翌日の放課後、俺たちはある準備に追われていた。
その準備とはこの前、俺の家に来たイリナとゼノヴィアとか言う奴が部室に来るらしく
そのおもてなしの準備だ。
本来、天使と仇敵であるはずの悪魔の家城にエクソシストのような教会関係者が
真正面の玄関から入ってくるのは戦争を起こすときくらいしかないらしい。
でも、悪魔である俺たちに一切の暴力を振るわないと神に誓ったらしい。
でもさ~……もしも、神様がいないなんてことを知ったらどうなるんだろうな。ドライグ。
『さあな。まあ、とりあえずは精神的に何らかの支障をきたすだろう。
それが信仰心の厚い者であればあるほどその衝撃は大きくなる』
まあ、言う気はないんだけどさ……にしても遅くね?
『ああ、遅いな。というよりも相棒が着くのが早すぎたんだ』
ドライグの指摘とおり、俺は余裕を持って家を出た……のは良いんだが
どうやら時計が狂っていたらしく一時間も早くについてしまった。
「あ、おーい! イッセー君!」
そんなことを考えていると向こうの方からイリナの声が聞こえてきた。
よく、仇敵の悪魔に会うっつうのに元気な奴だな……まあ、イリナは
そこが自慢できる唯一の点だしな。
「よっ。えっと、ゼノヴィアさんだっけ?
あの時は悪かったな。俺は兵藤一誠だ。よろしく」
「……悪魔には触れたくないんでね」
ゼノヴィアってやつは俺が出した手を完全に無視した。
「わぉ。冷たいやつ。まあいいや、行こうぜ」
ゼノヴィアってやつはオーラを見てもわかるんだが話す言葉の節々に何か
刺々しいものを感じるな。そんなに悪魔が嫌いか?
ひとまず、俺はゼノヴィアとイリナを旧校舎にある部室へと案内した。
「部長。連れてきました」
「ええ、そこに座って」
部長に言われ、俺は二人をソファに座らせて俺たち卷族は周りで待機となった。
「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側が
保管、管理されていたエクスカリバーが盗まれました」
イリナの一言とともに話はどんどん進められていた。
大昔の大戦で砕けたエクスカリバー、その欠片を集めて錬金術で
新しい姿に変えた剣が盗まれたらしい。
そして、七つのエクスカリバーのうち二本を目の前の二人が所有しており、
その盗んだ犯人は堕天使のコカビエルとか言う奴らしい。
俺は話を聞きながらチラッと木場の方へ向くと、あいつは目の前の
二人を鬼のような形相で睨みつけていた。
「…………白音」
俺は白音を呼びつけて、朱乃さんにあることをしてもらうようにお願いするのを頼んだ。
「我々の注文は君たち悪魔はこの件に関しては一切、手を出すな――――だ」
「私の領地の中で起きていることを見て見ぬふりをしろと?」
おぉ、部長怒ってる。この部屋に怒っているやつが二人もいると
なんかいやな気分になるな、俺たちまで。
「じゃあ、帰ろうか。イリナ」
ゼノヴィアってやつは立ち上がり、ふとアーシアの方へ視線を向けた。
「……まさか、魔女のアーシア・アルジェントが悪魔になっていたとはな」
そう言われてアーシアは肩をビクッとあげて、俺のほうへ近寄ってきた。
「おいおい、別に誰が悪魔になろうが構わねえじゃねえか。魔女だろうが
女神さまだろうが悪魔になるのはそいつの勝手だろ?」
「君に話していないんだがな……このことを知れば君を知る者は
さぞ、悲しむだろうな。堕ちるところまで堕ちた――――かと」
「あ~はいはい。分かった分かった。用が済んだんなら帰ってくれないか?」
「そうだな。そろそろ」
「それは困る」
殺意に満ちた声が聞こえ、そちらのほうを向くと無数の魔剣を宙に浮かべた
木場がイリナたちを睨みつけていた。
「木場。落ち着け、あとそんな物騒なもんは下げろ。相手さまに失礼だろ?
イリナたちはここへ戦争しに来たんじゃないんだ」
俺はなるべく、木場の神経を逆なでしないように
言うが木場は一切、剣をおろそうとはしなかった。
「悪いけど、それは無理なお願いだね。目の前に復讐の対象があるんだ。
それを目の前にして冷静でいろという方が無理だ。止めたければ無理やり力づくで止めなよ」
そう言って木場は剣を持ち、二人に徐々に近づいていく。
…………お前さんがそういうなら遠慮なく行かせてもらうぜ。
俺は木場の肩を掴んで止めた。
「一つ付け加えておくぜ。俺は別に、お前に止まって
ください。お願いしますなんて言ってねえんだ」
「―――っ! やめなさい! イッセー!」
――――――ドゴオォォォォ!
