「お二人で楽しんでくださいね♪」
そう言って二人とも俺の部屋から出て、一階へと降りて行った。
まったく、アーシアも白音もいい子に育ちやがって……お兄ちゃんは嬉しいよ!
「イ、イッセー……はな」
「黒歌! 今日は何の日か分かるか!?」
俺は少し、興奮しながら黒歌にそう尋ねた。
黒歌はかわいく首をかしげて少し、考えるがどうやら何の日か分からないようだった。
俺は机の引出しからこの日のために勝った黒歌へのプレゼントを取り出した。
「今日はお前と俺が恋人になって半年だ!」
「…………まさか、イッセーが日にちを数えていたなんて意外にゃ」
「これはプレゼントだ」
俺は黒歌に小さな箱を手渡すと視線で開けてもいいかと聞かれたので頷いた。
「にゃ!? こ、これって」
箱に入っていたのはネックレスだ。
高校生の俺の財力じゃ買えるものは決まってるからそんなにいい物じゃないけど
決して安物ではない物だ。
「半年記念だ」
俺はそう言いながら箱からネックレスを取って
黒歌の髪の毛に気をつけながら首にネックレスを付けてやった。
うん、やっぱり似合う! 流石は黒歌だぜ!
「黒歌。これからもよろしくな」
俺が彼女の手を取り、そういうと彼女は眼からポロポロと涙を流して泣き始めた。
「うおぉい! お、俺なんかした!?」
「……バカ」
すると、黒歌は俺に抱きついてきた。
……黒歌のにおいがする。
俺は彼女の髪の毛から香ってくる匂いに酔いしれながら彼女を優しく抱きしめた。
「……イッセー」
黒歌はウットリとした表情で俺の顔に近づいてきた。
「愛してる……黒歌」
俺は彼女にそう言ってキスをした。
それから一時間ほど俺は黒歌とイチャイチャしているとお客さんが来てしまった。
この感じは……部長か。
外から感じられた気配は部長のものだった。
「にゃ……そろそろ帰るにゃ」
「ああ……またな」
黒歌は悪魔から指名手配されている身だから部長とかに見つかると少々
問題になってしまう。俺は渋々、黒歌を窓から見送った。
「チェ、もうちょっとイチャイチャしていたかったぜ」
俺はそう呟いて一回に降りて行った。
「……ふふ」
「その様子だと失敗したようですね。黒歌」
「アーサー……いつから」
「たった今です……プレゼントですか」
「……もう少しだけ時間が欲しいにゃ」
「構いません。それでは戻りましょう」