俺は木場の後頭部を鷲掴みにしてテーブルに木場の顔面を叩きつけた。
その瞬間、アーシアの物らしき叫び声が聞こえてきたがそれは今は無視だ。
「“止まれ”と命令してんだ。ボケなす」
「ぐっ! イッセー君!」
木場は抵抗して起き上がろうとするが俺は
力を入れて木場の顔を机に押しつけて動けないようにした。
「悪いな、イリナ。今すぐ、ここからダッシュで消えろ。でないと
お前たちまで巻き込んで組織間の問題にまで発展する」
「う、うん!」
イリナはゼノヴィアの腕を掴んで慌てて部室から出て行った。
さ~てと、ここで暴れて問題になるようなことは無くなったな。
俺はそれを確認すると木場を抑えていた手を離すと木場は鼻から血を出しながら
起き上がって俺から距離をとって睨みつけてきた。
「木場。別にお前の復讐に茶々入れる気はねぇよ。でもなぁ、てめえの復讐で
関係のない奴まで巻き込んでんじゃねえよ」
「別に僕は巻き込んでなんかないけど」
『Boost!』
俺はブーステッドギアを装着して木場に殴りかかり、剣の刀身で拳を防がれるが
そのまま木場を押して壁を突き破りながらグラウンドに着地した。
「旧校舎に来るような暇人はいねぇ。朱乃さんに頼んでこのあたりを
結界で囲ってもらった。さ~てと、木場祐斗君。少し説教だ」
『Boost!』
俺は二回目の倍加がなされた瞬間に走り出して木場に接近するが、木場は
高速でその場から離れて後ろから斬りかかってきた。
「動きは見えねぇが出てくる場所は分かるぜ!」
―――――ギイィィ!
俺が籠手で木場が振り下ろした魔剣を防ぐと、あたりに金属音が響き火花が散った。
「くっ!」
木場は分が悪いと感じたのか一旦、俺から距離を取り魔剣を地面に突き刺すと
まるでタケノコのように魔剣が連続で生えてきて、まるで波のようにうねりながら俺に向かってきた。
「ふぅ……」
俺は一呼吸置き、そして
「右左右下左下右左右右左左右右下」
「なっ!」
俺は魔剣から発せられている魔力を仙術を用いてどの部分から魔力の反応が
俺に向かってくるのかをとっさに判断しながら一個一個避けていく。
「もう、見切りとかそういう問題じゃない! 君は一体なんなんだ!」
木場は驚愕しながら俺に向かって剣を振り下ろそうとする。
「復讐に駆られかけているダチを助ける」
俺は籠手で木場が振り下ろした魔剣を受け止め、そして
「ただの悪魔だ!」
「ぐぅ!」
俺は籠手が装着されている腕を払って魔剣を弾くと、そのまま
隙だらけの木場の顔面を思いっきり殴ってやった。
「木場。今のお前じゃエクスカリバーには勝てない……俺はそう思うがな」
俺は顔を押さえてこちらを見ている木場を放置して部室の方へと戻った。
「……ただいま帰りました。兄様」
「おう、お帰り」
翌日、俺は部長に一週間ほどの謹慎命令を受けて放課後になれば
すぐに家に帰って謹慎していた。
白音の報告曰く、あの日以来木場は学校にも部室にも顔を見せていないという。
「たっく、何をあいつはみんなに心配をかけてんだか」
俺はベッドに横になって白音流の整体を受けて、休んでいた。
結構、白音の整体って効くんだよな~。
「イテテ」
「……すみません……」
「悲しいのか?」
白音のオーラが以前と比べてやや弱弱しくなっている
ことに気づき俺がそう尋ねると白音は俺の背中に寝転がった。
「……寂しいです。兄様も祐斗先輩もいない部室は」
「それはみんな同じよ」
「……できれば玄関から来てください。部長」
いつの間にか転移魔法陣を利用してやってきた部長と朱乃さんが俺の部屋にいた。
別に俺としては良いんだが……やっぱり玄関から来てほしいな。
「お仕事の方は?」
「祐斗とあなたが体調不良ということで代行でなんとかしてるわ」
ん~……やはり、あの時少し暴れたのが……っっ!
そんなことを思っていると突然、俺たちに凄まじいほどの殺気がぶつけられてきた。
すげぇ……こんな殺気はなかなかな感じねぇぞ……腕が震える。
どうやらほかのみんなも気づいているらしく窓の外を見た。
「その紅の髪を見ていると忌々しいあいつを思い出す」
外には三人の男が浮いていた。
イカれた白髪神父のフリード、それと初老の男性。そして
俺たちに凄まじい殺気を送ってきた男。
「今日、俺たちがここに来たのはお前たちへの贈り物と招待をするためだ」
男性は俺達がいる部屋に向かって何かを投げてきた。
「イ、イリナ!」
投げられてきたのは傷だらけのイリナだった! くそっ!
「アーシア!」
部長の叫びを聞いてアーシアはすぐに治療を始めた。
「駆王学園で面白いことをする。見に来たければ来るがいい。フリード」
「あいさ!」
――――――カッ!
フリードが放り投げた手榴弾のようなものがさく裂して俺たちの目を一定時間つぶした。
くそ! スタングレネードじゃねぇけど眩しい!
目の機能が回復したころにはすでに三人はいなかった。
「みんな! 学園へ行くわよ!」
部長のその一言で俺たちは学園へと向かった。
すみません。なんか最近、いろいろと疲れとかで更新できませんでした。
それに何だか最近、この話のイッセー君がだんだん暴力的になっているような……。